軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第295話 討伐報酬

アレンたちの前にゴルディノが倒れている。

アレンがめった刺しにしたので、顔面が損壊している。

(いや、強すぎだろ。結構危なかったぞ。なんかノリで作ったような設定のボスだったな。だがまあ、それがいい)

やっとの思いで倒した感想を漏らす。

かなり危うい戦いの中で、ゼウ獣王子たちの獣化や、最後の最後で怪盗ロゼッタのスキルに助けられた。

皆でのレイド戦初勝利に忘れかけていた懐かしさのようなものを感じる。

「……父上。ゼウはやりました」

そんなアレンの横で、既に獣化の解けたゼウ獣王子が肩を震わせている。

普段一人称を「余」、父親を「獣王陛下」と呼ぶゼウ獣王子が幼き日の思い出に帰ってしまった。

到底超えられぬことを前提に与えられた試練であることを占星術師テミから聞いた。

何が何でもという強い思いもあった。

その横でゼウ獣王子よりホバ将軍の方がより大きく泣いているのは気のせいだろうか。

「……みんなやったぞ。お前らの墓にも酒を持っていってやるからな」

ガララ提督も目をつぶり、失った仲間たちのことを考えているようだ。

ゴーレム使いのドワーフたちは完璧に壁役をこなしていた。

もしも、3体の超合体ゴーレムのうち1体でも自らの命を惜しんでいたら、何人かが死んでいただろう。

だれよりも命を懸け戦ったドワーフたちも、皆涙を流し、勝利以上に、初めての挑戦で亡くした仲間を思い涙を流す。

そんなそれぞれが思い思いに感傷に浸る中、セシルがアレンに近づいて来る。

「ん? どうしたんだ? 不満そうだな」

「それにしても残念ね。私止めさせなかったわよ」

最後にクレナとヘルミオスの攻撃が止めになったため、自分のエクストラスキル「小隕石」が使えなかったと言う。

「いや、あんな皆が止めを刺そうとしている状況で使うもんじゃないしな」

また100メートル級の小隕石を降らせたらたまらないとアレンは呆れる。

セシルは精霊王の祝福も貰ってとんでもない知力になっていた。

セシルのエクストラスキルは使用に適さない状況が割と多い。

「まあ、そうね。あら?」

そんな会話をする中、ゼウ獣王子でもなく、ガララ提督でもない最近成人したばかりのジャガイモ顔の男が、既にSランクの魔石だけを残し姿を消したゴルディノがいた場所に立ちすくんでいる。

「ドゴラ、凹んでいるね」

クレナもアレンの元に寄ってきて悲しい顔でドゴラの心境を察する。

ドゴラは今回の戦いに満足いくものではなかった。

他の種族も一丸となって、アレンの仲間たちも活躍しているのに、自分は何故だと考えているようだ。

「ドゴラ、活躍できなかったな」

「な!? お、お前」

アレンが直球でドゴラの悩みを口にする。

「安心しろ。フォルマールもあまり活躍していないぞ」

「おい」

フォルマールからツッコミが入る。

フォルマールは今回のように固いゴーレムとの戦いだと活躍の場が少ない。

弓で中々攻撃が通りにくい最下層ボス戦であった。

しかし、フォルマール自身はまったく気にしていないようだ。

そもそもソフィーを守ること以外考えていない。

(職業によって、状況の得手不得手があるのは仕方ないか。エクストラスキルが発動できないとな。まあ活躍していたけど)

ドゴラが役に立ったか、立っていないかで言えば、役に立っている。

3度の転職を重ね、装備を揃え圧倒的な攻撃力がある。

十英獣にもヘルミオスのパーティーにも引けを取らないどころか、圧倒的な戦いを見せてきた。

また、立ち回りについても学園にいたころから、仲間たちと共にいる。

どのタイミングで下がり、攻撃を加えるのか同じ前衛のクレナや、回復役のキールも把握できているので、立ち回りも良かった。練度が違うという奴だ。

(だからと言って、お前はよくやったは違うよな? ドゴラ)

不満が前面に出るドゴラに対してアレンはさらに口を開く。

「お前、もしかして、俺のお膳立てした状況で、英雄になろうとしているんじゃないだろうな?」

「!?」

ドゴラが息を呑んだ。

アレンがパーティーを集め、作戦を考え、戦いに勝利した。

そこにただ乗りして英雄になるつもりかとドゴラに言う。

この言葉には、まだこれからじゃないかという意味が含まれていた。

自らの手で英雄になれと、エクストラスキルの問題を解決して見せろと、アレンは目で語る。

「報酬が欲しい。広間に戻るぞ」

アレンはにやりと笑い、そう言って感傷や勝利の余韻に浸る各々のパーティーに声掛けをしていく。

そんなアレンの背中に聞こえないほどの声で「ああ、見ていろ」とドゴラは言った。

5階層に戻るための転移はこの通路の先にあるのだが、ボスを倒せば広間にキューブが現れる。

報酬を貰ったり、1階層に移動させてくれる討伐時専用のキューブだ。

鳥Aの召喚獣を使い、一気に移動する。

そして、目の前にはキューブ状の物体が浮いており、目の前には今まで見たことのない箱がある。

『最下層ボス攻略おめで……』

「おおおお!! なんかすげえのあるぞ。何だこの輝きは!! ひゃっほう!!」

「相変わらず金の聖王ね」

「「「おお!!」」」

『……』

何かを言おうとしたが、キールが言葉を被せてしまったため、キューブ状の物体は黙ってしまった。

セシルは呆れているが、驚くのはキールだけではない。

最下層ボス討伐報酬はたしかにあったのだが。それは3つだ。

本来4つ貰えるという設定だが、3つは通常の討伐報酬、1つは初回討伐報酬として特別な報酬をディグラグニから貰うことになっている。

キューブ状の物体の前には銀箱、金箱、そして虹色に輝く虹箱の3つの宝箱が置いてあった。

(ほうほう、最下層ボスは銀箱からなのか? それにしても虹箱なんてものが出るのか)

