作品タイトル不明
第百五十六話 年末の奉仕活動と襲撃事件
そして、年末の奉仕活動の日になった。
当初僕とオーフレア様が王家の子どもたちを守ることになっていたが、ある理由から更に増員する事になった。
「まさか、一部の勢力が過激派になっているなんて……」
「これは、ある程度予測できた事だ。帝国と王国が戦っている方が都合の良い者もいる。帝国の開戦派と繋がっているものもな」
僕の横にいるヘルナンデス様が、思わず愚痴をこぼした。
僕はスラム街にある教会での奉仕活動を続けており、その際にスラちゃんたちがピーちゃんに乗って犯罪組織の拠点に忍び込んでいた。
先日潜入した犯罪組織の拠点に、王国内でテロ行為を起こす内容が記載されたメモを見つけたのです。
この犯罪組織の拠点は速攻で制圧されたが、他にも同じ事を企んでいる犯罪組織があるかもしれない。
だが、残念な事に今日までに新たな情報を掴むことはできなかった。
その為、今日はかなりの厳戒態勢を敷くことになった。
「「「「がんばろーね!」」」」
「「「「「「「グルル」」」」」」」
予定通り王家の双子ちゃんとジョセフちゃん、それにルートちゃんは張り切って奉仕活動に参加していた。
キングレオとすっかり大きくなった小虎と小狼も、ちびっ子たちの護衛としてとても張り切っていた。
なお、子どもたちの情緒教育にと来年小狼一匹が王家にやってくる事になっていた。
「皆も頑張ってね」
「「「ピッ」」」
更に、サンダーホークが上空から監視活動を行っていた。
これまた、クリスにやるぞと返事をしていた。
「はあ、婚活の予定が……」
ローリー様はカウントダウン婚活の予定が流れたそうで、かなりやる気を失っていた。
とはいえ、任務だし兵に良い人がいるかもしれないからここは頑張らないと。
きっと、頑張れば何かご褒美があるはずだ。
「お父さん、ローリーおばちゃ……お姉ちゃん大丈夫かな?」
「まあ、やる時はやるから大丈夫だろう。マーヤ、アイツは年増のババアで十分だ」
あの、そこの父娘がちょっと酷い会話をしていないかな。
ローリーさんには聞こえない位の小声だが、他の人には聞こえていると思うよ。
何というか、相変わらずですね。
「ぐっ、何でこんなに厳重警戒なのかしら」
「これでは、王家のお子様にも近づけませんわ」
偶然とはいえ警備が強化された関係で、下心を持つ貴族令嬢は僕たちに近寄る事が出来なかった。
魔物達もかなり警戒しているし、一先ず貴族関係から何かある事は考え難くなった。
軍の兵も増強しているし、先ずは目の前の奉仕活動に専念しよう。
シュイン、ぴかー!
「どーかな、元気になった?」
「元気かな?」
「ええ、とても良くなりましたわ。王女様も王子様もありがとうね」
「「えへへ!」」
アリアちゃんとブライトちゃんは、シロを抱いて張り切って治療をしていた。
保護者として二人を見守っている王太后様も、張り切っているひ孫に思わずニコリとしていた。
もちろん、王太后様にはアクアちゃんとリーフちゃんが交代でがっちりと護衛していた。
クリスやルートちゃん、ジョセフちゃんもとっても頑張っており、マーヤちゃんも張り切って配膳していた。
「ヒヒーン!」
「うおっ、放しやがれ!」
スラちゃんとブドウちゃんは、それぞれ別の馬に跨って奉仕活動の列に並んでいる犯罪者の取り締まりを行っていた。
二匹は鑑定魔法が使えるので、普通の人を間違って捕まえることはない。
年末だけあって多くの犯罪者も炊き出しに並んでおり、情けで施しの一杯を貰っていた。
作っていたのは、アクアちゃんとリーフちゃんだったけど。
「うーん、捕まっている犯罪者は多いけど、特段変わった事はないですね」
「だが、何かあっては駄目だ。引き続き、気を引き締めて対応に当たらないと」
ヘルナンデス様は、一見すると平和そのものの奉仕活動に何かがあるのではと思っていた。
僕は大丈夫かなと思っていたのだが、お昼前になって人が多く並んでいるタイミングで事件が起きてしまった。
ズドーン、ズドーン!
