軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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と、まあ……ビアンカさまに散々からかわれつつ祝福された後、ようやく冷静さを取り戻して王太后さまの所へと移動したんですが……あ、まさかこれ王太后さまにもからかわれるフラグじゃないよね?

恥ずか死ぬとかはもう言いませんけども。流石に大人ですから。

まあ、落ち着けよ良い年齢だろ? って言われたらそれまでなんですけど落ち着けるわけがない。

良い年齢ですよ? 大人ですよ? ええ、ええ、立派な淑女ですよ?

でも人間中身はそうそう変わらなくて前世の記憶があるからって、その前世からして恋愛下手だと自覚するほどの内向的な人間がこういうリア充イベント的な事発生したからって上手くこなせると思うなよ?

経験? あるわけないだろう!!

内心荒ぶったところで現実は現実なんで、当面この慣れないことにいちいち反応してしまう自分に呆れつつなんとか折り合いをつけていくしかないんでしょうね……。というか、からかう人が飽きるまでなのか私が慣れる方が早いのか、どっちだろう。

そしていい加減、アルダールの事を私も名前で呼んでみたい。呼び捨てで。

これがまたハードル高いんだよね、私にとって。めっちゃたっかいんですよ、それこそエベレスト級と言って良いんじゃないかなあと思うんですがどうでしょう。

「ユリア? 疲れちゃった? ビアンカ先生も悪気はなかったと思うのよ、ただ嬉しかったんだと思うの」

「はい……大丈夫です、プリメラさま。少々、まだ恥ずかしくありまして……申し訳ございません」

「いいの! ユリアが幸せそうだとプリメラも幸せよ!!」

くぅ……っ、この天使っぷり!

私が幸せだと自分も幸せなんだって! 私もそう思ってますよ……!!

どうだ、うちの子可愛いだろう、可愛いだろう。世間にこの愛らしさを知らしめたい。うちの姫様世界一ってね!!

ああうん、勿論やりませんよ? 良識は心得ているつもりです。

でも内心ではいつだって自慢してますよ、私が育てた! とか言うつもりはありません。

私だけじゃなく、セバスチャンさんや大司祭さま、ビアンカさま、大勢の方に支えられて立派な淑女として成長しているプリメラさまを自慢に思わないはずがない。

……うん、まあ。もっと言えば悪役令嬢系に育つっていうのを知っていて捻じ曲げた私を褒めてとちょっと思わないわけじゃないけど、こうしてプリメラさまが「大好き!」って態度を隠さずにいてくれることが誉れと思うのよね。ふふふ、こればかりは私の特権だよね。

「それにしてもおばあさま、遅いね。ここで待っていてって言われたのに」

「もしや装飾品の類が重く、手間取っておられるのでは?」

「そんなにあるのかな? ワクワクする!」

「ああ、プリメラ、待たせたわね」

そりゃぁたくさんお持ちだと思いますよ、と答えようとしたところでいそいそやって来られた王太后さまに私は頭を下げた。

王太后さまの後ろには恰幅の良い執事さんがふたり、大きな箱を持っている。その後ろには針子のお婆ちゃんがティーセットの載ったワゴンをプルプル震えつつ押して来られました。王太后さまの宮は統括侍女さま系列だけど、ここに配置されている人数は少なめなんですよね。

まあそりゃそうか、一線を退いた扱いの王族な訳だし。王太后さまも質素倹約を旨としている方だし。

わあ……あの箱全部装飾品なんですかね。すごいな、どれだけのものがそこに……?!

「前から準備していたつもりだったのだけれどね、やっぱりあれもいいんじゃないかこれもいいんじゃないかってついつい出してしまっていたらすっかり遅くなってしまったのよ。本当にごめんなさいね」

「ううん、おばあさま、ありがとう!!」

「それじゃあものを見る前にお茶にしましょうか、プリメラがどんなものを選びたいかをまず聞かせてね」

「はぁい!!」

「ユリアも、給仕はこちらの者がしますから意見を聞かせて頂戴ね」

「かしこまりました」

相変わらずここは静かで、庭が美しくて、お茶も美味しいんだよね。

今日は私が呼ばれたわけじゃないから、勿論使用人の立ち位置でプリメラさまの後ろに控えてますけどね。

プルプル震えながら給仕するおばあちゃんのお手伝いをさせていただいて、「ありがとうねえ……」なんて嬉しそうに微笑まれたら……ンンンン、おばあちゃん!

おっと、思わず孫気分に浸りそうでした。

なんでこの人こんなに私のツボを押さえてくるんでしょうね。いや向こうは普通にしてるだけなんだけどね、なんだろうね、ときめきが止まらない! 恋じゃないですよ?

