軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第191話 魔族戦②

ラポルカ要塞の南側では激戦が続いている。東側の階段から上がる5000人の部隊が、召喚獣の力も借りながら、とうとう外壁の上まで達した。

西側の階段から上がった、精霊使いガトルーガが率いる3000人と挟み撃ちをする形で、外壁の上にいる魔獣の掃討及び占有を目指す。

外壁を奪えば、要塞で最も高い位置から、防御できない形で魔獣を攻撃できることになる。

ラポルカ要塞の攻略は最終局面を迎えている。

そんな中、アレン達と魔族の戦いも続いている。

ラポルカ要塞を支配していた魔族のグラスターが、同じく魔族のヤゴフに対して『エクストラの門を開け』と言った。

ヤゴフの体が陽炎のように揺らいでいく。

そして、吹き飛ばされ粉砕された建物の壁から一気にドゴラに向かって突っ込んで行く。

大きく振り上げられた拳がドゴラに迫る中、

(魔族がエクストラスキルだと! 削除、そしてミラー出て来い)

アレンは瞬時に最適の答えを目指す。

竜Bの召喚獣1体が一瞬にして消え、ドゴラとヤゴフの間に挟まれるような形で石Bの召喚獣が現れる。

光沢のある丸い鏡のような大盾を、ヤゴフの攻撃に合わせるように掲げる。

ヤゴフはそのまま、大盾を破壊すべく渾身の力を込める。

大盾にはヒビが入るが、攻撃の威力は完全に殺されてしまった。

そして、放たれた閃光と共にヤゴフは吹き飛ばされていく。

(おお! 流石勇者も跳ね返しただけのことはある)

『ヤゴフ!!』

吹き飛ばされるヤゴフに向かってグラスターが叫ぶ。

「怒りの業火、9連噛み砕きだ!」

しかし、アレンはこの機会を逃すことはない。残り2体の召喚獣に覚醒スキルを使わせる。

ヤゴフを吹き飛ばすことを前提に召喚獣を待機させていた。

建物を粉砕し吹き飛ばされたヤゴフが立ち上がる間も与えず、覚醒スキルを使い追撃する。

『魔族を1体倒しました。経験値6400000を取得しました』

(ふむ、魔族からは経験値が入ったな。仲間割りで8割になっているが、本来なら800万といったところか。それにしてもエクストラスキルを使えるのか。魔族の中ではエクストラの門と呼んでいるんだな)

ドラゴンを超える、これまでにない経験値を取得する。

『き、貴様ら!?』

「さてと、あと2体か」

激昂するグラスターに対して、平然とアレンはもうちょいだねと口にする。

『貴様、何者だ!? エルフではないな?』

(ここで何者か聞いてくるか)

「あ? 答えるわけないだろ。俺のこと心配する前に自分の命を心配するんだな」

『なんだと!?』

アレンとグラスターが会話を始めたので、仲間達の戦いが止まってしまう。

ネフティラも注意深く2人の会話を聞く。

「生かして帰さない。お前らはここで倒されるんだよって意味だ。ローゼンヘイムを無茶苦茶にしやがって。死を以て償いやがれってことだ」

『ぬ……』

(ぶっちゃけ逃げてくれた方が助かったんだけど。その方が、旨味が多かったんだけどな。霊Bの召喚獣もついて行けるからな。魔神レーゼルとかいう奴の情報も収集しないといけないし)

霊Bの召喚獣は、ラポルカ要塞で、グラスター達魔族の近くでお茶くみしながら情報を収集してきた。

まだ、首都フォルテニアにいると言われる、ローゼンヘイム侵攻最高責任者の魔神レーゼルのところには行かせていない。

ラポルカ要塞とフォルテニアの両方に霊Bの召喚獣が現れたら、何かの拍子で諜報活動をしていることがバレかねないと判断したからだ。

逃げるグラスター率いる3体の魔族と一緒に、霊Bの召喚獣もフォルテニアに侵入することが理想だった。

しかし、激昂したグラスターが、ネフティラとヤゴフを引き連れやって来てしまった。

(まあ、これだけの敗戦だ。どうもかなり重い敗戦の責が待っているらしいからな。同情は一切しないが)

「ドゴラもこいつの相手をしてくれ。攻撃力が馬鹿みたいに高いからな。ちゃんと避けないと死ぬぞ」

「ああ、分かった。さっきはすまんかった」

ドゴラは再び大斧を構え、ヤゴフの攻撃から守られたことをアレンに謝罪する。

こうしてヤゴフがやられた後の戦いが始まる。

大剣を持つグラスター相手に、距離を取りつつ囲むように攻撃が続いていく。

(さて、皆にグラスターの相手をさせつつ、後ろでちょろちょろしているネフティラを倒すか)

アレンは次に倒す相手をネフティラと決めている。

安全な立ち位置で身を守りつつ、グラスターを回復させ、攻撃魔法を仕掛けてくるネフティラが次の標的だ。

ネフティラも、アレンの仲間達が集中砲火を浴びせるグラスターの援護に集中しているので、流石に攻撃魔法を使う余裕はないようだ。必死にグラスターに回復魔法を掛けている。

(召喚士が他の前衛や後衛と違うところを見せてくれる)