「「「「「キャー!」」」」」
突然、王都の端の方で大きな爆発音と共に派手な煙が立ち上がった。
炊き出しに並んでいる人々から悲鳴が聞こえ、中には泣き出している小さな子どももいた。
「も、もしかして防壁の門付近ですか?」
「陽動を仕掛けたのか? ケンは動くな、周囲の探索を行え」
ヘルナンデス様は、手の空いた部隊を防壁の方に向かわせた。
シュイン、もわーん。
えーっと、何か怪しい人の反応はっと。
あっ、いた!
「建物の物陰と屋上に怪しい反応があります!」
「普通、そんな所に反応はない。兵を向かわせよう」
ヘルナンデス様は、周囲の警戒をしつつ再度兵に指示を出した。
僕も、いつでも戦える準備をしていた。
「みんなは、一回中に避難を……」
王太后様は、ちびっ子たちを大教会内に避難させようとした。
他の貴族の子どもと共に大教会内に入ろうとした、その時だった。
シュイン、ズドドドドドーン!
「「「「「わあ!?」」」」」
突如、別の屋上からちびっ子たちを狙う魔法攻撃が放たれたのだ。
しかし、王太后様にはリーフちゃんがついていた。
シュイン、バシッ。
シュイン、ズドドドドドーン、ズドドドドドーン!
「「「「「おおー!」」」」」
リーフちゃんは、ちびっ子目掛けて放たれた魔力弾を迎撃するばかりか、更に相手目掛けて撃ち返していた。
マーヤちゃんも、魔法障壁を展開してちびっ子たちをしっかりと守った。
華麗な連携に、ちびっ子たちは大盛り上がりだ。
「今のうちに、教会内に入るわ。ケン君たちが、悪者をやっつけてくれるわよ」
「「「「「がんばれー!」」」」」
ちびっ子たちは、僕たちに声援を送りながら大教会に入った。
貴族令嬢なども避難完了し、町の人も兵の護衛を受けながら大教会内に入ろうとした。
「うん? あっ、貴方は駄目です!」
「ちっ!」
僕は、鑑定魔法で見つけた悪者の前に立ちふさがった。
他に悪者がいないか、魔法兵とスラちゃんとブドウちゃんも避難してきた町の人を鑑定魔法で確認していた。
「いくら【蒼の治癒師】といえ、剣なら!」
ガキン、ガキン!
悪者は、僕が魔法を放てないように乱戦を狙ったみたいだ。
しかし、僕は毎日クリスと共に剣の練習をしていた。
今では、剣もそこそこ自信があった。
「はっ、はあ!」
「ぐっ、ぐぐっ、くそー!」
ガキン、ガキーン!
ザシュ、バタン。
「ふう、こんなものかな」
僕は、悪者の剣を弾いて切り伏せた。
その後、軽く回復魔法を放ってから拘束魔法で動けなくした。
「あんたたちのせいで、折角の婚活が流れたのよ!」
ブオン、ボカーン!
「ごふっ……」
各所でオーフレア様やクリスが悪者を撃退しており、ローリー様も鈍器みたいな杖を思いっきりフルスイングしていた。
怨念のこもった一撃は、きっととんでもない威力なはずだ。
「陽動作戦で来たか。暫く周囲の確認をしてから、奉仕活動を再開しよう」
「「「「「はい!」」」」」
こうして、ヘルナンデス様の指示のもと僕たちは周囲の安全確保に専念した。
大きな被害が出ず、本当にホッとしたのだった。
因みに、大教会内に逃げ込んだ町の人にちびっ子たちがシロちゃんやレモンちゃんを抱いて治療していたという。
町の人は、こんな時にも笑顔で対応していて本当に凄い子どもだとちびっ子たちを絶賛していたのだった。