軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六十話 兄への処分と新しい訓練参加者

夜会で色々あった一週間後、僕は軍の基地に呼ばれた。

魔法の訓練をするのだが、その前に話があると事務棟の応接室に案内された。

ほぼ間違いなく、夜会で問題を起こして捕縛された兄の件だろう。

「その、兄が申し訳ありせんでした」

「ケン君は、本当に律儀な性格だ。まあ、座ってくれ」

応接室で待っていたヘルナンデス様に、僕とスラちゃんたちは深々と頭を下げた。

苦笑しているヘルナンデス様に促されて、僕はソファーに座ってから改めて話を聞くことになった。

「まず、ギャイン騎士爵家に課せられた王国もしくは王家主催の式典への参加禁止について、更に五年間の延長が決定した。本人は貴族としての権利の大幅な制限も課す。また、王城に許可なく接近することも禁じた。軍としては、本人には再度特別訓練を課した。王都ではなく、直轄領に行っての訓練だ。最低でも一年は王都に戻ってくることはないだろう」

ヘルナンデス様から告げられたのは、予想よりもかなり厳しい処分だった。

とはいえ、国からの処分を豪快に破ったのだから致し方ない。

そして、父親に向けられる目もかなり厳しくなっているという。

「ギャイン騎士爵家が処分されたのに反比例して、ケン君とケン君の母親の素晴らしさが上がっている。夜会で、兄上がケン君の母親の話をしたのもあるだろう。ケン君は申し訳ないと思っているだろうが、もう気にしなくてもいい」

ヘルナンデス様は、ちょっと苦笑しながら僕に話した。

とはいえ、僕のお世話になっている人たちに父親と兄が迷惑をかけるのは本当に申し訳なかった。

気持ちの切り替えが済むまで、もう少し時間がかかりそうだ。

「さて、話はこれで終わりだ。魔法の訓練場に移動しても構わない。ルーカスが様子を見に行くと言っていたぞ」

ここは魔法の訓練を頑張ろうと、少し気合を入れ直した。

ヘルナンデス様と別れて、僕たちはいつもの訓練場に向かった。

すると、ここで訓練場に予想外の人がいたのです。

「あれ? クリスちゃんだ」

「あっ、ケン君だ!」

クリスちゃんは赤い騎士服に似た服を身に着けていて、髪の毛もポニーテールにしていた。

僕に歩み寄ると、満面の笑みで僕の手をギュッと握ってきた。

もちろん、スラちゃんたちもクリスちゃんを大歓迎していた。

何で訓練場にクリスちゃんがいるのかなと思ったら、この人が理由を教えてくれた。

「おっ、ケンは嬢ちゃんと知り合いか。ルーカス様から、優秀な魔法使いになる可能性があるから鍛えてくれって言われているぞ」

オーフレア様と他の魔法兵も、続々と訓練場に姿を現した。

確かにクリスちゃんは魔法使用に制限があるが、とても強い魔力を持っている。

魔法剣士としても活躍できそうだ。

「うぅ……八歳のケン君には良い人がいて、何で私には良い人がいないのよ……」

何故かローリー様が僕とクリスちゃんを見るなり崩れ落ちていたが、下手にツッコんではいけないと感じた。

セレナさん曰く、ローリー様は昨日行われた軍の婚活でお相手を見つけられなかったという。

僕は、「ローリー様頑張って下さい」としか言えなかった。

「そこで崩れている馬鹿は気にするな。訓練前に、いつもの奴をやるぞ。ケンは、クリスに教えてやれ」

「わーい!」

オーフレア様の指示もあり、僕たちは喜んでいるクリスちゃんと魔力循環と魔力制御の訓練を始めた。

最初に、クリスちゃんがどのくらい魔力制御できるかを見ることにした。

「うーん、実はあんまり得意じゃないんだよ……」

どうやら、クリスちゃんはうまく魔力が流れる感覚を掴めないらしい。

それならと、僕がクリスちゃんの手を繋いで魔力循環をしてみせることにした。

シュイン。

「わあ、凄い! 暖かいものが、体を流れていくよ!」

「お腹に意識を集中して魔力循環ができると、もっと上手に魔力を扱えるようになるよ」

「よーし、頑張るぞー!」

クリスちゃん自身に魔力を扱う才能があったのか、直ぐに魔力循環のコツを掴んだ。

魔力制御も中々上手にできていて、これなら日々の訓練は大丈夫みたいだ。

「ケンは、人に教えるのが上手くなったな。教えるということは、キチンと理解していることだ」

オーフレア様は、上機嫌で僕の頭をちょっと乱暴に撫でた。

とはいえ、褒められるのは良い気分だった。

すると、この人も僕に声をかけてきた。

「ケン君は、既に初級官僚試験に合格している。そういう意味でも、他人に何かを教えるのは良い勉強になる」

ルーカス様が、部下を引き連れて訓練の視察に来た。

官僚試験に合格しているということは、僕は将来的に誰かの上に立つ可能性があるということだ。

まだまだ先の話だけど、何かを教えるのはそこまで嫌いではないと感じた。

すると、ルーカス様はこんなことも言ってきた。

「クリスは、剣が得意と聞く。時間を見て、ケンに剣術を教えてやってくれ」

「はい、頑張ります!」

僕も頑張って毎日剣の訓練をしているが、軍人貴族である父親と兄に鍛えられているクリスちゃんの方が剣術の腕は上らしい。

僕に色々と教えるぞと、クリスちゃんはとてもヤル気になっていた。

そんなクリスちゃんを、他の人たちは微笑ましいものを見たという表情でいたのだった。

「はあ、二人とも仲良さそうね……」

ローリー様は、早く立ち直って下さいね。

そして、僕が勉強しないといけないのはもう一つあった。

「ケン君、一週間後に乗馬の訓練をしよう。きっとケン君なら直ぐに覚えるだろう」

馬はとても大きいし、ちゃんと乗れるか心配でもあった。

でも、うまく乗れるように頑張らないと。

スラちゃんたちも、頑張るぞと気合を入れていたのだった。

その後の魔法訓練は順調に進み、クリスちゃんも同じ火魔法使いのオーフレア様に魔法剣の使い方を習っていた。

僕も、そのうち魔法剣が使えるように頑張ろう。