「それで、プリメラはどんなのが良いのかしら? 可愛いもので色の付いている宝石が良いかしら?」

「ええと……ええとね、おばあさま、あの、ディーン・デインさまから貰ったこのネックレスをつけてちゃだめかしら……?」

「ううん……ごめんなさいねプリメラ。気持ちはよくわかるけれど、生誕祭は特別なものだからそれ用に誂えられたものを使わないといけないの」

「やっぱりそうよね……」

王太后さまがご用意くださったアクセサリー類はご自身が王太子妃のお立場であられた頃から誂えられ続けた品々ですからね。

ディーン・デインさまの贈り物は勿論特別なものだと思いますが、やはり王家の行事となると違いますよね。理解はしていてもちょっとだけ言ってみたプリメラさまのその恋心、きゅんとしてしまいます!!

ああーそんな風に言われてるなんて知ったらディーン・デインさま、嬉しいだろうなあ嬉しいだろうなあ!

教えてあげないけどね。悔しいとかじゃないよ?!

生誕祭が終わったらお茶会の予定を組んであるんですから、ご本人から直接聞いた方がきっと喜びも増すだろうとそれだけの話ですよ。

「それじゃあわたし、ちょっとだけ大人っぽいのが良いわ!」

気持ちを切り替えたらしいプリメラさまが、にっこり笑って王太后さまに言いました。

ほうほう、大人っぽいの、ですか……。

「そうねえ、最近プリメラの身長は随分と伸びたし子供のアクセサリーからはもう卒業しても良い頃合いよね。ドレスの型はわかっているから、それじゃあその方向で考えましょうね」

ニコニコ笑う王太后さまが軽く指を動かしただけで後ろに控えていた執事たちは理解できるらしい。

あっという間に目当ての箱を取り出して、恭しく蓋を開けて差し出してきましたよ。うわあ、どれだけお仕えしたらあれだけの動作でそんなこと察せるようになるんでしょうか? 私もあそこまでのレベルには至っておりませんが……いや、プリメラさまと私なら……!!

とまあ、変な対抗意識を燃やしつつ私も拝見しましたが、そこにあったのはなんとも素晴らしいティアラでした。

銀でできているんでしょうか? 枝と葉が絡み合うかのようなデザインで、真珠やムーンストーンでしょうか? そんな色合いの物がちりばめられ、それにアクセントのように花としてピンクダイヤが輝く逸品です。

お値段? 聞けるわけないでしょう。

「これなんてどうかしら。プリメラの金髪ととても合うと思うのだけれど」

「素敵……、素敵よ、おばあさま!」

「あらあら、喜んでくれたけれどこれに決めるのかしら? 他にもあるのだけれど」

「ううん、プリメラこれがいい! ねっ、ユリア!!」

「はい、なんとも美しく、優雅な品だと見惚れてしまいました」

嘘じゃない。いやあこれ、前世で言えば博物館とかで見るような代物じゃないかな……自分の頭に載るとか思ったら小心者なんで全力で辞退するけど、見る分には眼福でございますとも。

これをプリメラさまがつけるとか、絶対可愛い、絶対美しいでしょう。間違いありません。

その後も色々と眼福過ぎてもうなんだか価値観がおかしくなりそうな感じでした。

あのサイズのダイヤなら私にも買えちゃうよね! みたいな……危険ですよ、危険でしたとも!!

まあ、この世界の宝石事情的には前世とそこまで変わりません。

希少価値の高い宝石ほど高値で取引されますし、大きさやカットで値段も変わります。ただ希少性という点においては色々違いはあるんでしょうが、まあ、正直私……詳しくなかったもので……前世との比較が出来てるかと問われるとちょっとそこは疑問形です。

あ、勿論この世界での価値は理解してますよ。なんといっても王女さまの専属侍女ですからね。それは必須知識と言えるでしょう。

結局、最初に見せていただいたティアラに合わせてダイヤと真珠がふんだんにあしらわれたネックレスと揃いのイヤリングで決定です。

時価……幾らなんでしょうね……。

勿論その後はプリメラさまと王太后さまの優雅で素敵なお茶会をして王女宮に戻ったわけですが、プリメラさまはもうあのティアラを早くつけたいんでしょうねえ、ウキウキしてらっしゃいましたよ。

どんな髪型にしたらいいのかなあなんて楽し気な姿を見ていたらこちらも気合入れなくちゃいけませんね!

あのティアラに似合う髪型かぁ……うんうん、そうね、アップにして……お化粧もいつもより華やかなのが良いよね。

(……あれ? そういえば、王太后さまには何も突っ込まれなかったな……?)

私がちょっとだけ不思議に思いながら執務室に戻ると、そこには一通の便箋と一輪の薔薇が。

え、なにこれ。ちょっとラブレター的な? ……差出人はありませんし、アルダール……じゃないよねえ。

ドキドキしながら封を開けると、そこにはカードが一枚。

『おめでとう。いつでもわたくしが相談に乗りますから安心して離宮においでなさいね』

サインはなかったけれどもこれは間違いなく王太后さまでしょう。

王太后さま……カッケェ……!!

これが……大人のオンナってやつなんですね、早速勉強になりました……!!