作品タイトル不明
第百九十一話 まさかの襲撃者
帰国までの間、スラちゃんとチビスライム達がレーベンス大将やビクトリア皇女に護衛としてつくことになった。
更に攻撃力に優れたリーフちゃんがピーちゃんに乗って、屋敷の周囲や町中を飛んで監視していた。
様々な手を使い、帝国側からの使者の安全をとにかく確保しないとならない。
それは王国兵も同じで、屋敷もそうだが領都にも多くの兵が配置されて厳戒態勢を敷いていた。
勿論防壁の門にもチビスライムが交代で配置されていて、今はミカンちゃんが頑張るぞと張り切っていた。
「よく考えると、町中はとんでもない警備態勢だな。今回に限っては、できる事をやった方が良いだろうな」
僕は一足先に歓迎会が開かれる部屋に移動し、同じく移動をしてきたナッシュさんとあれこれ話していた。
ちなみに、クリスは部屋でドレスに着替えているという。
僕とナッシュさんも、自室で貴族服に着替えていた。
「ねーねー、あたらしいおねえちゃんは?」
すると、歓迎会が待ちきれないランディちゃんが、僕の服をちょんちょんと引っ張りながら訪ねてきた。
勿論、ランディちゃんもカッコいい貴族服を身にまとっていた。
「ビクトリア皇女様は、マミちゃんを見に行くとエリさんのところに行っていたよ」
「じゃあ、ぼくもみにいくー!」
ランディちゃんは、トトトと大部屋を走って出ていった。
何だか、とてもほっこりとする光景だ。
「ナッシュさんの所も、あと数年もすればランディちゃんみたいに元気よく走り回る子どもがいますね」
「ケンの所には、既に走っている保護した子どもがいるもんな。でも、母上は子どもは元気が一番だと言っているぞ」
ナッシュさんの言葉を聞き、僕はケーラさんの事を思い浮かべた。
ケーラさんは子どもを相手にするのが得意だから、きっと元気よく走り回る子どもを微笑ましく見ているはずだ。
僕の屋敷でもケイトちゃんが元気よく走り回っているし、王家のちびっ子たちも常に元気いっぱいだ。
何だかほのぼのとする光景だなと他の人とも話をしていたタイミングで、とんでもない事件が起きてしまったのだ。
ズドーン、ズドーン、ズドーン!
「「「「「えっ?」」」」」
突如として、屋敷の外から複数の爆発音が聞こえてきたのだ。
僕とナッシュさんは、周りにいた兵と共に急いで大部屋の窓に向かった。
ピカッ!
「あっ、雷が鳴りました! もしかしたら、ピーちゃんの雷撃かも。でも、途中で光が遮られましたね?」
「もしかしたら、爆発音は防壁の外から聞こえたのかもしれないな。奴らは、爆発型魔導具でも使ったのかもしれないぞ」
僕の質問に、ナッシュさんは視線を外に向けたまま返事をした。
爆発音はこの一回のみで、辺りは再び静けさを取り戻した。
「ナッシュさん、念のために屋敷の周囲を探索魔法で調べます」
「おう、やってくれ」
僕は、直ぐに魔力を溜め始めた。
シュイン、シュイン、シュイン、もわーん。
「えーっと……あっ、屋敷の裏手にあまり良くない反応が。あと、少し先の建物の上に魔力反応!? 魔法障壁を展開します!」
「はあ? なんだと!?」
ナッシュさんは、驚きながらも直ぐに周囲にいた兵に指示を出した。
その間に、僕は十分な魔力を溜め終えた。
シュイン、バシッ。
シューーーン、ズドーン!
「ふう、タイミングばっちりでした」
「相変わらず、ケンの魔法は半端ないな」
ナッシュさんは、苦笑しながら僕の頭をポンポンと撫でていた。
僕は、屋敷の敷地を覆うくらいの魔法障壁を展開した。
その為、バッチリと建物の上から放たれたカノン系魔法を防いだのだった。
更に、僕は大部屋の窓を開けてある魔法を放った。
シュイン、ズドン!
ヒューン、ドーン。
「魔力の残滓があったので、相手がどこにいるか直ぐに分かりました。どうやら魔法を放った相手は倒れているみたいなので、周囲にいる人に誘導弾を放って更に魔法の明かりで場所を特定しています」
「はあ、うちの義弟はそんな事までできるようになったのか。これなら、直ぐに相手を捕縛できるな」
ナッシュさんは、また呆れながらも側にいた兵に指示を出した。
そして、屋敷の側にいた反応も含めて全て捕縛できた。
というか、一部は保護となった。
「えーっと、君達はスラム街の孤児で、悪い人から屋敷に向かって魔法を放てと言われたんだね」
「うん……でも、悪い事だと思ったから怖くて出来なかったの」
「魔法を放った女の子は、弟を殺すぞと脅されていたの……」
全部で四人の子どもが保護され、だいたい八歳くらいの年齢だった。
屋敷にカノン系魔法を放ったのも、同じ年齢の女の子だった。
全員応接室に連れてこられて、話をあれこれ聞かされていた。
「罪のない子どもを脅して犯罪を犯そうとするなんて。まさに外道のする事だ!」
これには、ハーデス様もかなり激怒モードだった。
そして、戻ってきたピーちゃんとリーフちゃんによって、更に激怒する事が起きていた。
ふりふり、ふりふり。
「ピッ」
「あっ、防壁の外の爆発も悪い人が子ども達に爆発型魔導具を置いてやれと言っていたみたいです。子ども達もこんな事になるとは思わなかったみたいで、思わず泣いていたそうです。ピーちゃんがガチ切れして、悪い人をノックアウトしたそうです」
「何と、何と酷い事なのでしょうか……」
「あぶー」
マミちゃんを抱っこしているエリさんも、僕の話を聞いてかなり深刻な表情をしていた。
ビクトリア皇女も、マミちゃんの頭を優しく撫でながら悲しそうな表情をしていた。
防壁の外にいた子ども達も保護され、カノン系魔法を放った女の子の弟も保護されたという。
なお、マミちゃんはとても大きな爆発音が聞こえても平然としていた。
ある意味大物なのかもしれない。
「子ども達にも、歓迎会で出す料理を分けよう。もう少しスラム街への対策を進めなければならなかった」
「私も同感です。小さな子に罪はありません。そんな事をさせてしまった大人に責任があります」
ハーデス様とワーグナーさんも、かなり責任を感じていた。
トラブル云々以前に、罪のない子どもたちを犯罪に巻き込んでしまった事に後悔の念があった。
「王国だろうが帝国だろうが、未来ある子ども達を罪から守らないとならない」
「そうですな。帝国でも同じ事が言えましょう。子ども達を育てる環境を、もっと整えないとなりませんな」
ヘルナンデス様もレーベンス大将も、かなり悩ましい表情をしていた。
それだけ、今回の事件が与えた影響は大きかった。
結局歓迎会は予定時間よりも遅れて始まったが、お互いの国を将来どうするかという建設的な話が行われた。
僕もケイトちゃんを保護しているが、とにかく何も罪のない子が犯罪に巻き込まれ無いように何か出来ることはないかと考えてしまったのだった。