軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

617

さて……あれからフレーバーウォーターの進捗はと申しますと、非常に好評でおしゃれだと話題になりまして。

まあある程度フルーツのカットの仕方とか、よりおしゃれ感を出すには……? みたいな工夫も重ねたんですけどね!

なんせ主流は紅茶ですもの。

つまり器が問題なのです。

庶民なら空き瓶に入れたものを直接……でもいいでしょうが、さすがに高貴な方にお勧めするならグラスになるわけですよ。

まあ料理やワインといったお酒用のグラスは存在しますので、そちらを用いれば良いことは事実。

フルーツジュースなどでグラスも使いますしね!

ただそちらの場合は細身のものが多く、ならフレーバーがついた水だけ入れてかといってじゃあレディーたちに供するのにお酒用のグラスを真っ昼間からというのも優雅さに欠けるのでは?

それに飾り用のフルーツも美しく見せたいよね!

(それにしても喜ばれたのは嬉しいけど、果物についてはどうしようかしら)

私がいくつかのフルーツをちょうどいい感じに凍らせて、氷代わりに使ったのがとてもウケたんですよね……。

でもあれって私の弱ーい魔力のおかげで食べられる程度にちょうどよくフルーツが凍るだけで、他の人がやると氷の中に果物が閉じ込められるだけだから……。

むしろ氷のサイズがとんでもないことになる場合もありえますからね!

こういう小技を使う時にはやっぱり魔力があまり強くなくてよかったなと思います。

だって凍らせた苺を口にして嬉しそうなプリメラさまのお顔を見られるのは私の特権ですものね!!

とはいえ他に代用方法がないかとビアンカさまにも聞かれていますし、氷……氷ねえ。

(園遊会でも出したらどうかって王太后さまも仰ってくださったけれど)

あんな大規模な会の分、フルーツを凍らせるのはどう考えても無理です。

それに私は筆頭侍女としての仕事もありますし、かといって料理人たちはどうかっていうとアイスでさえ今のところ上手くやれる人はあまりいないって状態で……。

いや私の魔力どんだけ弱いの!? って膝から崩れ落ちそうになったのは内緒ですよ!!

「ユリアさま、園遊会の参加者名簿はこれで確定だそうですわ!」

「ありがとう、スカーレット。……今年もそうそうたる顔ぶれね」

国内外の有力貴族、豪商と言われる人々。

その中には見覚えのある名前がいくつもあります。

(……リジル商会は、会頭夫妻。まあそりゃそうよね)

ミュリエッタさんと顔を合わせずに済むとわかって、少しだけホッとしてしまいました。

いえ、彼女もわざわざ私に絡んでくることもないでしょうが……あの日記を読んだ後に彼女の姿を見たら、なんとも言えない気持ちになってしまいそうでしょう?

「さすがに今年はモンスター騒ぎとかはないですよね……?」

「あってたまるもんですか!」

メイナが震えながらそんなことを言えば、スカーレットがムッとした表情を見せました。

ああ、昨年は大変だったものねえ……と私も思わず遠い目をしてしまいましたよ。

去年は隣国も含めた思惑の中で大騒動が起きましたが、さすがに今年は厄介ごとは起きなそうだと王太后さまから事前に伺っております。

さすがにそのことをこの子たちには語れませんが……っていうか王太后さま、どこからどこまで情報を掴んでおいでで……?

「まあ、あんなことはそうあるものではないわ。それに昨年のことだから、今年は警備態勢もより考えられているはずよ。だから貴女たちは給仕に専念することだけを考えて。いいわね?」

「はい!」

「承知いたしましたわ!」

後輩二人の笑顔に私も思わずにっこりですが、ふと手元の招待客の中に厄介な人の名前を見つけて眉間に皺が寄るのを感じました。

それはシャグラン王国のバルムンク公爵――そう、つまり、脳筋公爵の名前ですよ!

いやいてもおかしくはないっていうか、あって当たり前の名前ではあるんですけどね!!

(……待って、バルムンク公爵夫妻ってあるわ)

ってことはあの脳筋公爵の奥さまが!?

本当に存在したんだ!?

いやいるのは知っていましたが……あの人が以前言っていたような、愛人を迎えても許してくれる心の広い女性って……。

そんな女神みたいな人、本当に実在するんですかね……?