軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第282話 リーダー②

「ほう。これで、2パーティーで挑戦するというのか。ヘルミオス殿のパーティーも参加して、すごい戦力だな。中央大陸が総力を上げてといったところか」

ヘルミオスのパーティー「セイクリッド」とともに最下層ボスに挑戦するという様子を見ていたゼウ獣王子が感心している。

「いえ、ゼウ獣王子。まだ全員揃っていません。ガララ提督のパーティー『スティンガー』もお誘いする予定です」

「なんだと! どういうことだ!!」

「参加の枠にも、人数にも枠があります。ガララ提督のパーティーもいかがですかという話です。ガララ提督も、参加しようと思って3ヵ月も拠点に入り浸っているのではないのですか?」

アレンがヘルミオスを誘う様子を睨むように見ていたガララ提督が、怒りを爆発させる。

しかし、アレンは、淡々とパーティーにガララ提督を誘う。

「な!? なわけねえだろうが!!」

「あれ? 違う? また予想が外れてしまいましたね」

「は? なんのことだよ」

「いえ。私は最初、ガララ提督がこんな状況に怒っているのは、皇帝からの理不尽な命令に対してだと思っていました」

去年の10月から拠点にガララ提督が入り浸り始めた訳は、皇帝からの理不尽な命令で仲間を失ってしまったことに怒っているのだと。

だから悪態をつきながら酒を飲んでいるのだろうとアレンは思っていた。

しかし、それは違っていた。

気付いたのは5階層でメダルを全て台座にはめてキューブ状の物体からの説明を受けた時だった。

最下層ボスは4パーティー、50人で参加できた。

「ああ」

ヘルミオスからも声が漏れる。

ガララ提督がなぜこんな状況になったのか分かったようだ。

「ガララ提督は、自分たちだけで行けると判断した。しかし、自分のその判断のために仲間を失った。それで自らを責めていると」

アレンは睨みつけるガララ提督に語り掛け続ける。

(ヘルミオスのように安全重視で行くか、ガララ提督のように冒険するか。どちらもリーダーの在り方ではあるけどな)

絶対に問題ないかと確認したヘルミオスのやり方が正解とは言い切れない。

リスクを承知した上で冒険しないと得られないモノもある。

しかし、ガララ提督の判断で仲間を何人も失ったのは事実だ。

ガララ提督は自らを恨み、仲間に合わせる顔が無くて、アレンたちのいる拠点に逃げ込んだ。

ガララ提督はずっと自暴自棄になっていた。

「て、てめえ」

全てを理解されて、ガララ提督の言葉の勢いが弱くなる。

「ガララ提督。今こそ再挑戦の時です。私たちも、ヘルミオスパーティーもいます。より安全に挑戦できるのでは?」

最後アレンはガララ提督をパーティーに誘う。

「あ!? また行こうなんざ、あいつらに言えるわけねえだろうが! 何人死んだと思ってるんだ!!」

「そうなんですか」

「当り前だろうが! 皆俺の判断のせいで仲間が死んだって思っているに決まっているぞ!!」

もう、心の中のすべてをさらけ出すように叫ぶガララ提督の表情に悪態は無くなっていた。

懺悔するように、後悔するように、自らの心の中に溜まっていたものを吐きだす。

自らの過信と誤算によって失ってしまった仲間達の事を思うと、その過ちの大きさに心が耐えられず、自らをボロボロになるまでいじめ続けた。

「仲間もそう思っているでしょうか?」

「あ!?」

アレンがそう言うと、2階から物音が聞こえてくる。

2階の部屋で待機していた10人以上の足音が聞こえてくる。

そして、食堂にゾロゾロと入ってくる。

「「「提督……」」」

そこには13人になってしまったガララ提督の仲間全員だった。

「な、なんでここに……」

「アレン君が誘ってくれたっす。必ずヘルミオスのパーティーも誘って入れるから、このダンジョンを攻略しようって言ってくれたっす。皆で前に進むにはこれしかないって……」

