軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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茶会を二つこなしつつ新居や婚約式の準備にと大急ぎですが、でもそれらの苦労の甲斐もあってでしょうか?

愛人希望のお手紙は一気に減りました!

全部なくならないのがすごいですが、残った方々はきっと必死なんだろうな……。

ちなみにアルダールの方にも相変わらず愛人希望のお手紙は届いているそうです。

あちらはガチ恋な気がしてなりませんが、まあ彼が相手にしていないので私があまりやきもきしてもしょうがないっていうか……腹立たしくはありますがね!

それはそれとして、あとはミスルトゥ家に就職希望の方々については統括侍女さまが秘密裏に調べてくださってわかったことですが、あれこれと高位貴族たちに気に入られようとして王城勤務から外された家やその家族のようでした。

どうやら王家の覚えめでたい新しい家なら与しやすいだろうと踏んでのことのようです。

(……むしろそっちの方が調べられるってのにね)

ウィナー家が叙爵される際もあれこれ精査が入っていたことを知っている身としては、彼らの浅慮に呆れて言葉もありません。

雇う人間に関しては勿論、当主となるアルダールとその妻になる私に権利があるわけですが、だからといって誰でも構わないかというとそうではありません。

ハンスさんのように同じく王城で働いていた人はともかくとして、他にはきちんと身上書に問題がない人物であること。

紹介元が確かなものであること。

縁故採用の場合はその責任は当主たちがきちんと持つこと、など……まあ暗黙の了解ではありませんが様々にあります。

なにせここで『任命したから後は知らない』などと国も言えないのです。

はっちゃけられて何か問題を起こされた、もしくは起こすような人間を雇う人を見る目がない人間を貴族にしてしまった、なんて国だってたまったもんじゃありませんからね!

そういう意味で新しい家ってのは大変厳しい目を向けられるわけですよ。

しかも今回私たちのケースにおいては『やり方とかルールはわかってるでしょ?』って感じであまり手を貸してもらえないっていうか、いやある意味で信頼されているから好きにできると言いますか……。

ほら、ウィナー家の場合は家庭教師から何まで寄親を探そうかくらいまであったじゃないですか。

ああいう干渉が一切ないというのはありがたいことですよね。

ちなみにうちは寄親というものはなしです。

領地を持つとかウィナー家のように何もないところなら……って感じですがアルダールも私も領地持ち貴族家出身、その上、王城で王家に直接仕える立場ですのでね。

いろいろややこしいんですよこれが!

「そうそうユリアさん、ご報告が」

「あらセバスチャンさん、どうかなさいましたか?」

「はい。陛下よりの託けがございましてな」

「……陛下から……?」

「そんな警戒したお顔をなさらずとも」

「いやするでしょう」

平穏な王女宮は平常通り。

優秀に育っている後輩たちのおかげで私がやらなければいけない仕事はそこまで多くありません。

当面プリメラさまの遠方への公務もありませんし、近隣の教会などへ赴いて慰問を行うなどその程度です。

そんな中で『陛下からの』なんて言われたら誰だって警戒くらいするじゃありませんか!

「それで、どのような?」

「執事見習いを一人、王女宮に迎え入れるようにと」

「執事見習い……ですか」

ふむ。

確かにセバスチャンさんはそろそろ一般論でいえば退職してもおかしくない年齢ですからね。

元々は陛下の〝影〟のお一人で、プリメラさまをお守りするためにこの王女宮に配属された……ということをつい最近理解した私ですが、やはり寄る年波には勝てぬというやつでしょうか。

「今、失礼なことを考えませんでしたかな?」

「いいええ別に! そのようなことは一切ございません!!」

「ならばよろしいですが」

「いやだなあ、セバスチャンさんったら! それよりも執事見習いとは?」

「まあよいでしょう。いずれフィライラ・ディルネ姫がこちらにお輿入れとなった暁に、執事として仕える者を育成せよとのお達しにございます」

「……なるほど」

大まかなスケジュールでしかありませんが、今のところお二人の婚約が正式に決まっても発表そのものはまだしておりません。

次の生誕祭の際に祝い事の一つとして大きく取り上げるそうですが……まあ改めてそのようにするのは、そこまでの間に両国でのあれこれと取り決めを細やかに決めるための時間稼ぎのようなものでしょう。

