軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第310話 信者①

アレンたちは仲間と共にニールの街に迫る魔獣たちを殲滅した。

その大半は服を着たアンデッドのように変貌し、邪教徒と魔導書にログが流れる魔獣であった。

さらに寄ってくる魔獣たちは虫Aの召喚獣により使役されたオーガキングやトロルキングに任せることにする。

数十体が等間隔で街を囲み、新たにやって来た魔獣たちを撃退する。

魔獣達から襲われている人々を救う為、召喚獣たちを救助に向かわせる。

その間も、メルスにはテオメニアで何が行われているのかの、調査を進めさせている。

アレンたちは鳥Bの召喚獣に乗って街の門の前にできた人だかりに向かう。

メルルもタムタムを魔導盤に戻してアレンたちと共にいる。

「片付いているようね」

「ああ、話も進めてくれているようだ」

キールが神官に話しかけ、神官たちを集めていることが分かる。

顔が何か凄く鬼気迫るものがある。

邪教徒を倒した意味を考えているのかもしれない。

これから何をしないといけないか分かっているようだ。

アレンたちが人だかりに降り立つと、人々が驚きの目で見る。

さっきまで、魔獣たちに襲われている中での鳥Bの召喚獣での登場だ。

しかし、街の人の視線のほとんどがキールに向かっているため大きな騒ぎにはならないようだ。

何か崇高な者を見るような視線でキールが見つめられている。

(確か、エルメア教にとって僧侶なんかの回復職は、人々を救うために神が与えた奇跡なんだっけ?)

アレンは学園での神学の授業を思い出す。

苦しみから人々を癒す回復職はエルメアの教えそのものだ。

そのため、回復職の才能のある子どもは、奇跡の子供としてエルメア教会に入信を誘われるらしい。

アレンと同じ年に鑑定の儀を受け、僧侶の才能があるとされた子供は、その後エルメア教会に入ったと聞いている。

「キール様、こちらの方は?」

神官の1人が、アレンたちがやって来たのでキールに問いかける。

(金の聖王が、キール様と呼ばれているぞ)

聖職者が崇拝されるエルメア教において、絶望的な状況で人々を救ったキールは奇跡の存在なのだろう。

アレンやセシルが、キール様って呼ばれているぞって視線を送るので、キールから何故か睨まれてしまった。

「皆は俺のいるパーティーのメンバーたちで、黒い髪の男がアレンだ。パーティーのリーダーをしている」

「アレン? Sランク冒険者の?」

(お? 俺のことを知っているのか? ん?)

この10日ほどの間に伝えられたアレンのSランク冒険者任命を知っている神官がいる。

「もしかして、あなたが世界に救難信号を送ったのですか?」

「そうです。神官のニコライと申します。もしかして、それでこちらに?」

(なるほど、通信用の魔導具に精通した神官だったのか。だから救難信号を送ることができたのか)

アレンがSランク冒険者になったことを知っていたのは普段から通信用の魔導具で情報を送受信する立場にあるからなのかなと思う。

神官ニコライは信じられないと言う表情を示した。

救難信号を送ったのは昨日の昼前だからだ。

救難信号を送って、高速の魔導船に乗っても他の大陸からなら最短でも5日程度はかかる。

出発の準備や、そもそも、あのような不可思議な事態が起きた時に、国として救援を送ると決めるにも時間を要するだろう。

救難信号を送ったところで助けは来ないと絶望をしていた。

信じられないことだが、キールが目の前で起こした浄化魔法は奇跡と言っても良いだろう。

キールは魔獣たちの構成から遠距離攻撃はほぼないと判断し、知力が5000上昇する指輪を2つ装備して、知力上昇により威力の上がる浄化魔法を使いまくった。

お陰で、なだれ込んだ傍から魔獣たちを浄化させ続けた。

20年ぶりに誕生したSランク冒険者であり、「始まりの召喚士」という肩書を持つアレンとその仲間たちがやってきたなら、こんな奇跡的な早さでの救出劇もありうるのかと無理やり納得する。

