軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第43話 晩餐

10月の中旬。10月になりアレンは8歳になった。

今日は領主が来る日だ。数日前に使者から、領主がやってくる日にちを伝えられた村長。その翌日には村長の使いがやってきて、ロダンやゲルダにその旨が伝えられた。

アレンは案内係をすることになった。領主にボア狩りの説明をしなくてはならない。更にその前日の晩餐では給仕をするという話だ。そこで狩りについて何か聞かれたら答えないといけないらしい。

朝早く支度をして、昼前には村長宅に向かう。なお、ロダンやゲルダは行かない。領主に農奴がそう簡単には会えない。

朝9時前に着いて、村長宅で待機(昼寝)する。

昼前に、村長宅で働く平民に起こされる。今から風呂に入り、身支度をしなさいとのこと。

(お? 風呂は初めてかもな。水風呂ならあるけど)

真夏の暑い日に、大き目の桶に水を溜めて全裸で入ったりすることがある。農奴なので、普段は石鹸もなしに濡れた麻布で体を拭くばかり。

しっかり温められたお湯の溜まった木桶に浸かる。お湯が冷めるまでじっくり入って体を綺麗にする。渡された服は平民でもあまり着ないような結構上等な服だ。

それから3時間ほど待たされる。起きて待っておくようにと言われる。

(いやまじで待たせ過ぎだ)

15時の鐘が鳴り、さらに1時間ほど待っていると、どうやら着いたようだ。家の中がかなりザワザワしている。

それからほどなくして領主が村長宅に入った。これから村長宅の広間で晩餐だ。晩餐と言ってもただの夕食とのことで、領主とその配下が食事をするだけだ。村長だけは村の代表として食事を共にする。

事前に村長から領主について聞かされた。

領主のいる街は領都グランヴェルという。ここから5日ほどの場所にある。これから給仕でお世話をするのはグランヴェル男爵だ。村まで5日掛けてやってきたことになり、結構お疲れだろう。

そんなことを考えていると出番が来た。村長宅の結構大き目な厨房が慌ただしい。どこから駆り出したのか5~6人の女性が料理を作っている。綺麗に盛り付けられた料理が並んでいく。

広間の入り口の扉の前に村長がいた。既に領主は広間にいるが、アレンは村長と一緒に中に入るらしい。村長がかなり緊張しているように感じる。

村長が先に入る。扉を入ったすぐそこで、ようこそいらっしゃいました。食事の準備ができましたといった話をしている。

「食事をお運びしなさい」

扉越しに村長から食事を運ぶよう指示される。

アレンが前菜から料理を運んでいく。テーブルは中央に1つだ。

(一番奥にいるのが、領主かな)

お誕生日席の一番奥に領主が座っている。薄紫色の髪をした、鷹のような目の男だ。厳しい目つきだ。40代半ばだろう。

顔をジロジロ見ないようにして、一番奥に座る領主から無言で皿に盛りつけた食事を運んでいく。

どんどん料理を運んでいく。広間の入口の前まで板に乗せて用意されている。厨房まで戻る必要はない。入口とテーブルを往復する。皆も運べばいいのにと思うが、アレンだけが給仕の担当だ。

(領主から運んで、村長入れて6人か。ん? 子供までいるぞ? 領主の娘か?)

順番に運んでいく。領主と思われる男、その横の執事っぽい白髪で髭の男、クレナに会いに来た騎士団長と副騎士団長。

そして、領主の隣には領主と同じく薄紫の髪をした女の子が座っている。アレンと同じくらいの歳に見える。

「それにしても、村の開拓ご苦労であった」

「あ、ありがとうございます」

領主が村長にねぎらいの声をかける。

「領内開拓令が出て15年。我が領ほど開拓に成功した例はないぞ。デボジよ。村人をまとめ上げよくぞここまで発展させた」

(領内開拓令? なんだそれ?)

領主が村長を褒める中、アレンは会話に聞き耳を立てる。明日のボア狩りまでに必要な情報が飛び出てくるかもしれないからだ。

「皆、領主様のため、努めてまいりました」

ぺこぺこする村長だ。前菜にほとんど手を付けていない。とても食事どころではないようだ。

「ボアの肉については本当に済まなかったな。これは国王陛下の命であるからな」

(ん? 国王がボア狩りしろって言っているの? 随分話が大きくなってきたな)

