軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第207話 フォルテニア

ヘルミオスがローゼンヘイムのティアモの街にやって来て、3日が過ぎた。

アレン達は建物から少し離れたところにある広場にいる。

広場の中央でうつぶせになって倒れている一人の大柄な少年は大きく息を吐いている。

「やっぱり、ドゴラ君はここに残った方がいいよ」

「……う、うるせえ。絶対に行く」

(3日も過ぎてしまったな。ドゴラのエクストラスキルは厳しいか、そろそろ決断を迫る時だな)

ドベルグとの特訓でエクストラスキルを使えるようになったクレナのように、ドゴラもエクストラスキルに目覚めないかと期待したが、3日かそこらでは無理だったようだ。

「ヘルミオスさん、学園でもエクストラスキルを使えるようになるまで何年もかかる者もいると聞きましたが、覚えるまでに差があるのは何か理由はあるんですか?」

エクストラスキルは覚えが良い者、悪い者がいると学園で聞いた。

学園の実技の指導を行っているヘルミオスに、ドゴラの問題点のヒントがないか聞いてみる。

「う~ん、知力や魔力が高い職業は覚えがいいと言われているね。魔力の使い方にエクストラスキルの感覚が近いからという説が一般的かな。だから、そもそもで言うと剣士とか斧使いは覚えが悪い。スキルの習得速度も魔法使いの方が剣士よりいいしね」

(なるほど、そう言われたらそうだな。さすが教官として、学園をいくつも回っているだけあるな。名実ともに勇者だな)

アレンは、生まれた時から勇者として育てられ、そして勇者として生きた人の半生を思う。

そして、アレンはヘルミオスの分析に、自らの経験を当て嵌め納得する。

子供のころから魔導士による教育を受けていたセシルだけでなく、僧侶のキールもスキルを2、3ヵ月教会に通って習得したと言っていた。

しかし、学園に通った際にクレナやドゴラのスキル習得にかなり時間がかかったことを覚えている。

「なるほど、なんとなくわかる気がします。でもクレナはドベルグさんの特訓で、1日で使えるようになりましたけど」

「……」

クレナはすぐに覚えて、ドゴラの覚えが悪い理由はあるのかと問う。

ドゴラが深く呼吸しながら、アレンとヘルミオスとの会話を聞いている。

「まあ、馬鹿というか、何も考えない人の方がエクストラの覚えが良いっていうのは帝国では有名な話だよ」

「「「馬鹿!」」」

「ほうほう」

アレンの仲間達は、一様に「馬鹿」と言う単語を拾ってしまう。

クレナだけが感心しながらヘルミオスの話を聞いている。

モルモの実を齧りながら、アレンとヘルミオスの会話を聞いているクレナを見ると、アレンの仲間達も納得してしまう。

「それで言うと、ドゴラ君は頭が固いというか常識に囚われていると言うか……」

アレンのパーティーにいるにも関わらず、ドゴラは常識人認定されてしまったようだ。

「あれこれ、考え過ぎってことですか?」

(両極端だな。知力が高い者が覚えやすく、次点で頭が悪い者か。半端者は覚えも半端だと)

「そういうこと。どうするのまだ続けるの? 僕の貸し出しは10日って聞いているけど」

あえて「10日」という言葉を使う。ヘルミオスは貸し出されたことを根に持っているようだ。

「もう作戦も決めましたし、あまり長いことここにいても仕方ないな。明日にはフォルテニアに向けて出発しよう」

ドゴラの特訓のためだけにここにいたわけではない。

ヘルミオスを入れた作戦も考えてきたし、話し合ってきた。

アレンは、ドゴラも含めて仲間たち全員から、魔神レーゼル戦に参加すると言われた。

参加希望する全員で行くつもりだったので、全員で行く作戦を立て、ヘルミオスにも作戦を共有している。「それなら、まあ」といってドゴラの参戦を強く反対することはないようだ。

クレナのエクストラ発動時のスキル使用についても検証してきた。

ヘルミオス曰く、ステータス増加系のエクストラスキルの場合は、スキルを使用できないと断言された。

「分かったわ。明日の出発ね」

こうしてティアモの街で出来ることは全て済ませた。

翌日の朝、建物内で女王や将軍達に出発の挨拶をする。

「俺は行かなくていいのか」

ローゼンヘイム最強の男にして精霊使いのガトルーガが、改めて魔神レーゼルとの戦いに参加しなくていいのか聞いてくる。

「はい、私達だけで行きます。ガトルーガさんは、私達のいないローゼンヘイムをよろしくお願いします」

「そうか、分かった」

今回の作戦に、ガトルーガは入っていない。

ガトルーガとしてはローゼンヘイムと女王のために参加したかったようだが、渋々ながら納得したといった感じだ。

アレン達にもしもの事があった時は、ローゼンヘイムで戦える者が必要だ。

(結局精霊王はキラキラ状態から変わらなかったな。さて)