タムタムも外壁から少し離れたところで浮いている。

「そうです。ですので、もう少し具体的に何が起きたのか教えていただけませんか?」

もっとも聞きたいことをアレンは問う。

目の前の男が、教都テオメニアから脱出し、救難信号を送った神官であるなら、その時の状況を確認したい。

今のところ何が起きているのか、何をするのが正解なのか全く分からない。

「で、では立ち話は何なので、どうぞこちらに」

「いえ、そんな時間はありません。襲われた街はここだけではないはず。状況を確認次第すぐに向かう予定ですので、このままお話しいただけませんか?」

お茶とお菓子を食べながらゆっくり状況を確認するなんて悠長なことはできないとアレンは断言した。

今なお、魔獣たちによる蹂躙が進んでいるのであれば、まずは何が起きたのか知り、どう動くべきか判断する必要がある。

「そ、そうですね。話の内容としては救難信号で話した通りです」

そう言いながら、その当時の状況を説明する。

周りにいる神官たちもテオメニアから逃げてきたものが何人もいたので、より正確に状況が分かってきた。

3日前の昼、ちょうど12時に、邪神教の教祖グシャラ=セルビロールの処刑を執行することになった。

場所はテオメニアの中央広場で、ここまではアレンたちの聞いていた通りの話だ。

そしてその日、テオメニアの広場から溢れるほどの邪神教の信者で広場は埋め尽くされていた。

「それは、処刑を止めようと?」

「そうです。教祖グシャラがどれだけの行いをしてきたのか、その結果どういう結果になったのか教えるために広く教国内に伝えた結果、そのようになりました」

邪神教の教祖グシャラがこの数十年間どれだけの悪行を重ね、当日火あぶりの刑になるのかを信者らに教えるため、エルマール教国全体に広く伝えたと言う。

通信の魔導具が全ての街に配備されているわけではないので、広く伝えるのに時間がかかった。

その結果、処刑の日が1ヵ月以上延びてしまった。

そして処刑の日になると、教祖グシャラの処刑を止めようと、近隣の国からも含めて大勢の信者らがテオメニアに集まった。

広場はかなり広いにもかかわらず、集まりすぎた信者が押し寄せてくるため柵を作り、神兵を大勢派遣して対応をしたほどだ。

教祖グシャラは十字架に縛りつけられ、今まさに足元の薪や藁に火がつけられるというところで、大声で叫んだと言う。

『私は神と一体となった。炎の中から生まれ変わるだろう!!』

そして火がつけられ、教祖グシャラは信者たちの悲痛な叫びの中、炎に包まれたと言う。

しかし、異変が起きた。

グシャラの全身を包む炎が巨大になっていった。

炎は人型に形を作り、そしてもう一度大きく叫んだと言う。

『私は復活を果たした。私を信仰する信者たちよ。救いの力を授けよう』

そう言って、人をかたどった巨大な炎は火柱になっていった。

その時点で炎に飲まれる者も大勢いて、神官や神兵は逃げ出した。

その日、教祖グシャラの処刑を信者らに見せつけようと呼び掛けたため、エルメア教と邪神教の信者らは100万人を超えてテオメニアに集まった。

その群衆をかき分けて逃げ出すことに必死で、それが教祖グシャラを見た最後の光景となった。

それから何とかテオメニアの街の外に逃げ出したのだが、街の中からは追ってくるようにアンデッドのような魔獣がぞろぞろと出てきた。

中にはトロルやオーガも混じっており、助かった人々はさらに必死に逃げた。

逃げる力のない者は直ぐに捕まってしまい、魔獣たちに殺されたと思われる。

「なるほど、分かりました。ありがとうございます」

神官が悲痛な顔で思い出して話してくれたことにアレンはお礼を言う。

(これは、教祖が信者を邪教徒に変えたということで間違いないのか。トロルやオーガも信者のなれの果てなのか? それともまだ分かっていない別の力が働いていると?)

「アレンどうするの?」

「そうだな。テオメニアに行くのは間違いないとして、その前に街や村の救済か。だがその前にもう1つ確認することがあるぞ」

「え?」

教都テオメニアに全ての答えがあるのかもしれない。

そして苦しめられている街や村の人々を救わないといけない。

しかし、その前にやることがあるとアレンは言う。

(邪神教の信者が邪教徒になる条件は知っておかないとな)

邪神教の信者が邪教徒になる条件を知ることは必須だとアレンは考えている。

「すみません。この中に邪神教の信者はいますか!!」

アレンはアレンたちを見つめる大勢の群衆に問いかけた。

アレンたちがこの場で話を聞くと言ったために、ここには大勢の群衆がアレンたちと神官の様子を見つめている。

「じゃ、邪神教ではありません!!」

すると、赤ちゃんを抱いた20代であろうか、若い女性がそう叫んだ。

「ん? あなたは?」

「グシャラ聖教の信者です」

何だそれとアレンはエルメア教の神官ニコライを見る。

「邪神教の教祖は自らの教えを『グシャラ聖教』と説いているのです」

アレンの問いに「グシャラ聖教」の信者が名乗りを上げたのであった。