軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

波乱だらけのお茶会 7

マリアベルと共にすぐに側へ向かうと、ゼイン様は柔らかく微笑む。

「二人を迎えに来たんだ」

「ふふ、グレースお姉様に会いたかったのが一番の理由でしょう? お兄様ったら、このために昨日は遅くまでお仕事なさっていたんですよ」

余計なことを言うなとマリアベルの頬をつつくゼイン様に、胸が高鳴る。

今日迎えに来てくれたのも、シャーロットとのことを気遣ってくれたに違いない。どこまでも優しいゼイン様の愛情を感じて、目の奥が熱くなった。

「ありがとうございます。すごく、すごく嬉しいです」

周りにいた令嬢達もきゃあっと黄色い声を上げて、頬を赤らめている。

「ウィンズレット公爵様がグレース様を溺愛しているというのは、本当だったのね」

「こうして見ると、美男美女で本当にお似合いだわ」

少し前に知ったことだけれど、このシーウェル王国で社交の場に女性を迎えに来るというのは、愛妻への愛情の深さを表す行為だそうだ。

王妃を深く愛する嫉妬深い初代の国王陛下が、王妃が出かける度、本当に女性だけの場なのか確認するために自ら迎えに行っていた、なんて逸話があるんだとか。

きっとゼイン様はそんな話なんて知らずに来てくれたのだろうと思いながら、エスコートを受けて公爵家の馬車に乗り込む。

マリアベルの隣に腰を下ろそうとしたところ、ゼイン様にぐっと抱き寄せられ、強制的に彼の隣に座らされてしまった。

「ゼイン様、近すぎませんか?」

「嫌なのか」

「そ、そうではないんですが……」

「それなら問題はないな」

ゼイン様の太陽よりも眩しい笑顔を向けられ、何も言えなくなる。マリアベルもいる上に、馬車の外からも私達が密着しているのは見えるはず。

私は人前でくっつくのが無性に恥ずかしくて、しっかり私の腰に腕を回しているゼイン様の肩をそっと押す。

その結果、よりきつく抱き寄せられてしまい、大人しくすることにした。

「──え」

それでもやはり恥ずかしいことに変わりはなく、ゼイン様から顔を背けるように窓の外へ視線を向けた私は、息を呑んだ。

門の前でこちらを見ているシャーロットはひどく冷たい目をしていて、ぞっとしてしまうほど無表情だった。

常に明るくて愛らしい笑みを浮かべている彼女とはまるで別人で、戸惑いを隠せない。

「どうかしたのか?」

「い、いえ! 何でもありません、今日はとても楽しかったなと思って」

咄嗟に誤魔化したものの、鋭いゼイン様にはバレているのか「本当に?」と尋ねられる。

けれど、最終的に今日のお茶会に行って良かったと思えたのは事実だった。

「はい。マリアベルと一緒に行けて嬉しかったですし、参加されていた方々に仲良くしたいと言ってもらえたんです! 私、同世代の方とこうしてお話しすることってほとんどなかったから嬉しくて、ついつい──……」

口に出してみると止まらなくなり、自分が思っていた以上に嬉しかったのだと実感する。

やがて私ばかり話をしていたことに気付き、慌てて口を噤んだ。

「そうか。良かった」

──きっと私の話は面白くもないし、取り留めもなくオチだってない。

それなのにゼイン様は心から嬉しそうに優しく微笑んでくれるものだから、何故か少しだけ泣きたくなった。

「そのドレスもアクセサリーもよく似合っている」

「ありがとうございます。とても気に入っていて、毎日でも着たいくらいです」

本当はこういうかわいらしい服装が好きで、周りを気にせずに着られるようになったのは嬉しい。

化粧だって、綺麗で大人びた顔立ちに無理に濃い色を塗らずによくなった。

「君は何でも似合うが、そういう方がいい」

「もうあんな格好は二度としませんので……」

「そもそも露出が多いのも気に食わなかった」

ゼイン様はそう言うと形の良い眉を寄せ、本当に嫌だと思っていたことが窺える。

確かにゼイン様から贈られるドレスはどれも、肌がしっかり隠れるデザインが多い。悪女ドレスはもう着ないものの、今後は気を付けようと反省した。

「そういえば今日のお姉様、とっても格好良かったんですよ! ダナ様が毒蛇に襲われかけた時に、素手で蛇を掴んで助けられて」

「あっ……」

キラキラと瞳を輝かせるマリアベルは間違いなく、良かれと思ってゼイン様に話してくれたのだろう。

それでも私は、隣に座るゼイン様の方を見ることができそうにない。

「すまない。俺の聞き間違いでなければ、毒蛇を素手で掴んだと聞こえたんだが」

「い、いえ、あの……」

「はい! 怯えず勢いよく掴むのがコツだそうですよ」

「……へえ?」

ゼイン様は笑顔のまま顔を近づけてくるけれど、その目は全く笑っていない。

間違いなく私が危険な行動をしたことに対し、それはもう怒っている。