嗚咽を交えながら、涙を拭きながら仲間のドワーフが言う。

「……」

既に仲間に組み込むこと前提に話を進められていたヘルミオスがアレンを見るが、アレンは何も言わない。

苦情申告のようにヘルミオスがアレンを見ているが、ガララ提督の仲間のドワーフ達が2階にいたことも気付いていたし、こういう話になっていることは予想できた。

「前にか……」

「そうっす。もう提督のそんな姿見てられないっす。また『ダンジョン攻略なんざわけねえぜ!』って言ってほしいっす。戻って来てくださいよ!!」

ボロボロになっていくガララ提督を心配そうに仲間たちはずっと見守り続けていた。

「言ってくれるじゃねえか……」

そこまで言うと、ガララ提督が沈黙する。

そして、アレンとヘルミオス、そしてそのパーティーをゆっくりと見つめ考え始める。

ガララ提督は、かつて慎重に考えられなかったことを、やり直すかのように深く考え始めた。

アルコールで酔った頭に真面目に働けと言わんばかりに、手の平を頭部に握り締めるように押さえつける。

必死に考え、いけるのか、勝率はあるのかについて計算を始めたようだ。

(よしよし、リーダーの思考が戻って来たかな)

アレンたちは黙ってその様子を見ている。

そして、既に酔いが覚めたかのようにガララ提督はアレンを見る。

そして、口にする。

「アレンよ。最下層ボスの攻略に参加する。いや、参加させてくれ」

「はい。もちろんです」

「だが、1つ参加の条件ってわけじゃねえが約束をして欲しい」

「え? 初回討伐報酬ならあげられませんよ」

「そんなんじゃねえよ。アレンとヘルミオスのパーティーが参加して勝率5割なら、俺らが参加しても絶対に勝つとは言い切れねえ。そうだな?」

「確かにそうですね」

「もし、考えた作戦がうまくいかなかった時、力が足りず敗戦が濃厚になった時。まあ、勝てねえ無理だって時には俺の超身兵がしんがりを務める。それでいいな?」

「それはどういう意味でしょうか?」

「俺が囮になるから13人は全員無事に帰せってことだ」

「「「て、提督……」」」

「おめえらは黙っていろ!!」

「なるほど。パーティーリーダーの責任ってやつですね」

「そうだ」

「なるほど。しかし、私にはパーティーを集めた責任があります。全パーティーの無事を確認するため最後まで残る責任があります。ここは納得してください」

最後まで残るのは構わないが、最後の最後に残るのはアレンだと言う。

それでも構わないかとガララ提督に念を押す。

「分かったよ。それがお前の覚悟なら止めねえよ」

「やった! これで俺たちは前に進めるんだ! 今日は飲みましょう! ねえ、アレンの兄貴!!」

(誰がアレンの兄貴だ。こんな弟分を持った覚えはないぞ)

ガララ提督の仲間が歓喜する。

「す、すごいな。バウキス帝国の最強部隊も参加するのか。これは歴史に残るぞ……。今日は大事なダンジョン攻略前の前祝いになるぞ」

ずっと黙っていたゼウ獣王子が驚きと共に称賛する。

「え? ゼウ獣王子も来るのですよ。5階層に行くための4パーティー分のメダル、最下層ボスに挑戦するためのメダルは準備しています」

「ん?」

ゼウ獣王子は理解が出来なかった。

何を言われたか理解できない。

「おお! いいね。そしたら、最下層ボス初回討伐の」

「な!? そんなことあってはならん!! 施しを受けて獣王陛下との約束を果たすなど!!」

(あれだな。ガララ提督といい。こんなにレイド戦集めに苦労したの前世でもそんなにないぞ。あの時は苦労したな)

