軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……それでは本日の園遊会、頑張りましょう!」

朝礼でそれっぽいことを言ってまとめた私の目の前に、緊張の色を隠せないメイナとスカーレットがいる。

でもその背筋はぴんとしていてとても綺麗だ。うんうん、良いですね!

一応園遊会での決まり事などを再確認はしましたが、念を押すのはやめました。あんまり言われ過ぎても嫌でしょうからね。今日までしつこいくらい言ってあるんですし……大丈夫だと信じてます。

とうとう迎えた秋の園遊会当日。

秋晴れという言葉が似合う、澄んだ青空が広がっています。

当然数日前からお越しの国賓の方や当日到着予定の方など来賓のご予定は様々です。

例のモンスターを連れてくるらしいという辺境伯というのがどの辺境伯なのかまでは私にはわかりませんので、やはりここは『できるところから着実に』という精神で行きたいと思います。

本日のプリメラさまは、朝は緊張の所為かあまりお召し上がりになりませんでした。

予定通りの少し大人びたデザインドレスに身を包み、今は髪もしっかり結い上げてお化粧をして、マナー通りに仮面をつけて。

胸元にはディーン・デインさまから贈られたネックレスがあって、それを何度も指先で弄っている姿はとても可愛らしいです。

「ねえねえ、私変じゃない? 大丈夫かしら?」

「はい、良くお似合いでございます」

緊張して思わず部屋の中をうろうろしたり、鏡を何度も見たり、ドレスの裾を摘み上げたりとまあ落ち着きのないことですが、まだまだ子供ですものね!

初めての事柄となれば、大人でも緊張しちゃうものですしその気持ち、わかります。

後程、セバスチャンさんが付き添って会場入りをなさる予定ですのでプリメラさまはお客さまへの挨拶などをシミュレーションしていらっしゃるようでした。私は名残惜しいですが、先に会場入りして給仕の前準備です!

会場は王宮内の庭園。紅葉を楽しめる木々が植えられていたり秋薔薇が咲き誇っていたりと美しい場所です。普段は王族の方や国賓の方が寛がれるその場所を開放して盛大なパーティとするわけですね。庭師も相当気合が入るイベントです。

前世ではあんまり花とか育てた経験が無かったので知らなかったんですけど、薔薇って種類によっては一年中咲かせようと思えば咲かせられるんですってね。王城勤めして学びました。いや、詳しくはナシャンダ侯爵さまに聞いたら教えてくれそうですけども。

そういえばナシャンダ侯爵さまも今回はお越しになるんですよね!

後でご挨拶しようと思ってます。

園遊会での私の役目は御来賓の方々が楽しくお過ごしいただくための給仕たちを束ねる中間管理職です。

それと知っている方にきちんとご挨拶をし、今後とも縁を結んでいただいてそれを次世代に……というまあそんな役割もあります。

そしてメイナやスカーレットのように、次世代を担う若者は集まった国賓の方々や貴族の方々を見てその力関係や才能などを垣間見て付き合う人間を選ぶ大事さを学んでもらう……とまあ、そういう側面もあるらしいです。

らしい、というのは正直私は園遊会に給仕として参加する前に王女宮の筆頭侍女になりましたから、実経験はなかったんです。

しかも園遊会に筆頭侍女として参加したこと自体、実はここ数年の話。それまではプリメラさまが幼いので専属侍女でもある私を連れ出すのはよろしくないという判断が下されていたからなんですね。気を遣っていただいていたわけです。

まあ、その分私は学ばねばならないことが山ほどありますから未だに園遊会を前に書類だのなんだの、きっと要領が良くない部分もあるんだと思います。精進せねば!

綺麗な芝の庭園に、いくつものテーブルがあってそこでは白いテーブルクロスがはためいています。風が強くなくて良かった!

庭に面した部屋を休憩用に開放されていますので、そちらの掃除も入念に行われているようです。

食器も綺麗に磨かれてますし、こうした他の召使の皆さんがしてくれた成果を私たち侍女が失敗して台無しになんかできません。気合が入りますよー!

