軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

551

さて、侍女としての仕事の大半を周りが受け持ってくれるようになったので私自身の仕事量としてはとても楽になったのは事実ですが、人手不足は否めない。

お手伝いしに来てくれる他宮の侍女たちを信頼していないわけではありませんが、大事な内容はやはり王女宮の人間、それも管理側に回る人間が行わなければいけません。

だって、私たちがお仕えするのは王族、それも大天使プリメラさまですよ!

誰にでもお任せできる仕事なんて本来一つだってあるわけないじゃないですか!!

それでもプリメラさまのドレスを決めるだけ決めて、入浴や支度のメインは私、サポートにお手伝いに来てくれた侍女……といった風には分担しているわけですけども。

「……で、なんでここにミスルトゥ家への侍女志望の書類が届くのかしらね……!」

「まったくもって減点ですな」

はははと朗らかに笑うセバスチャンさんに合わせて私も思わず笑ってしまいましたが、そうじゃありませんよまったくもう!

一般の書類は勿論のこと、なんだったら王城内にある郵便物の担当部署で何日の何時にどこの誰から届いてますよって記録されるこのご時世、いや王城なんだから当たり前といえば当たり前なんですが……。

時代が時代なら届いたものについてプライバシーなんてなく検閲されていたと聞きますしね……そういう意味で届いたって記録されるだけならありがたいことと思うべき何でしょうけれども。

いやそうじゃない。

(自分ちの家名を隠すこともなく手紙を装って履歴書を送りつけてくるとかあり得ないにも程があるでしょ……!)

まだミュリエッタさんの謝罪する気がない謝罪のお手紙の方がなんぼかマシってもんですよ!

もらいたいわけじゃないですけども!!

「それで? どこのお嬢さま方ですかな?」

「伯爵家が三人、子爵家が一人、男爵家が二人ですね。いずれも名前をどこかで見たことがありますが……おそらく侍女見習いとして王城に来ていたことがあるのだと思います。身分を考えて、内宮筆頭に問い合わせてみましょう」

勤務していた期間、態度、人柄等内宮筆頭のことですからきっと覚えていると思うんですよね!

内宮筆頭って記憶力がものすごく優れている人なのできっと覚えているか、あるいは知っていそうな人を教えてくれそうな気がします!!

ちなみにこの六名のお家ですが、私はまるで存じ上げないですね……。

特に王城内で役職があるとかそういうことではなさそうですので、単純にアルダール狙いと考えるべきかなと思うんですよ。

(婚約式も終えたっていうのに粘るな……)

最近ではプリメラさまとディーン・デインさまの婚約を成立させるための……とかなんとか言われていた当初の噂もすっかり なり(・・) を潜め、アルダールが私のことを溺愛しているって話で持ちきりらしいっていうのに!

そもそもあれはアルダールが私を姫抱きにして外に連れ出したせいなんですけどね!!

あれ以来、年若い侍女たちに羨望の眼差しを向けられる私の気持ちにもなっていただきたい……本当に私みたいなケースはレアだと思うので〝侍女として頑張っていたらあんな風に素敵な人に見初められる〟とかそんな噂がまことしやかに囁かれると本当にいたたまれないので止めていただきたいんですよ。ええ。

(こんなはずじゃなかったのにとか言われても困るのよ……!!)

将来的にそんな苦情を言われたらどうしようかと今から胃が痛い思いをしておりますとも。

考えすぎだって笑い飛ばせれば一番でしょうけどね……まあ、その頃には私も王城では働いていないかもしれませんし、未来がどうなるかはわかりません。

もしかしたら奇跡の五つ子を授かって子育てに追われるので職業婦人としての生き方を一旦お休みしているかもしれませんし、逆に授からないからってプリメラさまが降嫁した後はしょっちゅう義姉として遊びに行っちゃったりとかしているかもしれませんし。

(それもいいな。うん、可愛い義妹とのお出かけ……!)

