軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第242話 3階層②

「皆来るぞ!!」

アレンの掛け声と共に、既に陣形を組んでいた仲間たちが一層の臨戦態勢に移行する。

大穴からはワラワラと数十体のサソリの魔獣が湧いてくる。

どんどん向かって来るが作戦通り、陣形は崩さず迎え撃つことにする。

陣形を組むメリットが大きいことはアレンの前世からの常識だ。

「うりゃああああ!!」

向かって来るサソリの魔獣の頭に、掛け声と共にクレナの大剣が叩き込まれる。

体液をまき散らし砂の地面にサソリの魔獣の頭がめり込む。

『ロックスコーピオンを1体倒しました。経験値24000を取得しました』

「Bランクの魔獣だ。雑魚だぞ」

「分かったわ。ガンガン倒せばいいのね」

「ああ、セシル。ガンガン行こうぜ」

アレンは経験値から魔獣のランクを把握する。

数万の経験値はBランクの魔獣だ。

ローゼンヘイムの戦争で数百万の魔獣を狩ったアレンたちにとって、Bランクの魔獣はすでに敵ではない。

言葉通りガンガン数を減らしていく。

「お!? ふんぬ!!」

ドゴラの大盾に今まで戦っていたサソリより大型の魔獣の巨大化したハサミ状の触肢が衝撃音と共に激突する。

陣形を守るため、ドゴラよりはるかに大きいサソリの魔獣の一撃をこらえようとするが、砂の足場にずるずると跡を残しながら後ろに下がる。

「そいつはAランクだ。ドゴラは耐えてくれ。皆は雑魚の殲滅を急ぐんだ」

戦いにはいくつもの基本がある。

数十体程度の敵との戦いなら、雑魚となる魔獣を殲滅してから大ボスを倒した方が受けるダメージも減る。

「ああ、急いでくれよ」

Aランクになると魔獣の力は一気に跳ね上がる。

苦笑いをしながらドゴラは自らの10倍以上の大きさのサソリの魔獣を押さえ込む。

すると、さらにもう一体の大きなサソリの魔獣が大穴の中から出て来る。

「クレナもう1体出て来たぞ!! って!?」

『キャアアアアッス!!』

さらにもう一体ドゴラが押さえ込んでいる魔獣と同じサイズの魔獣が出てきたので、今度はクレナに対応させようとする。

しかし、ドゴラが抑えているサソリの魔獣よりさらに大きな魔獣が穴の中から出て来た。

「こいつは多分階層ボスだ。階層ボスが出て来たが、エクストラスキルはなるべく温存するぞ!! あ、ドゴラはいつでもエクストラスキル使っていいぞ」

思い出したかのように敢えてアレンは言う。

「あ? そんなこと、分かっているぞ!」

これからS級ダンジョンを攻略して行く上でエクストラスキルは万が一のときのために温存する作戦だ。

エクストラスキルはクールタイムが1日で、1日1回しか使えない。

今日は朝からダンジョンでの狩りを始めたばかりなので、これから連戦で魔獣を狩ることになる。

Sランクの魔獣がこの階層にもいるので、そのときに備えてなるべく温存したい。

例外として、ドゴラだけはいつでもエクストラスキルを使って良いと言うので、ドゴラも不服気に返事をする。

クレナにはドゴラが抑えているのと同じ大きさのサソリの魔獣の相手をさせる。

Bランクのロックスコーピオンがほとんど殲滅できそうなところで、最後に大穴から出てきた階層ボスと思われる魔獣にアレンは石Bの召喚獣を向かわせる。

ドゴラもクレナもAランクと思われるサソリの魔獣を押さえ込むので手がいっぱいになる。まだまだAランクの魔獣はクレナやドゴラにとって強敵だ。

エクストラスキルなしという条件ならまだAランクの魔獣を1人では倒せないだろう。

「こいつら、氷魔法に弱いわね」

(お、弱点属性があったか。それはかなり助かる)

セシルが属性を変えて魔法を打ちながら、ダメージの効き具合を調べていた。

氷魔法を放つと明らかにダメージが違うようで、のけ反るようにダメージを受けている。

「分かった。まずはクレナの方から倒すぞ。ソフィーはもしかしたら水にも弱いかもしれないから、水の精霊魔法を使ってくれ」

「畏まりましたわ」

Aランク以上が3体いるのでまずは数を減らしていかないといけない。

ドゴラの相手に対してはアレンが協力しつつ、クレナの方のサソリの魔獣を倒すことにする。

ソフィーやセシル、フォルマールが狙いを定めつつクレナと協力しながら、大きなサソリの魔獣の体力を削っていく。

(こういうときのためにもっと召喚獣の枠を設けておくか。いや、この我慢が今後の効率に繋がると思えば、今は我慢のしどころか)

