軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72.昼食

数十分後、俺達のテーブルに高垣さんが注文してくれた料理が運ばれてきた。

「うわあ、美味しそう」

「本当だね」

「頂きます」

高垣さんが注文してくれた料理はサラダから主食まで様々だったが、どれもとても美味しそうで、何から口にするか少しだけ迷ってしまった。

「あっくん。このポテトフライ、すごい美味しいよ」

「え、本当?」

「うん。はい。あーん」

「わあ、本当だ、美味しい」

奏があーんしてくれたポテトには口を付けず、俺は自らの箸でそれを皿から摘まんで口に運んだ。

「……あっくん。あーん」

「奏、他の人の目もあるし、さすがに恥ずかしいよ」

「……ふうん」

奏の瞳には光が……あれ、灯っている。

「じゃあ、他の人の目がないところではやっても問題ないってことだね」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「そうなる」

「やった」

実際問題、他の人の目がない場所でされる分には恥ずかしくないし、何ならちょっと役得だし、問題なんて更々ない。

「……天然の砂糖が過剰に投入されていく」

高垣さんが呟いた。

「綾香、あんた何言ってるの?」

「料理がどんどん甘く感じるって言ってるの」

「は? どれもしょっぱくて美味しいじゃない」

「……人選失敗したかな。これは」

高垣さんは頭を抱えて、ため息を吐いていた。

……なんだか高垣さん、今日はため息が多いな。もしかして心労に感じるような出来事がまた起きたのだろうか。

少し、心配だな……。

「綾香ちゃん。ここのお料理、とても美味しいね」

奏は高垣さんに向けて微笑んだ。

「美味しいお店を教えてくれて、ありがとうっ」

「それはあたしじゃなくて、このお店の人達に言ってあげて」

高垣さんはぶっきらぼうに答えた。

「ここの料理が美味しいのは、あたしが何かをしたわけじゃない。このお店の企業努力の成果だもの」

「うふふ。綾香ちゃんは素直じゃないね」

「いや、事実でしょう」

「そうだね。このお店のお料理が美味しいことは、あなたの言う通り、このお店の人達の努力のおかげ。でも、このお店をあたし達が知ることが出来たのは、間違いなくあなたのおかげだよ」

「……」

「ありがとう、綾香ちゃん。ほら、門倉さんも」

「ありがと、綾香」

「あっくんも」

「ありがとうございます」

「だーっ、もうっ、恥ずかしい空間をあたし達にまで伝染させないでっ!」

高垣さんは頬を染めて声を荒げた。

昼食時で客が多く賑やかとはいえ……あんまり店内で大声をあげるものではないと思うんだけどなぁ。

「……はぁ。あなた達といると、本当に調子が狂う」

「うふふ。うふふふふ」

「何、その薄ら笑いは」

「うふふ。だって綾香ちゃん。そんなこと言っても……今日、あたし達をこの場に呼びつけたのは、他でもないあなただよ?」

そういえばそうだ。

俺達を呼んでおいて憎まれ口を叩くのは少し違う気がする。

「そういえば……綾香ちゃんは今日、どうしてあたし達を集めたのかな?」

「……」

「うふふ。あたし、知りたいなー」

「……」

「綾香ちゃん。教えてほしいなー」

「……」

「……言いたくないの?」

奏の声のトーンが下がった。

「い、言いたくないわけじゃないからっ」

高垣さんは慌てて否定した。

「……ただ、皆が集まったらすぐに言うつもりだったのに。あなた達がマイペースすぎて段取りが上手くいかないなと思っただけ」

「奏ちゃん。このハンバーグ食べてみて。すっごい美味しいから」

「ほんっとうにマイペースな人ばっかりなんだから……っ」

「ほえ……?」

門倉さんは小首を傾げていた。

「とりあえず門倉さんのことは放って、本題に入ろうか」

「え、奏ちゃん。酷い……」

「そうね。そうしましょう」

「綾香も……」

……この三人、なんだか息ピッタリだな。

「オホン。それじゃあ……皆、まずは今日、忙しい中、突然の連絡にも関わらず、時間を割いてくれてありがとう」

「気にしないで」

「ありがと。……で、奏ちゃんが気にしていた、今日三人を呼んだわけ……なんだけど」

高垣さんはようやく本題に入ろう、と言うのに、頬を染めて照れ臭そうにあっちを向いたり、こっちを向いたり……俺達を呼んだ理由を口にするのを躊躇っているように見えた。

「えぇと……その」

しばらく逡巡した後、高垣さんは意を決したように続けた。

「不躾なんだけど、来週の水曜日、皆で海に行かない?」