軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第156話 ヘルミオス戦①

1時間ほど前に終わったクレナと剣聖ドベルグの戦いは、ドベルグが敗北を宣言しクレナの勝利という形で終わった。

観客席の各国の来賓も、王国の王太子や貴族も、観戦している生徒達も大いにざわついた。

ステータスやレベルのある世界ではあるが、剣聖クラスの極限のぶつかり合いを見ることは稀のようだ。こんな戦いもあるのかと、固まったように戦いの状況を見つめていた。

アレンは闘技台の上で、観客席に戻ったクレナを見る。まだ元気がなさそうだ。

(いい形で試合が終わらなかったからな。まあ、すぐに元気が戻るだろう)

「友達が心配かな?」

アレンは目の前の男に話しかけられる。これから対戦する勇者ヘルミオスだ。初めて会った時からずっとヘルミオスはニコニコしているなと思う。

「そうですね。さっきは私の友人を救って頂いてありがとうございました」

ヘルミオスが闘技台に割って入らなかったらクレナがどうなっていたか分からない。

「いいよ、別に。ドベルグは負けず嫌いだからね。もしかしたら、ってね」

(それだけ、クレナの成長性を先々見通していたってことか)

何となく、ドベルグの暴走を予期して闘技場に入る準備をしていたのかと思う。そのドベルグだが、既に魔導船に乗るため学園都市の発着地を目指している。ドベルグはその人生を掛けて魔王軍と戦った功績からギアムート帝国から専用の魔導船を貸し与えられていると言う。

『それでは、本日最後の試合を行いたいと思います。御来賓の皆様もご存じのとおり、本来であれば最後に剣聖と大会優勝者の試合を行い終了するのですが、本日は勇者ヘルミオス様たっての希望です』

アレンとヘルミオスが闘技台の中央で相対する中、魔道具による闘技場全体に響くアナウンスは続いていく。

『事前に配布した資料をご覧ください。今大会優勝者アレン選手は、自ら「廃ゲーマー」なる冒険者パーティーを立ち上げ、現在8名でA級ダンジョンを既に5つクリアしております』

(3人はまだ2個しか攻略していないけど。それにしてもその剣はオリハルコンだよね。オリハルコンは金色って話だったからな)

アレンに対する説明が続いていく中、ヘルミオスの武器の考察をする。

そんな説明を受ける来賓たちが「剣を使って試合を進めていたな、確かに強いけどそんなに凄いのか?」と思いながらアレンを見る。アレンの強さを計りかねているようだ。今の説明だけだと、何故わざわざ勇者が相手をするのかとの困惑が闘技台の上にまで伝わってくる。

この世界において勇者とは特別な存在だ。既に数千万人が魔王軍に殺され滅びの道を歩む人々を救うため、神から遣わされた使徒のような扱いを受けている。剣聖とも立場がはるかに違う。

「はは、君に興味津々だね!」

「ああ、面倒な限りですよ。誰のせいでしょうね」

「まあ、直ぐに慣れるよ。僕もそうだった。ああ、そうそう。スキルは遠慮なく使っちゃって構わないよ。この試合の全ては学長とローゼンヘイムが責任を持つから」

「それは、これからどんなことが起きてもってことでいいのですか?」

学園都市の自治と学園の運営を司る学長と、その学長が王族であるエルフの国ローゼンヘイムがこの大会の責任を取るから全力を出せという。ここには各国の貴族も王国の王太子や貴族達もいる。

「そうそう。さっき確認したから」

(さっき学長と話していたが、そんなことを確認していたのか。そこまで俺の力が見たいのか。まあ遠慮するつもりはないがな)

「そうですか。ただ、無駄な戦いは好きじゃないです。このまま降参して魔力回復リングを渡せば痛い目を見ずに済みますけど?」

合図のタイミングを窺っている審判がギョッとする。この審判も学園の教師だが、アレンが降伏勧告をした相手が誰だか分かっているのかという顔だ。

「面白い冗談だね。無駄な努力をどれだけしたか知らないけど、僕には勝てないよ?」

「無駄な努力なんてあるわけないでしょ」

(無駄な努力か。無駄な戦いはあるが無駄な努力はないんだよ。これでノーマルモード確定かな。いや、既に鑑定の儀で見ているからな)

