軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第195話 光と影①

ラポルカ要塞を攻略して3日が過ぎた夕方。

アレン達はティアモの街の女王の間にいる。

夕食はまだだが、当日の対応や今後の作戦について打合わせをするために、なるべく毎日ティアモの街に戻るようにしている。

(精霊王はキラキラしながらまだ眠っているな。精霊神になるための蛹のような状態なのか。羽化するのか? それとも変身するのか?)

女王の膝でキラキラしながらも、ヘソ天で眠っている精霊王を見る。

精霊神になると言ってから精霊王はずっとこの調子だ。

そして、視線を女王に戻し、本日倒した魔王軍の場所や数についてアレンがいつものように報告をする。

「今日もかなりの魔王軍を倒してくれたのだな」

「はい。今日も含めて3日ほどかかりましたが、これで南北両方から攻められることは避けられそうです。今日倒した魔王軍の場所については後でお伝えするので、魔石などの回収をお願いします」

「あい分かった。本当に助かるぞ」

エルフ軍最高幹部のシグール元帥が代表して受け答えをする。

アレンはラポルカ要塞以南の地にいる魔王軍の残党を狩り続けていた。

これからラポルカ要塞には最北の要塞が落ちたとき以上の魔王軍が攻めて来る。

300万の軍勢によって落とされた最北の要塞は、ラポルカ要塞の倍の高さの強固な外壁に守られていたと言う。

エルフ軍はラポルカ要塞で防衛戦をする予定だが、ラポルカ以南に魔王軍の残党がいると、北からの魔王軍と共に挟み撃ちしてくる可能性が高い。

アレン達は3日かけて残党を狩り続けた。

なお、残党と言っても万単位の塊で動く魔王軍だ。

魔王軍を狩って、エルフ達に魔石回収をお願いして、次の魔王軍の塊を探して倒すことを繰り返し続けた。

エルフの斥候部隊は、魔石はもちろんのこと、魔王軍の武器や防具、素材となる魔獣の骸そのものの回収も行っている。戦う為の武器を揃え、資金を稼ぐためだ。

魔石は多めにアレンが貰う代わりに、素材は全てローゼンヘイムの物になる。

「これはあまりうれしくない情報ですが、魔王軍は進軍を早めているようです。魔王軍がラポルカ要塞にやってくるまであまり時間がありません。ラポルカ要塞への軍の配備を急いでください。私の仲間も協力します」

「そ、そうか分かった。ん? 仲間?」

現在鳥Eの召喚獣を使い、陸路と海路を南進する魔王軍の正確な位置を捉えている。

エルフ側が魔王軍の作戦を知っていることを知られたため、作戦を変更するか確認をしていた。目標はラポルカ要塞とネストの街で間違いないのだが、進行速度をかなり早めたようだ。元々エルフ軍の行軍より早いのだが、それ以上の速度がある。

あくまでも魔王軍は速度と数で勝負をするように思える。

「はい、今回海洋の魔王軍の対応は私1人で行きます。何とか目途が立ちました」

(指揮化のお陰で目途が立ったな)

「「「な!?」」」

シグール元帥や将軍達がたった1人で何をと驚き、何故無謀な行動を諫めないのかとアレンの後ろにいる仲間達を見る。

将軍達とは裏腹に、アレンの仲間達はアレンの言葉に反応を示さない。

指揮化の検証が概ねできた後、今後の作戦について既にアレンは仲間達と話をつけている。

今回の作戦は、300万強からなる魔王軍に対し、30万のエルフ軍とアレンの仲間達が戦う。

そして、海洋を進行する100万の魔王軍についてはアレン1人で戦う。

防御力があまり高くないネストの街を守る形なので、1人で100万の軍勢を完全に殲滅する必要がある。

「明日の朝には出発したいと思います」

「そうか、では何か必要なものがあったら言って欲しい」

シグール元帥が食料でも何でもできる範囲で支援するという話だ。

「ありがとうございます。ローゼンヘイムの食事は何でもおいしいですからね。それと、出発する前に1つだけ確認したい話があるのですが、よろしいですか?」

(まあ、完全なる憶測だがどう出るかな?)

アレンには明日出発する前にどうしても確認したいことがある。

「ぬ? もちろんだ。何でも聞いてくれ」

「私はローゼンヘイムに来てエルフ達と共に戦う中で、2つほど気付いたことがあります。シグール元帥」

「ん?」

急に名前を呼ばれて何だとシグール元帥は怪訝な顔をする。

「ソフィアローネ、フォルマール、ルキドラール大将軍、ガトルーガさん、皆名前の特徴が同じですよね。精霊王様もローゼンと言うお名前でしたね」

精霊王を含めて全員名前に必ず長音記号があると言う。

たまたまですかと、シグール元帥に尋ねる。

「そ、そうであるな。まあ、我らエルフ達の昔からの名前の付け方であるぞ」

何でこんな時にとシグール元帥は思いながらも答えてくれる。将軍達もアレンの仲間もざわざわし始める。この話に関してはアレンは仲間達にも事前に相談していない。

「ありがとうございます。私の友人にドワーフがいて、メルルと言います。父がネネクと言い、母はカナナと言うそうです。やはり、お国によって名前の付け方には特徴があるのですね」

