軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

560

ナシャンダ侯爵さまのところで楽しくお茶をした後、プリメラさまの誕生パーティーの件は快諾いただけました!

あとは私が企画書を完成させて交渉はそちらで……ってところでしょうか?

その後は侯爵家に泊めていただいてお酒を飲んだり、夜の庭園を散策したりとまあ充実した時間を過ごさせていただきました!

これからもちょくちょく遊びにおいでと優しいお言葉もいただけて、私たちは恐縮しっぱなしです。

……でも嬉しいですよね!

まあそんなこんなで楽しかったナシャンダ領への旅行も終わり、私たちは自宅へと帰ってきました!

ただいま王都!!

(結婚式のブーケの 当て(・・) もできたし、もう後は招待客と記念品くらいでいい感じになっちゃった)

なんだか怒濤の忙しさであれもこれも終わっていないような気持ちでいましたが、婚約式も気付けば終わって次は結婚式です。

ドレスはまあなんとかなりますし、アクセサリー類も……うん、大丈夫です。

教会はすでにある程度いつぐらいでという話をしてあるので細かいところを詰めるだけですし、そこは任せろって大司教さまが仰ってるんですから私がこれ以上何かを言う必要はありません。

なんだか嫌な予感がしますがないったらないんです。

ブーケもナシャンダ侯爵さまのご厚意で宣伝も兼ねて新品種の薔薇を使わせていただけるという薔薇愛好家たちが聞いたら垂涎の逸品ができるに違いありません。

(……となるとやはり記念品よねえ)

こちらの記念品。

普通に考えたら結婚式の引き出物、子爵家レベルならまあお越しいただいた方々にちょっとしたプレゼント……ってな感じが一般的なんですが、今回はそうもいきません。

何せ結婚式っていうめでたい場というだけでなく国王陛下直々の叙爵、新しい家門の門出っていうトリプルミーニングな記念品。

さすがに美味しいお菓子を小さな袋に入れて新郎新婦から手渡しで……っていうアットホームなやり方では許されません。

あくまでお気持ち的な話なので駄目ってことはないですが、体面ってものがですね……!!

「来場者全員に……?」

さすがに高位貴族の方々でもお世話になっている人たちはマスト。

家族は……後日改めてって形にさせて貰うとしても、それでも高位貴族の人たちに渡すお品ですからね。

婚約式を簡易、かつ身内だけというものにしてしまったのは状況が状況だからですが、そのせいで貴族たちから『どんな式を挙げるのか』ってハードルを上げられている気がしてなりません。

(あーもう、前世みたいにカタログセットみたいなのをポンポン渡しちゃえればこっちも悩まないで済むってのに……!!)

考えるのめんどくさい!

正直そう思ったところで、私はぽんと手を打ちました。

「そうよ、いいアイデアじゃない」

ないなら作ろうカタログセット!

実際に本にするのはとても手間がかかりますし、商品券ですよ商品券!

これには商人たちの協力が必要だしメリットを説くのが面倒っちゃ面倒ですが、この際リジル商会を頼るのがベスト・オブ・ベスト!

以前リード・マルクくんも言っていたじゃないですか、ミスルトゥ家に対して今後良いお付き合いをしていきたいって!

(利用できるものはさせてもらおうじゃない……!!)

とはいえ私一人で突っ走るのは駄目なことだと理解しておりますので、大人しく縫い物でもしてアルダールの帰りを待ちましょう。

もう王都のこの家でのんびり過ごすことにもすっかり慣れました。

繕いものなんかは本来子爵夫人がするようなものじゃないんですが、手持ち無沙汰だったからね!

今日はアルダールの帰りが遅くて日付が変わるくらいだと聞いています。

それでも『おかえりなさい』を言いたくて、マーニャさんから仕事を奪うような形でアルダールのシャツを繕っているのです。

いくら王城内勤務の近衛騎士隊とはいえ普段から訓練は欠かせませんし、そうなるとシャツなんかも結構くたびれてくるもんなんですよ。

消耗品だから仕方ないって言われればそうなんですが、そうちょくちょく買い換えるようなものでもないので少しの破れなどでしたら、縫って使うものなのだそうです。

そこは一般の騎士となんら変わりがなくて、なんだか微笑ましいですよね。

「うん、できた」

インナーとは別の白いシャツはいわゆるワイシャツみたいで、今回は破れたっていうかボタンがいくつか取れかかっていただけなのです。

私のような縫い物があまり得意でない人間でもちゃんとできるレベルの縫い物で良かった……!!

というかそうじゃなかったらマーニャさんが私に渡したとは思いませんけれども。

「いい出来では……!?」

自画自賛って言うな。

基礎教養として刺繍を含めた繕いものは履修していますが、誰にだって得意不得意があるでしょう?

「……」

シャツを広げて縫い忘れ、失敗などがないのかを確認してみましたが、バッチリです。

侍女としても主との出先で何があるかわからないので応急処置ができるよう、繕い物を学ぶのですが……まあ戻ったら専任のメイドとか使用人とか、業者とか……そちらに任せるんですけども。

なんとなく、今は魔が差したと申しましょうか。ええ。

ドアは僅かに開いています。

外の音が聞こえるように。アルダールが帰ってきたら、すぐにわかるように。

一階でマーニャさんとカルムさんが何か会話をしているのも聞こえます。

ええ、つまり今ここには私一人っきりってことです。

「うわ……思ったよりおっきい……」

もう後はアルダールに夜の挨拶をして寝るだけだからと薄手のカーディガンをまとっていたんですが、それを脱いで代わりにアルダールのシャツを着てみました。

わかっていましたが、大きくて……下手したら私が持っていたカーディガンよりも大きいですね!?

(……彼シャツってちょっと憧れてたんだよね……!)

前世ではよくあるシチュエーション的に耳にすることはありましたが、ついぞ私にはそんな状況が巡ってきませんでしたから……。

悲しいって言うな。哀れって言うな。

今がいいからいいんだよ!!

なんとなしに姿見の前に立ってくるりと回ってみたり。

ただ恋人のシャツ着てるだけなんですけど、なんででしょうね。楽しいですよこれ!

包むように抱きしめられるんだから当然彼の服が私よりも大きいのなんて当たり前。

子供が親のドレスを身にまとってみたいのと似た気持ちなのでしょうか?

ドキドキ感が違いますけどね!

なんだかこう……説明できないけど楽しいです。

「こんなところ誰にも見せられないわね……」

一人で婚約者のシャツ着て鏡見てニヤニヤしているだなんて!

それなんて不審者……でもまあほら、一人ですし!!

と思ってシャツを脱いだところでマーニャさんと視線が合いました。

とっても素敵な笑顔ですね。

「まままっま、まーにゃ、さん……!?」

「旦那さまがお帰りですよ、奥さま」

「待って待って待ってマーニャさんいつから!? とりあえずこのことは内緒に! 内緒に!!」

「はい、かしこまりました」

にっこにこですけど信頼していいんですよね!?

音もせずに現れるだなんてさすが熟練の侍女……違うそうじゃない。

「マーニャさん……」

「わたくしは何も申しませんとも。お約束いたします。ただ……」

「ただ……?」

「うふふ」

「マーニャさんんん!?」

その微笑みは! どういう意味なんですか!!