軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第285話 決戦前夜

4パーティーによるレイドパーティーを結集させたアレンは、それからさらに5日間かけて、最下層ボス攻略に向けて念入りに作戦を考えた。

そして、作戦通り動けるか、演習を重ねてきた。

演習のために、Sランクの階層ボスを利用した。

攻撃を合わせるには、3階層にいるワーム状の魔獣であるスカーレット=サンド=ワームは本当に助かった。

このためにいた魔獣なのかとすら思えた。

明日は最下層ボスに挑戦する。

今日は決戦の前夜祭だ。

5日前に4パーティー決起集会も行ったが、こんなのは何度やってもいい。

明日に備えて英気を養ってもらう。

十英獣が特に大きすぎたため、決起集会をやった時の狭すぎた反省を踏まえ、拠点の庭先でやることにした。

ドワーフたちが冗談のように酒を飲む。

ガララ提督が戻って来た。

それだけで酒が飲める理由ができたようだ。

この戦い、勝っても負けても本当に感謝していると、ガララ提督の仲間のドワーフたちにこっそりと言われた。

「果実水のおかわりください」

「どうぞ」

ヘルミオスの使用人から果実水のおかわりを貰う。

ヘルミオスのパーティーと共にやって来た使用人たちは今日も黙々と働いてくれている。

感謝しかない。

(俺らの戦いは最下層ボス倒してからだけどね)