(ロダンの子供はアレンで、ゲルダの子供はクレナだからな。子供に付ける名前はどこか親に似るものだな)

自分の名前はどこか父ロダンに似ているなとずっと思ってきた。

「う、うむ?」

何の話か一切分からないが、確かに国によって名前に特徴があるなとシグール元帥は思う。

「もう1つ教えていただいてもよろしいですか?」

「も、もちろんだ。さっきので答えになっておるのか?」

「はい、なっています。もう1つの質問ですが、魔王軍と戦ってかれこれ60年ほど過ぎたかと思います。そのために作られた最北の要塞はとても堅牢で素晴らしいものだと聞いております」

「うむ、ローゼンヘイムを何十年も守った要塞だ」

シグール元帥は今回魔王軍からの攻撃に耐えられなかったがという言葉を付け加える。

「魔王軍が北から攻めて来るので最北の要塞を作ったのは分かりました。しかし、フォルテニアの南を守るラポルカ要塞が出来たのは、魔王が出現するより遥か昔のことだと聞いております。その頃は何のために要塞を作り、何と戦っていたのでしょうか?」

大精霊使いが強固な外壁を作ったと聞いている。

その大精霊使いは1000年に1度ほどの間隔で現れると聞いている。

魔王軍がいなかった頃、「何」と戦ってきたのかという質問をぶつける。

当然魔獣と戦うための要塞とも考えられる。しかし、それ以上の違和感がある。

このローゼンヘイムには強固な外壁がある街や要塞がずいぶん多いなと感じていた。

「「「な!?」」」

魔王軍に関する軍議とはあまりにかけ離れたアレンの問いにエルフ達は戸惑う。

「な、何と言うのはどういうことなのか?」

「言葉通りの意味でございます。私は学園で中央大陸以外の国についても勉強をしてきました。ローゼンヘイムはここ1000年間、他国への侵攻もなく平和な国だと聞いております」

「あ、あの、話の趣旨が見えません」

女王がたまらず口にする。

「申し訳ありません。回りくどい質問をしてしまって。ですが、分かって欲しかったのです。私が力をお貸しするのは確かに我が国、ラターシュ王国の王命によるものです。しかし、それ以前に仲間であるソフィーの国であり、あなた方が平和を愛する国であるから、惜しみなく力を貸しているのです」

アレンが協力して戦う理由、そして戦いに参加する大義の話を始める。

「はい、ローゼンヘイムは争いを好みません」

アレンのその言葉に対してその通りだと女王は答える。

「今回ローゼンヘイムを侵攻した魔王軍の最高指揮官は魔神レーゼルと言う名前のようです。誰か、聞いたことのある名前ではありませんか? エルフによくある特徴を持つ名前のようですが?」

「エルフの特徴を持つ名前。そ、それは」

ここまで聞いてアレンが言いたいことがようやく分かったようだ。

「私は魔神レーゼルの姿を捉えることが出来ました。その姿は、浅黒く角と牙が生え、醜悪な容姿をしておりました。しかし、エルフによく似た長い耳をしており、会話もとても落ち着いた口調で話しておりました。もしかしてと思ってお尋ねをしております」

アレンは霊Bの召喚獣と魔神レーゼルとの間のやり取りから、少しでも多くの情報を得ようとした。その中でこの魔神はどこかエルフに似ているなと感じた。

女王の間が一層ざわざわし始める。

この話はアレンの仲間にもまだしていなかった。

「もしかしてとは?」

「私たちの参戦が、もしかしてエルフ同士の確執のどちらかに加担しているのではと言う話です。この世界はずっと平和であったわけではありません。ローゼンヘイムでは何か同族から攻められる理由はありますか?」

(中央大陸でも獣人は魔獣の仲間だと排斥運動が1000年前に起きて、獣人は南の大陸に移動したからな)

アレンは学園で、中央大陸の歴史を学んでいる。

その歴史は全てが明るかったわけではないことを知っている。

「あ、アレン。それって、エルフ同士で戦っているってこと? じゃあ、魔王軍はどうなるのよ?」

「セシル、それは分からない。でも、皆様は何か御存知のようだ」

セシルは疑問に思うが、年配のエルフが多いこの場所で、将軍や女王たちは何かに気付いたようだ。

「アレン様の話と違う話になるかもしれませんがよろしいですか?」

「もちろんです。全ては私の憶測ですので」

「まず、分かって欲しいことがあります。私達はダークエルフとの共存を願ったのです」

そう言って女王は、ローゼンヘイムで数千年前から始まった光と影の歴史の話を始めるのであった。