ブロンズやアイアンゴーレムは木箱、銀箱、金箱で構成されていた。

銀箱が1割程度の確率なのに、今回の討伐報酬が3つとも銀箱以上なのはかなり運がいい。

Sランクダンジョンの最下層ボス討伐報酬は銀箱から始まり、虹箱という特別な宝箱もでるようだ。

「こ、これは」

ゼウ獣王子は3つの宝箱を見て、固まってしまった。

「とりあえず、宝箱は虹、金、銀の順に高価なものが手に入るようです。3つについては、ゼウ獣王子、ガララ提督、ヘルミオスさんで話し合ってもらえませんか?」

「なるほど。そういうことか」

ゼウ獣王子は納得したようだ。

アレンたちがキューブ状の物体そっちのけで、宝箱の話をしている。

キューブ状の物体は、自らに意識が向くのを待っているようだ。

「とりあえず中を見てみましょうか」

ヘルミオスもとりあえず、報酬を皆で決めましょうという話をする。

3つの宝箱を開けてみる。

・銀からはアイテム収納の魔導具(特大)

・金からはアダマンタイトの本体用石板(足)

・虹からは攻撃力3000上昇のペンダント

「なんか、どれもすごいお宝じゃない!」

怪盗ロゼッタも体を乗り出して、どれにしようかしらと言う。

アレンと仲間たちは、通常の討伐報酬は貰えないので、横で傍観している。

(まじか。ペンダントで攻撃力アップってことは指輪以外にステータス上げることができるってことだろ? これは周回して揃えねば)

武器や防具でもステータスが上がる。

しかし、アクセサリー系のステータス増加は、スキルなどでステータスと共に増加する。

新たなアクセサリーの発見に胸が高鳴る。

「ふむ。余はこの4パーティーのリーダーだからな。余から決めても良いか? 余は虹の箱がほしいぞ」

「ちょ!?」

まさかゼウ獣王子が一番良い虹箱を自分に寄こせと言うとは思っても見なかった。

怪盗ロゼッタが思わず声を出す。

ロゼッタは周りを見るが反対する者がいないようだ。

「いいんじゃねえのか。じゃあ、俺は金箱がほしいぜ」

ガララ提督はそれで構わないと言う。

そして、自分は金箱のアダマンタイトの本体用石板が欲しいと言う。

「また何を決めているのよ!」と言いそうになったが、今度はロゼッタは何も言わないようだ。

たしかに、ゴーレム用の石板を貰っても仕方がない。

神殿で売ろうにもどうせ買い叩かれてしまう。

「わ、分かったわよ。この魔導具で我慢しとくわ」

そう言って、収納用の魔導具(特大)をロゼッタが自分のものだと抱きかかえるように奪い取る。

ヘルミオスが仕方ないなと苦笑する。

そんな収納の魔導具はとても高価で、ギアムート帝国の帝都の一等地に家が建つほどのお値段とアレンは後で聞いた。

今回は収納できるサイズが特大ということもあり、売れば家一軒の話で済まないくらいの価値がありそうだ。

「さて、お宝の分配は決まったな」

(これから、奪い合いの戦いをするかと思ったが、この世界は平和だな)

レイド戦をしたからといって、全員に報酬が行きわたるとは限らない。

アレンは前世で50人規模のレイド戦をして、報酬は1、2個だった記憶がある。

レイド戦後の報酬をめぐってバトルロイヤルに発展することもしばしばだったが、随分平和に決まったなと思う。

「……そういえば、サラたちを救った礼をしていなかったな」

そう言って、ゼウ獣王子はずいっとアレンにペンダントを差し出した。

思い出したはずなのに、言うことを決めていたのか、若干役者っぽくぎこちなく聞こえた。

「え? いいのですか?」

「余の目的は果たしたからな。これは必要のないものだ」

どうやらゼウ獣王子は最初からアレンに討伐報酬を渡すために一番いい虹箱のペンダントが欲しいと言ったようだ。

アレンはゼウ獣王子の後ろにいる十英獣を見る。

誰も反対せずに頷いている。

既にこうすると決めていたようだ。

「アダマンタイトの石板もこれだけあっても仕方ねえな。これはメルルに持たせてやってくれ」

そう言ってガララ提督もアレンに差し出してくる。

「え?」

「仲間たちの仇を取らせてくれてありがとうよ。お陰で、皆で前に進めそうだ」

ガララ提督がニヤリと笑った。

どうやらゼウ獣王子もガララ提督も報酬はアレンたちに渡すと決めていたようだ。

「ちょ!? ちょっと。これはあげないからね!!」

収納の魔導具を胸に抱きかかえる怪盗ロゼッタは、焦って言ったのであった。