軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第445話 魔王の目的

魔王は邪神を食らい配下の上位魔神たちと共に消えていった。

「いなくなっちゃったわね。魔王の目的って何だったのかしら?」

「目的か。その前にメルス、撤退を始めたみたいだが掃除に行ってくれ。なるべく逃がさないように殲滅の方向でお願い」

『ああ、分かった。それなら任せておけ!』

メルスはやる気のある返事をして、特技「巣ごもり」を使って転移した。

帝都パトランタ北部にいる魔王軍は、魔王が現れたあたりから、とっくに撤退を開始している。

既に戦意なく敗走する魔王軍に対して、メルスには残党狩りを指示する。

1体でもAランクの魔獣が街の傍にいると、魚人たちの脅威になる。

数にものを言わせることができる虫Aと虫Bの召喚獣を中心に、残党を念入りに掃討する。

メルスは意気揚々と残党狩りに向かう。

最後の1体を狩りつくすまで、S級ダンジョンの最下層には戻らない所存だ。

「邪神を食べることが、魔王の目的だったのか」

魔王は邪神を食って帰っていった。

その時の表情は、何十年もの悲願が達成したかのようだった。

ペロムスの頑張りで聖獣石を奪うことができたので、食当たりを起こしていたようにも思える。

「ええ、超越者とか言っていたわね」

(超越者に俺はなる! とか言っていたな。なんか、嫌な予感しかしないんだが)

「ちょうえつしゃ?」

調停神から降りた、クレナが「超越者」という言葉に聞き覚えがあった。

「ん? クレナ、超越者って何か分かるのか?」

「うん、『アレンはちょうえつしゃ』ってファルちゃんが馬小屋で言ってた!」

(うん? 馬小屋? ヘビーユーザー島にはクレナは戻っていないはずだが。ああ、そうか、エクストラモードになったクレナも体験したのか)

クレナの言葉にアレンは全てを悟った。

「そ、それって、じゃあ、魔王も?」

セシルは何か理解したようだ。

「ああ、ヘルモードだ。魔王は自らをヘルモードにするために邪神を食らったんだ」

(ん? 邪神を食べることがこの世界の超越者になる条件か? 魔王固有の能力と考えた方がいいのか)

魔王の特技かスキルか分からないが、他者を食べることで力を得られるようだ。

そんなことを言えば、魔神も食ったと言っていた。

もしかしたら、魔神を食らうことがエクストラモードになる条件だったのか考察が進む。

この世界の魔王は自らよりも強い者を食べてより強くなる存在なのかもしれない。

アレンはそこまで考察したところで調停神を見る。

麒麟の姿をした調停神は邪神と何かただならぬ関係であったようにも思えた。

キュベルに対しては「キュプラス」と言っており、昔からの関係のようだった。

調停神とキュベルは邪神に仕えていたように思えた。

『ああ、未来は変えられないのですか』

邪神がいた場所に悲しい視線を送っていた調停神はそう呟くと、水の上を歩きだした。

意気消沈したまま、トボトボとどこかへ歩いて行ってしまう。

「ちょ、ちょっと。大事な話なんじゃないの? どっか行っちゃうわよ!」

調停神がどこかに行ってしまうが、セシルがもっと聞かなくていいのかと声を荒げる。

邪神との関係、魔王のたくらみなど、きっと調停神なら分かることも多いだろう。

「いや、今は消沈しているみたいだし放っておこう。そのうち、馬小屋に戻ってくるだろ。それで、クレナ、調停神の神殿で何を聞いたんだ?」

(ドゴラみたいに神殿に入ったはずだぞ。超越者の話をしたのは調停神なんだろ?)

