軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第199話 海上戦

アレンは鳥Bの召喚獣に乗って、大海原の上にいる。360度、見渡す限り海だ。

(来たか)

水平線の先から、ぽつぽつと何かがやって来る。

そして、瞬く間に海を覆いつくす軍勢となって、アレンの下にやって来る。

南進する魔王軍の軍勢だ。

(そうか。なるほど、魔王軍は海洋を長距離進むのは大変なんだな。資源がないのか、食料も魔王のいる大陸ではできにくいのかもな)

アレンは鳥Eの召喚獣を使い、魔王軍の進行方向やどのような形でやってくるのかを調べていた。

魔王軍は船などは使わず、Aランクと思われる大型の海棲魔獣の背中に魔獣達を乗せて運んでいる。1体当たり数十体の魔獣が乗っているように見える。

学園で受けた魔王軍の侵攻についての授業を思い出す。

魔王軍が侵攻を始めてから60年ほどになるが、南の2大陸には侵攻していない。

中央大陸の北に存在する、魔王のいる「忘れられた大陸」は不毛の大地だと言う。

そんなところでは食料を増やすのもままならず、魔獣の数だけが増えていくのかなと思う。

Aランクの魔獣の上にいる魔獣達は、どこかやつれているような気がする。

(さて、戦うなら徹底的にだな。天の恵みを配ったし、中央大陸でもそうしてくれているはずだ)

アレンはグランヴェルの街にいるときに、オークやゴブリンを白竜山脈周辺の森から根絶やしにしたことがある。一度滅ぼしたオークやゴブリンは新たに発生しなかった。

最近では隣領からやって来てまた増え始めたという話を、父ロダンから聞いた。

魔獣も狩れば、元の数まで増えるのに時間がかかる。

今回魔王軍が抱える魔獣の内、どれだけの数を戦いに向かわせたか分からないが、失えば数年立ち直れない数なのは分かる。敗北を覚えての撤退など、させるわけにはいかない。撤退させずに殲滅する必要がある。

天の恵みを中央大陸にも投入したので、スキルの使用量が圧倒的に増えた5大陸同盟軍が、魔王軍が撤退の判断をする前に滅ぼしてくれるだろうと考えている。

ローゼンヘイムにやってきた魔王軍も、撤退などさせずに滅ぼす。

「生きて帰れると思うなよ」

アレンはそれだけ呟いて魔導書を開き、ホルダー内のカードの数を確認する。

(召喚枠は22体か。アリポンとドラドラとミラーの指揮化はあっちだな)

・ロダン開拓村に1体

・ネストの街に1体

・ティアモの街に1体

・仲間達の乗っている鳥Bの召喚獣4体

・ラポルカ要塞を守る召喚獣30体

・アレンの乗っている鳥Bの召喚獣1体

指揮化スキルはBランク召喚獣1系統につき1体ずつだ。

今回虫、竜、石系統の指揮化した召喚獣はラポルカ要塞の防衛のために戦う。

特に虫Bの召喚獣は指揮化で大幅に強化された。

1体でも多くの召喚獣を確保するため産卵を続けている。

「エリー出てこい。出番だ」

『はい、アレン様』

指揮化して身の丈3メートルに達した霊Bの召喚獣が現れる。

召喚部隊を霊Bと竜Bの召喚獣で構成していく。

そして、魚D、C、Bの召喚獣も召喚し、海の中からアレンにバフを掛けさせる。

魚系統の召喚獣が初めて海の中を泳いでいるなと思う。

アレンと召喚獣達も魔王軍の集団に向かっているため、前方を進む魔獣達がその動きを察知し始める。

(射程範囲に入ったな)

「いくぞ、まずは足を止めないとな。一番先頭のやつの頭を潰せ」

『はい、アレン様。グラビティ』

アレンは指揮化した霊Bの召喚獣に攻撃の指示を出す。

霊Bの召喚獣は手の平を狙いの魔獣に向け、特技名を呟く。

海竜のような形をしたAランクの魔獣の目の前に漆黒の玉が現れ、次第に大きくなっていく。

魔獣の顔面に触れると、握りつぶすように頭蓋骨を砕き、鮮血を海にまき散らす。

海竜のような魔獣は頭を潰され絶命し、潰された頭から首にかけてが海中に沈んでしまい、進行が止まる。

(さすが、指揮化すると覚醒スキルではなく特技でAランクの魔獣を一撃か。まあ、全体攻撃のドラドラの火を吹くのとは違い、グラビティは単体攻撃だから、その分威力はあるか)

同じランクの特技なら、単体攻撃の方が、全体攻撃より威力があるのはよくあることだとアレンは考えている。

グラビティの能力は、漆黒の玉を半径100メートルの範囲内に出現させ、触れた対象に対して高重力による攻撃を行う。使い手の霊Bの召喚獣が視認している範囲でないと使えない。

「ありがとう、皆もこのまま、まずは船の頭を潰してくれ」

『『『はい、アレン様』』』

残りの召喚獣枠で一番多く作った20体の霊Bの召喚獣には、兵化の後で魔獣達を運んでいる海竜系の魔獣を優先して攻撃させる。

「足場を確保したい。ドラドラ達は、足元の魔獣を掃除してくれ」

『『おう!』』

2体しか出現させていない竜Bの召喚獣は、海竜系の魔獣に乗っている魔獣の掃除役だ。

足場があると戦いの手段が増えるので2体の竜Bの召喚獣に指示を出す。

(1人で魔獣を狩るのは、勇者との戦いに備えて別行動をしていた時以来か。その時は魔石集めがメインだったから、それで言うとグランヴェルの街で鎧アリを狩っていた頃以来か。召喚獣達はずいぶん連携が上手くなったな)

