軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第339話 魔神討伐会議

アレンたちと獣人たちでこれから魔神討伐の会議を行う。

天幕の中で四角に囲んで座った中に、石や木を使った簡易的な地図をアレンは見る。

ここは王都の近くの外壁だが、外壁を越えたすぐそこに神殿が配置されている。

水の神アクアを祀る神殿があり、光の柱はそこから伸びている。

既にパーティーとも霊Aの召喚獣やメルスを通じて話し合いをしてきた。

シア獣王女にも同じく、光の柱の伸びた先には魔神がいることも伝えている。

「それで、魔神ですが……」

「すまないが、少し待ってくれ」

(あんだよ?)

「ん?」

アレンがどうかしたのかという視線をシア獣王女に見せると、アレンに上座を譲ったソフィーを見る。

どうやら会議を始める前にソフィーに何か用事があるようだ。

「余はアルバハル獣王国のシア=ヴァン=アルバハルだ。同じ王女として、今回の作戦よろしく頼む」

大国の王女ということもあって、一言挨拶がしたかったようだ。

「はい。ソフィアローネと申しますわ。アレン様のようにソフィーとお呼びください」

「そうか。余のこともシアと呼んでくれて構わない」

シア獣王女はそう言いながらもソフィーの放った「アレン様」という言葉に引っかかる。

ギアムート帝国から出て行った獣人たちが建国したアルバハル獣王国は、ギアムート帝国と同じような階級や制度を取り入れている。

身分制で違うのは、ギアムート帝国からの自由を求めて出て行ったため、移動制限や職業制限のある農奴がアルバハル獣王国にはいない。

奴隷は犯罪奴隷しかおらず、奴隷に世襲制はなく、奴隷の子は奴隷ではなく平民だ。

王国に生まれたシア獣王女に違和感が生じる。

ソフィーが自分は呼び捨てでよいというのにアレン様と呼ぶ。

シア獣王女はアレンについて、本国であるアルバハル獣王国にあれこれ確認させている。

中央大陸のギアムート帝国の南に隣接しているラターシュ王国という小国の出身であること。

ラターシュ王国では平民であったが、ローゼンヘイムでの戦争に活躍して、参謀という立場に立っていること。

次期女王と呼び声の高いソフィーが、上座を譲る存在か。

なお、アレンにはシア獣王女は親しみも込めて「シア様と呼べ」と言ってしまっている。

本来であれば、シア獣王女を呼ぶとき、一般的には「シア獣王女殿下」のところ、共同作戦を取るということもあって、「シア様」と親しみを込めたつもりであった。

「シア」にすべきか迷ってしまう。

「そろそろ始めてもよろしいのでは?」

「そうだな」

アレンが「これは何待ち状態だ?」と口にしようとしたが、ルド隊長の方からそろそろ始めましょうという声がかかる。

シア獣王女が考え事をしているが、身構えてしまっているのはシア獣王女だけではない。

隊長、副隊長、各部隊の部隊長までここにおり、世話役等のため何人か兵も参加しているのだが、アレンの仲間たちに圧倒されている。

まだ始めないのとクレナがガン見しているのはシア獣王女だ。

そんなクレナのアダマンタイトの大剣は肩から外して地面に置いている。

ソフィーもおり、これから一緒に作戦を考えるということもあり、武器は回収していない。

圧倒的な装備と、アレンの仲間の誰1人も獣人たちにもシア獣王女にも臆する者はいない。

シア獣王女に選ばれ、邪神教の教祖も命を懸け狩ったという自負が獣人たちにある。

才能が有り、自分らはシア獣王女に選ばれたと。

しかし、アレンのパーティーを見るとそんな自負が揺らぎそうだ。

「それで、あの先にある神殿に魔神がいるのだな」

シア獣王女の同意を得たので、ルド隊長が話を進める。

今回の魔神討伐にシア獣王女も加わることになっている。

「そうです。既に様子は確認済みです。確実に1体の魔神が祭壇の前にいます」

アレンは5日間かけて邪教徒の討伐をしながらも、鳥Aの召喚獣を使ってその様子の確認と、神殿にいくつか巣の設置を済ませている。

祭壇の前には今も1体の魔神が座っていることを共有した鳥Aの召喚獣が捉えている。

この会議が終わると、そのまま魔神のいるところに向かって転移する予定だ。

このシア獣王女の部隊だが、どういう構成で出来上がったのか、この5日の間でルド隊長に聞いた。

ルド隊長の話では、シア獣王女のお目付け役兼、戦いの指南役として5年ほど前からの仲らしい。

いわゆる世話役がそのまま、シア獣王女率いる部隊の隊長となった。

ラス副隊長は、傭兵であったところを高く買って、自らの部隊の副隊長に数年前に抜擢した。

どうやら、シア獣王女の私兵がそのまま大きくなったような部隊のようだ。

本格的な騎士ごっこが1つの部隊になったような構成のようだ。

シア獣王女の才覚なのか、獣人たちは皆本気で部隊に参加しているように思える。

「ふむ」

その返事にルド隊長が返事をし、何かを考えこむ。

