作品タイトル不明
第百八十二話 ガルフォース辺境伯家の新しい命
シュッ、ゴォー。
「ぶぅー。折角ケンとの旅行だと思ったのに、何でお兄様がくっついてくるの?」
「国からの任務だし、今回は二人の保護者なのだから当たり前だ!」
「ぶぅー!」
新年の謁見から数日後、僕達は予定通り魔導船に乗ってガルフォース辺境伯領に向かった。
重要作戦というのもあり、軍の幹部でもあるナッシュさんが僕達についてきた。
因みにナッシュさんの奥さんのコリーナさんの妊娠も先日発覚し、シンシアお姉様と同じく僕達の結婚式後に出産予定だ。
コリーナさんの妊娠にじゃれ合っている兄妹の母親であるケーラさんは大喜びで、早速コリーナさんに赤ちゃんのお世話のあれこれを教えていた。
ポチポチ、ポチポチ。
「えーっと、『今の所航行は順調です。予定通り、ガルフォース辺境伯領に到着予定です』。こんな感じかな?」
僕とスラちゃんは、テストとして渡された最新型小型通信用魔導具で定時報告をしていた。
以前のタブレット位のサイズからスマートフォン位のサイズに小型化され、スライムのスラちゃんでも問題なく扱えた。
なお、スラちゃんと軍の施設の警備を担当しているブドウちゃんはアイテムボックスを覚えた。
スラちゃん以上に、軍ではブドウちゃんのパワーアップに喜んでいたのだった。
「そう言えば、何でお兄様は通信用魔導具を持っていないの?」
「通信用魔導具を持てる地位にはなったけど、単に在庫不足だって。ケン君の持っている小型通信用魔導具のテストが終わったら、新しい物を貰う予定だよ」
「ふーん、そうなんだね」
クリスとナッシュさんの兄妹は、いつの間にかお菓子をもしゃもしゃと食べながら定時連絡をしている僕とスラちゃんを見ていた。
とても大切な魔導具だし、そう簡単に渡せるものではない。
因みに、僕の連絡先は陛下や王族に軍の幹部など物凄い事になっていた。
その後も、みんなであーだこーだーとお喋りをしながら魔導船に乗っていた。
そして、魔導船は定刻通り夕方にガルフォース辺境伯領にある軍事基地に到着した。
馬車に乗り換えて、僕達はガルフォース辺境伯家に向かったのだった。
「いらっしゃーい!」
玄関に着くと、すっかり大きくなったランディちゃんが僕達を出迎えてくれた。
すると、ランディちゃんはニコニコしながらある事を教えてくれた。
「あのね、僕はお兄ちゃんになったんだよ! 妹が出来たんだよ!」
「わあ、それは良かったね」
「うん!」
クリスとスラちゃんに頭を撫でられ、ランディちゃんはとっても良い表情だった。
そして、僕達はランディちゃんに案内されながら応接室に向かった。
「あぶー」
「わあ! まだ小さいね」
「でも、首も座ってきたのよ」
エリさんが抱っこしている赤ちゃんに、クリスもスラちゃんたちもとても興味津々だ。
マミと名付けられた女の子は、手をバタバタさせるなどとっても元気いっぱいだ。
「しかし、あの小さかったケンもいよいよ成人になったのか。時が経つのは早いというものだな」
ハーデス様はというと、大きくなった僕を見てかなり感慨深そうにしていた。
何というか、親戚のおじさんみたいな感じだ。
「それに、ケンの連れているスライムが大活躍している。複数の不審者を捕まえていて、現在尋問の最中だ」
「でも、過激派とは限らないですよね?」
「勿論そうだろう。それでも、治安維持に大きく貢献してくれた」
アクアちゃん達は、もうそろそろ屋敷に戻ってくるという。
みんな、町の人の為にと大活躍していたんだ。
それに、赤ちゃんのお世話もお手のもののアクアちゃんは、マミちゃんのお世話も手伝っているらしい。
エリさんも、とっても助かっているそうだ。
「僕達は、明日中に郊外への抜け道がないか確認をします。その後は、町の巡回をしていきますね」
「うむ、それで良いだろう。護衛もつけるが、気をつけて行動するように」
ハーデス様とあれこれ話をしながら、明日以降の予定を決めていった。
決まった事は直ぐに通信用魔導具で連絡し、軍もその方針で良いと言われた。
何にせよ、ここは僕達も一生懸命頑張らないと。
「ふにゃ……」
「おっと。こ、これで良いのか?」
「お兄様、赤ちゃんを抱くのが下手くそだよ。これじゃあ、これから産まれる赤ちゃんを抱っこできないよ」
話が終わると、何故かナッシュさんが赤ちゃんを抱く練習としてマミちゃんを抱いていた。
ナッシュさんはおっかなびっくりマミちゃんを抱いているので、中々上手くいっていなかった。
因みに、マミちゃんの直ぐ側にスラちゃんがいるので何かあっても大丈夫。
そしてナッシュさんは、今日の巡回から帰ってきたアクアちゃんに赤ちゃんの扱い方をあれこれ教わっていたのだった。
残念ながら、ナッシュさんは父親としてはまだまだだとハーデス様にも言われてしまったのだった。