久々の1人での魔獣狩りだなと思う。

あの頃は、鎧アリを倒す際に獣Dの召喚獣の連携が上手くいっていなかった。

しかし、今では兵化した霊Bの召喚獣が、指示をしなくても2体1組になって、連携して効率よく倒している。

指揮化と兵化で、召喚獣の中で自然に序列が生まれるようだ。

以前は指示のようなものを召喚獣同士では行ってこなかったが、明らかに指揮化した召喚獣の立場が1つ上のような気がする。

おそらくこれが指揮化の1つのメリットなのだろう。

個性もあり、人格もある召喚獣に、新たに指揮系統が生まれたようだ。

『アレン様、御注意を! 敵陣から飛行部隊がやって来ます』

(無視せず相手してくれるのか)

霊Bの召喚獣の攻撃射程圏内に入った時点で、既に魔王軍も完全にアレンを敵認定している。

今回は、ティアモを100万体の魔獣で攻めたときとは違い、無視して進軍することはないようだ。

Aランクの魔獣に乗った魔獣には飛べるものも多くいたようだ。

翼を広げ、上空から攻撃するアレンに向かって襲い掛かって来る。

(飛行部隊も準備万全か? 馬鹿め)

「エリー、ブラックホールだ」

『はい、アレン様。ブラックホール』

アレンは、指揮化した霊Bの召喚獣に覚醒スキル「ブラックホール」を使わせる。

すると、海面スレスレに巨大な漆黒の塊が出現する。

巨大な海洋系のAランクの魔獣もその上に載っている魔獣も呑み込まれて、圧縮されるように潰されて倒されていく。

そして、上空に飛んでいる魔獣達が、次から次に吞み込まれていく。

吞み込まれずに済んだ魔獣達も、海面に叩き落されていく。

(うしうし、空を飛ぶ魔獣達はブラックホールに弱いと)

霊Bの覚醒スキル「ブラックホール」は漆黒の玉を生み出し、高重力により数十メートルの範囲で敵を吸い寄せ、押しつぶす。そして、効果は知力依存で、追加効果により敵の飛行能力を阻害する。クールタイムは1日だ。

召喚獣の特技は、攻撃対象となる魔獣によって、その効果が良く発揮される場合もあれば、あまり効果のない場合もある。

竜Bの召喚獣の特技「火を吐く」は、獣系や虫系など、生身の魔獣には抜群の効果だが、鎧系統の魔獣にはあまり効果がない。

霊Bの召喚獣の特技と覚醒スキルは、明らかに飛行系の魔獣に抜群の効果がある。

逆にスライムなど、潰しても意味がない無形の魔獣には、あまり効果が無いように感じられる。

「指揮化交代だ」

アレンは、覚醒スキルを使った霊Bの召喚獣の指揮化を解除し、別の霊Bの召喚獣に変更する。指揮化をすると補助や強化などを使っていない素のステータスが2倍になるので、覚醒スキルがとんでもない威力になる。どうせ覚醒スキルを使うなら、指揮化してからということだ。

(それにしても、何だかガンガン向かって来るな)

アレンは、何か分からないが胸騒ぎのような、違和感のようなものを覚える。

しかし、完全に包囲する形で魔王軍は攻めて来るので、召喚スキルをフルに生かし、戦場を戦い続ける。

そして12時間ほど経過して、違和感は既に確信に変わっている。

魔王軍は基本的に夜間の行動はしない。

魔王軍の魔獣も体力が有限なので、疲れが限界に達したら人間と同じで動けなくなる。

疲労困憊にならないのは召喚獣のみだ。

しかし、水平線に日が沈むが、魔王軍は灯りを灯し、休まず戦いに挑んで来る。

(魔王軍め。これは完全に罠にかけられたな)

今回の作戦目標がネストの攻略なら、アレンなど無視して一刻も早くネストの街に行けばよい。魔王軍が兵站というものを考えてるのであれば、尚更ここで時間を食う理由はない。

しかし、この魔王軍はアレンを発見すると魔法弾を空に飛ばし、全軍に敵が迎撃に来たことを伝えた。

まるで、鳥Bの召喚獣に乗った敵が、竜Bなどの召喚獣を出して攻撃をしてくることを知っているかのように飛行部隊を準備していた。

そして、なぜそんなことをするかの理由は明白だ。

「ここで俺の時間を潰して、ラポルカ要塞を落とす、いやローゼンヘイムを落とすつもりか。100万の犠牲でそれが叶うなら安いということか?」

アレンがラポルカ要塞に戻れば、魔王軍は南進を続けネストの街を落とす。

このままアレンがここに滞在すれば、ラポルカ要塞を落とすまでの時間を稼げる。

アレンがどちらを選択しても、魔王軍の利になる作戦のようだ。

『どうされますか? いったん離れて休まれますか? お時間なら稼ぎます』

霊Bの召喚獣も、魔王軍の作戦が分かったようだ。

「いや、このまま戦おう。作戦も立てずに行動を変えるわけにはいかない」

アレンは相手の出方が分かったので、戦いながら対抗策を考えると言った。漆黒の世界に、魔法か松明のような灯りが煌めく戦場で、アレンと魔王軍の戦いは続いていくのであった。