ヘルミオスについては、入学試験の際に鑑定結果を見ている。鑑定結果からノーマルモードは確定している。

「ふ~ん」

勇者との試合前に審判が相変わらずしっかり説明をする。試合開始の前に、降参のポーズなど注意事項は必ず聞かないといけないようだ。

(絶対に降参のポーズ取らせてくれる)

その話を聞きながら、勇者は黄金に輝く剣を引き抜く。アレンが探したが見つけることすらできなかったオリハルコンの剣だ。

「はじめ!」

審判が手を挙げ、試合の開始を宣言する。

(えっと、カードの感じは問題なかったか)

「……」

アレンは視線をヘルミオスから外し、今一度、ステータスとカードの状況について確認する。ヘルミオスが剣を構えたことも気にしないようだ。

【名 前】 アレン

【年 齢】 14

【職 業】 召喚士

【レベル】 55

【体 力】 1390+550

【魔 力】 2180

【攻撃力】 766+4900

【耐久力】 766+750

【素早さ】 1429+4920+2000(指輪)

【知 力】 2190+220

【幸 運】 1429

【スキル】 召喚〈7〉、生成〈7〉、合成〈7〉、強化〈7〉、覚醒〈7〉、拡張〈6〉、収納、共有、高速召喚、指揮化〈封〉、削除、剣術〈3〉、投擲〈3〉

【経験値】 489,264,755/10億

・スキルレベル

【召 喚】 7

【生 成】 7

【合 成】 7

【強 化】 7

【覚 醒】 7

・スキル経験値

【生 成】 2,439,668/10億

【合 成】 3,276,455/10億

【強 化】 28,757,480/10億

【覚 醒】 4,646,400/10億

・取得可能召喚獣

【 虫 】 BCDEFGH

【 獣 】 BCDEFGH

【 鳥 】 BCDEFG

【 草 】 BCDEF

【 石 】 BCDE

【 魚 】 BCD

【 霊 】 BC

【 竜 】 B

・ホルダー

【 虫 】

【 獣 】

【 鳥 】 E2枚

【 草 】

【 石 】 E10枚、C5枚、B2枚

【 魚 】

【 霊 】 B2枚

【 竜 】 B49枚

(向かってこないか。ふむふむ)

アレンは対戦相手を見る必要はない。常に2体の鳥Eの召喚獣が上空から鷹の目で、ヘルミオスを捉えている。鷹の目のスキルはただただ上空から観測するスキルではない。より詳細に相手の動きを捉えてくれる。

「どうしたの? 来ないの?」

「いやいや、隙を見せているんだから、そこは突っ込んで来てくれないと。先輩」

「あ~なるほど。じゃあ行くよ!」

ヘルミオスが強く地面を踏み込む。それだけで闘技台にヒビが入る。

そして、エクストラスキルを発動したクレナに匹敵するような素早さで突っ込んでくる。

(は? やっぱり糞速いんだが? ドベルグからクレナを救ってくれた時に薄々気づいていたけど)

そして、大振りでオリハルコンの剣を振るう。アレンはアダマンタイトの剣で受け止める。

武器と武器が闘技場に響き渡るほどの音を立ててぶつかる。

「おいおい、勇者の一撃を止めたぞ」

「まあ、生徒に良いところを見せようと手加減をしたのではないか?」

「そうだぞ。勇者の剣はドラゴンすら屠ると聞いたぞ?」

この一撃だけで、各国来賓が試合経過を論評する声が出始める。来賓達も生徒達も勇者の戦いを見たかったようだ。

(うは、試しに受けてみたが、これは受けちゃいけないやつだ。スキル使用せずにこの威力か。こっちは耐久力捨てているんですけど)

ヘルミオスの攻撃から攻撃力が分かり内心焦ってしまう。攻撃力5000を超えたから分かるが、ヘルミオスの一撃は、剣以外で受けるとそれだけでやられかねない。戦い方を変更し、ヘルミオスの剣は避けることにする。

アレンがひと蹴りで後退するが、ヘルミオスは疑問を顔に浮かべ追って来ない。

「あれれ? おっかしいな~。アレン君の攻撃力だとこの攻撃は受けきれないはずなんだけど」

剣をぶつけ合ったときの体勢のままヘルミオスが疑問の声を上げる。

「さあ、何のことでしょうね?」

(鑑定スキルではスキルによるステータスの増加は見えても、召喚獣の加護によるステータスの増加は見えなかったからな。これも確定か。俺のステータス変化は見切れないと)