ボア狩りの話になったのでさらに聞き耳を立てる。給仕もしながらなので大忙しだ。

「こ、国王陛下の御命令であったのですね」

「まあ、そうだな。まあ厳密に言うとカルネル卿のせいであるがな。カルネル卿め、わざわざ謁見の間でボア狩りに触れおって、おかげで……」

思い出したかのように怒り出す領主だ。目つきがさらにきつくなる。態度が豹変して怯える村長だ。脂汗が額や頬から浮き出ている。

「旦那様、村長が怯えております。それに目標の20体を達成すれば、また旦那様の評価が上がるというものです」

領主を見ることなく、執事っぽい60近い男が口を挟む。

「ぬ? そ、そうだな。デボジ村長よ、すまなかったな。ボア狩りが国王の耳に入ってしまってな。もっと増やすように言われたわけだ」

「そうであったのですね」

掻い摘んでボア狩りの数が増えた事情を話す領主。

そこに、メインディッシュのお肉を持っていく。領主から順番に皿を置いていく。

「む! なんだこのうまい肉は!!」

「ほ、本当に美味しいですわ!!」

領主とその娘が美味しいと目を見開き驚く。

「これはなんだ? 村長よ」

よほど美味しかったのか、村長に尋ねる。

「え? あ? えっとこれは……」

いきなり聞かれて言葉に詰まる村長。

「こちらは、アルバヘロンの肉にてございます。昨日たまたま捕まえましたので、領主様のために献上をした次第でございます。部位は胸、モモ、肝でございまして、香草を使って風味付けをしております」

「ん? おおそうか……」

言葉に詰まった村長に代わってアレンが答える。

一気にアレンに皆の視線が集まる。真っ黒な髪と目をした少年が給仕をしていたので、気にはなっていた領主たちだ。

視線に気づいたアレンが、軽く会釈をして、食べ終わった皿の片付けをする。6人しか座っていないが、1人で給仕をするのでとても忙しい。せかせかと広間と入口を往復している。

「さすが村長よな。良くできた息子を持っているではないか。聞いておらなんだぞ」

「へ? えっと、この子はロダンという者の子でございまして……」

しっかりした子がいるなと言う領主。自分の子ではないと否定する村長。

「ロダン?」

「おお、思い出しました。御当主様、その子はロダンというボア狩りのまとめ役をしている者の子でございます」

騎士団長が思い出したようだ。2年前に騎士団長とは宴会で同じ席になった。

「ボア狩りのロダンの子か?」

「はい、ロダンの子のアレンと申します。明日はボア狩りの案内をさせていただきます」

領主に声を掛けられたので、挨拶をする。

「ロダンは騎士の崩れか何かであったのか? 随分立派な子を持っておるな」

「い、いえ、親の代から農奴であったはずです」

子の行儀がいいからには、父のロダンは、元は騎士か何かであったのかと尋ねる。村長はロダンの父も知っており、そんなことはないと言う。その時である。

「え!? この広間に農奴がいるの!!」

領主の娘と思われる女の子が、農奴が広間にいることを知って嫌悪感を示したのだ。綺麗な顔を歪ませてアレンを見ている。

「な!? セシル、農奴も立派な我が領の民だ! そんなことを言うものでないぞ!!」

思わず声を荒らげる。

「も、申し訳ございません。お父様」

涙目で謝る領主の娘セシル。そして、

キッ!

(うは、なぜかめっちゃ睨まれている件について)

お前のせいで父に怒られただろと言わんばかりに、アレンを睨む。親譲りのやや吊目がちな強気な目で睨まれる。深紅色の瞳は、今の感情を表しているようだ。あまり目を合わせないように視線を外すアレン。

「それで、アレンよ」

「はい、領主様」

領主がまたまたアレンに話しかける。

「明日は、ボア狩りを案内してくれるというのだな」

「はい」

「狩り方についても、しっかり説明をしてくれ」

「では、そのようにさせていただきます」

「ゼノフも、しっかり聞くのだぞ」

「は!!」

騎士団長が返事をする。騎士団長はゼノフという名前だ。

(ん? 騎士団長がよく聞く? どういうこと?)

アレンの顔に疑問符が浮き出る。

「ロダンの子よ。今回の討伐数20体は絶対に達成せねばならぬ。王命だからな」

アレンに話しかける騎士団長だ。アレンの疑問に答えてくれるようだ。アレンも騎士団長に顔を向ける。

「はい」

「見学した結果、達成が難しそうだったら、我ら騎士団も参加することになる」

(え? 見学に来ただけではないと)

ようやく領主が来た理由が分かった。今年必ず討伐数20体が必要だ。去年15体の討伐は達成した。しかし必ず今年20体狩れる保証はない。

領主は必ず達成できるか心配なのだ。

王命を果たすために騎士団を率いて、ボア狩りに来た。

「そうであったのでございますね」

村長も事情が分かった。納得してうなずく。

「領主様」

そこにアレンが言葉を発する。

「どうしたのだ? 大丈夫だ。しっかり説明をしてくれれば、後は騎士団がうまくやるからな。何も心配はいらぬ」

狩り方だけ教えてくれたらいいという領主だ。

「いえ、領主様。たかだか20体でございます」

「ぶっ!?」

アレンの言葉に噴き出す村長だ。領主も騎士団長も目を見開く。

「明日のボア狩り、クレナ村が一丸となれば、目標の20体は確実に達成できることをお見せします」

6人の視線が集まる中、頭を下げ断言した。そこには怯えもためらいもない。

あまりにはっきり言うので、息を飲み誰も返事が出来なかったのであった。