軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……先日の園遊会、皆よく働きました。不測の事態が起こった事は大変残念であり、両陛下もお心を痛めておられますが不幸中の幸いでお客さまに怪我人は一人も出ませんでした」

統括侍女さまの執務室、そこで私たち各宮の筆頭侍女がテーブルについて園遊会の反省会。

いや、今回は反省会ではなく慰労会という表現が近いかもしれない。なにせ途中からはモンスター出現により園遊会は中断したのだからこの普通ではない状況を反省しろという方が酷だろうと思うんだよね。

流石にモンスターから園遊会を守るというのは私たち侍女に課せられるべき内容ではないし。

お客さまが怪我人ゼロというだけでも御の字と言っていいと思うんだ。

とはいえ、主催者である王妃さまからしたら泥を塗られたようなものなんだけど……事前に情報があったから、承知の上なんだろうと思う。

重要なのは事前に情報があったって事なんだよね。

(当然、 どこか(・・・) の大物貴族の娘がモンスターを見たがったって段で止める方法をきっとお持ちだったはず……でも、それをしなかったってことは良い粛清の機会として利用したってことなんだと思うんだよね)

だからこそ事前に持ち込まれるかもしれないなんて情報がわかっていたのに騎士がいつもより厳戒態勢だったってくらいだった。一見そうとはわからないけど……でもそれだけだった、とも言えるよね。

当然、お客さまへの配慮が第一にあったんだろうけど、そういう思惑を抜いて考えたなら『何も持ち込ませない』が最善で然るべきだと思う。そして若輩者の私でもわかることを、統括侍女さまや――その上に立つ方々がわからないはずがない。

国賓の方もいらっしゃる場をもって粛清だなんて大きな話過ぎてアレなんだけどね……シャグラン王国との確執問題もあったからここで一挙にって所だったのかな。

詳しい所は私たちに教えてはもらえていない。ま、当然だね。

政治の話は政治家の問題で、私たち侍女に求められているのは良く仕える事なんだから。

「今回、王女宮筆頭侍女であるユリア・フォン・ファンディッドがシャグラン国大臣バルムンク公爵の奥方さまの避難に際し尽力したことを両陛下は大変お喜びくださいました。我が国の侍女は客人を見捨てることなくその身を挺しお守りする、侍女の鑑たる姿を内外に示したと」

「……ありがたきお言葉です」

「ですが、今回の園遊会はお客さまに恐怖を与えてしまったことを鑑み、表立っての表彰はできぬことを了承するように。両陛下からのお言葉です」

「かしこまりました。そのお言葉だけで十分でございます」

表立って表彰なんてされてたまるかってんですよ。

いや、そんなことになったら寿命が縮むわ!! だって実際は避難誘導してるとこで結局身代わりになって死にかけただけじゃない? それで表彰されたって嬉しくないっていうか。

まあ褒めていただけたってだけで十分ですよ。プリメラさまに心配かけちゃった方が私としては心が痛むので……。

「後日、改めて目録として明記したものを渡しますが此度の行動を称え、褒賞金を与えることを両陛下はお約束してくださいました。感謝するように」

「はい」

おおっとー! ボーナス確約な上にこれは上乗せきたああああああ!!

これはありがたいお話ですよ。はあ、良かった良かった。新年祭辺りで自分への誕生日プレゼントにちょっと良い物を何か買おうかなーって思ってたんですよ。あ、私年明け直ぐに誕生日なので。

ふふ……いつもいつも新年のお祭りで私の誕生日はついで的な感じですから気にしてませんよ!

あれです、クリスマスが誕生日みたいな感じですよ。うん? この場合は正月が誕生日?

まあファンディッド家はそこまで裕福ではないし、領主として挨拶回りの方が優先でしたからしょうがなかったんですけどね。

王城で暮らし始めても、特別お祝いとかする習慣もなかったですし……いいんです。プリメラさまとセバスチャンさんがケーキを用意してくれてる、それって最高じゃないですか!