学園を受験したときから気付いていた。試験の時ヘルミオスに鑑定されたが、ステータスの数値が加護を除いた数字であった。

「ふ~ん。じゃあ、行っくよ~」

それだけ言うと、距離もすぐに詰められヘルミオスの凶悪な剣戟が襲ってくる。

アレンはヘルミオスの攻撃を完全に避け続けることはできなかった。

「ぐっ」

アレンから思わず声が出る。剣で受けても大きな衝撃が体の芯まで響く。耐え切れず体勢を崩されると、そのまま勇者の一撃に襲われ防戦一方になる。

「あらら、もう終わりかな」

勇者がどこかガッカリしている。

(素早さ的には勇者と同じくらいか。剣のスキルレベルで負けているからな。普通に攻撃しても当たらんな。手数増やさせてもらうぞ!)

そんな中でもアレンは勝利のみを考え行動する。

「ドラドラ、行くぞ」

『おう! 出番だな!!』

「え?」

驚くヘルミオスの横から竜Bの召喚獣の大きな口が向かってくる。アレンが10メートルを超えるドラゴンを召喚し、ヘルミオスの死角から襲わせる。

隙を突かれたが、ヘルミオスは剣で防御する。その瞬間にアレンが横薙ぎの一撃をヘルミオスに加える。

急に闘技場にドラゴンが現れた。そのため観客席から当然の反応が起き始める。

「ドラゴンだああああ!!!」

「闘技場にドラゴンが出てきたぞ!!」

観客席が騒然とし始める。アレンが召喚した竜Bの召喚獣は10メートルを超えた巨体をしている。観客席のどこから見ても分かる巨大なドラゴンだ。

しかし、アレンとヘルミオスの戦いは続いていく。学長が何かをアナウンスに指示しているが、そんなことをアレンは気にしない。

気にすべきことがもっとある。それはヘルミオスに初めて一撃を与えた感触だ。

(糞硬いんだが?)

ドラゴンに切りつけた時など比較にならないほどの耐久力をヘルミオスに感じる。

「く!」

しかし、アレンの一撃にヘルミオスの顔が一瞬引きつる。アレンの攻撃力とアダマンタイトの剣の一撃は無視できる威力ではないようだ。

ヘルミオスとは素早さは同じ程度のようだ。同じ程度の素早さなら召喚獣の出現分、ヘルミオスに隙を作ることができる。

(まだまだスキルを使っていないな)

しかし、アレンは油断をしていない。アレンは召喚スキルを使ってこの状況を打開したが、ヘルミオスは未だ余裕をもって通常攻撃を続けている。

「ドラドラ、怒りの業火だ」

『おう!』

アレンが勇者を攻撃をしている横で、竜Bの召喚獣の口が真っ赤に燃え盛る。

「逃がすか!!」

竜Bの召喚獣に反応して後退しようとしたヘルミオスに追撃をする。

そして、ヘルミオスの行動の自由を奪い、共有で召喚獣の覚醒スキルのタイミングを合わせる。

アレンが一瞬後ろに下がった瞬間、覚醒スキル「怒りの業火」をヘルミオスにぶちまける。

まばゆい光とともに業火を受け、ヘルミオスが巨大な炎の中に包まれる。

ヘルミオスがたまらず後方に飛ぶ。大きく飛んだヘルミオスは、そのまま地面に着かなかった。

(空も飛べるのか。よしこれで3つ目だな。ん? 回復魔法を使っているな)

ヘルミオスは回復魔法を使い、受けたダメージを回復させる。これまで積み重ねた攻撃のダメージは完全に回復されてしまったようだ。

観客達が勇者を見つめ、称賛する声が漏れる。

「素晴らしい、これが勇者の戦いか」

「ドラゴン相手に一切引けを取っていないぞ」

宙に浮き、神々しい金色の鎧を身に纏うヘルミオスに感動をしているようだ。

(鎧にダメージは一切見えないが、回復魔法を使ったってことはダメージが少しは通ったかな)

そんな中、アレンだけが次の一手を考えていた。