軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第403話 属性①

アレン軍を構成する獣人、エルフ、ダークエルフ、ドワーフだが、それぞれの種族に特性がある。

獣人は近距離戦闘、エルフは回復魔法とバフ、ダークエルフは攻撃魔法とデバフ、ドワーフはタンクが得意だ。

これだけ役割に富んでいると戦闘をする上で柔軟な作戦が立てられ、アレン軍を動かしていく上で十分な構成だとアレンは考えた。

そんな中、5大陸同盟の会議が終わって少し経って、勇者軍構想について、ヘルミオス本人から通信の魔導具を通じて話を聞いた。

ギアムート帝国はかなり本気のようで、かなりの予算と人材を投じると言う。

これからアレン軍がどのように大きくなるか分からないが、勇者軍にはアレン軍の足りない部分を補ってもらうのが最良ではと判断する。

ギアムート帝国が威信をかけて用意するという中で、アレン軍に足りないものは何か考える。

アレン軍と勇者軍は連携して魔王軍と戦う未来を見据える。

アレンがヘルミオスから聞いた時、頭に浮かんだのは、ヘビーユーザー島の神殿で邪神教の教祖グシャラとの絶望的なまでに追い込まれてしまった戦いだった。

その時の考察を元に、ヘルミオスにアレン軍の状況を説明したうえで、勇者軍に「付与使い」を多く入れてほしいとお願いした。

付与使いとは、主に属性変更を専門に使い、さらにデバフ、バフも使いこなせる補助職で、才能の星の数によって以下の職業がある。

・星1つの付与魔法使い

・星2つの付与魔導士

・星3つは付与大魔導士

・星4つは付与魔導王

ヘルミオスは勇者軍の全軍を指揮する立場にある。

ヘルミオスはアレンの構想を理解し、最初の1000人の勇者軍の兵の300人は、転職を済ませた星4つ数名と大半が星3つの付与使いにした。

「耐久属性を風にしたのは右のゴーレムです」

地響きを立て、並走して向かってくる2体のアイアンゴーレムの右側の耐久属性を風に変えたと付与魔法隊の隊長ロホメットは言う。

「じゃあ、ドゴラとクレナは右だね。僕は左を固めるよ」

「ああ、分かった!」

「うん。1体任せた!」

全身の鎧と大型の斧を2本持つドゴラの装備は数百キログラムに達する。

そんな重さも感じさせない勢いで耐久属性を風に変えたアイアンゴーレムに突っ込む。

「タムタム降臨、モードエレファント!!」

腕を一本鼻先から突き出した、「雄々しき象のポーズ」を決めたメルルが特殊用石板でモード「エレファント」に変形したタムタムに乗り込む。

『……』

ガアアアアアン!!

タムタムに合わせるようにぶつかるアイアンゴーレムによって、鉄の間全体に金属音が鳴り響く。

「うりゃああああ!!」

アレンの分析では、アイアンゴーレムの全ステータスは22000程度だと考えている。

既にスキルレベルをカンストさせたメルルが動かすタムタムの力はアイアンゴーレムを圧倒する。

【名 前】 タムタム

【操縦者】 メルル

【ランク】 ヒヒイロカネ

【体 力】 25000+12400

【魔 力】 25000+2400

【攻撃力】 25000+12400

【耐久力】 25000+7400

【素早さ】 25000

【知 力】 25000+2400

【幸 運】 25000

職業レベルが6に達したおかげで体力、魔力、攻撃力、耐久力、知力が2400増加した。

そしてステータス5000増加する強化用石板を体力と攻撃力に2つずつ、耐久力に1つ魔導盤にはめる。

特殊用石板(象)は石板の枠5つ分だ。

5つ分にしても問題のない特殊能力がこの特殊用石板(象)にはあった。

ヒヒイロカネゴーレムの石板は、ミスリルゴーレムに比べても特殊用石板、移動用石板の能力の幅が広いとアレンは感じている。

ただ空を飛んだり、砂地を走ったり、海上を移動するのは移動用石板だ。

なお、特殊用石板は、移動用石板以上の付加価値があり、移動以上の効果をもたらす。

ドバババババ!!

