軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第431話 帝都パトランタ北部の戦い

アレンたちが帝都パトランタの水晶花の花柱の上で、上位魔神たちと戦っている中、もう1つの戦いが始まろうとしている。

ここは帝都パトランタの北門から30キロメートルほどの地点だ。

アレンたちのいる帝都パトランタの中心である花柱からは80キロメートルの場所にあたる。

ここにも水晶の花が海底に点在し光を放つが、帝都周辺ほど明るくはない。

魔王軍との戦いに備え、海底に壁を作ろうにも、ここは水深が果てしなく深い海の底だ。

海上まで100キロメートル以上もある。

この世界の海は全てこのように深いわけではないが、この帝都パトランタ周辺は特に深海の奥深くに存在する。

だから、壁は自らの部隊で立体的な陣を張らないといけない。

アレン軍と勇者軍の全軍だが、魚Aの召喚獣の覚醒スキル「擬態」と鳥Aの召喚獣の覚醒スキル「帰巣本能」によってやってきたメルル、ヘルミオスのパーティー、アレン軍、勇者軍は戦線を構築しつつある。

鳥Eの召喚獣を使い、魔王軍の全容を改めて確認すると、魔獣たちは1つの流れとなり帝都パトランタを攻めるようだ。

「ちょっと、初戦にしては厳しいんじゃない? 私もっと軽い作戦が好きよ?」

5大陸同盟以降に結成された勇者軍の主要メンバーの1人であるロゼッタは、アレン軍との共闘と聞いた。

S級ダンジョン攻略のために世界を巻き込んだあのアレンが指揮する軍との共闘だからだ。

まさか、いきなり魚人にさせられて海底で10万のAランクの魔獣と戦うなんて予想だにしていなかった。

「ふむ。それで、作戦はどうなっておるのだ?」

そんな不平不満なロゼッタの話を流しつつ、魚人になっても厳しい眼光は健在なドベルグは、改めて勇者ヘルミオスに作戦を確認する。

爵位が高いほど、指揮をする立場になるのがこの世界では普通である。

しかしドベルグは侯爵という地位にあるが、基本的に一兵卒としてでしか戦わない。

兵を指揮しないのは、魔王軍と戦うのはあくまでも個人的な理由が強いドベルグの生き方によるものだろう。

勇者ヘルミオスが、勇者軍の幹部、アレン軍の幹部、メルスやメルルから聞いた作戦を伝える。

「陣の構成はゴーレム隊を盾に、敵の数を極力減らす作戦かな。ああ、僕ら主力部隊が基本的に最前戦に出て被害をなるべく抑えようって感じだよ」

「なるほど。分かった。向かってくる敵を倒せばいいのだな」

アレンはメルスを通じて、ドベルグにはシノロムが出てきたら、なるべく殺さずに生かしておくよう努めると言ってある。

正直な話、50年以上前にいなくなったドベルグの妻クラシスが今なお生きているとは思えない。

ドベルグにはこれまでも随分お世話になった。

クラシス生存に関して協力できることには協力をする。

メルスを通じて、ドベルグにその旨伝えると「分かった」とだけ答えた。

今はヘルミオスのパーティーとして、この場での戦いに集中するようだ。

「あと、もう1つ、僕とドベルグはエクストラスキル使わないでだって。上位魔神に苦戦するかもしれないって」

「ん? 分かった」

アレンからはメルスを通じて、上位魔神戦のために、勇者ヘルミオスのエクストラスキル「神切剣」と、ドベルグのエクストラスキル「ガードブレイク」を取っておいてほしいと言われる。