でも来年は……うん、その。アルダール誘って新年祭行けたらいいかなあ、なんて……いや、まだ都合聞いてなかった。いやいや待つんだ私、その前に王太子殿下の生誕祭があるからね!

主人公が現れるかどうかの瀬戸際なんだからそっちを気にしないとね!!

「それとは別に、そなたに聞きたいことがあります」

「なんでしょうか?」

「エーレンを覚えていますか」

「ええ、勿論です。彼女は怪我をしておりませんでしたか?」

そうですよ、エーレンさんですよ。彼女が『ミュリエッタ』について知っていることを聞けたら少しわかるかもしれないんです。

でもあの騒動の後でしたから、彼女がどうしていたかわからなくて……。彼女の元カレがモンスター事件に加担していたとなれば、その連なりで騎士たちに尋問を受けていたのかもしれませんね。

私の心配する言葉に、外宮筆頭が何とも言えない表情を見せました。

でも一番わかりやすいのは、申し訳なさそうな表情、でしょうか。

よくわからなくて私は統括侍女さまの方を見ましたが、統括侍女さまの表情はやっぱり読み辛いです。

「あの娘の出身地での 友人(・・) が今回のモンスター事件に加担していたとのこともあり、彼女は騎士団によって取り調べのため勾留されていますが怪我もなく、元気です。反抗的な態度も見られましたから勾留は少々長引くやもしれません」

「そうですか……しかし怪我がないようで安心いたしました」

「それとは別に、エーレンは自身の婚約者がそなたと浮気をしていたと怒り心頭でした。それは事実ですか?」

「事実無根も良い所です」

「そうですか。わかりました」

即座に否定させていただきましたとも!

ええ、まあ。統括侍女さまもわかっていたんでしょう、形式上質問したってだけでしょうね。この反応を見る限り。

「一応、事情を我々に説明できますか?」

「はい。私が会場を巡回中、彼女がどこかの護衛兵に連れて行かれる光景を目にいたしました。途中、外宮筆頭にその事を伝えてもらうため近場にいた他の侍女に声を掛けた後、見失わないように後を追いました。一人で行って何かあってはならないと途中お会いしたエディ・マッケイル護衛騎士さまにご同行を願いました」

「あえてマッケイル護衛騎士を呼んだわけでは?」

「ございません」

本当にあれは偶然だった。

まあそれを証明しろと言われてもできないけどね。口裏を合わせたんだろうと言われればそれまでだし……とはいえあの会場で浮気するとか流石にお花畑思考だと思われるのも心外だわー。

私としてはボーナスがかかったお仕事だったからそれどころじゃないし、というか浮気も何もないし。私一途なんですーとか言ってしまうと余計なツッコミ喰らいそうだから言わないけどね!

というか、エディさんの方がエーレンさんにべた惚れだって誰が見てもわかるっていうのに浮気とか……ちょっとエディさんが哀れですよ。

「よくわかりました。外宮の、間違いありませんか?」

「間違いございません」

厳かに頷いた統括侍女さまは、これで問題は終わったとでも言わんばかりに全員を見渡して解散を宣言した。今回のことは騎士団が介入していることもあるので、あまり勝手に憶測で物を言わないように、ということも言われたけどね。

まあ特に憶測を言う相手がいるわけでもないし私としては問題ないかな。噂話できゃっきゃうふふする立場じゃないことくらい弁えてますよ!

でもとりあえず、……うーん、ちょっと納得できないっていうか。

「外宮の、少しよろしいですか?」

「王女宮の……今回は貴女に迷惑を多くかけてしまいましたね。エーレンの件、本当に申し訳なく……」

「あの、もしよろしければエーレンさんに会うことは可能でしょうか?」

「え?」

いや、そりゃ会いたいか会いたくないかの二択で言えば会いたくない。

会いたくはないけど、でもさあ、文句のひとつは言いたいかな。

だってあの状況で「泥棒猫!!」って言われた挙句に騒動後まで私が彼女の婚約者と浮気していたなんて不名誉な事を言ってたんでしょ? どの口が言うのかって話ですよ!!