アイアンゴーレムの耐久力を圧倒する攻撃力で殴ったため、胸部分をタムタムに殴られ大きく粉砕された。

そのまま後方に吹き飛ばされたが、それでも立ち上がろうとするアイアンゴーレムに対して、象の姿に形を変えた、タムタムの鼻先から大量の泥を噴射させる。

全身を泥で覆われ、さらにドバドバと泥を浴びるアイアンゴーレムの動きが直ぐに悪くなっていく。

泥が凄い勢いで固まり始めた。

泥を浴び続けるアイアンゴーレムは拳を振り上げる格好のまま前にも進めなくなってしまう。

この特殊用石板(象)は防壁や要塞を簡易に作るための、速乾性の泥を出すことが本来の使い方のようだ。

魔力を大量に消費するが、その泥が固まった時の硬度は、扱うゴーレムの耐久力に依存する。

アイアンゴーレムの攻撃力では、耐久力32400のタムタムが放つ硬化した泥から、抜け出ることは出来そうにない。

アイアンゴーレムがもがき続けるまま、一気に固めてしまった。

「メルル1人で1体の動きを封じちゃったじゃない」

「うん。会議での話のとおりだね」

呆れながら言うロゼッタが状況を理解する。

キールの話を聞いてもイメージしにくかったが、ヘルミオスは朝の会議の状況を再現してくれてようやく理解した。

「真殺戮撃!!」

そんな中、もう1体のアイアンゴーレムに対してドゴラのスキルが抜群の威力を発揮した。

「ああ、あの巨大なゴーレムが後ろに倒れ込むぞ」

ドゴラの一撃で片足を粉砕され、アイアンゴーレムが後ろに倒れ地響きを鳴らす。

そのままほぼ一方的にドゴラとクレナでアイアンゴーレムをボコボコにする。

「おおお、あの巨大なゴーレムをたった2人で」

ロホメットから声が漏れる。

アイアンゴーレムはこの大きさならSランクの魔獣に相当するはずだ。

それを造作もなく2人で追いこんでいく。

不安になってヘルミオスに視線を送る勇者軍の者たちも多い。

これが本当であるなら史実に名を残すほどの力を持っていることになる。

「ドゴラよ。これほどの力を手にしていたのか」

片目を失い隻眼となった眼差しでドベルグがドゴラを見つめる。

S級ダンジョン攻略中はどこか焦りのようなものがあったが、今朝の会議ではそんなものは一切感じられなかった。

その理由が何か分かった気がして、片目を閉じ感傷に浸る。

なお、ドベルグの隻眼は魔王軍との戦いで失ったのだが、アレンたちとS級ダンジョン攻略中に天の恵みを使っても、転職しても治ることはなかった。

何でも、魔王軍が使ってきた「呪い」の効果らしいが、ドベルグ自体もよく分かっていない。

「すみません。まもなく1体目が終わりそうです。前衛の皆さんは持っている槍をゴーレムに投擲してください。付与使いの方は付与をとりあえずかけて」

そう言ってキールが次々に勇者軍に対して指示を始める。

どれだけの時間でアイアンゴーレムがやられるのか分かる。

まだレベルが上がり切っていない勇者軍の者たちに経験値は配分しないといけない。

「分かった」と思い思いに槍を投擲したり、もう一体のアイアンゴーレムに対して付与魔法をかけたりする。

回復魔法を使える者は、ドゴラたちがほとんど怪我を負っていなくても手厚い回復魔法をかける。

それから何分も経たないうちにメルルも戦闘に参加して3人で動ける方のアイアンゴーレムをボコボコにして倒してしまった。

「ち、力が、一度にこれほどの力が」

「2体で確実に神の試練は全て突破するはずです。スキルについても使用をお願いします」

「う、うむ」