この輪になったアレンのパーティーにシア獣王女、ルド隊長もラス副隊長も参加している。

仲間を結集させて魔神討伐をする予定であると伝えると、「そうか、余も行くぞ」と言われた。

たとえクレビュールの王国にいる邪教徒や魔獣の殲滅に協力しても、魔神戦に参加したのとしないのでは、シア獣王女の立場や今後に影響が出ると思ったようだ。

「それで少数精鋭での戦いということか?」

「はい。基本的に私たちのパーティーと、シア様率いる獣人パーティーの2パーティーでの討伐です」

アレンははっきりと力不足であること、例えば2000人の獣人たちが戦闘に参加した場合、エルマール教国の魔神ならその兵たちを1時間もかからず殲滅できると伝える。

これでは、討伐の邪魔になると言わざるを得ない。

戦いには、その作戦に必要で丁度良い人数がいる。

この大陸が落ちれば、次は獣王国が同じ目に遭うかもしれない。

死ぬ覚悟がどうもあるようだが、それと作戦成功は別物であるため、納得してもらった。

才能が星3つ以上のものは何人いるか、剣聖や槌聖を例えにシア獣王女に問うと4人しかいないと言われた。

その4人にシア獣王女を加えた5人のみが今回の参加者だ。

星3つの拳聖、シア獣王女

星3つの槌聖、ルド隊長

星3つの弓聖、弓部隊カム部隊長

星3つの霊媒師、補助部隊ゴヌ部隊長

星3つの巫女、回復部隊セラ部隊長

猿の獣人ゴヌ部隊長の霊媒師は、さまよえる死霊を呼び、敵を弱体化したり、味方を強化してくれるらしい。

バフとデバフの両方ができる貴重な職業のようだ。

巫女は、聖女に近い職業と思われる。

シア獣王女は3000人の兵を獣王陛下から与えられ邪神教の教祖討伐を命じられたという。

獣王国は魔王軍との戦いに参加していないため、才能有りは中央大陸に比べたら結構いるという。

そんな才能もバウキス帝国の危険なS級ダンジョンでの出稼ぎで消耗させているのが現状だ。

それでも星3つや星4つの才能はそうそういない。

星1つが2500人、星2つが500人、星3つが隊長、部隊長級合わせて5人という構成だ。

邪教徒の討伐及び、クレビュール王都からの撤退作戦で既に1000人ほどの兵が、星の3つあった部隊長の1人を含めて死んでいる。

ラス副隊長は槍豪で星2つのため、神殿での魔神との戦いに参加させない。

本人曰くかなり不承だが、納得してもらった。

ゼウ獣王子にも聞いたのだが、獣人は貴族や平民など生まれに関わらず、才能はランダムで生まれてくるという。

「基本的にシア様の作戦で、シア様も含めて5人で動いてほしいです」

今回獣人4人が加わったが、獣人たちには5人で1つのパーティーとして動くように言う。

前衛2人、中衛1人、補助1人、回復1人で構成的にも丁度良いという判断だ。

「完全にパーティーを分けて動くということだな」

「そうです。いくつか、お互いのパーティーの動きについて決めておきましょう」

戦い方について、共通認識を持とうという。

アレンは、たぶんシア獣王女がついてくるだろうと見越して、シア獣王女や隊長格の動きは見てきたつもりだ。

集団戦とパーティー戦で動きも違うだろうからその辺りの調整や注意点についても、相手が王女であっても気にせず語る。

「「……」」

ルド隊長とラス副隊長は黙って聞いている。

アレンの作戦は当たり前のようで、かなり洗練されている。

パーティー単位としても個別の前衛、中衛、後衛単位の視点としても完璧だ。

どこで引くのか、どの動きが起点になるのかについて語っていく。

既に獣人5人の動き、できること、できないことを把握している。

5日間の共同作戦による邪教徒と魔獣討伐時に既に、今回の作戦が視野に入っていないとできない芸当だ。

少なくとも10年は戦いに身を置かないと分からないことをアレンは語るのだが、この若さで何を考えて生きていればこのような存在に至るのか。

「英傑の類であったか」

シア獣王女も同じ考えに至ったようだ。

「ちなみに、シア様は獣王化できますか?」

「できたことはない」

「分かりました。できればお願いします」

その言い方からすると、成功したことはないということだろう。

できないとは言わないようだ。

アレンたちが邪神教の教祖グシャラとの戦いに臨んでいる間、中央大陸、ローゼンヘイム、バウキス帝国近海での魔王軍との戦いは今が一番の佳境に入っている。

他の大陸から、勇者ヘルミオス率いるパーティー「セイクリッド」やゼウ獣王子率いる十英獣を呼ぶ余裕はないだろう。

同じくガララ提督も難しい。

「あとは、やりながら慣れていきましょう。どうしても敵わない。連携もうまくいかないなら撤退も視野に。最悪、神殿ごと破壊します」

神殿ごとの範囲には王都も含まれる。

少なくとも王城は消し飛ぶだろう。

「分かったわ」

アレンのソフィーとは反対側に座るセシルが出番ねという。

「あくまで、最悪ね」

(マクリスの聖珠を手にしたセシルの力は王都も崩壊しそうだからな)