女王の膝の上で、ヘソ天で眠る精霊王から女王に視線を移す。

「女王陛下」

「はい」

「昨日もお話ししましたが、目的は魔神討伐です。強敵である故にフォルテニアはなくなるかもしれませんが、よろしいですね?」

「もちろんです。ローゼンヘイムから災いが振り払われるのであれば」

「ありがとうございます。これで、全力で戦えます」

目的は魔神レーゼルを倒すこと。この中にフォルテニアの奪還は含まれていない。

仮令、フォルテニアが灰塵に帰しても問題はないか確認するが、問題ないと言われた。

フォルテニアのどの場所での戦いになろうと、手加減をするつもりはない。

「救国の英雄達に精霊王の祝福を」

最後に女王が両手を胸の前で組み、アレン達の無事を祈る。

建物をあとにして、鳥Bの召喚獣達に乗りフォルテニアを目指す。

ここにいるのは、アレン、クレナ、セシル、ドゴラ、キール、ソフィー、フォルマールの7人だ。

ヘルミオスは作戦のため、既に前日に出発している。

2日目の夕方にはラポルカ要塞に到着する。

要塞での攻防戦が終わってから何日も経っているので、随分要塞回りの魔獣達が片付いている。アレンの召喚獣も率先して、魔獣の解体や焼却を手伝った。

アレンの取り分の魔石を回収し、その日はラポルカ要塞で夜を明かす。

翌日の朝から出発して夕方にはフォルテニアが見えてくる。

少し離れたところから既に見えていたが、近くで見るとその木の大きさに圧倒される。

夕焼けに照らされた世界樹はとても幻想的だ。そのすそ野には、ローゼンヘイムの首都フォルテニアが見える。

「フォルマールはここで別働だ」

アレンは作戦を開始する。

「ああ、ソフィアローネ様をよろしく頼む」

フォルマールが王女であるソフィーの無事をアレンにお願いする。

アレンは鳥Bの召喚獣を新たに出し、フォルマールを乗せる。

フォルマールが上空で待機する中、フォルテニアの高い外壁を、鳥Bの召喚獣達に乗ったまま越え、街中を飛んでいく。

街の中に入って行くのはフォルマールを除いた6人だ。

アレンと仲間達が目指すのは、以前霊Bの召喚獣が魔神たちと対峙した街の中央にある神殿だ。

魔神レーゼルは、神殿にある女王の玉座に座っていた。

「誰もいないわね」

街並みを見てセシルが口にする。

100万人はいたのではと思える広さのローゼンヘイムの首都フォルテニアは、静寂で包まれている。

元はエルフの国らしい情緒と歴史溢れる木造の建物が並ぶ、美しい街並みだったのだろう。

2ヵ月以上前に陥落し、街のところどころは火の手が上がったようで、今では炭のように焼け焦げている。どこにも人の姿は見られない。

「魔獣もいないな。建物内に待機させているのか?」

とても静かな街だった。

魔獣が跋扈し、アレン達に対して迎撃してくるのかと思ったが、そんなことは一切ない。

(隠れて俺らを油断させようとしているのか。魔獣なんて出す必要がないということか)

誰もいない、何もいない街を進み神殿に入る。

アレン達は鳥Bの召喚獣から降り、神殿内に入って行く。

この神殿に2階はなく、木造の樹齢何百年も経っていそうな、歪みのない真っ直ぐな木の柱が等間隔に並び、その柱に支えられた高い天井があるだけだ。

中央奥には、精霊王を祭る祭壇があり、中央には玉座がある。

そのまま真っ直ぐ神殿の中央にある玉座に到着する。

中央の玉座には、アレンを見据える真っ赤な目の異形の者が座っている。

その横には、以前取り逃がした魔族の男ネフティラが、アレン達を睨みつけるように立っている。

『とうとう来たか。そうか、やはり軍を派遣せずお前らだけで来たか。お前がアレンか?』

「ああ、お前を倒しに来たぞ。魔神レーゼルよ」

『倒すか。魔神と分かって、一切の恐怖もないのか』

品定めするようにアレンをジロジロと見ている。

「あ? エリーから聞いていなかったか? たかだか魔神に、選ばれし俺が負けるわけないだろう?」

あえて尊大な態度をアレンは、魔神を相手に示す。

その言葉は、以前霊Bの召喚獣が魔神レーゼルに示した態度と合致する。

『ほう、無知で怖いもの知らずか。さすが開放者だ。人間共の中にいると自分を勘違いするものだな』

アレンの言葉にニヤリと口角を上げ、魔神レーゼルはゆっくり立ち上がったのであった。