「ユリアさま」

「はい! ……あらクリストファじゃありませんか」

「今日は、宰相閣下のとこで、お付き、するです」

「そうなのですね。では本日はよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、おねがいします」

ぺこりと挨拶に来てくれたクリストファの装いは公爵でもある宰相閣下の召使らしく仕立ての良いものを着ていました。白い髪を目立たせないようにでしょうか? 青い服に青い帽子がお似合いです!

この装いなら男の子に見えますね、普段の恰好だとどっちかわからないような感じでもありましたので……しかし可愛いなあ。

「今日のお召し物、お似合いですよ」

「窮屈」

「もう……わがままを言わないの」

「はい」

この表情の動かなさが残念ですけどね!

いや、そういう意味では私とどっこいどっこいなのかな? 私も仕事中は表情筋が仕事していないと言われることがあるようですから。失敬な、私は感情豊かなタイプだと思います。

でもわざわざ私を見つけて挨拶に来てくれたのは嬉しいです。本当に挨拶だけが目的だったらしいクリストファはそのままさっさと戻っていきました。まあ自分のお仕事大事に、ですね。

天気良し、準備良し。

ワインもお菓子もお料理も、お花も庭も食器類も、今日この日の為の準備が報われる日です!

他の筆頭侍女たちも気合十分です。

やはり数の多い外宮と内宮は朝礼だけでも大変そうですが……先に準備で来ていたメイナとスカーレットの緊張度がどんどん増してますが本番さえ始まっちゃえば緊張する暇もないでしょう。

大丈夫、頼れる先輩侍女はそこかしこに居ますからね。

そう思ってはいますがカチコチの二人を見ていたら心配になって、思わず呼び止めてしまいました。

「二人とも、大丈夫?」

「だ、だだ大丈夫よ! ワタクシを誰だと思ってるの!」

「スカーレット、口調が崩れてるわ。今日はお淑やかに、はい、にっこり笑って」

「どうしましょう、うちのお父さんも来るんです! 身内がいたら余計に緊張して……コケてテーブルひっくり返しちゃったりなんかしたら……!」

「大丈夫よメイナ、落ち着いて」

わあ、思ったよりも大丈夫じゃなかった!!

朝の時はここまでじゃなかったんですけどね。周囲の緊張とかに呑まれてるなこれは。

私にも覚えがありますよー、初めて王城に上がった時ですとか後宮に行った時ですとか、あ、思い出すと意外といっぱいありますね!!

というわけで月並みですが。

「大丈夫、大丈夫」

「ユリアさまぁ……」

「ほらほら、泣きそうな顔にならないの。可愛い顔が台無しよ。前にも言いましたがメイナは王女宮の侍女として立派に勤めています。普段の行いをそのまますれば良いの。貴女はできる、そう私が思ったから園遊会の侍女として参加しているのよ?」

「……はい……」

「スカーレットもこういう大きい場で侍女として振る舞うのは、特に異動したばかりだもの。緊張しても仕方がないことだわ」

「し、してないわよ!」

「貴族の子女として立派な振る舞いをと思っているのでしょうが、今日は侍女としての側面を大きく出して。貴女の立ち居振る舞いが綺麗なことは知っているから、心配していないわ。ただこれだけ大勢の人間がいると個性的な方もいらっしゃるでしょうから、その時には私に教えてくださいね」

「……いいわ、教えてあげる」

うんうん、こっちは相変わらずですね!

でもちょっと調子を取り戻してくれたようで一安心です。

あとはプリメラさまですが……そちらはきっとセバスチャンさんがフォローしてくれているでしょうし、園遊会中は王太后さまがおそばに居てくださるから大丈夫でしょう。

「筆頭侍女はこちらへ。他の者たちはそのままお客さまが来るまで所定の位置で待機をするように!」

おっと、そろそろ時間のようです。

もう一度メイナとスカーレットの肩を軽く叩いて激励の意を伝えれば、二人はまだ緊張の色はありましたがしっかりと頷き返してくれました。

私はそれを見てから、統括侍女さまの元へと足を向ける。

園遊会、スタートです!