最下層ボスを攻略した後も、アイアンゴーレム狩りを継続するつもりだ。

まだ封印されている王化スキル習得まではやりたいと思っている。

「俺も果実水のおかわり貰えるか?」

「どうぞ」

アレンが今後の予定を考えていると、ガララ提督が果実水のおかわりを使用人から貰う。

「せっかくいいお酒を用意したんですが、飲まないんですか?」

「いいんだ。もう十分飲んできたからな。明日の勝利の美酒のために取っておく」

拠点に入り浸っていた頃の悪態をつくガララ提督の姿は最早無い。

落ち着きを取り戻したガララ提督を頼もしく思う。

この5日間、ガララ提督は一滴もお酒を飲んでいない。

「じゃあ、明日は戦勝会ですね」

「そうだな。アレンよ。明日の戦いはどんな形になっても、感謝の言葉を先に言っておく。ありがとうよ」

「そういう辛気臭いことは止めましょう」

「そうだったな」

明日燃え尽きる気マンマンのガララ提督を窘める。

そんなガララ提督は晴れやかな表情でドワーフの仲間たちの輪に入って行く。

楽術師レペが場の雰囲気を出すために、見たことのない大きな笛を吹いている。

そんなレペがあることに気付く。

笛を吹くことを止め、おもむろに使用人から酒の入ったコップを2つ受け取ってセシルの元に向かう。

「よう。綺麗な嬢ちゃん。一緒に飲まないかい?」

「あら? 気が利くわね。頂くわ」

そう言ってコップを受け取ってどこかに行こうとする。

「おいおい。つれねーな」

「私、強い殿方にしか興味ないの」

そう言って、セシルはコップだけ受け取ってにこりと笑う。

だが、楽術師レペはそういうセリフも嬉しかったようだ。

ちなみにゼウ獣王子の話を聞いたところ、獣人には気の強い女性が多いと言う。

もしかして、相手にされないことも含めて楽しんでいるのかもしれない。

もう一度、1人で演奏を始める。

アレンが鬼のように食べているクレナたちのいるところに果実水を持って帰って来る。

そんなアレンの元に今度はゼウ獣王子がやって来る。

「アレン殿の考える形になって来たか?」

この5日間、4パーティーの一角を担うパーティーリーダーとしてやってきたゼウ獣王子が前日の確認をしに来る。

なお、ゼウ獣王子のパーティー名は「ゼウ獣王子と十英獣」だ。

既に別のパーティーに入っている十英獣の冒険者も一旦抜けて貰って、このパーティーに入ってもらった。

この冗談みたいなパーティー名にも意味がある。

誰がこのパーティーにいたのかは、格好いいパーティー名よりも意味がある。

ゼウ獣王子が結集させた十英獣と共に最下層ボス攻略に臨んだという実績だけなら、このパーティー名がベストだ。

「ぼちぼちだと思います。正直、十英獣の皆さんの職業が特殊過ぎて、5日間だとやってみないと分からないところもあります」

完璧かと聞かれたら、そんなことはない。

特殊な職業も多く、完全に理解できていないところもある。

それで言うと、アレンのスキルも完全に理解してもらえているかと聞かれたら、そんなことは決してないだろう。

しかし、戦いに必要な共通認識のようなものは5日間かけて共有出来たと考えている。

完璧にスキルの詳細を理解しようと思ったらあと1ヵ月の情報の共有と、検証のための実践が必要だ。

しかし、4パーティーとも実戦経験は十分にある歴戦の戦士たちだ。

これだけ共有できれば勝てるだろうという認識が5日間の中で出来た。

今日はそう思っての前夜祭だ。

「そうなのか。余は獣王武術大会で皆の戦いを見てきたからな」

獣王や王族の御前で獣王武術大会は行われてきた。

その中でも、何度も各部門で優勝してきた彼ら10人について、ゼウ獣王子にはそこまで違和感が無いと言う。

(それだけでもゼウ獣王子が十英獣を引っ張っていく理由になるな。王族嫌いでもゼウ獣王子は別だと言う十英獣が多いのも助かる)

