軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第321話 チームソフィー① 西へ

メルルのミスリルゴーレムであるタムタム「モードイーグル」は西へ向かって飛び続ける。

タムタムの下には光の柱が進行方向に水平に伸びているのだが、その先は西の彼方になっており終わりは見えない。

既にもう何時間も西に飛び続けているのだが、どこまでも伸びている。

少し広くなった操縦室に3人と数体の召喚獣がいる。

「外は寂しい感じになりましたが、まだまだ続きますわね」

外を見ながらソフィーは言う。

連合国のある大陸は、中央付近には大きな山脈もあり森が広がっていたのだが、この辺はずいぶん乾燥した大地のように思う。

木の数もまばらな乾燥した大地は、進むにつれて変化していく。

段々、緑の消えていく自然の先に何があるのかと思いながら光の柱の先を思う。

その先に希望はあまり残されていないだろうとソフィーは顔を曇らせる。

「うん、このままの速度だと、明日の朝には大陸の端まで飛んじゃうかな」

ソフィーの発した言葉は独り言に近かったのだが、この場に話しかける相手は少ない。

自分に話しかけられたと思い、メルルは操縦席の前面に表示している連合国の大陸用の地図に表示されたタムタムの位置を見ながら言う。

ここには、メルル、ソフィー、フォルマール、そして鳥Aと霊Aの召喚獣がいる。

チームアレンとチームキールのメンバーは、この連合国のある大陸の中央で別行動を開始したためにいない。

3チームに分けたうちの2チームは鳥Bの召喚獣に乗って出て行ってしまった。

なお、タムタムの外には虫Aの召喚獣たちが親ハッチと子ハッチを生んで後ろからついてきている。

エルマール教国で活動していた獣Aと霊Aの召喚獣を仕舞ったお陰で、召喚できる枠が空いたからだ。

元々はエルマール教国にいるすべての魔獣の殲滅のために、30体という召喚枠の結構な部分を割いていたが、新たな光の柱を3本知ったため状況は変わった。

十分に増えた親ハッチ、子ハッチ、そして使役されたAランクの魔獣に、エルマール教国内の殲滅を担当してもらう。

本当なら1ヶ月かそこらで終わる予定の殲滅が1年と言わないまでも、半年近くかかるかもしれない。

4月に入り、今年の田植えが始まったばかりの頃に起きた惨事だ。

既にローゼンヘイムの女王に追加の食糧支援をお願いしているところだ。

光の柱が3本伸びており、食糧支援が必要な国が増える可能性があると伝えると、女王からは全く問題ないとアレンは言われた。

大陸北部にあるエルマール教国からも既に虫Aの召喚獣の一部は、親ハッチ、子ハッチを引き連れ東と西に向けて移動を開始している。

タムタムが引きつれている召喚獣とそのうち合流させる。

そして、子ハッチの速度に合わせての飛行ということもあってやや移動は遅めだ。

この光の柱がどこまで伸びているのか分からないが、明日の朝頃に大陸の西の端に到達する予定だ。

エルマール教国に急発進した時の状況と違い、召喚獣の枠がそれぞれのチームで少ないため1回でも多く虫Aの召喚獣に特技「産卵」をしてもらいたい。

なるべく召喚獣も含めた準備万全な状態で臨もうということだ。

「あ、ソフィーチームリーダー! このまま巡行を続けます!!」

メルルは返事をした後何かを思い出しショックを受ける。

慌てて、操縦室の中央に駆け寄り、ソフィーに対してビシっとバウキス軍式の敬礼をする。

去年、バウキス帝国が魔王軍に攻められた際、このような敬礼を上官にしていたのであろう。

「メ、メルル。その呼び方はちょっと、ね? 仲間だから」

「え、分かった……」

慌ててソフィーが呼び方を制止する。

クレナがキールのチームリーダー任命を羨ましがっていたように、メルルもソフィーのチームリーダー任命を尊敬の眼差しで見ていた。

ソフィーが何かアレンに認められた感があってすごいと思ったようだ。

しかし、ソフィーは慌ててこのノリのような呼び方をしないように言う。

このまま呼び方の固定が始まりかねないからだ。

クレナやメルルはノリ強めなので、最初が肝心で初動が全てを決める。

「それにしても、メルルは今回も大活躍でしたわよね」

ショックを受けたメルルを、ソフィーは慌ててフォローする。

「え、そう? へへへ」

「そうですわ。明日のこともありますし、そろそろ昼食にしましょう。フォルマール」

「はい。ソフィアローネ様」

そう言って、輪になって座ることにする。

もう何時間も外の様子を見ているので休憩がてらというところだ。

メルルたちが見ていなくても、霊Aの召喚獣はフロントの窓から外の様子を確認しているし、虫Aの召喚獣も何か見落としや変化がないか注視し続けている。

アレンは共有した視界を元に、チームを分けても全て同時に認識できている。

共有して10を超える視界を全て同時に認識できるだけの知力がある。