あ、いえ勿論『ミュリエッタ』についても聞きたいですけどね。

でも流石に無理かな? 騎士団が勾留してるっていうだけあるし。とはいえ、彼女は今回のモンスター事件には関与していないんじゃないかなと思うんだけど……なにせ辺境に戻りたくないって連絡も絶っていたみたいだしね。

勾留されたのには何か理由があるんだろうか? 反抗的な態度とかどんなことしたのやら。

「会えますけれど……でも貴女が不快に思うかもしれませんよ」

「大丈夫です。私も自身の不名誉を彼女に直接正したい気持ちがありまして……」

「そうですか……。ですが、その、彼女は随分と精神不安定で暴力的な態度も見受けられたとのことですから、騎士の方に同席して貰うことを約束してくれませんか。私の方から騎士団の方へ面会がある旨は伝えておきますが、状況によっては断られる可能性もあります」

「それで構いません。お手数をおかけいたします」

「いいえ。……王女宮の、本当に……ごめんなさいね。エーレンは、……辺境出身ということで自身の出自を随分気に病んでいた娘でした。辺境伯のところで召使として働き、その優秀さから……というのはもうお話ししたかしら?」

うん、聞いた事ある。

頷いて続きを促せば、外宮筆頭侍女は深いため息を吐き出してゆっくりと歩き出したので私もそれに合わせて歩く。まあ、立ち話でするような内容じゃないものね。

「王城に来た時はそれはまあ、最低限レベルの……と思ったものよ。だけれど努力家で、直ぐに礼儀作法も覚えたし外宮でのやり方を学んだわ。積極的に学ぶ姿に教えてあげたいとこちらも指導に熱が入ったのを覚えているの」

「……そうなのですね」

「辺境に戻ることがないように、こちらで幸せになりたいと……護衛騎士殿に見初められたとはしゃいでいたのがウソのようだわ。あんな……まさか、地元に……それに、近衛騎士の方にまで……」

外宮筆頭侍女は随分とショックを受けているみたいだ。

まあそうか、可愛いと一生懸命教えていた後輩がまさかの辺境に戻りたくないが故に地元に恋人キープしつつ婚約者を作って、挙句に他の男にまで言い寄っていた、なんてスキャンダラスな現実は受け入れづらいだろうねえ。

もしこれがメイナとかだったらと思うと私だって信じられない、何かの間違いだってきっと言ってしまうもの。

「本当に、申し訳なかったと思っているわ。……騎士団には申請をしておくから、許可が下りれば貴女に連絡が行くと思うからどなたかに必ずご一緒してもらってくださいね」

「はい、ありがとうございます」

外宮筆頭、げっそりとやつれちゃったなあ……可哀想だけど、なんとか立ち直ってもらいたいものです。きっと自力で立ち直って部下たちの前で毅然と振る舞ってくれると信じてます。

彼女も筆頭侍女の一人、寧ろ私からすれば先輩格ですからきっと大丈夫です。

それにしても一対一は怖いけど、騎士なら誰でも良いって訳じゃあないんだよなー。

だって『ミュリエッタ』の話題を口に出せないじゃないですか……下手に予知能力がとか言い出して噂になったら問題でしょ?

うーん……やっぱり、アルダールに頼むのが、一番なのかなあ。

王弟殿下も頼りになるだろうけど、地位が高すぎても……アルダールなら浮気疑惑を晴らすのにも、って余計に激昂されたらどうしよう。

かと言ってエディさんとかあり得ないし、どうしたものかなあ……知り合いが少ないってこういう時不便だよね!!

ぼっちってわけじゃないからね?

ミュリエッタの事を知られる人を最小限に留めたいだけだからね!!