軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第205話 勇者

アレン達は場所を会議室に変え、勇者ヘルミオスと今後の話をする。

女王にシグール元帥、ルキドラール大将軍、精霊使いガトルーガも打合せに参加する。

この打合せが、今後のローゼンヘイムの未来を変えると言っても過言ではないくらい大事な話になる。

お陰で10人以上の人数で座っても大丈夫な円卓のある会議室を案内された。

遠路はるばるやって来たヘルミオスを労う意味も込めて食事を摂りながらの打合せとなる。

「おお! 久々だ! うまそうだね」

そう言ってワシャワシャとヘルミオスが、野菜多めのエルフ料理に手を付ける。

ヘルミオスは平民出ということもあり、あまりマナーのある食べ方ではないようだ。

「久々って、そういえば、前から気になっていたことがあるんですけど」

「うん? アレン君何だい?」

「ヘルミオスさんって、ギアムート帝国の最前線で魔王軍と対して戦っているんですよね。どうやって、ローゼンヘイムやバウキス帝国に足を運んでいるんですか?」

(ローゼンヘイムで精霊王から魔力回復リングを貰ったり、バウキス帝国のS級ダンジョンにも行っているみたいだし、戦線維持出来るのかな? 普段何してんの?)

アレンは勇者の生態について調査を試みる。

「ああ、それはね。まあ、魔王軍とはいつも年がら年中、戦っているわけじゃないからね。皆が思っているより、戦っていない時間って多いんだよ」

そう言ってヘルミオスは、日ごろの勇者の活動について話をしてくれる。

アレンの仲間達は、勇者の活動とあって興味津々で聞いている。そんな中、クレナだけが料理に夢中になっている。

ヘルミオスの話では、魔王軍との戦いは年に2,3ヵ月程度とのことだ。

実際の戦闘はさらに短くなる。移動、作戦の共有、戦後の処理をして全てひっくるめて、長くて3ヶ月だと言う。

アレンはローゼンヘイムにやってきて1ヵ月程度で戦況を変えたのだが、勇者が相手で魔王軍ならその程度になるのかと思う。

「それ以外の期間は何をしているんですの?」

「ん? 君は?」

「アレンのパーティーメンバーのセシルと申しますわ」

聞かれて普通にセシルが名乗る。

いつも常識外のアレンを見ているセシルにとって、勇者ヘルミオスはそこまで緊張する相手ではないようだ。

「セシルさんね。それ以外の期間は、帝国には学園が20個ほどあるからね。教育指南のためにそこらを回ったりしてるわけさ」

「「「20個!」」」

(あれ、少し多いって聞いたけどそんなに多かったっけ。王国との人口比を考えれば当然なのか。たしか王国と違って3種類の学園があるとか)

ギアムート帝国はラターシュ王国の数十倍の人口と領土を誇る。

学園は皆同じカリキュラムではなく、3種類に分けられる。

1種類目は、学園期間は1年で、一般兵に戦闘訓練だけを施す。

2種類目は、学園期間は3年で、一般教養から細かい戦術までの一定範囲の教育を施す。

3種類目は、学園期間は5年で、貴族や貴重な才能を持った者に英才教育を施す。

5大陸同盟が決めた1国1学園制度は、2種類目の学園の教育内容になっている。

アレンは学園でこの話を聞いて、大半は1種類目でガチガチに戦闘訓練と上官の指示が絶対であることだけ教えて戦場に送るのかなと思った。

なお、ヘルミオスは2種類目の3年間学園で教育を受けたとの事だ。

「あとは装備を揃えるため、国内や他国のダンジョンに入ったりもする。だからバウキス帝国のことも知っているんだよ」

基本的にヘルミオスは他の大陸も含めすべての国でフリーパスだと言う。

「なるほど、それでシルビアさんと一緒にってことですね」

「シルビアさん? アレン、シルビアさんって誰?」

「ああ、クレナ。ヘルミオスさんがパーティーを組んでいる剣聖だよ」

クレナがシルビアと言う名前に反応した。ひたすらエルフ飯を食べているわけじゃなかったようだ。

「そう。大体10人くらいのパーティーを組んでいるんだ。聖女や大魔導士や剣聖が基本的な構成だね」

(ほう、全員レア度星3つの職業ってことか。なるほど、だから勇者の装備がこんなにいいのか)

