軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……ああー! 緊張したあ! ねえねえ、ちゃんとできてた? できてた?」

お客さまを見送って、プリメラさまはパッと華やぐ笑顔でビアンカさまや私たちの方を見ました。

「ええ、立派でしたわプリメラさま。あとをどうするかはあの二人次第ではありますけれど、十分でしょう」

ビアンカさまもにっこりとそう笑ってくだすったので、貴族的な見方でも立派な振る舞いだった……ということでしょうか。

「……本当はあの茶会の時に、わたしが対応できたら良かったんだろうけれど。あの場はやはり王妃さまの、お義母さまの茶会だったでしょう? だから問題が起きたら、それをどうにかするのは主催の役目。それはわかっているの」

お客さまがいないことですっかりリラックスして少しばかり作法から外れた様子でお茶を飲みながら笑うプリメラさまですが、ビアンカさまも何も仰いませんでした。

そうですよね、緊張から解き放たれたんですもんね!

ちょっとくらい好き勝手しても、今この場には私たちしかいませんもの。

お菓子を口にして楽しそうに笑う姿は年齢そのものの可愛らしい笑い方。

先ほどまでの王女らしく、優雅に微笑む姿も大変お美しゅうございましたが私としてはその可愛らしい天使のようなお姿も大好きです! あー、可愛い。

「でもいつまでもわたしが黙っていたら、だめでしょう? それに……それに、あの人だって一回の失敗で社交界から姿を消すのは勿体ない気がしたの」

(正確には一回のカウントではないですけどね!)

プリメラさまったらなんとお優しいことでしょう……でもあの茶会そのものを一回でカウントするのはお優しすぎるので、少しばかり心配です。

そこについてはビアンカさまに後で相談することにいたしましょう……。

(まずは勝手に内密な結婚について触れたこと、専属侍女を貶したこと、それから世情に疎いことを理由に自分の行動を恥じないこと、何より王妃さまの茶会において場の空気を乱したこと……)

専属侍女まで行かずとも、他家の使用人たちを貶すことはその家の指導がなっていないということを揶揄するマナー違反中のマナー違反。

勿論、イメルダ嬢はあくまで『侍女と仲の良い王女』『どこに行くにも一緒』という点について触れただけだと主張するでしょうが……パッと耳にした貴族たちがそれをどう思うか、そこに至った発言ではないのでやはり却下です。

(ううん……私も結構貴族的な考えがちゃんとできていたのねえ……)

我ながらびっくりです!

いやまあ王城で暮らしているんですから、高貴な方々の生き方、考え方、そういったものを間近で見て育っているためもしかしなくとも下位貴族の教育よりもずっと高度な貴族教育を受けていたようなもんですからね。

待てよ? その基準で行くならイメルダ嬢だって侯爵令嬢なんだから高位貴族の教育を受けていらっしゃるわけですよ……?

(しかも異国に嫁ぐのだから、ダブルで教育を受けていたのよね……?)

それなのにあんな行動をしちゃうなんて、やっぱりいろいろストレスが溜まっててドッカーンと来てしまったんでしょうか。

蝶よ花よと育てられ、大事に大事にされて、将来は立派な貴族家夫人にと期待をされていたのに婚約者は自分を大事にしてくれない挙げ句によその女性に手を出してあまつさえ妊娠までさせてしまって責めるに責められない……矜持が高ければ高いほど、声高に文句も言えない状況だったのだろうということは想像に難くありません。

まあ、そこからどう心に折り合いをつけてやっていくかは家族の問題。

とはいえ個人の資質というか性格がものを言う場合もありますし、一概にこうとは言えませんよね。

(……色々傷ついた上にストレス溜めて戻ってきたら、過去に素敵と思った男性が自分より格下とラブラブだって話を聞かされてストレス限界値を突破したってのが一番妥当な線だろうなあ)

私としてはノーダメージもいいところなので、彼女の方は踏んだり蹴ったりじゃないかと思ってしまうわけですが。

冷静な判断ができないって怖い。

私も気をつけなければいけませんね……!

「社交に戻るかどうかは、ロレンシオ侯爵家が考える話ですわ。プリメラさまのお心遣いを受けて、成長してくださると良いですわね」

「そうですね……彼女の結果次第で、声をまたかけたいと思うんですけどどうでしょうか?」

「とても良いことだと思いますわ」

プリメラさまの言葉に、ビアンカさまも満足そうです。

そうですよね、教え子の成長はやっぱり嬉しいものですよね!

特にそれがプリメラさまみたいな天使のような子だったらなおさらです!!

「ライアンも、ありがとう。あなたの淹れてくれた紅茶、とても美味しいわ」

「は、……これからも精進いたします」

「ええ、お願いね!」

さすがプリメラさまです。

しっかりライアンを褒めることも忘れておりません。

勿論私も後ほどライアンの働きについては評価するつもりですけれど、やはり主人に褒められるっていうのは別格の喜びがありますからね!

こう……鼻高々になると言いますか、嬉しいじゃないですか。

給仕の主たるは私がやりましたが、こういう場でお茶を淹れるなども大事な経験ですので今回はライアンも最初の一杯だけ、淹れたのです。

腕前はあのセバスチャンさん仕込みですから、問題ないですよ。

ちなみに同じくセバスチャンさんに習っているはずのスカーレットですが、今もまだ上達しておりません。不思議なものです。

「王女宮は人数が少ないから、本当に使用人の質が高くて羨ましいわ」

「ふふ、ビアンカ先生にそう仰っていただけるとわたしも嬉しいです。自慢の使用人たちなんです」

使用人って言われているのに、それがまるで家族だと言われているような気になるのはプリメラさまの笑顔のおかげでしょうか。

ちらりと視線を向けると、表情こそ変わらないもののライアンも嬉しそうです。

「わたし、立派な王女になるって心に決めていて、今日のことは余計なことだったかなと思ったんです。だって王妃さまがもう決められたことに、わたしが水を差すようなものでしょう?」

「そうですわね。けれど、王妃さまが『遠慮する必要はない』と仰ったならば、それは許しと同義ですもの。水を差すなどということはないはずです」

「……ありがとうございます、ビアンカさま」

「むしろ周りに好き勝手されず、王女としてのお立場を貫こうとするお姿に成長を感じてくださっているかもしれませんよ?」

「だと、嬉しいです」

照れるプリメラさまにビアンカさまもにこりと微笑みました。

でもそうやってにっこりとそうまとめたビアンカさまですけど、綺麗にお菓子がなくなっているじゃありませんか……!

あれえ、結構な量を用意したつもりだったんですけどね!?

おかしいな、ロレンシオ母娘はお茶菓子に手を伸ばしていなかったので、四人分のお菓子のほとんどがビアンカさまのお体に吸収された……?

「……お茶菓子の替えをお持ちいたします」

「あらありがとう。うふふ、楽しみだわ」

おかしいな、クッキーとかカロリーが結構あるはずなのにビアンカさまはなんであんなにも美しいスタイルを維持しているんだろう……どんなエクササイズしたらあんなスタイルに!?

私も結構気を遣っているつもりですし、なんだったら日中はこうして働いて夜はストレッチ、最近は結婚式のドレスを作るから節食も始めているというのにあまり変化がなくてですね……!?

(一朝一夕で結果は出ないけどさあ!)

神様って! 不公平!!