軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十九話 国境の前線基地司令官

「う、うーん……」

どのくらい時間が経ったのか、僕はふと目が覚めた。

まだ怠い体を起こし、目をこすっていた。

寝ていたのはどこかの部屋にある応接セットのソファーで、僕の体の上にはタオルケットがかけられていた。

すると、別のソファーにいた人たちが僕に声をかけてくれた。

「ケン君、大丈夫か?」

「だいぶ負担をかけてしまったようだ」

ヘルナンデス様とルーカス様は、少し心配そうに僕の顔を覗き込んできた。

どうやら、僕は治療が終わった途端に気絶してしまったみたいだ。

僕よりも先に起きていたスラちゃんも、僕のお腹の上にぴょーんと飛び乗って心配そうに見上げていた。

「その、まだ体は怠いですけどもう大丈夫です」

「そうか、それは良かった。今日はもう治療はない。安心してくれ」

ルーカス様は、ホッとしながら声をかけてくれた。

そして、ソファーに座り直すともう一人初めて会う人がいた。

僕はソファーから立ち上がろうとしたが、まだ体がフラフラとしてしまった。

「ケン君、無理をしない方がいい。もし、挨拶をしたいのなら座ったままで構わない」

ヘルナンデス様からも気を使われてしまい、僕は立ち上がるのを断念してソファーに座って挨拶をすることにした。

「はじめまして、ギャイン騎士爵家のケンです。スライムのスラちゃんです、宜しくお願いします」

「前線基地司令官の、ゴードンだ。多くの兵を治療してもらい、ケンには感謝する」

ゴードン様は平民出身の幹部で、スキンヘッドに口髭と顎髭を蓄えた筋肉ムキムキの体をしていた。

平民とはいえ名誉爵位をもらっているが、僕にも普通に接してくれた。

それに、ヘルナンデス様とルーカス様も厚く信頼を置く人物だという。

因みに、いま僕がいるのは司令官室らしい。

「ケンのおかげで、多くの兵が戦線に復帰できるだろう。装備品の手配などもあるが、間違いなく戦線を立て直すことができる」

ゴードン様は、かなり満足そうに頷いていた。

とはいえ、戦闘自体はまだ終わっていない。

「明日以降も、戦闘は続くのですよね?」

「最低でも、休戦協定が結ばれるまで続くだろう。明日以降も、帝国の出方次第だ」

ヘルナンデス様は、僕の質問に的確に答えてくれた。

王国は防御側になるので、常に戦闘が起きてもいいようにしているという。

「帝国も、無限に攻撃できる訳では無い。人員と物資補給のどちらかが欠ければ、戦闘を行うことは出来ない。その点、ケン君が負傷兵を治療して食料を運んでくれたことはとても大きな意味を持つ」

ルーカス様曰く、奇襲作戦を防いだので後は物量による戦いになるという。

因みに、僕の魔法袋に入っている食料は、この後食堂に移動して取り出すという。

「ケン君は、基本的に日中は待機だ。どっかの誰かが言っているように、剣を持たせて最前線に出すことはない。戦闘が始まれば治療要員として対応し、重傷者の対応は夕方以降とする」

ヘルナンデス様が、この後の僕の基本行動を教えてくれた。

日が昇っている間はいつ戦闘が起きるか分からないため、重傷者の治療は後回しになるという。

僕もスラちゃんも事情は分かるし、こればかりは致し方ない。

その代わり、治療できる時は全力で頑張ろう。

「この基地には、他に魔法使いはいないんですか?」

「ちょうど、その話をしようと思ったところだ。水と土の新人魔法兵がいる。この奇襲を受け、やはり魔法使いは強いと実感したよ」

ゴードン様は、少し苦笑いしながら今日の戦闘を教えてくれた。

たまたま軍の研修で国境の基地に来た新人魔法兵らしく、魔法の適性も入隊試験で発覚したばかりらしい。

帝国も魔法使いを出して魔法攻撃を撃ち込んでいたが、二人の魔法使いが覚えたての魔法障壁で何とか防ぎきった。

防御に徹していたとはいえ、結構な功績になる。

「その二人に、ケンの面倒をみてもらう。必要に応じて、二人への魔法の訓練もしてもらおう」

ゴードン様、普通逆じゃないですか?

僕とスラちゃんの方が、その二人から魔法の訓練をしてもらうのかと。

とはいえ、僕とスラちゃんが大幹部であるヘルナンデス様とルーカス様の側にずっといる訳にはいかない。

「そして、もう少ししたら宮廷魔導師が到着する。そうしたら、戦況は一気にひっくり返せるだろう」

おお、ヘルナンデス様が自信満々に言っているよ。

それだけ凄い魔法使いなんだ。

どんな人なのか、ちょっと楽しみだ。

話をしている間に体の調子もだいぶ良くなり、みんなで食堂に行くことにした。

「えーっと、どこにいるかな? おばちゃん、食料を運んできたぞ」

「ちょっと待ってな」

ゴードン様が厨房の中に声を掛けると、女性の声が返ってきた。

すると、少し横に大きい中年女性が姿を現した。

「食料はどのくらい持ってきているのかい?」

「あっ、リストがあります」

僕は、魔法袋からグロリアス子爵領で受け取った食料のリストを食堂のおばちゃんに渡した。

おばちゃんは、ジッとリストを眺めてからこう言った。

「これは凄い量だね。流石に倉庫に入らないから、取り敢えず指定したものだけ出しておくれ。後は、定期的に出してもらうよ」

ということで、食堂のおばちゃんに指定されたものを魔法袋から取り出した。

すると、食堂のおばちゃんは食堂に来ていた兵に声をかけた。

「ほらほら、あんたたちの大事な食料が届いたよ。倉庫に持っていくから、あんたたちも手伝いな」

「「「「「はい!」」」」」

おお、兵が元気よく返事をして次々と野菜やお肉を運んでいくよ。

すると、ゴードン様があることを教えてくれた。

「この前線基地は、場所が場所なだけに常に全員で協力しなければならない。ケンが食料を持ってきたのなら、他のものが運ぶって訳だ」

前線基地ならではのチームプレーなんだ。

しかも自主的に動いているらしく、こういうところはとてもいいと感じた。