軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第237話 一触即発

メルルに対して何故人間といるんだと、海賊帽子を被ったガラの悪いドワーフが問う。

メルルはこのドワーフをガララ提督と呼んでいた。

(提督っていうより海賊だな。見た目も態度も)

「みんな、僕の仲間なんだ」

メルルは屈託のない笑顔でガララ提督の問いに即答した。

「お前何を言ってるんだ? せっかくの貴重な才能があるのによ。おい、メルル。まだパーティーに空きがあるぞ。お前も俺らと来るか?」

「「「……」」」

メルルが人間といることが信じられないようだ。

アレンたちが目の前にいるのに、当たり前のようにメルルをパーティーに勧誘する。

(提督か。バウキス帝国だけ、軍の階級の名称が違うんだっけ)

アレンは、いきなりやってきたガララ提督を見ながら思い出す。

この世界は言語だけでなく、通貨や長さ、時間などほとんどの単位が国や大陸を超えて統一されている。

もともとそこまで国家間や大陸間で差がなかったのだが、この数十年の間に魔王軍と戦うべく統一を急いだという経緯がある。

物の大きさが違えば、戦場への物資の供給方法や量も違うし、通貨の価値が違えば取引も手間になる。

全ては魔王軍との戦いをより効率よく行うための流れだ。

そんな中、バウキス帝国は自国の大陸が、魔王軍との戦争で他国の援助を求めることがないという理由から軍の階級の名称を中央大陸やローゼンヘイムと同じにしなかった。

昔ながらの名称で、提督、大将、中将という独自の階級を使っている。

(たしか提督って元帥と同じくらいの階級だっけ。バウキス帝国の最高幹部が何でいるんだろう? やっぱりダンジョン好きなのか)

「僕は仲間たちと一緒にダンジョン攻略するよ!」

アレンが別のことを考えていると、メルルがガララ提督の誘いを断った。

ガララ提督の仲間というより配下と思われるドワーフたちが信じられないと絶句している。

「おい、お前ら、何をメルルに吹き込んだんだ? ダンジョン攻略したいからってメルルをたぶらかしやがって」

「え? 別に何も? えっと、ダンジョンの攻略に行きたいのですが?」

メルルからアレンたちに話す相手を変えたので、アレンが代表して答える。

(これは何の会話だろうか)

アレンとしては特にガララ提督に用事はないので、そろそろダンジョンの攻略を始めたいと伝える。

「ほう、てめえ。俺に向かっていい度胸だな! 別に力ずくでもいいんだぞ?」

その言葉に変わらず落ち着いていたアレンとは違い、目の前のドワーフたちを睨んでいたドゴラが背中に掛けていた斧の柄に手を伸ばした。

どうやらガララ提督の「力ずく」という言葉を看過できなかったようだ。

「「「……」」」

ガララ提督の後ろにいるドワーフたちは、斧の柄を握りしめたドゴラの動きを見逃さなかった。

ドワーフたちは自らの首にかけた魔導盤に手をかける。

ブブンッ

魔導盤はドワーフたちが手で触れたことで反応を示す。幾何学的な文字のようなものが浮かんでいる。

(お? 魔導盤にはめ込んだ石板に何か浮かんできたな)

「ほう。俺らが誰か分かってんだろうな?」

武器を手に取ったドゴラを完全に敵と認定したようだ。

ガララ提督の後ろにいるドワーフの1人がさらに挑発をする。

「あ? 知らねえよ。メルルは仲間だ。渡すわけねえだろ?」

一歩も引かずに、さらにドゴラは重心を移動させ、一気に攻め込めるように体の姿勢を変える。

(ドゴラは熱い男だな。さて、どうするかな? 戦ってダンジョン攻略に影響出ると困るんだが)

どうしようかなとアレンが考えていると、ガララ提督がため息をついた。

「おい、何、ガキの挑発に乗ってんだよ」

(お前が挑発するからだろ)

そう言って、片手を上げ、仕舞だと手をひらひらと動かす。

それが武装解除の合図であったようで、ドワーフたちは魔導盤から手を放す。

「ドゴラも武器から手を放せ」

「ああ」

アレンの言葉にドゴラが手を放す。

「ん? てめえがパーティーのリーダーか?」

「そうです」

パーティー内の序列がドゴラに対するアレンの言葉で分かったようだ。

「まあ、メルルがお前らと仲間でいたいっていうならそれでいいぜ。だがな……」

「なんでしょう?」

「てめえらが、メルルを盾に危機から逃げだすようなことをしてみろ。その時はお前らをどこの国にいようが見つけ出して、確実にぶっ殺すからな。覚えていろ」

それだけ言うと、ガララ提督はアレンたちの横を通り抜け、キューブ状の物体の方に行く。どうやら、話はこれで終わりのようだ。

「もう、ガララ提督荒れないでくださいよ~」

ガララ提督の後ろのドワーフが宥める。

「うるせえよ。早くメダル出せ。意地汚い皇帝のせいで、何で戦争終わって早々ダンジョン攻略せな……」

よく聞こえる独り言をぶつぶつ言いながら配下と思われるドワーフにメダルを出せと言っている。

するとドワーフたちが慌ててガララ提督を囲み口を押さえだす。

どうやら口にしてはいけないことだったようだ。

「はやく、メダルを!!」

「おい、てめえら何しやがる。は、離せ。ぶっ殺すぞ!!」

(何か神輿みたいに担がれているな)