勇者ヘルミオスからは「神切剣」が上位魔神であるキュベルに効かなかったことをアレンは聞いている。

しかし、念のために有効打の1つとしてとっておいてほしいとのことだ。

「ちょっと、こういう状況で、それはあんまりじゃない!! って、え? これってたしか!?」

ロゼッタはさらに悲鳴を上げる。

これまで見たどの魔王軍との戦いよりも、余裕がないことは明白だ。

冗談はよせと苦情を申告しようとしたところ、光るものが降り始めた。

「素晴らしいね。これが神の御業か。精霊神ローゼン様感謝します」

精霊神ローゼンはここから80キロメートルは離れた帝都パトランタの中心である花柱の上だ。

しかし、アレン軍、勇者軍全員に「精霊王の祝福」が降り注ぐ中、ヘルミオスが礼を言う。

『これは精霊神ローゼン様の御力によるものです。戦いに集中してください』

効果が始まった瞬間、アレンは改めて鳥Fの召喚獣『伝達』を使い、皆が混乱しないように言う。

なお、聖魚マクリスの「ロイヤルガード」は効果範囲対象外のようだ。

「敵が来るぞ、陣形を急ぐのだ!!」

ゴーレム隊のザウレレ隊長が、ゴーレムの中から拡声の魔導具で全軍に鼓舞をする。

ゴーレム5体から1体になる超合体をすると数が少なくなりすぎるので、今回は合体をしない。

だから、ミスリル級のゴーレム100体と、ヒヒイロカネ級のゴーレム1体だ。

それでもステータスはその辺のAランクの魔獣をひねりつぶすには十分なステータスだ。

なお、ゴーレム隊の部隊編成は以下の通り

・特殊用石板モード「ドルフィン」のヒヒイロカネゴーレム1体と、ミスリル級ゴーレム20体

・超大型ゴーレムはミスリル級ゴーレム80体

機動性のあるゴーレムと殲滅と仲間の防壁用の超大型ゴーレムに分かれた形だ。

ザウレレが操縦するヒヒイロカネゴーレムをモード「ドルフィン」にしたのは、ゴーレム隊全軍に指揮をし易くするためだ。

アレン軍、勇者軍も極力取りこぼさないよう、防衛線を維持しつつできるだけ広がっていく。

メルスは共同戦線の負担を減らすべく、陣形の壁役としての石Aと石Bの召喚獣を配置する。

そして、巨大な海竜などからなる敵陣の取りこぼしがないよう、かなり広い範囲で虫Aと虫Bの召喚獣を配置する。

既に虫Aと虫Bの召喚獣は産卵を終え、かなり広い範囲に広がる。

王化して300メートルの巨大な竜Aの召喚獣も敵陣の取り逃がしを防ぐつもりだ。

成長させた竜Bの召喚獣の特技や覚醒スキルのブレスは攻撃範囲が広いのだが、水中では有効ではない。

アレンはそれでも、少なからず敵の取りこぼしが出るだろうと考えている。

最後に戦うのは、帝都パトランタにいるイグノマス率いる兵たちだ。

海竜、サメ型、クラーケンのような巨体な海の魔獣たちがとうとう視認できるところまでやってきた。

狂暴な顔をした海竜は、一口で大きな船すらかみ砕けそうな牙をこちらに向けている。

敵を視認した魔王軍の魔獣たちがさらにスピードを加速させていく。

陣形が作られていく中、一切スピードを落とさない魔王軍と、アレン軍と勇者軍の共闘戦線がとうとうぶつかった。

『グルアアアアア!!!』

全長100メートルに達する巨大な海竜が、最前面にいたゴーレム隊にぶつかる。

水中でも衝撃波が生まれ、兵たちの体を圧迫する。

『踏みとどまるのだ。絶対に押し負けてはならぬぞ!!』

ピエール口調のザウレレ隊長の叫びに、ゴーレム隊は必死に巨大な敵を抑え込む。

さながら、海底で行われる怪獣と巨大ロボットの戦いだ。

Aランクの魔獣はステータスが3000~6000がほとんどだ。

体長100メートルにもなる超巨大化のミスリルゴーレムはAランクの魔獣のステータスを圧倒する。

・超巨大化のミスリル級ゴーレムのステータス

【体 力】 15000+900

【魔 力】 15000+900

【攻撃力】 15000

【耐久力】 15000+900

【素早さ】 15000

【知 力】 15000+900

【幸 運】 15000

この900というのは操縦するゴーレム使いのステータス増加のスキルだ。

ここにいるアレン軍も勇者軍もそうだが、職業のスキルレベルが4から5がほとんどだ。

今年の4月以降転職ダンジョンで転職を行い、現在11月だ。