何となく帝国の事情が分かった。

魔王軍との戦いで大事なのは、当然戦争に勝つことなので、強くならなくてはいけない。

そのためにはより強力な装備を手に入れることが命題としてあるのだろう。

ノーマルモードではレベルなどすぐにカンストするからだ。レベルで強くなれないなら装備で強くなるということはアレンも考えたことだ。

ヘルミオスが学園の武術大会で、オリハルコン装備に加えて、素早さが3000も上昇する指輪を装備していたのも、そういう理由があったからだ。

S級ダンジョンなどにも耐えうるパーティーを帝国が率先して集める。

そして、3つ星のレア職がさらに強化され、戦場で活躍するということだろう。

きっと3つ星であってもガチガチに強化すれば一騎当千の働きをしてくれるのだろう。

「ありがとうございます。勇者の活動が分かったような気がします。戦場の方はあらかた片付いたと言っていましたが、どんな状況なんですか?」

勇者がローゼンヘイムに来れるくらいに片付いたことは分かったのだが、具体的な戦況は中央大陸北部から召喚獣をほとんど引き上げてしまったため分からない。

「ああ、アレン君が届けてくれた霊薬のお陰で、10日間でほとんどの魔獣は倒せていたんだよ」

「じゃあ、魔王軍は殲滅したってことですか?」

(ここは重要なので確認だ)

魔王軍は結構逃げることがある。

これはローゼンヘイムでの戦いでも経験したが、学園の授業でも習った。

魔王軍は過度に魔獣がやられ消耗したら撤退をする。

「いや7、8割倒せたところで、撤退したかな。だから、今追撃部隊を編成し向かってくれているよ。霊薬がまだまだあるから戦えるしね」

魔王軍は撤退しても、数を戻して襲い掛かってくる。

今後のためにも倒せるならできるだけ倒しておきたいと、中央大陸北部の軍上層部は判断したようだ。

「では、魔族や魔神は、中央大陸の魔王軍にはいたのですか?」

アレンは、この質問を中央大陸の要塞の部屋でもした。

その時のヘルミオスの回答はまだ分からないというものだった。

「ああ、上位魔族が1体と魔族が3体だったかな。既に倒してある」

「ああ、パーティーでということですか?」

「そうだよ。そのためのパーティーだからね」

(なるほど、分かってきたぞ。Aランク強の上位魔族や、それ以上の魔神を倒すために勇者がパーティーを組んでいるのか。そこらの兵では手に余ると)

ヘルミオスは要塞で他の兵と同様に戦う。

しかし、他の兵では倒せない敵が魔王軍にいる。

上位魔族や魔神は、少数精鋭の勇者パーティーに倒させるという作戦をギアムート帝国はしているようだ。

(そして、剣聖や聖女が死ねば、代わりがやってくると)

質問しないが分かったことがある。

中央大陸の要塞で、ヘルミオスは仲間が魔神に殺されたと言っていた。

しかし、今は10人ばかりでパーティーを組んでいると言う。

元は20人とか30人いたのかと言えば、そんなことはないだろう。

パーティーは多ければ良いというものではない。

活動しやすい構成というものがある。

恐らく活動しやすい人数が10人前後で、仲間が死ねば帝国が新たな仲間を補充するのだろう。

「それで、アレン君の召喚獣っていうのだっけ? どんなことができるのか教えてよ」

「もちろんです。これから、背中を預けるわけですからね」

仲間達が(((え!!教えるんだ)))と驚きの表情を浮かべながら、アレンの方を見ている。

(そういえば、受験の時に、教えるのか教えないのかで揉めたな。結局チョロスケを1体召喚して見せただけだけど)

アレンは必要だと思ったときは能力を開示するし、不要だと思ったときは開示しない。

シンプルにそれだけを考えている。

今回はヘルミオスにアレンの能力を教えることにする。

ヘルミオスがいないと勝てないと判断したため、ヘルミオス込みで魔神と戦う。

当然教える内容は、エルフの兵達が見聞きした内容に限る。戦争に必要な能力はエルフの兵達に見せたのだから、その程度のことを説明してもどうということはない。

強化だの共有だのと、鳥系統の召喚獣の説明などする必要もない。あくまでも戦いに必要な情報のみだ。

召喚上限はと聞かれたので、霊薬も魔力回復リングもあるから、魔神戦で召喚できなくなることはないと答えておく。

「ふ~ん」

ヘルミオスは全て説明していないことくらい感づいたようだ。

しかし、それ以上何も言ってこない。

「他に何か聞いておかないといけないことはありますか?」

必要なことは答えますよと言わんばかりの含みを持たせてアレンはヘルミオスに問いかける。

「いやない、まあ気になったことがあれば、思いついた時に聞くよ。そうかそうか」

何かに納得したようだ。

「じゃあ、今後の作戦を考えましょう」

「いや、そうだけど、その前にちょっと気になったことがあるんだけど」

「はい、何でしょうか?」

「みんなで話を聞いているけど、この戦いは僕とアレン君だけで戦うってことでいいんだよね?」

「「「え?」」」

「な、なんだと! どういうことだ!!」

アレンの仲間達が驚愕の声を上げる中、ヘルミオスの問いにドゴラが立ち上がり大きな声で叫んだのであった。