軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……そういえばスカーレット、先ほどから言っている貴女のお兄様って、どの お兄様(・・・) のことなのかしら」

ふと気になって尋ねてみました。

ピジョット家は大家族、スカーレットも七女です。

私の記憶が確かならば彼女の兄と言えるのは、ピジョット家の長男・次男・三男の三つ子組と三女・四女と三つ子の四男です。

それからスカーレット自身も男女の双子だったはずですので、これを兄とカウントしているかどうかで変わりますが……ええと、少なくとも計四人、スカーレットの双子の相方を数に入れるならば五人いるわけですけども。

私の言葉にスカーレットは小首を傾げて、少し考える素振りを見せました。

えっ、何故考える……。

「そうですわね、まあまだ言葉を交わすだけの価値がありそうなのは次兄と四の兄ですわ。長兄はお義姉さまがしっかりした方なので失言はないでしょうけれど事なかれ主義の流されやすいタイプで」

(お父さまと同じタイプだわ……)

「次兄は若干脳筋ですが騎士になった後に婿入りしまして、アルダールさまやハンスがいれば大人しくなると思いますわ」

(上下関係……!)

「三の兄は長兄が頼りにならないし次兄が脳筋なせいでシワ寄せが来るものだからいつもその処理に追われていたせいでかなり性格が捻くれておりますの。この国では珍しい、魔術研究の方に携わっているので関係を結びたいと仰ってくださる方は大勢いらっしゃるんですけど、すっかり引きこもりで……」

はあっとため息を吐きながら呆れたような顔をするスカーレットだけども、この段階で情報量が半端ない。

凄いぞピジョット家……!

「四の兄は地方文官として現在は確か南方で働いていますわ。穏やかで人受けする容姿をしているのですけれど、壊滅的に空気が読めないタイプですの。ワタクシが顔合わせで足を蹴っ飛ばした兄ですわね! あ、それとハンスと幼馴染みなのは四の兄です」

「そ、そう……」

その空気の読めないタイプがまだ話をする価値がある兄……?

いえ、地方文官さんですからね。

有用なお話はできるけれど男女の空気はまるで読めないって感じの方ってことでしょうか。

「それから一応ワタクシの双子である五男ですが、あれはちゃらんぽらんで遊んで過ごした挙げ句に大商人になる! と家を飛び出していったきり連絡がありませんから、会うことはないと思いますわ!!」

(最後の最後にとんでもない情報……!)

ピジョット家、どうなってんの。

いえ、三女が私とかつて同期で今は商家に嫁いで幸せにやっているんで、ピジョット家の大家族がそこまで強烈な個性を持った方々だとは思っていなかったというか……。

いえ、十二人兄妹だと思うとそれだけですごいんですけども。

「ちなみにうちでは一の姉と二の姉は国内貴族に嫁いでおりますけれど、こちらも地方貴族ですのでまず王城で顔を合わせることはないと思いますわ!」

「そ、そう」

「三の姉については最近知りましたけれど、ユリアさまと知り合いでしたのね。四の姉は……好いた方を追って隣国へ行ってその後仕事をしていると聞いていますが詳しくは存じませんの。五の姉は王都の商家に嫁ぎ、六の姉は王城勤務の文官に嫁ぎましたわ」

ピジョット家はスカーレットたちだけでなく、代々大家族ということで有名です。

そのため、あらゆるところに繋がりがある……なんて揶揄されていることは知っておりますが、そりゃあこんなに多岐に渡る関係を築いていたらどっかしら貴族家、あるいは商人と繋がりがあって当然ですよね……。

わかっちゃいましたが目の当たりにするとすごいなと思わずにいられません。

かといって親戚であることを盾にどうこう……というのはこれまでのピジョット家の行動でわかりますが、当代もスカーレットの件で厳しく扱っていいと言っていたことからそういう家風なのでしょう。

内宮筆頭は親戚づきあいというか本家筋の問題云々というあれこれ、どちらかというと周囲に言われて……というところがあったんだと思います。

今じゃあスカーレットはこんなにも立派に成長しているので誰もが安心だと思います!

