作品タイトル不明
第百七十八話 過去に何が……
奉仕活動も順調に進み、お昼時の一番忙しい時をやり過ごした。
町の人も、トラブルなく炊き出しのスープを食べたり治療を受けたりした。
「「「「「おきたよー!」」」」」
王家の双子ちゃんをはじめとするちびっ子達も大教会内でしていたお昼寝から起き、元気満々で再び奉仕活動に加わった。
炊き出しも問題なく進み、町の人からの聞き込みも十分に進んだ。
こうして段々と夕方も近づき、今日の奉仕活動も終わろうとした、その時だった。
「よーし、手の空いた者から片付け……」
ザッ、ザッ。
ゴードン様が片付けの指示をすると、何と大教会の前にユータ達がニヤリとしながら現れたのです。
ユータの他に緑髪ロングヘアの長身でスタイルの良い女剣士、長身筋肉ムキムキのスキンヘッドファイター、そして背の小さな青髪ロングヘアの魔法使いの男性がいた。
「「「「「グルル……」」」」」
ここで、予想外の事が起きた。
何と、ミュウさんの魔物達が微妙な反応を示していたのだ。
周りの人を守るけど、ユータ達を積極的に攻撃しなくても良いとウロウロとしていた。
「「「「「えーっと、わるものだけどわるものじゃないよー」」」」」
ちびっ子達も、非常に微妙な反応をしているよ。
スラちゃん達も、どうしていいか反応に困っていた。
僕も、殺気などを感じなかったのでどうしようかと思ってしまった。
「おー、ゴードンじゃねーか。久しぶりだな」
「ユータ、お前今まで何をしていたんだ!」
「色々と野暮用よ。ああ、住民に何かする気はねーぞ」
段々と、ユータとゴードン様が近づいていった。
そして、ユータはゴードン様にある手紙を渡した。
「これは!? お前、これは本当なのかよ?」
「本当だよ。お前らが捕まえた馬鹿が、ぺらぺらと得意気に話していたぞ」
どうやら、ユータがゴードン様に渡した手紙には、かなり重要な情報が記載されていたみたいだ。
手紙とユータを何回も見返すゴードン様の反応が、何よりの証拠だろう。
そして、コッソリと鑑定魔法を使うと、驚きの結果が表示された。
「えっ、殆ど罪らしい罪がありません!」
「おっ、流石は【蒼の治癒師】だな。気に食わねー奴を殴った事はしたが、人殺しはしてねーぞ。この前の奉仕活動の際だって、俺はただ歩いていただけだ」
う、うーん。
殆どが、捕まえるかどうか悩むレベルの軽犯罪だ。
そういえば、ユータはこの前も自ら歩いているだけだと言っていた気がする。
流石に、ゴードン様も対応をどうすべきか悩んでいた。
そんな時、この人がユータに向かって歩き出したのです。
「久々ね、ユータ。随分と元気そうじゃないかしら」
「おお、これは王太后様ではねーか。俺みたいな奴に声かけてくれるなんてな」
「最近貴方の話を聞いたので、色々と昔を思い出したのよ」
王太后様が、にこやかにユータに話しかけていたのです。
ユータも、口調は荒っぽいが返答はしっかりとしていた。
そして、王太后様は僕も知らなかったある事を話したのです。
「ユータは、みんなはあの事を根に持っているのね。私の夫が亡くなったばかりで、貴族主義が一番力を持っていた時の事を。様々な重要なポストから、平民排斥をしていた時の事を」
「王太后様、もう過ぎた話だ。俺たちは、血気盛んで若かった。それに、今は馬鹿な事をする者は殆ど排除された。今はゴードンがいる、お貴族になっちまったがな」
陛下の父親で王太后様の旦那様である前陛下が、実は急死していたらしい。
貴族主義勢力の仕業ではないかと言われていたが、その貴族主義勢力の抵抗により最後まで原因は分からなかったという。
そして、王家が混乱しているのを尻目に、貴族主義勢力は我が物顔で動いていた。
「ケン君も、実は無関係ではないのよ。イリアさんがギャイン騎士爵に嫁ぐのも、ノーム準男爵家のお金の問題以外に貴族主義勢力が力を持っていたからなのよ」
「ケンには悪いが、俺達が軍を辞めるトドメがお前の親父の馬鹿な行動だ。ケンの母親は、俺達みたいな軍の端くれ者にも良くしてくれた。平民出身の軍人にとって、ケンの母親の優しさは心の拠り所だった。なのに、あの馬鹿は欲望のままに奪い取ったんだよ」
「えっ……」
まさか、ここで父親の話が出てくるなんて。
しかも、ゴードン様も難しい表情でコクリと頷いた。
突然の事に、僕は頭の中がグルグルとしてしまった。
「まあ、お前の親父は大馬鹿者だが、ケンは悪くねー。寧ろ、あの馬鹿の被害者だってな。最期もみっともなかったみたいだし、似合いの死に方だ」
「えーっと、本人を目の前にして言うのもあれなんですが、概ね同意します」
「ハハハ、実の息子にここまで言われるってのは滑稽な事だ」
何というか、ユータと話をして少し気が抜けてしまった。
気持ちが落ち着いたのも確かで、どうやらユータは僕達にどうこうするつもりはないみたいだ。
「まあ俺達は馬鹿だから、あの連中にあることない事吹き込まれたって訳だ。でも、この前ケンを見て、直感で何か違うって思った訳だ」
だから、数日前にユータは過激派と方向性の違いで大喧嘩をしたんだ。
スラちゃんが手出しをしなかったのも、このユータの心境の変化があったんだ。
そして、これで終わりではなかった。
シャキン。
「よー、折角だから手合わせしないか?」
何と、ユータは背中に背負っている大剣を抜いて僕につけつけてきたのです。
ニヤリとしているユータから、少し本気の気配がしたのでした。