ドゴラからはエクストラモードになる経緯について話は聞いている。

「え~と、ハクの山が見えて、そっちじゃなくて」

クレナは思い出すかのように、調停神の神殿に入った話を思い出そうとする。

「ああ、クレナも神殿にいったのか?」

ドゴラも体験した神の神殿に入り、エクストラモードになった体験をクレナはしたはずだ。

「むむむ、竜神がえっと。まつえーになったんだけど」

(超越者に竜神か。クレナには随分語ってくれたようだな)

腕を組んで、頭上を睨むクレナを見て、何が起きたか聞きだすのは骨が折れそうだなと思う。

調停神からこれまで魔王軍討伐に必要な情報を聞き出せたことはほぼない。

クレナが見たり聞いたりしたことは今後の戦いに必要なことのような気がする。

「あとで、ゆっくりと話してもらうよ。ペロムスにしてもだ」

「うん。すごい色々あったよ」

服がボロボロになっているペロムスは昨日から起きた失踪事件からの聖獣石について話があるようだ。

ペロムスにしてもクレナ同様にゆっくりと話を聞くことにする。

アレンはそこまで話の区切りをつけてゆっくりと花柱の中央に歩みを進めた。

魔王軍との戦いは完全勝利とは言えなかった。

アレンたちが、上位魔神たちとの戦いとこれからについて話をしている中、仲間の1人が花柱の中央で膝をつきうずくまっていたからだ。

「もう、大丈夫なのか?」

シアがアレンの状況を聞いた。

「そうだ。残党狩りはメルスに任せたからな。ボチボチってところだ」

分からないことも、知らないといけないことも多いが、今できることは全てやったとアレンは判断した。

「そうか。じゃあ、すまないがキール。ベク兄様を蘇生してくれぬか?」

シアは全身の血を抜かれ、水晶のような体になったベクの遺体を抱きながらキールにお願いした。

「ああ、もちろんだ」

キールはエクストラスキルを発動する。

「ああ、そんな……」

シアでも分かるほどの失敗だった。

キールのエクストラスキル「神の雫」は知力依存で成功確率が変動する蘇生スキルだ。

今のキールの知力なら、基本的に成功するのだが、遺体の破損がひどいと蘇生しない。

シアの声が漏れる中、キールのエクストラスキルを発動する中、ベクの水晶のような体は水の流れに細かく粉砕され、煌めく光となって消えていった。

(助からないのか)

邪神復活の贄にするような行動をキュベルがしていたので、ただの死ではないのかもしれない。

ベクの体のみが消え、背中から心臓部分に剣を突き立てられ穴の開いたオリハルコンの鎧が残った。

手元には獣王の証であるナックルと聖獣クワトロの腕輪が落ちている。

それを見て、完全にベクを失ったのかとシアは鎧を抱きしめた。

「すまない。もう少し方法はあったのかもしれない」

「いや。良いのだ。アレンは戦う上で、最良の方法をとった。余はそれを分かっていたぞ」

今回の魔王軍との戦いでアレンの仲間たちには、アレン軍や勇者軍、そして帝都パトランタの大勢の人たちがいる。

魔神や上位魔神に攻め込まれる中、バランスを守りながら戦ってきた。

もう少し早くメルスたち主力メンバーをこの花柱の上に呼べたら、ベクは助けられたかもしれない。

絶対に贄を殺すというキュベルの強い意志があったため、それで未来が変わったか分からないが、ベクの命よりも、他の者たちを優先したのは事実だ。

「ベク様はとても立派な方でした。最後の最後までシアのために戦っていたよ」

崩れ落ちたシアに話さないといけないことがペロムスにはあった。

ベクの雄姿と生き様の全てを語らなければならない。

「そ、そうか。話を聞かせてくれ」

(初めての魔王軍との戦いだが随分犠牲が出たな)