日々、訓練を行っているが、2回目のステータス増加のスキルがもらえる職業のスキルレベル6にほぼ達していない。

魔王軍の方がゴーレムの行動に合わせて複数体にあたり、一気にゴーレムに襲い掛かる。

垂直に面上に交差させながら隊列を組んだのだが、数にものを言わせた魔獣たちによって押されていく。

『頃合いです。エクストラスキルを発動させ、敵陣を押し返して』

アレンが鳥Fの召喚獣を使い最初の作戦を行う。

押し込もうとする魔王軍と共同戦線の間で団子状になってきた。

魔王軍は10万体ということもあり、まだまだ長く魔王軍の大群は続いているが、十分な塊になった。

「「「はい!」」」

ゴーレム隊にへばりついた魔獣たちに対して、事前に指示をしておいた100人の精霊使いにエクストラスキルを発動させる。

100体にのぼる水の大精霊を顕現させ一気に押し返す。

エルフたちは星2つの精霊魔導士であったが、転職し星3つの精霊使いになっている。

エクストラスキルであること、指輪と首飾りで魔力を1万以上上昇させていることもあり、顕現した大精霊たちは圧倒的な力を持つ。

団子状態になってゴーレムにへばりついていた巨躯の魔獣たちを力業でゴーレムから引き離し何百メートルも押し返していく。

そして、続いて精霊使い100人がエクストラスキルを使い、風の大精霊を顕現させ、一気に竜巻となって魔獣たちを飲み込んでいく。

『裁きの雷!』

メルスは万に達するのではという水中に生じた巨大な竜巻の中心に向かって、覚醒スキル「裁きの雷」を発動する。

魔獣たちの群れは水生の魔獣で、特に雷属性の攻撃に弱い。

一気に万を超える魔獣を一掃した。

『おお、素晴らしい!!』

最前線で見ていたザウレレが感動する。

『油断しないように。敵将のお出ましです!』

アレンが鳥Fの召喚獣を使い諫める。

焼け焦げ、緩やかな水流に流され始めた魔獣たちの後ろから、それほど大きくない個体たちが前面に出てきた。

『ビルディガ様直属の配下だ。随分なことをしてくれたな』

虫型の魔神たちが悠然と出てくる。

『我らラモンハモン大将軍の配下もお忘れなく』

さらに、ラモンハモンの配下の魔神たちも出てきた。

魔神たちが姿を現し、中にはメルスの一撃で重傷を負ったものもいる。

そして、数百メートルにもなろう、Sランクの巨大な海竜たちも姿を現した。

今回やってきた魔王軍の中でも主力を張れるメンツなのだろう。

『貴様らが、この軍の指揮を執っているのか』

(ふむふむ、全部で13体か。それにしても、これはチャンスか。メルスゆっくりと前進して)

アレンがメルスを通じて、質問をする。

そして、アレンの指示の通り、全ての注意を引くかのように魔王軍に対してゆっくりと前進する。

『そうだ。帝都パトランタの魚人を使い、血の海に変えよとの仰せだ。残念だが、それだけの部隊で我らを止めれると思うな。我らはビルディガ様の……』

余裕で前進してきたメルスに対して、魔神たちがさらに能書きを垂れ始めた。

お前らなんか恐るるに足りないというメルスの態度が気に食わなかったようだ。

「「「エクストラアタック!!!」」」

『がは!?』

能書きが始まったことをいいことに、今度は投擲系のエクストラスキルを持つ自軍の兵たち100人に使わせた。

鳥Fの召喚獣の覚醒スキル「伝令」を使い、特に弱った魔神に狙いを合わせることを忘れない。

魔神がエクストラアタックで滅多打ちになり、灰となり死んでいく。

『き、貴様ら!!』

なんてことをするのだと、別の魔神が怒りを露わにする。

『よし、戦いは始まったばかりだ! 私が前面に出るので、陣を崩さずに戦いましょう!!』

「「「おおおお!!」」」

ヘルミオスも自軍を鼓舞することを忘れない。

今回の戦術のために、仲間たちのエクストラスキルも1割ほど消耗してしまったし、メルスも覚醒スキルを使用してしまった。

敵の出鼻をくじいたが、敵陣も1割削れたぐらいの結果だ。

それでも、今は何よりも士気を上げることが大事であることをヘルミオスも分かっているようだ。

仲間の魔神が話の途中でやられてしまい、魔神たちは激怒している。

帝都パトランタ北部の戦いは続いていくのであった。