作品タイトル不明
第百七十話 上級官僚試験合格者への合格証書授与
数日後、王城で上級官僚試験合格者への合格証書授与の式典が行われる事に。
勿論クリスやミュウさんも参加し、僕も昔式典に参加したなぁと感慨深く思っていた。
なのだが、僕は陛下からの指示で何故か式典会場にいた。
「あの、何で僕が式典のお手伝いをするんですか?」
「上級官僚の研修の一環だ。他の者も、式典の補助を経験するぞ」
陛下、ドヤ顔で僕に返事をしないで下さい。
それに、僕は先日アリアちゃんとブライトちゃんの式典の補助をしていたはずだ。
これだと、もう一回式典補助の研修を受けることになる。
「ありゃ、ケンが主役だろう。何せ、来賓挨拶までしたんだからな」
うう、僕は陛下の正論に反論できなかった。
という事で、僕は合格証書を陛下に渡す役目を担う事になった。
「順番はっと、貴族子弟の後にミュウさんとクリスっと……」
玉座の間に着いたら、合格証書を渡す順番を確認した。
今回は初級官僚試験の合格者は少し増えたが逆に上級官僚試験合格者の数が少し少なく、合計八名だった。
クリスとミュウさんの他に侯爵家の女性が一人いて、他は子爵家と男爵家出身の男性五人だ。
すると、ここでとんでもない事が起きてしまった。
アーサー様が、急いで式典会場に入ってきた。
「父上、並び順で合格者が少し揉めております」
「はあ、毎年の事とはいえ嘆かわしい事だ。では、第二案で対応する」
「直ぐに通知します」
貴族に寄っては、爵位や歴史などを主張して揉め事を起こす者がいるという。
それが、犬猿の仲の貴族だと本人の人柄云々以前の問題らしい。
僕が上級官僚試験に合格した時は、本当にたまたま揉め事が起きなかったらしい。
そして、元々用意されていた第二案で合格証書を並べ始めた。
えーっと、侯爵家令嬢、ミュウさん、クリスで、後が男爵家と子爵家の者と……
「陛下、準備できました」
「それでは、サッサと済ませよう」
陛下も、無駄な争いはサッサと終えたいと思っているみたいだ。
そして、アーサー様に連れられて不満たらたらな貴族子弟が入ってきた。
なんで俺が女の後だよと、ブツブツと言っている人もいた。
それでも、陛下の前に立つとビシッとしている辺り、キチンとわきまえる時は分かっているみたいだ。
「それでは、これより上級官僚試験合格者への合格証書授与式を行う。なお、今回は成績順で行う。後ろ五人は一点差だから、あまり関係ないな」
「「「「「うぐっ……」」」」」
陛下からジロリと見られ、五人は思わず言葉に詰まった。
という事は、侯爵家令嬢、ミュウさん、クリスと五人の貴族子弟との間には大きな差があったんだ。
そして、陛下は何事もなかったかのように合格証書授与を始めた。
「ティオ・ニュール」
「はい」
首席合格のティオさんは、法務官僚のニュール侯爵家令嬢だ。
水色のウェーブのかかったゴージャスな髪で、スタイルもゴージャスだった。
「クリス・ダイナー」
「はい」
クリスとミュウさんも、順に合格証書を受け取った。
そして、陛下は五人の貴族子弟にも合格証書を手渡した。
「諸君らは、これから国を担う者として活躍しなければならない。真摯に職務に向き合った結果、新たな評価がついてくる。今ここで、些細な揉め事を起こす暇はない。更に精進する様に」
「「「「「はっ」」」」」
上級官僚試験合格者は、陛下に臣下の礼を取った。
陛下も順番の件で思いっきり釘を差したし、僕もこれで落ち着いて欲しいと思った。
そして、陛下はある事を五人の貴族子弟に通告した。
「本日の式典案内に、問題を起こした場合は昼食会に参加させないと明記してある。大騒ぎして合格証書授与の順番を変えさせるなど、以ての外だ!」
「「「「「も、申し訳ありません……」」」」」
過去にも、順番を変えさせた者は昼食会に参加させなかったらしい。
今回は、五人とも騒いでいたので陛下も余計に怒っていた。
直ぐに職場に戻れと言われ、五人はガックリと項垂れながら玉座の間を出たのだった。
「それでは、昼食会にしよう」
「「「はい」」」
煩い人がいなくなった所で、陛下が僕たちに声をかけた。
心なしか、陛下もホッとしているぞ。
そして、僕も行った昼食会場に移動した。
「「「「いらっしゃーい!」」」」
「「ガウッ」」
すると、ニコニコしている王家のちびっ子たちが僕たちを出迎えてくれた。
仲良しなユキちゃんとキングレオも一緒で、ティオさんも思わずニコリとしていた。
どうやら五人が昼食会に参加できなくなった事が伝わっていたのか、席は人数分しか用意されていなかった。
「改めて、【蒼の治癒師】様にご挨拶いたします。ニュール侯爵家のティオと申します。今後とも、宜しくお願いしますわ」
「「「「おおー!」」」」
何故か、僕ではなくちびっ子達がティオさんの綺麗な挨拶に大興奮していた。
クリスとミュウさんもティオさんに挨拶し、改めて昼食会が始まった。
とはいえ、この場でほぼ初めてなのはティオさんだった。
「「「ほーしかつどーにいたよ!」」」
「いたー!」
あれ?
もしかして、僕が気がついていなかっただけ?
ちびっ子に加えて、クリスとミュウさんもウンウンと頷いていた。
……大変失礼しました。
今度は、僕がペコペコと謝る番だった。
「クリスちゃんは、研修が終わったら私と共に軍で動いてもらうわ。結婚式の準備もあるだろうけど、今はケン君がひたすら招待状を書けばいいだけなのよ」
「あうー」
流石はシーリアさん、結婚式の準備状況が直ぐに分かった。
僕もクリスも成長期なので、服の採寸は年明けに行うことになっていた。
今できる事は、僕が頑張ってひたすら招待状を書くことだけだった。
その後も、お互いの事や僕の噂などを話していた。
ティオさん曰く僕の事はかなり有名らしく、僕が町でお菓子を買ったとかも噂になるという。
うん、かなり怖いんですけど……
そして、王家のちびっ子たちは新しいお姉さんと仲良くなって大満足だ。
概ね、ちびっ子達が張り切って昼食会は終わった。
そして、昼食会へ参加できなかった五人の貴族子弟は、いきなりやらかしたと噂になってしまったのだった。