2年間、達成不可能なS級ダンジョンの攻略を命じられている中、獣人たちの無事のために動き続けた。

そんなゼウ獣王子は人望があるようだ。

「いつか獣王武術大会も見学したいですね。レペさんとか言うことは聞いてくれそうですか?」

ほとんど懸念はない。

組織的な活動をしてくれなさそうな楽術師レペについて、明日は問題ないかとゼウ獣王子に確認する。

「それは問題なかろう。やつも3年連続で十英獣に選ばれた猛者だ。戦いについての懸念は十英獣には当たらんよ」

「それなら助かります」

「これが終わったら、余もローゼンヘイムのようにアレン殿には大きな借りができるな」

「それで私のことを『アレン殿』と言っているのですか」

「ふむ。まあ、シグール元帥ではないが、お手柔らかに頼むぞ」

ゼウ獣王子は決起集会あたりから「アレン殿」と呼ぶようになった。

アレンに対する認識が大きく変わったのだろう。

シグール元帥もこの場にいる。

十英獣をアルバハル獣王国から連れてきたシグール元帥は、獣王国に返すところまでが仕事だ。

あまり自分に近づこうとしないのは気のせいかとアレンは思う。

もしかしたら何かトラウマを作ってしまったかもしれないとソフィーの横のシグール元帥を見る。

「いえいえ。ゼウ獣王に頼みたいことは今のところ1つしかありませんので」

「なに? もうすでにあるのか。それはたまらないな。ちなみに何を望むのだ?」

かなり警戒するが、聞いておかないとさらに怖いと思いゼウ獣王子は尋ねてくる。

「はい。ゼウ獣王に子供が生まれたら、是非とも3文字の名前を付けてほしいです」

既に婚姻を結んだ妻はいるのだが、子供はまだいないと聞いている。

旦那であるゼウ獣王子は2年間ほど、S級ダンジョンに単身赴任中だ。

何でもゼウ獣王子の妻もかなり気性が荒いらしい。

たまにいつになったら獣王国に戻れるのかと手紙が届くと言う。

「また大きなことを」

「いえいえ。子供に名前を付けるだけです。ぜひ、未来に名を遺す名前をお願いしますね」

アレンは色々な意味を込めてこのお願いをする。

アルバハル獣王国ができて1000年ほど経つ。

過去の悲惨なギアムート帝国との歴史から、獣人の名前は王族も含めて2文字という法律ができてもう1000年になる。

ギアムート帝国を憎しみ続けた歴史を変えろとアレンは言う。

「共に前にということだな」

「はい」

ゼウ獣王子はアレンの言葉に深く考え事をする。

何か深い覚悟を胸に秘めた表情をしている。

そんなアレンの元にもう1人の獣人がやって来る。

この5日間結構付きまとってきた獣人だ。

「お、始まりの召喚士よ。ここにいたか。少し付き合わんか?」

「またですか?」

「うむ。もしかしたら。明日にでも帰らないといけないからの」

アレンの元に占星術師テミがやってくる。

そして、手を取って空いているところにアレンを座らせる。

何やらまじないのようなことを始める。

綺麗な鉱石か宝石か分からないが無造作に地面に散りばめ、何かを占っているようだ。

「やはり、分からぬ。いや占い結果が変わるというか」

ぶつくさ言いながら、アレンの未来を占おうとしている。

(たぶん、星の数が違いすぎると占えないとかそういうのかな)

星の数によって鑑定がうまくいかないことを知ったのはヘルミオスに学園で鑑定された時だった。

召喚レベル8では、Sランクの魔獣の鑑定がうまくいかないと天使メルスに教えられた。

きっと星8つのアレンをうまく占うことが出来ないようだ。

自分の未来がどうなるか知りたくなっても占い師に占えないのはメリットなのかデメリットなのか、頭を抱える占星術師テミを見ながら考える。

「そういえば、私、探し物をしています。これは探すことができますか?」

「なに? どんなものだ?」

「形は決まっていないと聞いているのですが、何らかの器だと言う話です」

ついでに神器は探せるか尋ねてみる。

結局ダンジョン攻略が間もなくというところまできたのだが、神器の情報は入ってこなかった。

「なんだそれは」

「だから困っているんですよ。どうしても見つけないといけないのですが」

「分かった」

唸りながら、宝石や鉱石をぶつけたり拾ったりしながら、占い続ける。

「こ、こんなことが起きていいのか。見つけられないぞ。嘘なのか? いや、同じだ。占えぬのか」

手を見ながらワナワナとしている。

獣王国きっての占い師と呼ばれ続けた自分が占えないものがある。

それが目の前の黒髪の青年だ。

そして、探している物も見つけられない。

一瞬アレンが嘘をついて適当なことを言ったのかと考えたが、どうも違う。

「残念です。ちなみに、ドゴラが探している物はどうですかね」

腕のいい占い師に出会えたので、どんどん占ってもらうことにする。

「あ? おれかよ」

「そうだ。お前の全身全霊の発動方法とか占えるんじゃねえのか」

「うん?」

何の話をしているのかと聞かれるので、ドゴラがエクストラスキルをうまく発動できない話をする。

何か助言になるものがないか占ってくれと頼む。

「そうか。そうか。ふむふむ。こ、これは出てきたぞ! 私も力を失ったわけではないのか。ん? だがしかし」

占星術師テミの顔が曇る。

「お、おれがうまく発動できない理由が分かったのか?」

ドゴラが食い気味に占星術師テミに詰め寄る。

「そうだな。その理由は分からぬが、ここから南東に行けば、その答えがあるらしい」

「ここから南東の国っていったらラターシュ王国か。地元に何かあるのか?」

ギアムート帝国の南に当たる国は、ラターシュ王国も含めて複数ある。

もしかしたらその辺り一帯に何かがあるのかとアレンは考える。

「まじかよ! やった!!」

ドゴラから大きな声が漏れる。

魔神レーゼル戦以来一度も発動していないエクストラスキルの答えがあったようだ。

(うは。これだけでも、十英獣を呼んだことにお釣りが出るぞ)

「なるほど。いや」

しかし占星術師テミの顔が曇る。

「どうしたんですか?」

「もしも、その力を求めようとすると、命を失いかねないと出たのだ。いや、これは死ぬのではないのか。それほどの試練がお主にはあるようだぞ」

「そ、そんな!? まじかよ」

ドゴラが全身全霊を自在に扱えるようにするにはとても危険が伴うと占星術師テミは言う。

宴の終わりにドゴラに対する厳しい試練が待っていそうな話が出た。

そんな最下層ボス攻略決戦前夜の宴はぼちぼち解散したのであった。