「もう~。提督、人前でそんなことを言わないでくださいよ~」

「だから提督はやめろって……」

ガララ提督がそこまで言ったところで、担がれたガララ提督とドワーフたちが一気にその場から消えた。どうやら次の階層に飛んでしまったようだ。

(何だったんだろう。それにしても、あれがメダルか。結構大きいんだな)

メダルをドワーフが出したので、アレンは食い入るように見ていた。

「ああやって使うのか。それにしても、盾か。やっぱり盾なのか」

「アレン何を言ってんのよ。それにしてもあいつら何なのよ!」

セシルはずっとドワーフたちとのやり取りの間黙っていたが、怒り心頭のようだ。

皆がプリプリと怒る中、アレンは口にする。

「いや、やっぱりメルルはタンクだったんだな」

「タンク?」

メルルに向かって「タンク」という前世のパーティーでの戦いの役回りの名前を口にする。

なんだそれとメルルは「タンク」と言う言葉をオウム返しする。

「そうだ、タンクになるかもしれない。それも究極のタンクだ」

メルルが何のことかと言う風に言葉を返すので、今アレンが考えていることを皆に共有することにする。

アレンはこのパーティーの弱さは守りにあると考えている。

だから、急ごしらえであるが、ドゴラに大きな盾を持たせたりしていた。

S級ダンジョンを攻略する上でも、今後の魔王軍、特に魔神との戦いでも守りの力が必要になってくる。

アレンの仲間には後衛や中衛がかなり多い。

聖者のキール、大魔導士のセシル、精霊魔導士のソフィーは完全な後衛だ。

弓豪のフォルマールもほぼ後衛で、アレンは中衛だ。

この5人を必死にドゴラとクレナが守るという立ち位置の練習を行ってきた。

学園のダンジョンでメルルに槍と盾を持たせたのも、守りを少しでも良くしたいという思いからだ。

しかし、本当の強敵、例えば魔神級の強敵に出会った場合、クレナとドゴラだけではこの5人を守り切れない恐れがある。

アレンも高速召喚などあらゆる手を使うが、それでも4人の身の安全を守り切れるかはわからない。

アレンはたった今、ガララ提督の言った言葉を思い出す。

ガララ提督は「メルルを盾にして逃げるな」と言っていた。

このS級ダンジョンでメルルがミスリル級のゴーレムを手に入れ、そのミスリル級のゴーレムが魔神の一撃に耐えられるなら戦況は一気に変わる。

メルルを盾に、アレンも含めて仲間たちが攻撃し放題になる。

後衛は完全な盾役のタンクが現れたとき、絶大な力を発揮できるようになることをアレンは知っている。

魔法使いなどの後衛は高火力の大砲と化し、回復役は安全なところからひたすら回復魔法をかけることができる。

ドゴラも盾を捨てて、攻撃に集中できる。

ソフィーは守りの精霊ではなく、攻撃主体の精霊を顕現する選択が容易にできるようになる。

攻撃をしなければ敵は倒せない。

攻撃の手数を増やすことができるなら、戦いに掛ける時間も減らせて効率化が進む。

「あ、アレン……」

セシルが言葉に詰まる。

あまりに熱くアレンがタンクの有用性について語るからだ。

自分らがドワーフに怒っていたことがもしかしたら間違っていたのかもしれないとすら思えてくる。

「さて、とりあえず、ブロンズ級の石板がこの階層で手に入るらしいが、さすがにブロンズ級から始めてもな。予定通りアイアン級でいいよな」

「うん!」

「じゃあ、次の階層に行かないとな」

冒険者ギルドで、ゴーレムの石板がどこで手に入るのか聞いてきた。

2階層でブロンズ級の石板が手に入る。

3階層でアイアン級の石板が手に入る。

4階層でミスリル級の石板が手に入る。

目標はミスリル級の石板だが、4階層は結構な強敵が出ると勇者ヘルミオスから聞いているので、アイアン級のゴーレムを作ってからの攻略になるとメルルや仲間と話していた。

「じゃあ、ブロンズメダルを3枚集めて次の階層に行かないとな」

「うん!!」

メルルの笑顔とアレンの声に、先ほどの一触即発の雰囲気など消し飛んでいたのであった。