作品タイトル不明
第百六十五話 ケイトちゃんを連れて王城へ
翌日の式典に参加するため、僕は早朝から身支度を整えた。
式典の前にケイトちゃんを王城へ連れて行くので、一緒に身支度を整えた。
マヌ伯爵家の屋敷が立入禁止になる前に服とかを確保したので、ケイトちゃんは綺麗なドレスを身に着けていた。
ケイトちゃんは、虐待こそ受けていないが家族から愛されていなかった。
何だか、僕の境遇にちょっと似ていると思ってしまった。
ハンナおばさん達も、ケイトちゃんの事は出来るだけ気にする事にしていた。
パカパカパカ。
「わあ、すごいね!」
ケイトちゃんは、馬車内でスラちゃんがぴょんぴょんと跳ねている様子に手を叩いて喜んでいた。
感情表現は問題なさそうで、知識面はこれからって感じかな。
クリス、ピーちゃん、ケイトちゃんのお世話係の使用人も、楽しそうにしているケイトちゃんに思わず目を細めていた。
和やかな雰囲気の中で王城に到着し、僕たちは会議室に向かった。
「暫くは、ケンの屋敷で勉学に励む事になるだろう。裁決が出ていない以上、孫などに顔を合わせる事は出来ぬ。ただ、当主が死んだ上に夫人や嫡男夫妻も捕まっている。元の様にはいかないだろう」
これから僕と一緒に式典に参加する陛下は、ケイトちゃんのこれからの展望を語っていた。
しかし、こうして陛下と顔を合わせることがとても重要で、ケイトちゃんも話を聞こうとちょこんと椅子に座っていた。
「捜査が落ち着くまで、あと一ヶ月はかかるだろう。処分を通達する謁見は、その後行う。ケイトも、再び王城に来るように」
「はい!」
ケイトちゃんの元気な返事に、陛下も満足そうに頷いた。
その後も処分までの話が出たが、外出は禁止で他人との接触も極力避ける事になる。
とはいえ、当面は勉強部屋でクリスと共に絵本を読んだりと勉強をする日々になりそうだ。
「じゃあ、ケイトちゃんは僕の屋敷に戻って絵本を読んでいてね」
「はーい!」
これで、ケイトちゃんの対応は終わった。
使用人と共に一足先に僕の屋敷に戻るのだが、念のためにスラちゃんとピーちゃんが護衛としてつくことになった。
スラちゃんとピーちゃんは、屋敷に着き次第軍の施設に飛んで来ることになっている。
「両親が犯罪者なので、僕もケイトちゃんに思う所はあります」
「ケンの置かれた立場だと、あの子の痛みもよく分かるだろう。気にかけてやるように」
僕に語りかけた陛下の表情は、父親みたいな感じだった。
不幸な子であるのは間違いないし、僕だけでなくクリスも気をつける様にと頷いていた。
そして、僕とクリスは陛下や主だった貴族とともに軍の施設へと向かったのだった。
「ケン君、チビスライム達がしっかりと検問していたよ。怪しい者が数人捕まったので、現在取り調べを行っているよ」
軍の施設に着くと、ヘルナンデス様がニコリとしながら僕に声をかけてきた。
やはり、過激派はまだ怪しい動きをしているんだ。
こうなると、軍の施設だけでなく王城でも検問を強化しないと駄目だろう。
僕と合流したスラちゃん曰く、新たに戦力になりそうなスライムがいるという。
「軍にいるスライムを見れば、十分に効果があると分かる。明日にでも、新たなスライムを王城の警備に採用しよう」
陛下の一言で、新しいスライムの採用が決まった。
スラちゃんも、屋敷に戻ったら直ぐにそのスライムに話をするという。
先ずは、式典を無事に終わらせないと。
僕は宮廷魔導師の列に並び、クリスは観覧席から式典を見守る事になった。
「昨日、国を揺るがし兼ねない大きな事件が起きた。諸君らの素早い対応で事なきを得たが、いつテロが起きるか分からない。帝国と講和条約を協議中だが、本件は協議とは全く関係ない。犯罪組織と厳しい闘いが続くだろうが、王国軍が負ける訳にはいかない。厳しい訓練が続くだろうが、諸君の成長した姿が見られることを期待する」
「「「「「はっ」」」」」
陛下の訓示に、綺麗に整列している兵は威勢良く返事をした。
今は兵も巡回が増えて大変だけど、暫くは頑張らないといけない。
安全な町を維持する為に、僕も頑張らないといけないと思った。
そして、綺麗な順列行進や共同行進なども披露された。
こうして、開催が危ぶまれた式典は何とか終わる事が出来た。
「しかし、開戦派の残党が実力行使に出やがったか。こりゃ、当面は忙しくなるな。馬鹿共を、根こそぎ捕まえないといけねーな」
「ええ、そうね。ふふふ、明日予定していた婚活が緊急巡回の為に流れてしまったわ。一人残らず叩きのめさないと気がすまないわ」
オーフレア様はともかくとして、ローリー様も怒りの炎がメラメラと燃えていた。
過激派になった者は、怒らせてはいけない人を怒らせてしまったようだ。
しかも、ローリー様は明日のスラム街での奉仕活動にも同行する事になった。
僕も、ローリー様を怒らせない様に気をつけよう。
パタパタパタ。
そして、スラちゃんが王城で監視役をやる黒っぽいスライムをピーちゃんと共に連れてきた。
「えっと、クロちゃんというスライムです。水魔法の他に闇魔法が得意で、対象を眠らせたり目を一時的に見えなくする事もできます」
「水魔法での攻撃もできるが、補助魔法が得意なのか。中々面白いスライムだ」
ヘルナンデス様に、クロちゃんの説明をして預けた。
クロちゃんも、頑張るぞとやる気を見せていた。
とはいえどんな任務をするのか説明が必要で、そこはヘルナンデス様とルーカス様が対応してくれることになった。
さて、僕の今日の仕事はこれで終わりだ。
「クリスは、ケン君の屋敷に戻って勉強だな。保護された少女に負ける訳にはいかないぞ」
「えー!」
グラウンドの端で、父親にブーイングをしている娘の姿があった。
残念だけど、クリスに拒否権はないだろう。
僕も、全く同じ道を辿ったのだから。
頑張って勉強をして、上級官僚試験に合格すれば勉強から解放されるよ。
夏前まで、何とか頑張りましょう。