軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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さて、贈り物の目処も立ちました!

そういえばアルダールはプリメラさまに何を贈るのでしょう?

一応、将来の義兄として贈り物をバウム家の贈り物と一緒に贈る予定だとは聞いておりますが……。

バウム家からとまとめられたその中でもやはりプリメラさまが楽しみにしておられるのは、ディーン・デインさまからのプレゼントですね。

間違いありません!!

王族や高位貴族ともなると、贈り物の量が半端ないので個別ではなく基本、各貴族家の名前でまとめるのが一般的です。

その中で家の中の誰から……みたいな感じで内容を記した明細なども添付しておくのができる貴族家ですね。

特別親しい間柄の場合は個別にお渡しすることもあります。

とはいえ、プリメラさまはこの国唯一の王女ということもあってそのプレゼントの量は半端なく、本人を前にプレゼントを積み上げる……なんてしちゃった日には正直埋もれちゃいますのでね、会場が。

ですのである一定の貴族家からのものを会場で読み上げて、事前にリストアップして危険物がないか検分した上で王女宮に届けられるって寸法です。

安全確認は大事ですからね!

かつて危険がいっぱいだったという時代には毒虫から爆弾まで多種多様なものが王族の贈り物に紛れていたって聞いたことがありますが、どこまで本当なのでしょう。

多分毒虫とか毒花くらいはあり得ると思いますが、さすがに爆弾はないですよねえ。

平和な時代で本当に、本ッ当に良かった!!

(いざって時に戦える魔力がないからなあ~……)

魔力ってのは伸びるもんではないらしいんですよね。

私は相変わらず万能にいろんな属性を使える代わりによわっちいですから。

窓拭きとかちょっとしたことには便利ですけども。

貴族令嬢としては活用方法もないですが、便利で良いですよ。

ちなみにスカーレットも魔法はてんで駄目だそうです! なっかまー!!

(ま、貴族令嬢は魔力があった方が喜ばれる……なんてのは数世代前のことで、今じゃあ令嬢としての教養と礼儀作法が重視ですもんね)

だからどんな魔法が使えるのかなんてのはご令嬢たちの間では話題にならないんですよ。

私のように弱っちい魔力を仕事に使う方が珍しいっていうか、かつての王太后さまが先王陛下との夫婦喧嘩で中庭に氷柱を立てたとかそのくらいの実力が伴わないと意味がないっていうか……。

「……そういえばアルダールは剣の腕ばかり注目されるけど、魔法を使っているところを見たことない」

「そりゃあ、あのお人は魔法を使わんでも強いですからなあ」

私の呟きに応じたのは、メッタボンです。

今日のお買い物に護衛としてついてきてもらったんです。

彼もちょうどお買い物があったので市場に寄るついでにね。

基本的な食材は王宮に届くもので賄えますが、時々市場に足を運んで珍しい食材やとっておきのものをゲットしてプリメラさまに召し上がっていただくのがメッタボンの楽しみの一つなんですよ。

いやあ、なんて素晴らしい料理人でしょう!

顔の怖さとかに怯えず料理の情熱を信じて雇った若かりし頃の私グッジョブです。

「そうよねえ。でも本当に魔法を使っているところを見たことがないし、結構軍人とか騎士とかで有名な方って一緒に魔法を使っていることでも知られているじゃない?」

「そうですな」

ちなみにメッタボンは重力系の魔法を使うのが得意だったこともあって有名だったそうです。

大変希有な能力ですがあまり得意ではなかったそうなんですけど……。

お抱えにしたい貴族たちのしつこい勧誘に対して押し潰していたら扱いが上手くなったとか言ってますが、どこまでが本当なのやら。

「近衛騎士隊長のベイツ様は地の魔法が得意で、よく演習場を割った後にご自分で直しているっていうし」

「ああ、王城じゃ有名な話ですなあ」

「バウム伯爵さまは身体強化だって話よね」

「国王陛下のために身を挺して庇って、王国の盾ってのは物理的だって話題になりましたなあ」

「大司祭さまが水の魔法を使って干ばつの対策を行ってくださった、なんてこともあったわよねえ」

「おれらが生まれる前の話ですなあ!」

そう、どれもこれも有名な話ですよ。

ちなみに私のお父さまは私と同じく魔力が弱い方です! 遺伝ですね!!