今回の魔王軍との戦いでアレン軍、勇者軍の共闘戦線を引いたのだが、相手軍は魔神、Sランク魔獣もいて、主にAランクの魔獣で構成された10万にもなる軍勢だ。

たった6200人の軍で戦うには厳しい戦いであった。

装備を固め、召喚獣による援護もあったが、それでも半日ほどの戦いで数百人の犠牲が出てしまった。

地上に戻ったら、総帥として先導した責任もあるので、しっかり英霊として葬ってあげなければと考える。

人類の希望として人々を先導してきたヘルミオスの苦悩が少し分かったような気がした。

「魔王が生まれて100年以上経ったのか」

犠牲を思い、アレンが魔王について口にする。

ローゼンヘイムの侵攻や邪神教の教祖の時も、数百万の死者を出した。

今回は大事なシアの兄であるベクと、アレンと共に戦うアレン軍と共闘戦線をしてくれた勇者軍に犠牲が出た。

犠牲を強いる魔王軍との戦いはどこまで続いていくのか。

「今回の件が全て1つの目的のためだったんなら、すごい執念を感じるわ」

アレンの言葉に、セシルは何が言いたいのか分かった。

「セシルもそう思ったのか」

アレンは魔王の存在の違和感がようやく分かった。

セシルの言葉で得心がいったとも言える。

(そうか、この世界の魔王は100歳かそこらなんだな。数千年生きた魔王ではないと)

アレンに対してガキみたいな発言をしていたが、この世界の魔王はとても若いようだ。

齢にしてアレンよりちょうど100歳年上の魔王は目的があって活動を続けていた。

前世の記録する魔王なら、既に魔王は完全な状態で存在し、世界を征服する寸前であったりする。

そこに勇者として誕生した主人公が活動するのが、いつもの流れだ。

どれだけ寄り道しようが、どれだけ装備を揃えたり、レベル上げに勤しんでも、ラスボスのいる城で待ってくれていた。

しかし、この世界の魔王は若く成長の途中で、目的も道半ばといったところなんだろう。

今日、恐らく魔王にとって大きな目的の1つである成長限界を捨て、ヘルモードになることができたようだ

(獣王国も連合国も攻めなかったのにも理由があった。プロスティア帝国も攻めなかったのも邪神復活のためか)

シアを見ながら、ローゼンヘイム、バウキス帝国を攻めるが、獣王国のあるガルレシア大陸や連合国のある大陸には攻めない理由があることを理解した。

アレンは世界地図と魔王軍の侵攻について学んできたが、何故魔王軍が3つの大陸だけを攻めているのか疑問であった。

魔王にとって2大陸を攻めないのは都合が良かった。

連合国で邪教徒を増やすために、あえて攻めなかった。

1人でも多くの邪教徒を集め、神器に魂を集める必要があった。

獣王国を攻めなかったのは、きっと贄を欲するために政治的な駆け引きをしていたからだろう。

神界に攻め込み、神器を奪い、2つの大国で内乱を起こし、贄を用意し、邪神を復活させた。

この結果、世界中で多大な犠牲を伴ったのだが、全ては魔王がヘルモードに至るための準備であった。

きっと横で助言をした者がいるのだろう。

(原始の魔神のキュベルがアドバイスをして、魔王をヘルモードにか。それでそのあと世界征服に乗り出すのか?)

魔王の全てが分かったわけではない。

法の神や調停神など分からないことも多く残った戦いであった。

「皆、まだ戦いの途中だ。今はまだこの場ですべきことがある」

「それって僕たちも手伝おうか?」

この場にいるヘルミオスが親切にも声をかけてくれる。

「ありがとうございます。ギアムート帝国としても参加した方がいいならですね」

「そういうこと、いうもんじゃないよ?」

政治的な理由もあったのだが、アレンに対する親切もあったようだ。

「ん? 何をするんだ?」

ドゴラは話についていけなくて、何をするんだと答えを求める。

「まあ、見ていてくれ」

アレンはおもむろにイグノマスのところに歩いていく。

「これは何が起きているのか?」

「魔王軍がどうも攻めてきたようです。水晶の花に封印されている怪物も復活させてしまった。そういうことです」

「ほう? それはどういうことだ?」

仲間たちが見つめる中、イグノマスとの会話が続く。

もっと詳細を話すようにイグノマスは言う。

「申し訳ありません。これ以上の詳細は牢獄の中で聞いてください」

アレンはミスリル製よりも強固なアダマンタイト製の鎖を用意した。

「ほう、それはどういうことだ?」

「内乱は終わり、あなたはこれから私に牢獄に入れられるのです。プロスティア帝国は本来のプロスティア家が治めることになります」

自分でお縄についてもいいよとアレンは言う。

「ほう、面白い。だが、プロスティア最強の槍の威力を貴様は知らぬようだな!!」

アレンの挑発に対して、プロスティア帝国最強の槍の一撃が放たれたのであった。