その際にはオルタンス嬢も誘っちゃったり?

あらやだ楽しそうではありませんか。

……って妄想している場合ではありません。

「アルダールには勿論のこと、統括侍女さまにもこの件はお伝えしますが……裏があるかどうかですよね」

「まあないとは思いますが」

「念のためですよ、念のため」

「そのお心は大事ですからなあ。ところで結婚式の準備はいかがですかな?」

「ええ、順調ですよ」

「楽しみですなあ。私もそちらにお仕えする日を楽しみにしております」

「……カルムさんから、次のチェスは負けないと伝言を預かっています」

「ははは」

私の結婚式を機にセバスチャンさんがミスルトゥ家の執事となることは内定しているわけですが、ライアンへの引き継ぎはもうほぼほぼ済んでいるとのこと。

まあもともと〝影〟として優秀だからこそ選ばれたライアンですし、そのくらいお茶の子さいさいってやつなんでしょう。

「……そういえば最近ライアンはどうしているんですか? あまり私のところには来ていないようですが」

「ああ、私に報告をさせてなるべくユリアさんには近づけないようにしているからですな」

「え? なんでまた」

「まあ、彼の直属の上司は私になりますからな、私経由で更に上であるユリアさんに報告が行くのは当然のことです」

「それは、そうですが」

これまでそんなことしていなかったのでは?

そう疑問に思う私の気持ちなどお見通しなセバスチャンさんはにっこりと笑みを浮かべました。

「表向きはそのように。我々のような人間は基本的に 躾けられて(・・・・・) はいますが少々ライアンはまだ若く、心配なところがありましてな……ミスルトゥ家の執事を預かる身としては将来の旦那様へきちんとしておきたいのですよ」

「……?」

確かにライアンは美青年ですが、それで私が見惚れて大変とかそういう心配をしているんでしょうかね……?

アルダールは確かに嫉妬しやすい人ではありますが、仕事は仕事として理解してくれているのでセバスチャンさんったら気の回しすぎでは?

(まあでも確かにライアンの直属の上司はセバスチャンさんだから、気にしないでいいか。一応必要最低限は会話をしているし……)

朝の挨拶ですとか、朝礼時の指示の時ですとか。

基本的に私が統括している宮とはいえ、侍女たちを中心にとりまとめるのが筆頭侍女のお仕事ですからね!

「そうそう、次のプリメラさまの公務についてなんですが……ライアンを連れて行こうかと思うんですが、どうでしょう」

「次の……と仰ると、王妃殿下の茶会ですか」

「ええ。スカーレットにしようかとも思ったんですが、ライアンもそうした場に出ることを覚えた方がいいと思って。それにプリメラさまにとっても、自分の執事や侍女についてあれこれ聞かれる経験は必要でしょう」

デビュー前とはいえ公務を始めた以上、プリメラさまも茶会などには顔を出す必要があります。

女性のみの茶会では基本的に仮面は不必要ですし、今後の繋がりや、貴族たちの情勢を肌で感じる良い機会と言えるので積極的にとまでは行かなくても多少は高位貴族たち相手に顔を見せておくべきだとビアンカさまから言われているのです。

とはいえ何度も言いますがプリメラさまはデビュー前の姫君ですからね。

今回は王妃殿下が主催するお茶会に参加することで親しくなれる相手を見つける……というのがポイントでしょうか。

こういった場合は侍女、あるいは執事を一人連れて行くのが大半ですが、プリメラさまは王女殿下ですからね!

「今回は確か、王妃殿下が親しくしている侯爵夫人の快気を祝ってのことでしたか」

「そうです。そのご令嬢もおいでになると聞いています」

「なるほど」

ちなみにですが、そのご令嬢!

アルダールが私と付き合い始めた頃からめちゃくちゃラブレター送ってきて『あんな女より私の方がずっと魅力的ですよ』ってアピールしてたらしいですよ!!