軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第240話 ゴーレム

アレンたちはブラッド=ブラスト=ビートル(通称ビービー)から脱兎のごとく逃げ出した。

せっかく戦って削った体力が全回復したことから、アレン達がこのまま戦っても倒せる可能性は低い。

体力回復系の魔獣を立ち回りと作戦だけで倒したことは前世の健一のころから何度もあった。

しかし、立ち回りに失敗したときに失う物はとても大きい。

粘って勝ったとしても仲間に犠牲が出ると判断した。

決断が遅ければ、それだけ回復薬も消耗するし、仲間も危険にさらす。

パーティーのリーダーの仕事は早く決断することだとアレンは思っている。

耐久力が高く、素早い魔獣であったが、逃げるだけなら問題はなく、『ビービーに回り込まれた』なんて状況にはならなかった。

アレン達は、天駆という覚醒スキルを持ち素早く移動できる鳥Bの召喚獣に乗っている。

そして、召喚獣を囮に使えば、いくらでも距離を稼ぐことができる。

近くに冒険者がいないところまで誘導する余裕もあった。

ある程度距離を取ったら、ビービーは追ってくることを止めたので、どれくらい離れると追うのを止めるのかの検証もした。

ビービーの生態調査は、他の階層ボス討伐によるメダル集めのついでに行なった。

調査内容はこの魔獣の索敵範囲であったり、放置すればどの程度でいなくなるのかについてだ。ビービーを積極的に狩ろうという冒険者はいなかったので、調査対象として持ってこいであった。

どうやら1時間程度、冒険者と接触しなければ消えて別の場所にランダムに現れるようだ。

あんなのが2階層から出てくるなんて、さすがS級ダンジョンだなと思う。

そして、毎年半数もの冒険者が死ぬというのも分からない話でもない。

それから半日以上、全力で階層ボスを狩り、ブロンズメダルを3枚入手することができた。

階層ボスを倒したら魔石とともに、大きめのメダルが地面に落ちていた。

ついでにいくつか発見すると思っていた宝箱は何故か見つけることができなかった。

半径100キロメートルも索敵できるのに、宝箱が1つも見つからないなんて考えにくい。

もしかしたら、鳥Eの千里眼では見つけにくい位置に宝箱が落ちているのかもしれないと判断する。

鳥Eの召喚獣の千里眼は障害物を越えて索敵することはできない。

「さて、このくそまずい階層を離れて、次の階層に行くぞ」

「お前まだ言ってんのかよ」

「当然だ。久々にこんな目にあった」

「久々って、前回はいつだよ……」

呆れながらもドゴラが話に合わせる。

(新実装したばかりの狩場かよってくらい階層ボス倒せなかった。もう二度とこの階層では狩りをしない所存です)

ネットゲームでは、時々バージョンアップ等で新たなダンジョン、フィールドなどが実装される。すると、プレイヤーが殺到して敵の数より、プレイヤーの数が多くなる現象がしばしば起きたことを思い出す。

アレンたちの目の前には3階層に行くためのキューブ状の物体が浮いている。

『こんにちは。廃ゲーマーの皆様。ダンジョン階層管理システムS201です。次の階層にいきますか? それとも1階層に戻りますか?』

「3階層へ行きます」

『3階層ですね。ブロンズメダルを3枚お出しください』

「どうぞ」

アレンは3枚のブロンズメダルをキューブ状の物体に差し出す。

メダルには鶏やトカゲの模様が浮き出ている。

ブロンズメダルを手に入れて分かったが、メダルは全て同じというわけではない。倒した魔獣をデフォルメしたような模様がブロンズで出来たメダルに浮き出ている。

『確かに3枚のブロンズメダルを頂きました。では3階層に移動します』

キューブ状の物体がそう言った瞬間、アレンたちは転送された。

(む、ここが3階層か。何もなくてあまり代わり映えがしないか、っと。ん? 地面は砂だな。てことは砂漠フィールドか。また、見通しがいい系の階層か?)

アレンは、3階層の様子を窺う。

仲間たちも、一瞬で階層を移動したが、冒険者たちがいる何もない場所に変化がないか辺りを確認する。

地面が土から砂に変わっているので、3階層は砂漠の階層であることが分かった。

「なんか、この階層はドワーフが多いようだな。ちょっと全体の様子を見てみるか」

「ええ」

アレンの言葉にセシルが答える。

鳥Eの召喚獣を使い、空から見ると、2階層と同じく1キロメートルくらいの広場になっていることが分かった。

そして、広場から離れるとところどころで砂が波打つ砂漠が続いている。

ちらほら岩の塊が丘のように点在する地形のようだ。

(お!? ゴーレムだ。結構いるな。相変わらず俺の思っていたゴーレムとは違うが、やはり3階層はゴーレム使いにとって有利なフィールドなのか?)

