作品タイトル不明
第百七十四話 もっと強くならないと
次の日から、僕とクリスとスラちゃん達は無理をしない範囲で訓練を強化した。
「ケン様、クリス様、キチンとした食事にキチンとした睡眠も大切です」
「「はい!」」
ハンナおばさんも、僕達に色々指摘してくれた。
確かに、厳しい訓練ばかりじゃ駄目だし、どんな事をするにも体が資本だ。
毎朝の訓練も激しさを増し、魔法訓練も難しいものになった。
剣技を鍛えつつ、魔法や身体能力強化魔法も鍛えた。
スラちゃん達も真剣に訓練に励んでおり、ピーちゃんも負けじと頑張っていた。
「ふわぁ……」
「ははは、ケンの気持ちも分かるが無理をするのではない。軍も、様々な方策を考えている。余の見立てでは、過激派とユータ達はいずれ喧嘩別れする可能性が高い」
研修中に、陛下がちょっとこっくりしてしまった僕に苦笑しながら話をした。
軍も訓練を強化すると共に、今回の件を受けて特殊部隊を創設するという。
オーフレア様とローリー様も、もう一度自分を鍛え直すそうだ。
「それに、今回の件を受けて王国軍を引き締める事になった。帝国との戦争がひと段落し、少し空気が緩んでいた所もあった。地方の貴族も、対策を講じている所が殆どだ」
アーサー様も補足してくれたが、実は帝国側でも過激派への対応を急いでいるらしい。
帝国は国内復興を急がないといけなく、過激派の存在はかなり厄介だという。
少しずつでも、過激派への取り締まりが進めばだいぶ違うはずだ。
「更に、ケンのスライムもかなり張り切っている。ミュウの所の魔物もいるし、年末の奉仕活動は問題なくできるはずだ」
実は、リンゴちゃんの他に土魔法ができるカレーちゃんが新たに仲間に入った。
この世界にもカレーがあるだなんて、本当にビックリだ。
しかも、薄黄色のミカンちゃんもスラちゃんから行動オッケーを貰った。
雷魔法が使える攻撃特化型スライムで、今日は他のチビスライムと共に軍の施設で魔法の訓練に励んでいた。
スラちゃんは、軍の巡回部隊と共に馬に跨って町を巡回していた。
スラちゃんは奉仕活動などを通じて町の有名人になり、声をかけられる事も多かった。
勿論不審者の取り締まりにも力を発揮し、勲章を貰える程の手柄を立てたそうだ。
巷では、スラちゃんを筆頭にしたスライム軍団だなんて呼ばれていた。
「しかし、ケン君の事務処理能力は素晴らしい。これなら、手続き関連も直ぐに進むだろう」
アーサー様は、僕の事務処理も高く評価してくれた。
前世でもどんな仕事でも頑張ってやっていたし、多くの人の為に頑張ろうと思っていた。
すると、陛下はこんな事を教えてくれた。
「【蒼の治癒師】は、所詮回復魔法しか使えないと陰口を叩いていた者がいた。ケンに接近できずにいた貴族だったが、結局はケンに限らず人を見る目がなかったのだろう」
以前にも、新年の夜会で僕を取り囲んで何とか取り入ろうとした貴族がいた。
そういえば、アーサー様に嫁を送ろうとメアリーさんを押しのけようとした貴族もいた。
夜会などで、僕に嫁を送り込もうとした貴族もいたなあ。
さて、気を取り直して仕事をしないと。
僕は、うーんと背伸びしてから改めて書類に向かったのだった。
「いやあ、クリスちゃんは優秀でいいよ。物覚えも良いし、凄い実績を挙げているのに偉ぶる事もないし。きっとケン君の影響を大きく受けているわ」
「あぶー」
夕方、産休中のシーリアさんのいるルーカス様の屋敷に研修に行ったクリスを迎えに行った。
クリスの研修が上手くいっていて、僕もホッと胸を撫でおろしていた。
因みに、そのクリスは勉強部屋でジョセフちゃんに文字を書く勉強を教えていた。
僕は赤ちゃんのスーザンちゃんを抱っこしながらシーリアさんの話を聞いており、スーザンちゃんは元気よく手足をバタバタとさせていた。
スーザンちゃんは、ジョセフちゃんの赤ちゃんの頃に比べるとかなり活発な気がした。
「あと、私の見立てでは年末の奉仕活動で何かあると思うわ。そこをしのぎきれば、組織は分解する可能性が高いと思うのよ。やはり、元は別々の意見だった者の集まりだから、いつかは意見が衝突するのよ」
シーリアさんも、陛下と同じ見立てをしていた。
僕も、次の年末の奉仕活動がキーになると思っていた。
あと一ヶ月以上あるし、十分パワーアップできる時間はあった。
前回の奉仕活動でユータと対峙した時はかなりの圧力に気圧されてしまったが、次は最低でも動けるだけの力を手にしたいと思っていた。
「あぶー!」
「はいはい、立ちたいねー」
スーザンちゃんは、僕に捕まって立ちたがっていた。
好奇心旺盛で、本当に活発だね。
「スーザンはハイハイも好きでね、目を離すと直ぐに色々な所に行っちゃうのよ。元気なのは嬉しいんだけど、母親としてはもう少し大人しくして欲しいわ」
「ぶー!」
スーザンちゃんは、何と屋敷の廊下を端から端までハイハイしちゃうらしい。
でも、シーリアさんも活発な性格だと思ってしまったのだった。
ガチャ。
「べんきょーおわったー!」
「ふう、何とか終わりました」
そして、頑張ったと満足そうなジョセフちゃんと、少しお疲れ気味のクリスが部屋に入ってきた。
そして、ジョセフちゃんは、僕の所に来てスーザンちゃんを抱っこした。
「おにーちゃんだよー!」
「あー!」
スーザンちゃんもジョセフちゃんが大好きなので、抱っこされながら手をバタバタとさせていた。
こんな小さい子の笑顔を、僕たちが守らないといけないと思ったのだった。