今回、勇者ヘルミオスが連れてきた勇者軍は、1000人の中でもさらに将軍格や隊長格であったりと、これから勇者軍が大きくなっても幹部となる者たちだ。

魔王軍との戦争についても最前線で自国を守るため10年以上戦ってきた者たちがほとんどで、歴戦の戦士であるという自覚がそれぞれにある。

Sランクの魔獣に相当するアイアンゴーレムをたやすく屠り、神の試練を越えるために利用する。

そんな冗談みたいなことが目の前で行われている。

「じゃあ、朝の部、昼の部、夜の部に分けて勇者軍も参加するってことでいいのかな?」

「それでお願いします」

ドゴラとメルルに戦闘を任せて、キールとヘルミオスの打合せが続いていく。

今回、ヘルミオス率いる勇者軍を連れてきたのは、明日以降行われるアレン軍、勇者軍の混成での訓練をどうやって行くか、実戦も見せつつ話し合うためだ。

アイアンゴーレム狩りは朝8時から3時間、昼12時から開始3時間、夕方16時開始から3時間の3部構成でやってきた。

元々アレン軍も3部構成でやってきたことに、勇者軍のメンバーが加わる。

2階層、3階層、4階層でのメダル狩りについてもアレン軍と勇者軍の混成でやっていく。

「それにしても、すごい勢いだね」

「はい。付与魔法が効いているお陰で、倒すのがさらに速いです」

元々アイアンゴーレムを圧倒するが、今日はそれ以上に速いとキールは言う。

「僕も付与使いを1人、パーティーに入れるかな」

ドゴラの攻撃の威力が高いのは攻撃属性が火の属性の神器カグツチと、耐久属性を風に変えられてしまったアイアンゴーレムの攻撃の相性が抜群に良くなったからだとヘルミオスは推察する。

10人で構成されるヘルミオスのパーティーに「付与使い」を入れる構想を考える。

「アレンの話では、属性を変えるにはかなり高い知力が必要だとか。転職してもステータスで足りない部分は装備で補うべきだそうです」

そんなヘルミオスに対して、アレンの考えをキールは伝える。

「なるほどね。これは魔神やSランクの魔獣も想定してのってことだね」

「もちろんです。当然要塞戦での竜種などAランクの中でも上位の魔獣が攻めてきた場合も想定しています」

「作戦の形が変わるのね」

付与魔法は確かに有効であるが、効果が当たらない魔獣も多かった。

知力の高い魔獣も多く、安定して付与魔法を当てるならAランクの魔獣なら、知力を1万超える必要がある。

Bランクの魔獣なら、そもそも付与魔法に頼らず倒すことができる。

これまで戦術に取り入れても、有効に使える範囲は限られていた。

魔王軍にAランクの魔獣が出てきたとき、決めていた作戦のとおり速やかに耐久属性を変更し、速やかに倒すことができるなら、自軍の被害は最小限に抑えることができるだろう。

確実に当たるのであれば戦術の幅が広がる。

作戦や指示系統に組み込む必要があるが、形にするのはそこまで時間はかからないだろう。

既にこの会話中にも、復活したアイアンゴーレムがまた倒れ、どうやら全員レベルが既にカンストしたようだ。

これは転職によるステータスの底上げ、S級ダンジョンによる豊富な装備品の活用が必須の作戦だ。

「新しいダンジョンが追加されただけでこうも世界を変えようとしているのか」

「ドベルグさん、感傷に浸り過ぎだよ」

「うむ、そうであったな。まだ感傷に浸るのは早過ぎるわ」

ヘルミオスの言葉を代弁するようにドベルグが自らを律する。

ドゴラやクレナ、メルルの戦いを見ながらまざまざと感じたようだった。