軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第297話 ディグラグニ②

アレンは最下層ボスの初回討伐報酬に魔導盤の石板を20個はめることができるようお願いした。

まだ亜神に至っていないディグラグニには、恐らくノーマルモードからヘルやエクストラモードへの変更も、転職して星の数を増やしていくことも難しいと考えていた。

ダンジョンマスターであり、ダンジョンからは大量の魔導具が手に入る。

そんなディグラグニから求める報酬について、何が一番パーティーの強化に繋がるかアレンは考えてきた。

オリハルコンの武器や防具は、塊の状態でダンジョンから手に入る。

便利な魔導具も、冒険に必要なものはだいたい手に入れたつもりだ。

前世でゲームをやり込んできたアレンは、表面に10個の石板をはめる魔導盤を見てすぐ一つの言葉が頭をよぎった。

『スロットは10個か』

魔導盤にはめることのできる上限があり、その上限の中で工夫しながらゴーレムを活用する。

ゴーレム兵とはそういう職業なのだろう。

全てのものにはスロットがあり、それが上限になる。

ステータス増加の指輪は両手に1つずつしか装備できない。

これは指輪のスロットは腕ごとに1、合計2になる。

物事には上限があり、その上限を解放することも前世でしばしば起きてきた。

クエストと呼ばれる課題が与えられ、それを乗り越えた者がスロットの拡張が行われる。

(これはスロット拡張クエストか)

アレンの中で、ローゼンヘイムの戦争は「転職クエスト」の側面があったと考えている。

では、このダンジョン攻略はどんな側面があるのか考えてきた。

このS級ダンジョン攻略は「メルルの魔導盤のスロット開放クエスト」だと考え、攻略を目指してきた。

『魔導盤にはめる石板を20枚だと?』

「不可能でしょうか?」

そう言ってアレンは魔導盤をディグラグニに差し出した。

すると、魔導盤はアレンの手元から消え、巨大なディグラグニの顔の前に現れる。

魔導盤がゆっくりディグラグニの顔の前で回転する。

魔導盤を見ながら考え事をするディグラグニを、アレンは黙って見つめている。

アレンの仲間たちは、ディグラグニとの交渉をアレンに任せて経緯を見守る。

『そうか。こいつは可能か。お前は面白いことを考える奴だな! ほらよ!!』

魔導盤の回転が速くなり、1つの球体のように見える。

そして、強く輝き始めた。

輝きも回転速度も次第に落ち着き、魔導盤はアレンの目の前に返って来る。

回転速度が落ち着いた魔導盤の両面には石板をはめる穴がある。

魔導盤の石板をはめる穴を20個にしてくれたようだ。

元々裏面だったところにステータスがホログラムのように浮いて見える。

この一瞬で随分、凝った作りにしてくれたようだ。

「これは、複数の石板をはめて、できること、できないことはあるんですか?」

『あん? そうだな超巨大化を複数はめても、これ以上大きくなんねえぞ。だが、そうだな。あとは色々試してくれや』

「はい。分かりました。メルル、ゴルディノとの戦いでは大活躍だったな」

アレンがメルルに魔導盤を渡すと、震えながら受けとったメルルの目から大粒の涙が零れる。

「あ、ありがと」

アレンはヘルミオスから最下層ボスの初回討伐報酬が手に入ると聞いた時から、報酬は魔導盤の穴を20個にしようと仲間たちに伝えた。

そして、仲間たちにそのことを伝えたが誰も反対しなかった。

学園にいたころ、ダンジョン攻略で全く役に立たなかった。

S級ダンジョンに来ても最初の何か月は壁役にすらなれなかった。

不安に思うことはないとアレンにも仲間たちにも言われ続けた。

「メルル」

涙が止まらなくなってしまったメルルをクレナが後ろから抱きしめてあげる。

『よっし! これで報酬は渡したぞ!!』

「あ、すみません」

(まだ帰ったら駄目ですよ)

『あんだよ?』

用事は済んだ感を出すディグラグニにアレンが問いかける。

「A級ダンジョンを攻略したときに管理システムから聞いたのですが、S級ダンジョンの最下層ボスを倒すと、ディグラグニ様に挑戦できると」

『……ああ、そうそう。そういう話だ。誰も挑戦しないから忘れていたぞ。だが、今は勘弁してくれよ。ここで遊んでいるとエルメア様に怒られるぜ』

ディグラグニは少々間をおいて、思い出したかのように返事をする。

どれだけ昔に設定したか分からないが、たぶんアレンが初めてそんな話をしてきたのかもしれない。

ディグラグニの都合で、今は挑戦できないと言う。

「分かりました。まだまだ力不足なので、挑戦は次回にしますが、確認したいことがあります」

アレンは今回ディグラグニに挑戦するつもりはない。

それは、メルスに止めておくように言われたからだ。

今のアレンたちでは勝てないらしい。

ヘルミオス、ガララ提督、ゼウ獣王子たちが万全の状態でも勝てない。

それどころかかなり多くの死人が出るとメルスに言われた。

じゃあ、どれだけ強いのだと聞いたら、亜神にすら至っていないがディグラグニは戦いに優れており、上位魔神と同じくらいの力があると言う。

最下層ボスはかなり強かったが、上位魔神には達していないほどの力しかなかった。

まだまだ、魔王軍と戦える力がないことをアレンは知った。

(強くならないといけないからな)

