軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最高の誕生日 2

一時間ほどしてゼイン様は目を覚まし「内容は覚えていないものの、とてもいい夢を見れた気がする、ありがとう」と言ってくれた。

私自身もぼんやりとしながら、心を休める良い時間になったように思う。

最後は再び馬に乗って、夕焼けがよく見えるという場所へと向かうことにした。

「また時間ができたら、別の場所や数人で行くのも良いかもしれないな」

「ぜひ! ピクニックは人数が増えると、より楽しくなりそうです。それにいつか、子どもができたら一緒に来るのもいいなと思っていて──…」

そこまで言いかけて、私はハッと口を噤んだ。

後半の発言は具体的な「誰と」という深い意味なんてないし、一般論のようなものだ。

それでも今、ゼイン様と私は将来をも考える恋人なわけで「子ども」なんてワードを出してしまったことが恥ずかしくなってしまう。

「ああ、そうだな。きっと楽しくなる」

けれどゼイン様は一切の躊躇いも迷いもなく頷いてくれて、胸がいっぱいになる。

そんな彼とのこの先の未来や穏やかで優しいこの時間がずっとずっと続くよう、祈らずにはいられなかった。

◇◇◇

帰宅してゆっくりとお風呂に入り汗を流した後、ヤナに手伝ってもらいながらドレスに袖を通した私は、軽く首を傾げた。

ラベンダーカラーのドレスはシンプルなデザインながら、レースや宝石が上品にあしらわれており、動くたびに裾のフリルが優雅に揺れている。

「こんなドレス、持っていたかしら?」

「公爵様からのお誕生日プレゼントです」

あっさりとヤナはそう答え、私は目を瞬く。

そんな私を鏡台の前へ移動させたヤナは、てきぱきと私の髪を結い上げていく。

「耳飾りは公爵様、こちらの髪飾りと首飾りはマリアベル様からです」

髪には真珠の髪飾り、首にはドレスと同じ布を宝石で縁取ったリボンが巻かれ、耳元ではイエローダイヤモンドのピアスが輝いていた。

どれも私の語彙力では言い表せないほど素敵で、それでいて私によく似合っている。二人が一緒に選んでくれたのだと思うと、胸がいっぱいになった。

「ありがとう、ヤナ。あなたのお蔭でとても素敵だわ」

「お二人のお見立てとお嬢様の美しさによるものです」

鏡に映る自分の姿に見惚れてしまっていたものの、エヴァンが夕食の時間だと知らせてくれて、みんなを待たせるわけにはいかないと急ぎ部屋を出る。

「わあ……」

まっすぐ食堂へ向かうと、朝とは全く様子が変わっていた。花や飾りで美しく彩られ、テーブルの上にはご馳走が所狭しと並んでいる。

まさにパーティー会場という華やかさで、心が弾む。

食堂に着くと既にゼイン様とマリアベルの姿があって、二人は私の姿を見た途端、同じ蜂蜜色の瞳を見開いた。

「お姉様、とてもお美しいです! 絵本に出てくるお姫様かと思いました」

「ああ、本当に綺麗だ」

「ありがとうございます。ドレスもアクセサリーもとても素敵で、宝物にします」

何度もお礼を伝えたあと、マリアベルは私の手を引いて席へと案内してくれた。

今日は身分など関係なく私の大切な人たちはみんなお客様だというマリアベルにより、エヴァンとヤナ、そしてアルも一緒に席につく。

「まあ、アルも来てくれたのね! ありがとう」

「別にお前のためじゃない。仕事の一環だ」

「今日は報酬だって払っていないのに、一言声をかけたら来てくれたんですよ」

「余計なことを言うな! 美味い飯が食えるからだ」

「ふふ、そっか」

マリアベルの突っ込みに照れた様子で反論するアルは、相変わらず素直じゃないところもかわいい。服装だってこの場に合わせて落ち着いた正装を着ていて、笑みがこぼれる。

それからはみんなで楽しくお喋りをしながら、美味しい食事を楽しんだ。

「この酒、美味しいですね」

「公爵領で作っているんだ。良ければいくつか贈るよ」

エヴァンとゼイン様はお酒を飲んでおり、この世界では飲酒は十六歳からなんだとか。

けれどグレースは酒癖が悪かったと聞いているため、私はジュースをいただいていた。

まだ怖くてチャレンジできていないものの、いつかゼイン様のいない場でエヴァン辺りに見守ってもらいながら飲んでみたいと思っている。

「何でも美味しくて、太ってしまいそう」

「グレースお嬢様はもっと太っても問題ありませんよ。元が細すぎるので」

「本当? ヤナがそう言ってくれるなら……」

「ああ。俺もどんな君でも好きだから、気にする必要なんてないよ」

不意打ちでゼイン様がそんなことを言うものだから、咳き込んでしまいそうになる。

大好きな人達に囲まれて過ごす時間は楽しくて、私はずっと笑っていたように思う。

「では、皆さんからのプレゼントをお渡ししましょう」

食事を終えた後はマリアベルの進行により、みんなが私のために用意してくれたという、プレゼントを渡してもらうこととなった。

こうして集まってお祝いしてもらうだけでも十分なくらい嬉しいし、プレゼントがある素振りもなかったため、ドキドキしてしまう。