軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

627

なんと……なんと、園遊会は恙なく終わりました! ひゃっほう!!

って、それが当たり前のことなんですけども。

やっぱりねえ、今年は大丈夫って思っても去年のあの衝撃はみんな忘れられなかったんですよ。

またあったらどうしようってみんなピリピリしていましたもの。

勿論騎士たちは後れをとらないようにと鍛錬により一層力を入れていたようですし、私たち侍女や執事といった非戦闘員も避難経路の確認や動線の確保といったものを幾度も確認しておりました。

当然ですが去年だって、その前だってそういった確認は怠っていませんでしたよ?

しかし実際に こと(・・) が起きるのと、ただ惰性で確認していた状況とでは力の入りようが異なってくるってもんですよ。

でもそうした努力が披露されることのない幸せってのを、今の我々はよおおおっっっく知っておりますのでね!

去年は園遊会の後、退職者も大勢いました。

残った人たちでもモンスターの恐怖を思い出して眠れなくなってしまった……なんて話がチラホラ出ていましたからね……。

それを思えば!

何事もなく穏やかに園遊会が終わってくれたことの喜びったら!!

やっぱり平穏が一番なんですよ。ええ。

たとえ特別ボーナスという魅惑的な言葉が出てこなくても……いえ、ボーナスはほしいですけどね? 要らないって意味じゃないですよ?

プリメラさまも今回は二度目、しかもデビューしてからの初園遊会ということでご挨拶の人の行列にお疲れの様子でした。

それでも正式に発表されたディーン・デインさまとの婚約もあって、張り切っておいでだったので会の終了が告げられた際も疲労感よりやりきった感の方が強かったのかもしれません。

(とはいえ、明日はゆっくりしていただかなければ……)

園遊会でご挨拶した方々からお手紙も届くでしょうし、その返事に追われる日々がはじまることは予想しておりますが、それでも翌日の朝はお寝坊さんでもまだ許されるでしょう!

だってまだまだ成長期! たくさん寝てください!!

大人になってからもできればきちんとした睡眠サイクルを保っていただきたいものですが、それはそれ、伯爵夫人になった暁には家政を執り仕切るだけでなく、夫を支える社交や騎士の妻としてのあれこれが待ち受けているわけですので、そのように暮らせるとは限りませんが……。

それでもやっぱりプリメラさまには健やかでいていただきたいですからね。

「ユリア」

「アルダール! ごめんなさい、待たせて……」

「いいんだ。筆頭侍女という立場である以上、最後まで責任があるのは当然のことだからね。むしろ今年は私たち近衛騎士隊が早く帰らせてもらって申し訳ないくらいで……」

「何を言っているの。普段から陛下の近辺をお守りし、その指示で動くことも、公務で一糸乱れぬ姿を見せているのもみんな知ってるわ。こういう時に少しでも休んでもらいたいって思っているのよ?」

「……そうかい? ありがとう」

「みんなですよ!? みんな!!」

「ユリアは?」

「そりゃ……その、私も勿論そう思ってるわ」

そうですよ、普段からあの陛下に振り回される(?)近衛騎士さんたちのことをみんな尊敬していますとも。

いえ、陛下はオリビアさまとプリメラさまが絡まなければ基本的に賢君ですので無茶ぶりをどうのってわけではないので、仕事上ではブラックでないと思いますが……。

それでも少数精鋭の、この国が誇る近衛騎士たちというのは憧れの存在です。

私にとっては、正直なところ……アルダールと知り合うまでは縁のない方々だなあって認識でしたね!

すごい人たち、騎士たちの中の上位者、国王陛下の直属の騎士……そういう感じで。

勿論、私だって尊敬はしていますよ!

ただまあほらね、縁がないと思っていたので遠い存在の人に頑張って! って程度だったんですよね。

でも、今は……そんな近衛騎士に自分の恋人がいるんですから、そりゃ心配の度合いも……ねえ?

「ふふっ」

照れくささと誇らしい気持ちが混じり合ってなんともいえない表情をしてしまった自覚はありますが、それを見てアルダールはなんとも嬉しそうに微笑むじゃありませんか。

もう、何もかもお見通しってやつですか!?

くうっ、それはそれで悔しいやら恥ずかしいやら……!

「ユリアに誇ってもらえる騎士でいなきゃね」

「……もうとっくにそうだわ」

「これからも、だよ」

すっと差し出される手に、私は自分の手を重ねました。

以前は相当勇気を振り絞らないと手なんてつなげなかったのに、本当に進歩したなあ私!

いえ、結婚を目前にそんな小さな進歩を噛みしめているようで大丈夫かって話なんですけども……。

「帰ろうか」

「はい!」

でも今は、大きな仕事を一つやり遂げて、そして大事な人と一緒に同じ家に帰れるこの平穏な幸せを享受したい。

そう思いました。