「そ、それでなんですけど、ユリアさま。ご相談があって」

「あら、どうしたの?」

「……こ、今度ワタクシの母が王都に用事があってやってくるんですの」

「まあ、じゃあお休みの日を合わせて是非一緒に過ごしてらっしゃい」

私の言葉にホッとした様子のスカーレット、なるほどお休みがほしかったんですね!

と思ったんですが、まだあるようです。

なにやらもじもじして……うん? 王都の観光名所でも教えてほしいのかな?

でも残念ながら私もそこまで詳しくはないんだよなあ……!!

思わず緊張する私に気付かず、スカーレットは意を決したように顔を上げました。

「そ、その日の夕方からメイナを休みにしていただけませんこと?」

「メイナを?」

「お、お母さまに、し、ししし紹介したいと思いまして。別になんてことはありませんのよ!? ただ、ほら、ワタクシの同僚ですし!? 友だちだから特別なんてことはございませんことよ!!」

「まあ」

ありがとうスカーレット、全部説明してくれて。

なるほどなるほど、メイナをお友だちとして紹介したいのね。

いいじゃないですか、今は確かにあれこれ準備などでばたついていることは確かですが、まだ本格的に忙しいわけではありませんもの。

メイナやスカーレットたちのような一般の侍女はある一定の時刻以降の外出、或いは遠方への外出や旅行などの場合、上長の許可が必要になります。

いずれも王城勤めという特別な環境にあって、身柄の安全は元より危険人物などが紛れ込まないようにする対策などが施されてのことです。

これは雇用契約書にもきちんと明記されていることです。

厳しすぎるってこともなく、ちゃんと書類を出して上長が把握さえしていれば多少の夜更かしだろうと裁量で許可できちゃうわけですね。

ご両親が田舎から出てきたから翌日の昼まで帰ってこないですとか、知人の結婚式で日付が変わったくらいになるですとか……まあそんな感じの申告で十分なものですからね。

ほら、万が一『申請は受け付けたけど、どこに行ったかは知らない。行方不明になったのはいつなのかも把握できない』とかなったら困るでしょう?

今でこそ平和ですからあまりないですけれども、一時怪しげな勢力に攫われて人質にされたなんて時代があったというからその時の名残です。

「それじゃあその日が明確に決まったら教えてくれるかしら?」

「わかりましたわ!」

「王都内で過ごされるのでしょう? せっかくだから私からもお土産を用意したいし、少し早めに教えてくれると嬉しいわ」

「まあ、ありがとうございます! でも気にしなくても大丈夫ですわ、母は姉に会いにくるんですの。ワタクシとはそのついでですもの」

「可愛い後輩を預かっている身ですもの。そのくらいさせてもらえると嬉しいわ」

遠慮するスカーレットに私がそう言うと彼女ははにかむようにして笑い「ではありがたく受け取りますわ!」と言ってくれました。

来た頃のツンケンした態度を思い出すと懐かしく思えるくらい、今はとても可愛い後輩です……!

統括侍女さまにはきっとこうなる未来が見えて……見えて、いたん、ですよね……?

いえ、そう信じなくては。

「それじゃあその件はわかったから、早めに知らせてもらうとして……模様替えの件は新しいカタログを取り寄せようと思うから、メイナにも報せておいてくれる?」

「かしこまりましたわ!」

「デザイナーも幾人か見繕うつもりだけれど、いつものデザイナーのほかに推薦できそうな若手などもいたら教えてちょうだいね」

「はい!」

晴れ晴れとしたスカーレットの表情を見ると、ほっこりしますね……!

そういえばハンスさんに対しての恋心はすっかり落ち着いて、今は仕事に燃えているようですが……真面目に仕事をするようになったスカーレットに熱い視線を向ける若者が多いとセバスチャンさんも言ってましたし、パーティーの際は彼女の身の回りも気を配るべきかしら。

不埒者がいないとは言えませんからね!

侍女だからって気安くうちの可愛い後輩に手を出そうなんて輩は排除です、排除!!