軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十九話 いとこの誕生

そして、僕にとってのもう一つのお楽しみイベントがあった。

それは、シンシアお姉様の義姉にあたるセリナさんの出産だ。

僕にとって、いとこが生まれることになる。

そのセリナさんの陣痛がある日の早朝いよいよ始まり、スラちゃんたちは連絡を受けるなり直ぐに僕の屋敷の馬に乗ってノーム準男爵家に向かった。

スラちゃんたちなら治療にも慣れているし、きっと大丈夫だ。

「いよいよ、赤ちゃんが生まれるんだね。私もとっても楽しみ!」

朝の訓練時に、屋敷にやってきたクリスちゃんに色々と説明をした。

クリスちゃんも、元気な赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしていた。

因みに既に出産祝いは渡していて、おむつや産着、タオルに洗濯道具などをチョイスした。

現実的なものだけど、逆にありがたいとフリージアお祖母様からも言われた。

クリスちゃんも出産祝いを渡していて、後は元気な赤ちゃんに会うだけだった。

「じゃあ、僕は王城に呼ばれているから行ってくるね」

「ケン君、いってらっしゃい!」

「いってらっしゃいませ」

僕は、クリスちゃんや屋敷の使用人に見送られながら馬車に乗り込んで王城に向かった。

今日は上級官僚として、アーサー様の執務室に行くことになっていた。

「そうか、ケン君のいとこが生まれるのか。それに、スラちゃんたちが出産時のサポートをするのは心強い。メアリーが出産する際にも、スラちゃんたちの派遣をお願いしよう」

今朝からの流れを説明すると、アーサー様も思わずニコリとした。

メアリーさんの出産のお手伝いなら、スラちゃんたちもきっと張り切るだろうね。

アーサー様の執務室にいる職員も、僕とアーサー様の話を聞いて思わずニッコリとしていた。

「ケン君、こっちに来てくれ。まだ重要な書類は見せられないが、こんな感じで各部署から上がってきた書類を処理する。私のところまで上がってくる決裁書は、そこまで多くないがな」

とはいえ、ほぼ全部署から書類が来るから、かなりの量だと思う。

アーサー様が大体を確認して、陛下が最終決定をするものが殆どだという。

全部署横断の知識が求められるから、かなり大変な仕事だ。

「ケン君が成人したら、是非とも私の部署に来て欲しい。とはいえ、父上もケン君のことが欲しいと言っている。どうなるかは、もう少し先の話だ」

あの、先の話といいつつほぼ決定みたいな言い方ですけど……

それに、新人がいきなり重要部署に配置ってないかと思います。

職員の人たちも、良い案だとウンウンと頷かないで下さい。

「ケン君は、色々な経験を積んで成長するのが優先だ。宮廷魔導師として軍もケン君のことを欲しがるはずだし、引く手数多だね」

絶対に、ヘルナンデス様やルーカス様も僕を引き留めたいと思っているはずだ。

絶対にゴタゴタしそうな気がして、僕は思わずガクリとしてしまったのだった。

その後は、どんな業務を行っているのか改めて教えてもらった。

僕としては、書類整理や掃除などの業務から始めても良いと思うけどね。

そして、王家の方々と昼食を食べる際にも、この後生まれる赤ちゃんの話をした。

昼食後に研修が終わり、王城からノーム準男爵家へと向かった。

「赤ちゃんが産まれるのは、もう少し先よ。初産だし、時間がかかるのはしょうがないわ」

フリージアお祖母様の言葉に、僕はとても大きな衝撃を受けた。

赤ちゃんを産むのって、そんなに大変なんだ。

スラちゃんがいるし、フリージアお祖母様は全くの余裕だったけど。

うろうろ、うろうろ。

対して、お父さんになるゴライオンさんとシンシアお姉様は、いつ産まれるのかと屋敷の廊下をオロオロとしながら歩いていた。

出産中のセリナさんが心配なのは分かるけど、もう少し落ち着いたらと思ってしまった。

しかし、更に時間が過ぎて夕方になっても赤ちゃんは産まれなかった。

流石に僕も心配になってしまい、ゴライオンさんに至っては心配でハラハラとしていた。

その時だった。

「おぎゃー!」

「「産まれた!」」

出産用の部屋から元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、ゴライオンさんとシンシアお姉様の表情は一気に明るくなった。

でも、出産直後でまだ部屋に入れないので、廊下で暫く待つことに。

「みんな、部屋に入って良いわよ」

十分後、フリージアお祖母様の声で僕たちは部屋に入った。

すると、ベッドでは出産を終えて休んでいるセリナさんがおり、小さいベビーベッドには産着に包まれた小さな赤ちゃんが寝かされていた。

スラちゃんたちも、頑張ったとベビーベッドの柵の上で触手をフリフリとしていた。

「セリナ、お疲れ様。大変だったね」

「ええ、出産がこんなにも大変だとは思わなかったわ」

ゴライオンさんは、涙を隠さずにセリナさんの手を握っていた。

そして、シンシアお姉様は既に赤ちゃんに釘付けだった。

「わあ、可愛いな。髪の毛の色も、私とそっくりだ!」

「元気な男の子ね。ノーム準男爵家と一目で分かるわね」

シンシアお姉様とフリージアお祖母様の言う通り、赤ちゃんは僕と一緒の蒼色の髪の毛だった。

とても可愛らしい赤ちゃんで、まんまるの瞳がチャーミングだ。

「名前は明日決めましょう。今日は、二人ともゆっくりと休みなさい」

「「はい」」

セリナさんは出産で疲れていたが、ゴライオンさんも食事を取らずにウロウロとしていたのだ。

フリージアお祖母様の言う通り、二人とも明日に備えた方がいいね。

そして、フリージアお祖母様は僕にあることを頼んできた。

「念の為に、今夜はスラちゃんたちを屋敷に泊まらせて欲しいのよ。大丈夫だと思うけどね」

フリージアお祖母様は、僕を産んで一年も経たずに亡くなった母親のことを懸念しているようだ。

僕もフリージアお祖母様の気持ちはよく分かるし、何よりもスラちゃんたちが直ぐに触手を上げてやる気を見せていた。

明日改めて様子を見に来るとし、僕はみんなに挨拶をして屋敷に戻った。

元気な赤ちゃんが誕生し良かったと、改めて思ったのだった。