そのために、アレンは今ディグラグニと会話を続けている。

『手短にな!』

再度、端的に言うようにディグラグニに言われる。

「ディグラグニ様に勝てば、褒美は思いのままということでよろしいですか?」

その言葉に、さすがにガララ提督などドワーフたちがびっくりする。

勝てば何でも寄こせとアレンはディグラグニに言ったのだ。

『お!? 面白れえぞ! お前面白いやつだな! もちろんだ。俺にできることなら全て叶える。勝てたらな!!』

「ありがとうございます。勝てるように精進して戦いに挑ませていただきます」

アレンは深々と頭を下げ、ディグラグニへの挑戦の意思を示した。

そして、頭を上げたアレンはディグラグニの胸の部分をずっと見ている。

(スロットを増やしてもらったしな。次はディグラグニを頂くとしよう。ぐふふ)

アレンはディグラグニが現れた時から、既に獲物として捕捉していた。

ディグラグニはアダマンタイトのゴーレムの姿をしている。

そして、胸には水晶がしっかり埋め込められていた。

アレンは笑いを堪えるのが精いっぱいだ。

なんとなくアレンの求めるものが分かったセシルが本気なのかしら、とため息をついている。

『おう。証明書を持ってその辺のシステムに話せば、俺に繋がるようにしておくからな』

「それは助かります。今回はありがとうございました」

アレンは用事が済んだとお礼を言う。

『まあ、まてまて。せっかくなんで送ってやるぜ。おらよ!!』

「へ!?」

「「「おおおお!!」」」

アレンの視界が一気に変わる。

そこはS級ダンジョンの1階層の神殿の前の広場だ。

大勢の冒険者たちと目が合ったので、辺りを見るとアレンたち全員をこの場に転送してくれたようだ。

『おう! お前ら! とうとうS級ダンジョンが攻略されたぞ!!』

そして、アレンの背後からディグラグニの声が聞こえる。

ディグラグニも一緒になって転移してきた。

そして、ダンジョンの攻略を街のスピーカーのようにここに集まる冒険者だけではなく、巨大な街全体に伝える。

他の誰でもないディグラグニによるS級ダンジョン攻略の宣言だ。

だれも嘘だと思わない。

名刺サイズの討伐証明書と違って圧倒的な証明になるだろう。

そう思ってディグラグニを見ると、カッコいい姿勢に変わる。

(これが、ディグラグニのカッコいいポーズか)

何でも、皆の視線が集まると、ディグラグニはカッコいいポーズを取らずにはいられないと聞いた。

前世で子供のころに見た戦隊もののポーズに似ている。

「シャキーン!!」という効果音が似合いそうだ。

見たからといって御利益とか一切ないらしいのだが、これがそうなのかとアレンは思う。

すると、メルルが「むん!」とカッコいいポーズをし始めた。

ガララ提督も仲間のドワーフたちもかっこいいポーズをとり、ダンジョン攻略を体で表現する。

ダンジョンを攻略して、仲間を思いしんみりしていたガララ提督の感情が吹き飛ばされていく。

『じゃあな、次の挑戦も待ってるぜ!!』

ディグラグニはそう言い、飛び上がったかと思ったらその場から姿が消える。

どうやらラターシュ王国の学園都市に転職クエストダンジョンの制作に戻ったようだ。

「って?! おい、お前ら何をしやがる!!」

ガララ提督にワラワラとドワーフたちが集まってくる。

メルルもその1人だ。

「よっし、今日は朝まで飲むぞ! お前ら道を開けろ! ガララ提督のお通りだ!!」

ガララ提督を担ぎ上げたドワーフたちの誰かがそう言った。

どうやらいつもの行きつけの酒場にガララ提督を運んでいくようだ。

ガララ提督がお神輿のように運ばれていく中、苦情申告をしているが誰も耳を貸さないのはどこかで見たことがある。

そういえば、初めてガララ提督にあった時もこうやって仲間たちに運ばれていったなと思う。

その日は、初めてS級ダンジョンが攻略された記念する日となり、街は大いに盛り上がったのであった。