お義母さまはそもそも魔法を習ったことがないと仰っていましたし、メレクもそう魔力が強い方ではないとのことでしたから堅実に勉強するのが一番だと割り切っていました。

我が家はそんなもんです。

「……でもバウム伯爵さまが身体強化に特化しているなら、アルダールもそうなのかしら」

「知りたいならお聞きになりゃあいいじゃないですか」

「それもそうね」

教えられないってことはないでしょうし、得意属性程度だったら答えてもらえるでしょう。

使いたくないとか、使い勝手が悪いとか、日常的に魔法って使うもんでもありませんし……単なる興味ですもん。

「おれとしちゃあやっぱりユリアさまの魔法が便利でいいんですけどなあ。料理にいろいろ使えるじゃないですか」

「それは本当にそう。でも量を作る時にはあまり適していないから、結局は地道にやるのが一番ね」

「ははっ、結局そこですなあ」

たとえばゼリーとかだって、二、三個冷やす程度なら私でも余裕ですが、それを十個、二十個……と量を増やされたら無理ィってなるわけですよ。

試作品作りにはいいんですけどね……。

今年も夏が近づいてきたので、プリメラさまにはアイスを作って差し上げないと。

「そういえば……」

「おっと、ユリアさまこちらへ」

腕を引かれて、立ち止まりましたが……私たちの前に、一人の女性が飛び出してきました。

さすがメッタボン、よく見てる! と褒め称えるのも忘れて私はその女性を見つめるしかできません。

だってそれは、笑みを消したミュリエッタさんだったから、です。

「……こんにちは、ユリアさん。偶然ですね」

「……こんにちは、ミュリエッタさん。お仕事か、それとも学園の帰りですか? 王城でも評判は伺っております」

偶然?

いいえ、彼女の表情がその言葉が事実と異なるのだと示しています。

けれど挨拶されて挨拶を返さない……なんて無作法ができるわけもなく、私はすぐさま侍女としての笑顔を貼り付けて応じました。

「はい、今日は治癒師としての仕事が早く終わりましたので。……せっかくお会いできましたし、よろしければお茶にお付き合いくださいませんか」

「……いいえ、残念ですが私はこれから王城に戻らねばなりません。また機会があれば、その時に」

「そうですか」

私の拒否の言葉にも、彼女はにこりと微笑んでみせました。

それは淑女としての笑みにも似ているような、けれどどこか違うような……。

出会ってから今日に至るまで、ミュリエッタさんは次々に変貌を遂げていました。

良くも悪くも、です。

初めての時はヒロイン らしい(・・・) 天真爛漫さで。

次の時には、焦りを滲ませた少女らしい姿。

ヒロインである自分を認めろと叫ぶ姿。

徐々に、萎れていくように周囲に対して苛立ちと焦りで笑みを消してしまった、女の子。

いずれも共通していたのは、恋に恋する姿であった、というところでしょうか。

私にぶつかってくる時はいつだって……いつだって、彼女の原動力は恋でしたから。

「ああ、そうそう。先ほどのお二人の会話を小耳に挟んでしまったのですけれど」

「……?」

「バウムさまの属性は、風ですよ。……もしもっと知りたかったら、是非お茶をご馳走させてくださいね。お待ちしております」

無邪気な笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げて足早に去って行くミュリエッタさんに私はなんとなく薄気味悪さを覚えてしまいました。

「……なんでしょうなあ」

「本当に」

アルダールと結ばれることはないし、彼女はもう婚約者がいる身で……私の知らないことを知っているぞアピールってのはおかしな気もします。

ということは、何か他に目的があって私を誘っているってことですよねえ。

今更彼女がヒロインだからとかそんなことは考えませんが……。

「あれじゃあ結構前から私たちの会話に聞き耳立ててましたって言っているようなものじゃないかしら」

「こっちに関わってこようとしないならと放置してましたが……どこぞに苦情を入れますかい?」

「いいえ、大丈夫よ。こちらで処理するわ」

まだまだ、貴族としては詰めが甘いミュリエッタさん。

もうね、今更何を求めているのかはわかりませんが……そっと彼女の去って行った方角を見て、私は目を伏せました。

(私が貴女にしてあげられることは、ないんだと思う)

前世の感覚を同じく持っているのだと仮定して、彼女はまだ子供だから……そう私はずっと、庇護対象として彼女を見て来ました。

自分が守るべき対象ではないからと、突き放すこともいたしました。

そしてもう、彼女は私にとってただ名前を知っているだけの他人であると位置づけました。

非情だと思う人もいるかもしれないと考えると、少しだけ良心が痛みましたが……。

彼女はこの国でもう、成人として扱われるべき年齢で、貴族令嬢で、多くのことを知ったのです。

知った上で取った行動には、責任を取らなければいけないのだから。

「ユリアさま?」

「戻りましょう、メッタボン。仕事が待っているものね」

私は私の責任を果たすために、私の居場所へ帰るのです。

一応、彼女の発言に関しては……一番、安全そうなところにお願いすると心に決めて。