それについては私のような使用人にはさほど大きな影響はないものの、それでもこうして人間は育てておいて損はないものね。

有能な人材をそのまま流用してもいいのだろうけれど、そうするとその分どうしてもどこかで人を育てなくちゃいけないわけですし。

(スケジュール的にはまだ数年先でしょうかね)

ちょうど公務を始められたばかりのプリメラさまの元で執事見習いくんも学んでもらって、公務に慣れたあたりで今度はプリメラさまがご成婚……そこで見習いくんが正式な執事としてフィライラ・ディルネ姫の元へ、という筋書きだと思います。

いやでもプリメラさまの成婚の方が後なのかな?

まあまだその辺りについては不明瞭ですから勝手な判断はしないでおきましょう。

「ユリアさんの婚儀までにはきっちりしっかり育て上げなくてはなりませんからなあ、忙しくなりますぞ」

「え?」

なんで私?

思わず聞き返すとセバスチャンさんはにっこりと笑いました。

「陛下からの託けはまだ続きがありましてな」

「は、はあ」

「『元気の有り余っている隠居老人を執事につけてやるから好きにこき使え』だそうです」

「え、え? え!? そ、それって、つ、つまり……!?」

「さようですな、今後ともよろしくお願いいたしますぞ」

にこーっと笑ったセバスチャンさん。

まさかのミスルトゥ家執事が決定してしまった瞬間です。

「え、ええと……アルダールにも、話を……」

「おお、そうですな。後ほど未来の主人にご挨拶をさせていただくといたしましょう。とはいえ、成婚までは王女宮の執事。まずは後進の育成に励むといたします」

「え、ええ。お願いしますね。……ところでその見習いの身上書などは?」

「現在手配中ですが、ユリアさんには申し上げておきましょう。私やニコラスと同じ立場の者でしてな」

「……そう、ですか」

つまりそれは〝影〟から選ばれた人、という意味で間違いないでしょう。

次の王妃となるフィライラ・ディルネ姫の護衛を兼ねつつ、彼女が連れて来た使用人たちを探りながら国のために尽くすといったところでしょうか。

そういう立場の人があと何人、この城内で働いているのかと思うと……複雑な気持ちですね!

いえ、必要なことだと理解していますし、理解しているとわかってくれているからこそセバスチャンさんも私にこのように話してくれたのだと思えば喜ばしいことですが。

「それゆえ〝身上書〟はもう少々お待ちいただけたらと。基本的にはニコラスほど人を苛立たせないよう私が しっかりと(・・・・・) 教育していきますのでご安心ください」

「そ、そうですか……」

なんでしょう、ニコラスさんでさえ一目置いているセバスチャンさんの『しっかり』っていう言葉がとても怖いものに聞こえましたが……うん、気にしないでおきましょう!

(それにしても新しい人かあ)

最初から〝影〟だと言われていると、少し身構えてしまいそうです。

勿論、メイナとスカーレットには秘密にいたしますが……私は表情に出さないようにきちんと心づもりをしておかなければいけませんね。

執事ということで若い男性でしょうか。

浮き足立たないよう、後輩たちのこともしっかり見ておかなくては!

まああの子たちに限ってそんなことはないでしょうけど!!

(あ、いや、それよりも)

心配すべきは、アルダールかしら?

ふとそんなことが頭に過りました。

なんだかんだと嫉妬深い婚約者のことですから、若い男性が同じ職場に……というとあまりいい顔はしないかなって。

お仕事なんだから仕方ないって理解はしてくれるでしょうけどね。

それからセバスチャンさんの件も伝えなければなりません。

国王陛下が推挙してくださった執事さん、ですもんね!

(複雑そうなアルダールの表情が目に浮かぶようだわ……)

その代わりにセバスチャンさんがすっごく楽しそうですけどね!!