軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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まあそんなこんなで、今後のことも含めてセバスチャンさんに お願い(・・・) をしてから私とアルダール、揃ってファンディッド領に小旅行です。

仕事に都合はつきましたし、なんだかんだフィッシャー男爵は去ったまま大人しいですしね!

まあ今頃フィッシャー侯爵家が慌てている頃でしょうから、こちらに手を出す余裕がないだけとも言えるでしょうが。ふふん。

(まあよく考えたら王女宮で筆頭侍女をやるのも、貴族家の妻で家を守るために取り仕切るのも似たようなところが多いのよね)

そういう意味では私も経験ありと自信を持っていいはずです。

問題としては貴族家の妻として、着飾って夜会だの茶会だのなんだの……要するに社交をたまにはしなくちゃならないだろうって点でしょうか。

これまでは社交界デビューをしていなかったからという点を前面に出しプリメラさまのお傍に控えていたわけですが、そのデビューもしちゃいましたしね。

後輩たちも育ってきて任せられる場面も増えているわけですし……筆頭侍女をしながら子爵夫人としての役割を果たすことも不可能ではありません。

実際に騎士爵のほかに爵位のみの貴族家夫人の多くは働きに出ていることも多いのです。

格別裕福なご実家だとか、ご本人が財産持ちな場合は別ですけれども。

「どうかしたの?」

「なんでもないの。意外と女主人の仕事と王城での仕事で共通点というか、やり方が似ているものがあるんだなと思ったら少しおかしかっただけ」

「……そういうもの?」

「ええ」

だって、侍女は主人が輝けるよう汚れ仕事も担いつつ周囲と連携を取って、流行を押さえ、いつだってその能力を発揮していただけるよう考えるのが役割です。

そして筆頭侍女はそれを行うために何が必要なのか、使用人たちを取りまとめて最大限彼らの力を発揮できるようにするのが役目。

女主人の仕事は、それをより……表に出て行うものではないかと私は心得ています。

私が筆頭侍女として行ったものを己の責任と名前で実行するのです。

家を守っていくために生じる責任の重さが増すといったところでしょうか。

勿論、それだけではないと思いますが……それでも、基本的なところは似ているのではないかなって思うのです。

(要するに大事な人のために最大限、最高の状態を調え続けられるよう努力しろってことでしょ!)

まあ王女宮と一般子爵位だと予算は天と地ほどもありますので、その中での遣り繰りですがね!

そこは私だって理解しておりますよ、なんせうちの実家も子爵位だもの!!

とはいえ私はあまり帰省もしていなかったし仕送りする程度の親不孝者だったわけですが……グフッ。

いや、幼少期には婿を取って領地の跡取りとなる可能性もあったのでそれなりの教育は受けていましたし、王城でも鍛えられましたから……まあ、あとは慣れなんでしょう。

なんだかんだセバスチャンさんが執事として補佐に回ってくれるなら、きっと大丈夫なんだろうという理由もないこの安心感。

とはいえ、 ただの(・・・) 騎士の妻になるはずが気がつけば子爵夫人として切り盛りを求められ、さらに夫には上を目指してもらわなくてはならないという状況に追い込まれているのはため息が出そうです。

「ユリア、疲れていない?」

「……大丈夫。天気が思っていたよりも早く悪くなりそうね」

「ああ……確かに、雲行きが怪しいかな。予定していた町よりも手前で宿を取った方がいいかもしれない」

「ええ」

そうなんですよ、いつもだったら朝早く出て夜に到着するつもりが、フィッシャー男爵関係で聴取の人がやってきて予定が少しずれちゃったんですよね。

そのため、途中の町で宿泊することとなったのです。

まああれでよりフィッシャー男爵の関係者が戦々恐々としてくれたならなによりと思いますので、これも大事なことだと割り切っております。

ちなみに以前だったら泊まりがけってだけで周囲の目もあるしあれこれ考えちゃって緊張しかありませんでしたが、今はそこまで緊張していません。

勿論男女間のあれこれについては考えないようにしているだけですけど!?

とりあえず途中の町でも部屋は二つ! 二つですからね!!

もう結婚秒読みの婚約者なんだから同じ部屋でも……という感じはしますし、なんだったらよくある話ではありますがさすがにね! 早いでしょ!!

高位貴族のご令嬢だった場合は護衛だの使用人だの大人数連れの場合が割とあるのでさすがにそういったことは避けるようです。

その辺りはやっぱり名誉などを重んじますのでね。

そういう意味では私は下位貴族で、アルダールも……まあ注目されているとはいえ下位貴族になる人ですからね。

そこまで厳しい目では見られないことでしょう。

「……この先の町で、良い旅亭があればいいのだけれど」

「そうだなあ。あまり大きな町ではないからね……」

しかしながら天候には勝てないのが人というものです。

私たちが予定していたのはもう少し先の町ですが、それでも無理を押して行った先で雨足が強まったりなんかしたら多くの旅人が足を止めて、旅亭がさっさと埋まってしまうかもしれませんからね……。

とはいえ、では途中の小さな町だとそれはそれで問題です。

旅亭の数がね。やはり大きな町と比べるとね……!

くっ、予算の問題もあるから大きな宿は無理にしてもそれなりのグレードにしないと寝具の都合で私の体がバッキバキになってしまうではないか……!

(……一人で帰省する時はそんなこと考えなかったんだけどなあ)

たとえばある程度安全が確保されている安宿でも良かったんです。

翌日からだがバッキバキでも、 そこそこ(・・・・) の馬車に揺られて帰るだけだから……ってね。

でも今回で言えば朝起きてそんな状態の自分を婚約者に見せたいかって話にね……?

絶対に!

見せたくないでしょう!!

「……残念だけど、部屋が一室しか取れなかった」

町についてアルダールが申し訳なさそうな顔をしているからそうじゃないかなという予想はしておりました。

ええ、ええ、町に入ったところでちょっとした 商隊(キャラバン) がいましたからね。

もしや……とは思っておりました。

「大丈夫?」

「え、ええ。大丈夫」

ジワジワと首元が熱くなってくるのは別に意識しちゃっているわけじゃありませんよ?

ほら、結婚したら寝室はどうせ一緒なんですしね?

ちょっとした予行練習っていいますか、今回の場合はしょうがないっていうか、今から次の町に馬車を走らせてもらったら今度は部屋が一つもありませんなんてオチも考えられるわけですから……ええ、ええ、これは仕方のないことなのです。

仕方のないことなんだったら!!

そんな私を見て、アルダールは何を思ったのかにっこりと微笑みました。

その笑顔、素敵だけど嫌な予感がします。

「大丈夫、ちゃんと私は待てる男だよ?」

「あ、あのねえアルダール!」

「……まあ、少しくらいはイタズラするかもしれないけれど」

「だめです! 絶対だめですからね!?」

クスクス笑っている段階で彼が揶揄ってきていることはわかっています。

わかっていますがつい反応してしまうのは、これが経験の浅さというやつなのか……!

そしてほんのちょびっとだけ。

ちょびっとだけですよ?

どこか期待している自分もいて、余計に恥ずかしくなったのでした。