アレンの置いていったモルモの実の皮をフォルマールが果物ナイフで綺麗に剥き始める。

他にもフカマンなど、10日分ほどの食料をアレンは置いていった。

アレンの収納にはS級ダンジョンに通いながらも、パーティーメンバーが1年間は困らないだけの食料と飲み物が入っている。

「今回の魔神戦でも遠距離からの攻撃を練習もなく良く合わせられましたね」

フォルマールが無言で、ソフィーとメルルに簡単な食事を用意する中、ソフィーはメルルに話しかける。

メルルの活躍は目覚ましいところがある。

アレンのパーティーで最初に活躍を見せたのはクレナだった。

レアな星3つの剣聖の才能を持ち、学園都市の段階でエクストラスキルを使えるようになった。

ローゼンヘイムの戦争では、セシルが強力な魔法で大きく活躍をした。

知力や魔力上昇の指輪をA級ダンジョンの攻略やオークションの購入で揃えており、しかも、アレンの鳥Bの召喚獣に乗って一方的に攻撃できる機会も多く防御を捨て攻撃特化できたことも大きい。

S級ダンジョンで活躍が見られ始めたのは、ソフィーが最初だろう。

幼精霊であっても、Aランクの魔獣を瞬殺する。

これは精霊や幼精霊の強さもあるが、一番の理由は消費魔力に関係している。

一度に消費する魔力が多ければ多いほど、威力の大きな攻撃ができる。

魔力消費固定のクレナのスキルやセシルの魔法と違い、ソフィーの場合は精霊に求められれば一度にいくらでも魔力を消費することができる。

この結果、魔神やS級ダンジョン最下層ボス攻略でも十分な活躍を見せた。

そして、S級ダンジョン攻略の中盤から終盤になって輝きを見せてきたのがメルルだ。

魔導盤に石板が揃い始め、タンク、攻撃要員、パーティーの移動、魔神討伐に向けての大事な役割を担った。

同じく後半になって輝きだしたのが、立ち回りを理解し始めたキールだろう。

「ありがと、フォルマールも」

モグモグ口を動かしながら、ソフィーの言葉と食事の準備をするフォルマールにもお礼を言う。

「だから、メルス様の言葉を気にすることはないですよ。メルル」

「え?」

フォルマールが無言で食事を口に運ぶ中、ソフィーが唐突なことを言う。

「エルメア様は確かに、アレン様の故郷に多くの仲間になる逸材をお導きになりました。しかし、メルルがアレン様の仲間になった事実とは関係のないことです」

「そ、そうだね。あれ? 僕そんなこと言っていたかな?」

メルルは視線を上部にあげ、ここ数日のことを思い出す。

「顔に書いてありましたから」

明るく元気な性格をしているが、自信のないメルルの心を察しての言葉だった。

ドゴラはエルメアから与えられた特別なエクストラスキルがある。

それ故に、発動に大きな制約があり、うまく発動できないという説明であった。

そして、これはアレンが1人で魔王と戦いに行くと困るだろうからと、才能のある子供たちを同じ時期に同じ場所に導いたという話だ。

この時メルスは誰を導いたのか、口にすることはなかった。

アレンもメルスに対して問うこともなく、そこで話は終わった。

そんな中、メルルだけ顔が曇った。

自分はここにいることが場違いではないのかと頭によぎったからだ。

メルルは遠く離れたバウキス帝国の地で生まれ、バウキス帝国の学園に1年生の時まで通っていた。

そんな1年の終わりに国費留学ができ、生活費が困らないという話が上がった。

5大陸同盟が運営する学園では、大陸や人種が違っても一緒に戦おうという連帯感を持たせるため、それぞれの国が留学先の学費や生活費を負担して留学生を募集している。

それに手を上げてメルルはラターシュ王国の学園にやって来た。

下級兵士の父を持ち、兄妹5人の家族の末っ子として生まれたメルルの家は裕福ではなかった。

メルルが魔岩将という才能があるからといって、バウキス帝国は金を配るみたいなことをしなかった。

家族の生活費が少しでも浮くならとメルルは国費留学生の募集に手を上げた。

アレンの仲間になったのは担任のカルロバがそう言ったからだ。

今アレンたちの仲間になっているのはたまたまだ。

ソフィーはその時の表情を見ていたので、気にすることはないと言う。

それで言うとソフィーは精霊神に導かれてここにやって来たのだが、精霊神に導かれアレンの仲間になった以上の理由はいらないと考えている。

その言葉に何となくメルルは何でソフィーがリーダーに選ばれたか納得した。

「ありがと」

「いえいえ。少ない人数で大変ですが、頑張っていきましょう」

「うん!」

笑顔でメルルは答えた。

それから一晩、タムタム「モードイーグル」は移動し続けた。

草木が少なくなったと昨日は思っていたが、一晩のうちに外は完全な砂漠となっていた。

そして。

「あ! とうとう終着点だよ!!」

メルルが光の柱が角度を変え地面に向かっていくのを見つけた。

そして続いた先は、不気味な色をした巨大な沼地であった。