前衛は武器を持ち、接近して攻撃をする。

後衛は魔法を使い、離れて攻撃をする。

こういった形の戦闘スタイルが一般的だ。

アレンは召喚士で、勇者ヘルミオスからステータスのタイプが大魔導士に似ていると言われた通り、完全に後衛に当たる。

「ドラドラ、ケロリン行け」

『おう』

『は!』

『ぐは!』

グラスターの後ろで身を隠すネフティラのさらに背後に、2体の召喚獣が召喚される。

ネフティラは振り返る間もなく、もろに攻撃を受ける。

(うし、ヤゴフを倒せたお陰で攻撃しやすくなったぞ。こいつもエクストラスキル使えるだろうしな。さっさと倒すぞ)

「ドラドラ、怒りの業火を使え」

削除、再生成した竜Bの召喚獣が新たに覚醒スキルを使う。

いくつもの建物が消し炭になっていく。

ネフティラの吹き飛ばされた先には、同様に再生成、再召喚された獣Bの召喚獣が待ち受けている。

覚醒スキル「9連噛み砕き」を発動する。

敵に対し遠距離にいるアレンだが、召喚獣を使い、近距離物理攻撃を間髪入れず繰り出す。

召喚士は後衛だが、召喚獣は前衛も後衛のタイプもいる。

相手が後衛だろうが、前衛だろうが関係がない。

それぞれの弱点を突いて攻撃ができるのが召喚士の強みだ。

しかし、召喚獣の覚醒スキルを含めた攻撃を受けながらも、自らに全力で回復魔法を掛け続けているネフティラに止めは刺せないようだ。

「結構しぶといな。皆、先におっさんになるかもしれないぞ。おっさんに回復魔法を掛ける余裕は与えないから、確実に体力を削ってくれ。エクストラスキルを発動されたら一旦下がれ」

「「「おう!!!」」」

後衛で耐久力が低く、すぐに倒せると思っていたネフティラが思いのほか粘るので、作戦を修正する。

『そうか、開放者か。人間の中に開放者が出てきたのか……』

「ん? 解放者?」

その状況に、グラスターが何かに気付き口にした。

アレンは言葉の意味が分からず自問する。

『そうか、だから負けたのか。貴様らが、いや貴様が答えだったのか……』

そう言ってグラスターがアレンを睨む。

睨むグラスターだが、先ほどまでの激高は一気に抑まり、どこか落ち着いている。

「おい、おっさん、解放者って何だ?」

『ほう、自らの立場を知らぬと。まあ人間の中にいるから仕方ないか。だが、開放者がいるとなると話が違ってくるな』

そう言うグラスターの体が陽炎のように揺らぎ始める。

『ネフティラよ! ここは我が時間を稼ぐ。魔神レーゼル様に開放者が出たことを伝えよ!!』

『な!?』

ネフティラが驚愕する。

グラスターが自らの命と引き換えに、ここで起きたことの情報を伝えろと言う。

それは、自分たちではアレン達を倒せないと踏んでの行動のようだ。

『行け!』

『は、はい!』

(ま、まずいぞ)

ネフティラは背中を見せ、全力で逃げ始める。ネフティラが持つのは、アレン達との戦いの知識だ。

「クレナ、エクストラスキルを発動してくれ、早く!」

「うん、分かった!!!」

クレナもエクストラスキルを発動し、その身を陽炎のように揺らがせつつ真っ直ぐアレンの元に向かうグラスターに応戦する。グラスターの大剣からは闇が漏れている。

『ほう、貴様は剣聖だな』

アレンの元に行かせまいとするクレナとの間で、互いの大剣がぶつかり合う。

限界突破でステータスを底上げしたクレナと対等以上に渡り合う。

(クレナでも厳しいか。敵にエクストラスキルを使われると全然予想が立てられんぞ。ってネフティラ逃げ足速すぎ)

アレンはエクストラスキルを発動したグラスターの相手をクレナに任せ、ネフティラを追おうとするが、グラスターが立ちふさがる。

召喚獣を使いネフティラに攻撃を仕掛けるが、全力で自らに回復魔法を掛け続けるネフティラに止めを刺せず、瞬く間に視界から完全に消えてしまった。

これ以上召喚獣を追っ手に出しても、そのままフォルテニアに逃げられるだけだ。アレンはグラスターを倒すことに集中する。

そんなグラスターだが、回復魔法もない状況でアレン達から完膚なきまでに打ちのめされた。アレン達を睨んだまま、崩れるように地に臥す寸前、絞り出すように言い放つ。

『ははは、どうだ、我らの勝ちだ。貴様に、貴様らに確実な死が待っているぞ。その程度の力で魔神レーゼル様にかなうと思うな……』

そう言うグラスターの体が灰になって消えていく。敗北し、今にも消えそうなのに、その顔は歓喜で歪んでいる。

『上位魔族を1体倒しました。経験値3200万を取得しました。経験値が100億/100億になりました。レベルが65になりました。体力が50上がりました。魔力が80上がりました。攻撃力が28上がりました。耐久力が28上がりました。素早さが52上がりました。知力が80上がりました。幸運が52上がりました。指揮化の封印が解けました』

3200万の経験値を得ても、完全勝利とは言い難い状況だ。

(指揮化の封印が解けたみたいだな)

「逃げられてしまったわね」

「まあ、仕方ない。切り替えていくしかないな。外壁も完全に占拠したみたいだからな。戻って魔獣狩りに専念しよう」

そう言うと、外壁の上を占拠して魔獣達を殲滅するエルフ軍に合流し、魔獣の掃討戦に参加する。

こうして、2体の魔族を倒し、魔獣達を一掃したアレン達とエルフ軍は、ラポルカ要塞を手にすることができた。しかし、逃がしたネフティラが、魔神レーゼルにアレンの情報を伝えに行くのであった。