ヘルミオスは、ゼウ獣王子が参加すれば、獣王陛下との間で約束を果たすことができる。

ゼウ獣王子が約束したのは最下層ボスの初回攻略だ。

獣王陛下との間で細かい約束がないのであれば、誰かのパーティーに参加するなり、獣人を集めて参加すればいいと考えた。

しかし、ヘルミオスの言葉を理解したゼウ獣王子が激怒する。

こんな、接待のような最下層ボス攻略など、獣王陛下との約束の冒涜になると言う。

断固反対の様子だ。

複数のパーティーで挑戦するレイド戦は、倒した時の報酬が大きいため我先に参加してくれる。

だから、募集主に自分がなった時もそこまで苦労した記憶がない。

苦労したのは、自分らの属性と相反するパーティーにも声を掛けないといけなかった時だった。

暗黒騎士のリーダーを誘わないといけなかった時はずいぶん揉めたなと、ゼウ獣王子が犬歯をむき出して切れる様を見て思う。

「施しではありません。ゼウ獣王子にもパーティーを引き受けて頂かないと倒せない相手です」

「い、いや。アレンよ。貴様も知っているだろう……」

怒り狂うゼウ獣王子に対して、アレンは真面目に返答する。

怒りが冷めていき、自らの立場を恥じるように言葉が淀んでしまう。

このS級ダンジョンには獣人はたくさんいるが、ほとんどが実力者ではない。

星でいうと1つや2つ程度だ。

ベク獣王太子はゼウ獣王子と獣王との約束を知っている。

ゼウ獣王子がS級ダンジョンを攻略すれば、ゼウ獣王子が次期獣王になりかねない。

自らの政敵になるであろうゼウ獣王子に塩を送るようなことはしない。

それは、シア獣王女が邪神教の教祖を捕らえてからも変わらなかった。

「獣王陛下はまだ、誰を獣王にするか決めていないと」

「そういうことだ。余はこのような実力者の足を引っ張る様なことはできぬ」

だからベク獣王太子は手を緩めることはない。

実力者がこのバウキス帝国にやって来ることはない。

たとえそれが、自らが獣王に成れないと分かっていてもだと言う。

「分かりました。間もなく、アルバハル獣王国最強の方々がいらっしゃいますので、少々お待ちを」

そう言ってアレンは食堂の扉を見る。

何のことだと思って、ゼウ獣王子のみならず皆が皆扉を見る。

誰もやって来ない。

1分、2分と経過するが誰もやって来ない。

誰もやって来ないぞとアレンを見るが、アレンの表情は確信に満ちている。

「だ、誰も……」

コンコン

誰もやって来ないぞとゼウ獣王子が言おうとした時に玄関の扉をノックする音が鳴る。

ヘルミオスの使用人が客人を迎えにやって来る。

本当に誰かがやって来たぞとドワーフたちもざわざわする。

ヘルミオスのパーティーもだ。

視線がアレンとアレンのパーティーに集まるが、アレンたちは平然としている。

アレンのパーティーは誰がやって来たか知っているようだ。

「あ、あの……」

しばらく経ってから、使用人が食堂に戻って来る。

緊張感が表情からも伝わってくる。

「お通ししてください」

ヘルミオスが答える前にアレンが答える。

使用人が緊張した表情で、食堂の中に客人を招く。

「こ、これはシグール元帥!」

ゼウ獣王子が驚きの声を上げる。

ローゼンヘイムの軍部最高幹部であるシグール元帥が配下のエルフと共に部屋に入ってきたからだ。

当然、5大陸同盟の1大陸を担う国の王族であるからシグール元帥には会ったことが何度もある。

何故ここにと口にしようとすると、さらにゾロゾロと部屋に入って来る。

「アレン殿、全員お連れしたぞ」

「ありがとうございます」

「「「……」」」

無言で自信に満ちた10人の獣人たちがシグール元帥に引き連れられてやって来る。

そして、ゼウ獣王子はあることに気付いた。

「こ、これはもしや、十英獣なのか?」

最下層ボスを攻略するため、ガララ提督も仲間に引き入れたアレンの、4パーティー目への交渉がこれから始まろうとしているのであった。