2階層に比べて3階層には砂漠の上を闊歩するゴーレムが多くいる。

ゴーレムは2階層にもいたが、アレンの思っていたメカニック感はほとんどない。

あくまでもロボットではなく 傀儡人形(ゴーレム) ということなのだろう。

ゴーレムは銅製の光沢があり、あまりごつごつとはしていないように感じる。

地面にもつきそうな長い手。

頭はあるのだが、胸の部分に埋まっており、腕は胴体部分の肩の高さから双曲線状に生えている。

そして、100メートルと聞いていたが、殆どが10メートル程度だ。

100メートルのゴーレムもいるにはいるが、ほとんど見かけない。

(あのゴーレムの腹の水晶にドワーフが1人入っているらしいな)

2階層はどちらかというと獣人が多かったように感じた。

アレンはなぜこのようになったのか考える。

恐らく森林と草原で構成された2階層は、素早さに長けた獣人にとって稼ぐには有利な階層なのだろう。

森林と草原で構成されたフィールドで階層ボスを早く発見し、倒すことができる。

だから、2階層には獣人が多い。

もしかしたら、アレンたちが見つけられなかった宝箱を多く見つけることができる能力か何かを獣人は持っているのかもしれない。

(そういえば、昨日のウルとかいう獣人には会っていないな。まあ、2階層には今後行くつもりもないからもう会わないかもな)

昨日助けた獣人たちのパーティーには会っていない。

お礼云々と言う話もしたが、特に催促するつもりもないし、2階層を主要な活動場所にしている冒険者に、欲しい礼はない。このダンジョンの攻略情報が聞けるとも思えない。

礼の対価に1枚金貨100枚するブロンズメダルを寄こせと言って何枚渡せるのかも分からない。

アレンたちが自ら探し出してまでお礼を貰いに行くつもりはないので、このまま会わない可能性の方が高いだろうと思う。

「そっか。ガララ提督が言っていたのはこれか?」

アレンは砂漠を闊歩するゴーレムを見ながらあることに気付いた。

「どうしたの? アレン」

「ああ、セシル。どうやら、ドワーフはこの砂漠で有利なようだぞ」

「どういうこと?」

アレンが何か気付いたようなので、情報を共有するため皆が集まってくる。

ゴーレム使いのゴーレムだけでパーティーを組んではいないようだ。

獣人や人たちともパーティーを組んでいる。

種族を越えてパーティーを組んでいる冒険者たちもいる。

「どういうこと?」

「えっと、メルル。この砂漠はどうも砂の中に魔獣がいて襲ってくるようだ。ゴーレムが最初の攻撃を受けてパーティーを守っているようだぞ」

砂漠を前進するドワーフの入ったゴーレムに砂の中からサソリのような魔獣が襲いかかる。

ゴーレムがその硬い装甲で対応している間にパーティーの仲間たちが囲むように移動し戦闘が始まる。

これはゴーレムが頑丈で不意打ちに強いからだろうと予測する。

ゴーレムの高い肩の上に乗った獣人が、より高い位置から辺りを索敵しているパーティーも中にはいる。

ゴーレムの肩に上がれば危険から身を守ることができ一石二鳥だ。

ガララ提督は、3階層のこの状況をよく分かっていたのだろう。

ドワーフのゴーレム使いは3階層を得意とすることが分かった。

「頑張って最低5つの石板を探さないとな」

「うんうん!」

(メルルがいるから口には出さないが、バウキス帝国はぼったくりが多いな。アイアンの石板が1つ金貨3000枚とか)

魔導盤を使いゴーレムを出すには石板を魔導盤にはめないといけない。

魔導盤には石板をはめることができる窪みが10個ある。

ゴーレムを作るには「本体用石板」という基礎となる5つの石板が必要だ。

頭、体、右手、左手、足の5つの石板を魔導盤にはめれば、一応最低限のゴーレムが完成する。ただ5つ集めればいいのではなく、部位ごとに1つずつ計5つ集める必要がある。

被って不要な石板は神殿で買い取ってくれるのだが、ブロンズならどの部位でも1つ金貨100枚、アイアンならどの部位でも1つ金貨300枚だ。

じゃあ、神殿は買取のみで販売をしていないかといえばそうではなく、販売してはいる。

ただし、ブロンズでもアイアンでもゴーレムの本体用石板を買うには、それぞれ売値の10倍の値段で買わないといけない。

ブロンズは金貨1000枚で、アイアンなら金貨3000枚で1つの部品用石板を買うことができる。

5つの本体用石板を買ってアイアンゴーレムを揃えようものなら金貨15000枚必要だ。

アレンの資産の2倍必要になる。とても買えなかった。

「お! なんかすごいのがいるぞ!!」

「え? 何々!?」

アレンが声を上げるので、メルルも皆も反応する。

「いや、砂上を走るゴーレムがいるぞ」

「「「おお!!」」」

(これが特殊用石板の効果か)

アレンはメルルから聞いたゴーレムの可能性について思い出す。

ゴーレムには戦闘以外にかなりの有用性があった。

今アレンは鳥Eの召喚獣を通して砂の上を滑走するゴーレムを見ている。

下半身が船のようになっており、すいすいと砂の上を進んでいく。

パーティーメンバーがゴーレムの上に乗っていることも分かる。

これは特殊用石板の効果だ。

10個ある魔導盤の窪みにはめることができる石板には、ゴーレムの機能や形状を変えるものがある。

海上を進めるようになったり、空を飛べるようになったりする特殊用石板もあるとメルルから聞いた。

(なんとしてでも、家に変形する特殊用石板を探さないとな)

その中で特に欲しいものがアレンにはある。

ゴーレムが変形して家になることもできる石版も中にはあるという。

要塞のように堅牢で、中で寝泊まりができるらしい。

「さて、ワクワクしてきたな。次の階層に行く条件を聞いて、石板集めもしていくぞ」

アレンの一声で次の行動に移る仲間たちであった。