神殿は国王が王権を民に知らしめるために、王都近郊に設けられている。

そして、神殿の先には港町があり、そして海へと至っている。

その大海原の海底にはプロスティア帝国が存在する。

水の神アクアに祈りつつ、プロスティア帝国に頭を下げる形になっている。

「分かっているわよ」

(いや、たぶん神殿だけじゃすまない威力になっているぞ)

「無理そうなら逃げますので、進退についても判断を合わせてくださいね」

そう言いながらも、敵わないと判断したときの作戦をかなり丁寧に説明する。

今回は急遽シア獣王女率いるパーティーとの共同作戦のため、負けた時、敵わなかった時の説明の方を長く説明する。

最初は、敵わなかった時のことを考えるのかと獣人たちは思ったが、その作戦にアレンのパーティーは真剣そのものだ。

誰も殺されずに作戦を遂行する。

命を懸けることより難しいことを仲間たちは知っている。

「最悪魔神と獣人との乱戦になるかもしれません」

「もちろんだ。それでも構わぬ。皆、覚悟ができているからな」

作戦におけるシア獣王女の許可を得る。

さらに、1時間以上かけて細かい作戦について話をする。

こうして、魔神狩りに向けてアレンたちはシア獣王女のパーティーと共に光の柱のある神殿に向かう。

「では行ってくるぞ。ラス副隊長よ。あとは任せたぞ」

「は!」

ラス副隊長が力強く返事をすると、シア獣王女も鳥Bの召喚獣に乗り込み神殿に向かって移動する。

その王都を越えた先にある神殿の前に移動する。

一応、予備で魔神目前も転移先として「巣」を登録しているのだが、魔神とは会話をしなくてはいけないことが多い。

情報収集も大事であるということだ。

神殿の水の神アクアの像が入口にあるが、首から先がない。

鋭利なもので切り落とされている。

頭が無表情に地面に落ちて2つに割れている。

1階が高くなった構造になっており、階段を上がり建物の中に入る。

神殿の構造はクレビュール王家に確認している。

簡単な図面ではあったが、魔導書に記録済みだ。

すぐに広間に到着する。

神殿は神を祀る儀礼的な役割しかないので、シンプルな構造になっている。

中央奥には、光の柱が祭壇から噴出している。

この祭壇はエルマール教国のテオメニアの神殿にあったものと同じものだ。

「「「……」」」

アレンたちはその祭壇を一瞥しかしなかった。

目の前に1人の男が胡坐をかいて座っていたからだ。

この5日間ほとんど動かずにその男は座っていた。

全ての意識をその男に集中させる。

目の前に2本の大剣が大理石の床に突き立ててある。

赤褐色のくすんだ色をした短髪の髪をした半裸の男で、筋肉が隆起している。

完全に前衛スタイルだなとアレンは判断する。

『遅かったなぁ。こっちには来ないものかと思ったぞ。お前がアレンかぁ?』

何か間の伸びた口調だなと思う。

アレンたちの到着に反応する。

既にアレンのことは知っているようだ。

「そうだが、お前がこの祭壇を守る魔神か?」

(獣人から魔神になったタイプと思ったのだが。ん? だが、この感じは?)

アレンは今回の魔神は猿かゴリラの獣人が魔神になったと思っていた。

鳥Aの召喚獣から見たら、獣っぽさがあった。

しかし、会話をしていると何か違和感がある。

魔神はアレンの言葉にさらに反応する。

ニヤリと笑った顔をアレンに向けるが、目には白目がなく赤褐色に染まっているのが不気味に見える。

『お前ね。最近の若い者は先輩に対する口の利き方がなっていないなぁ。まあ、それは俺も同じだがな。これはお仕置きが必要だぞ。いひひ』

自分も敬語は使わないタイプであると公言しながらも、お仕置きはすると言う。

かなりふざけた性格のようで怒ってはいないようだ。

「先輩? お前がか?」

『そうだ。人間だった頃は修羅王バスクと呼ばれていたんだが? アレン、お前は知っているかぁ?』

そう言って、白目のない赤褐色の目をアレンに向け、ニヤリと笑ったのであった。