最大70体出せるアレンの召喚獣は、現在10体程度しか召喚することができない。

なぜならスキル経験値のためにアレンは、魔力が上昇する魚Bの召喚獣を50体ほど魔導書のホルダーに入れているからだ。

召喚レベル8に早くしなければ、魔神が襲ってきたり、今後今以上のピンチが訪れたりしたときに対応しきれないかもしれない。

ここは仲間たちの成長促進も兼ねて、召喚獣をあまり出さない選択をする。

アレンの仲間たちはアレンと共に学園の頃からダンジョンに通っている。

ローゼンヘイムの戦争にも参加して、連携も戦い方も随分うまくなった。

しかし、戦いに正解はない。

最善と思われる戦い方にも、常に新たな戦法は出てくる。

転職しステータスが変われば、最適と思われた戦いが変わってくる。

常に最善を求める戦いができるようアレンは仲間たちと話をしてきた。

そんなこんな考えているとAランクの魔獣が2体とも倒せた。

「いや、回復俺だけだと結構きついな」

「まあ、ヒーラーは大変だろうが、これも練習だな。キール」

戦争中は湯水のごとく使った天の恵みだが、今回はぎりぎりまで使わないことにする。

収納に無限に貯めることができるので、いつか来る日に備えて蓄えることも大事だ。

天の恵みはぎりぎりでしか使わないが、魔力の種はDランクの魔石を冒険者ギルドでも募集しているので、湯水のごとく使う所存だ。

魔力の種は半径50メートルの範囲でパーティー全体の魔力を1000回復する。

お陰で、キールの回復魔法がパーティーの生命線となっている。

『デススコーピオンを1体倒しました。経験値200000を取得しました』

「よし、2体とも倒したぞ。弱らせたから最後の1体を倒すぞ」

(ミラーが2体やられてしまったな。でもだいぶ痛めつけることができたぞ)

アレンの言葉とともに、最後に出てきた一番大きなサソリの魔獣を標的にする。

「ちょっとアレン、あのデカいのってまさかSランクじゃないわよね?」

「いや、こいつはAランクの上位だな」

アレンはSランクではないことを断言する。

それは、この戦いが始まる前から知っていた。

「まあ、そうね。ずいぶん弱っているわね。下の階層の赤い虫よりずいぶん弱そうだわ」

セシルも、アレンがそう言うならと疑わない。

最後に出て来たサソリの魔獣は全身の頑丈そうな外骨格の至る所にヒビが入り、体液を噴き出している。

これは石Bの召喚獣が覚醒スキル「全反射」を3回使ったからだ。

頭がそこまで賢くないのか、強力な一撃を繰り出そうとするので、そのタイミングに合わせて全反射を使い続けたお陰でかなり弱っている。

クレナもドゴラもヒビが出来た所を優先して攻撃するので、階層ボスと思われるサソリの魔獣が大きな叫び声を上げながらのたうち回る。

ソフィーやセシル、フォルマールは大きなハサミ状の触肢と巨大で張りのある尾の攻撃を、クレナやドゴラが受けないように遠距離から援護をする。

クレナとドゴラが後衛を守るように、ソフィーやセシルは前衛を守る。

『デススコーピオンキングを1体倒しました。経験値4000000を取得しました』

魔導書の表紙に、最後の魔獣であるデススコーピオンキングを倒したログが流れる。

「お!? メダルが出たぞ。やはり階層ボスだ」

「お!? いいね。金貨200枚はうまいぜ!!」

一番後ろにいたキールがメダルに駆け寄る。

皆が駆け寄るとデススコーピオンキングが倒され光る泡となった場所に1つのAランクの魔石とサソリの模様のアイアンメダルが落ちている。

ダンジョンでは素材が手に入らないのは学園のダンジョンと同様だ。

魔獣を倒すと魔石だけを落とすので、魔獣の素材が必要ならばダンジョン以外で魔獣を倒さなくてはいけない。

階層ボスからは必ず1枚のメダルが手に入るようだ。

「これ1つで金貨200枚するのか。皆がダンジョンに行こうとするわけだ」

(3階層から4階層に行くにはメダルを全て金貨で買おうと思ったら、金貨1200枚かかるのか)

「そうね。ここにいるとお金の感覚が変わってしまいそうだわ。まあ、アレンといるから随分前から既に変わってしまっているかもしれないけど」

アレンはアイアンメダルを握りしめながらしみじみと言う。

そんなアレンの言葉に別の意味でセシルもしみじみと言う。

「じゃあ、洞窟の中に行くの?」

「いや、クレナ。洞窟の中には何もないようだ」

洞窟の中は魔獣が出て行ったあとは空っぽになっていることを、霊Bの召喚獣を使って既に確認済みだ。

「そっか。じゃあ、次の狩場だね!!」

クレナが大剣を握りしめてふんす! と戦いが終わったばかりなのに意気込んで言う。

「ああ、次はあっちだ」

既に次の目星もついている。

戦闘をしながら辺りにある岩山に向かって霊Bの召喚獣を飛ばしていたからだ。

そういう理由もあって、今の戦いでほとんど召喚獣を出すことができなかったとも言える。

魔石とメダルを回収し、次の岩山を目指すアレンたちであった。