軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ハンスさんが去った後、私はなんとも言えない気持ちになりました。

上層部はあれこれと最初から……いやまあ、ミュリエッタさんを幼少期の頃から警戒していたってのはわかっていましたが、まさかそんな近くに潜ませていただなんて……。

まあハンスさんの弁明によると私とアルダールのデートに度々出くわしたのは本当に偶然だったそうで、彼も『あの時ほどアイツこええって思ったことなかったわ……』と遠い目をしていましたね……。

とりあえず現在わかっていることは、ハンスさんは肩の荷が下りたってこと。

そしてアルダールとの関係はまあ……色々複雑なものを取っ払ったおかげでお互い友人としてちゃんとやれそうってことでしょうか?

後でそれはアルダールにも聞いてみましょう。

それから、今回の人事……いずれアルダールと私が結婚して子爵となり、新しい居を構える際にハンスさんが侍従兼護衛みたいな立場になるってことも公表しちゃっていいんだそうです。

まあ、私たちの結婚と叙爵に関しては王城内で話が出ているそうなので……うん、どこから話が漏れているかとかはもう考えません。

人間、知らなくてもいいことがあるんです。

特にこの王城ではね!!

(結局ハンスさんは形の上ではフラれたことになるのかしら)

ふと、そんなことを思いました。

なんせ彼女に対して『可愛い』と連呼して、片思いしているような態度を周囲には見せていましたからね。

実際のところは、多分……そんなでもなかったんだろうなと思います。

幸いというかなんというかミュリエッタさんは本当に美少女なので、可愛い連呼自体は本当のことしか言っていませんしね。

(もし、ミュリエッタさんが彼を選んでいたらどうなってたんだろう?)

それはそれできっと、ハンスさんは彼女を大切にして近衛騎士として生活をしていったんでしょうね。

だからといって、リジル商会の跡取り息子が悪縁かって言ったらそんなことはないんですよ。

ほら、ゲームの中じゃあかなりこう……裏エンディングだとアレな感じでしたけど!

それでもこの世界で有数の商人ですから、少なくとも貧困とは縁のない生活には違いありません!

貴族ほど堅苦しくない生活でしょうし、華やかかと問われると難しいところですが……貴族たちの思惑に囚われて窮屈な暮らしをするよりはいい気もします。

(まあ、結局は彼女がどう感じているか、ですけど……)

アルダールに想いを寄せて、だけど彼女が見ている『アルダール』は別人のように思っていました。

だけどそれは失恋には違いないのだと思うと、同じように恋をしている私としては複雑な気持ちになります。

奪われたいわけではありません。

失恋が辛いことを、知っているからかもしれません。

(……だめね、そんなことを考えたって私に何かできるわけでなし)

それもアルダールと結婚する私が言うなって話ですからね!

関わるなとも王弟殿下に釘を刺されてますし。

とはいえ、まるっと全部気にしない、考えない……というのは難しいことだなあと私は椅子の背に体重を預けるようにしてため息を吐きました。

「どうぞ」

ノックの音に姿勢を正し応じると、ひょこりとメイナとスカーレットが入ってきました。

二人は私の前まで来ると、少し驚いた表情を見せて……それから怪訝そうな表情を浮かべています。

「どうしたの? 二人とも」

「いいえ、あの……ユリアさま、どうかなさいましたの?」

「お、お疲れですか?」

「いいえ、何もないわよ? 一体どうしたの、二人とも!」

どうやら余程私は疲れた顔をしていたようで……心配をかけてはいけないと笑顔を浮かべて見せました。

それがいけなかったんでしょうか?

二人は顔を見合わせると、私の様子を見て少しだけ困ったように何かをゴニョゴニョと相談し合っています。

やだなあ、本当になんてことはないんですよ!

ただちょっと気持ち的に疲れたってだけの話なので……。

かといって内情を話すわけにもいかないし、どうしたものかと考えていると彼女たちは意を決したように私を見ました。

「あの! たまにはお食事をご一緒したいなって!」

「その時間帯はセバスチャンさんが担ってくださると仰っていただけましたので、どうかしらと……ですが、お疲れのようでしたらまたの機会にいたしますわ」

「食事に?」

そういえばそろそろ、そんな時間でした。

私が思わず目を瞬かせていると、メイナが少しだけ頬を膨らませています。リスかな?

「最近ずーっとバウムさまがユリアさまとご一緒だったから、わたしたちにもかまってください!」

「ちょっとメイナ、わたくしそんな子供みたいな言い分ではなくってよ!?」

「スカーレットだって寂しいって言ってたじゃない!」

「そ、それはそうですけれど……お二人の時間を邪魔してはならないことくらいわたくしは承知しておりましてよ!? 子供ではありませんもの!」

「そんなのわたしだってわかってるよ!」

「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて」

二人して言い合いを始めてしまって、私は少し慌てましたが……そうですね、言われてみればそうです。

メイナやスカーレットと、最近仕事の時以外は一緒に過ごしていない気がします。

以前、まだプリメラさまの公務が始まる前は休憩時間で一緒にクッキーをかじったりとかそういうことはありました。

ですがアルダールと過ごすようになって、仕事を調整しながらお互い時間を合わせるようにして王城で逢瀬を重ねていたから当然その分、この子たちと過ごす時間は減っていたわけで……。

(やだ、かわいい)

上司と一緒に過ごす時間が減った! って直訴されるとかなにそれ可愛すぎない?

いやうん、私の恋を応援してくれていたことも知っているし、今回婚約が正式に許可されたこともこの子たちはものすごい大喜びしてくれたし、私ったら幸せだなあって思ってたんですよ。

ナニコレ本当に可愛い。

先輩として同僚として上司として、感動です!!

「……ええ、一緒に食事をしましょう。食堂でいいかしら?」

「やったあ! 勿論です!!」

「わたくしも勿論構いませんわ!」

私の言葉にパッと二人とも言い争いを止めて笑顔を見せてくれました。

うちの後輩、可愛すぎなんですけどどうしたらいいですかね?

思わず私は立ち上がって二人に歩み寄り、抱き寄せてしまいました。

「ユ、ユリアさま!?」

「どどどどどうなさったんですの?」

「ありがとう二人とも、誘ってくれて嬉しいわ!」

私が結婚したらこの王女宮の私室に寝泊まりすることも減るでしょうし、彼女たちとの時間ももしかしたら減るかもしれません。

だから今は、精一杯……これからもこの子たちの前で恥ずかしくない王女宮筆頭であろうと、私は心に誓うのでした。

「それじゃあ今から行きましょうか。私の方はもう仕事も落ち着いているけれど……二人はどうかしら?」

「勿論大丈夫です!」

「わたくしも問題ありませんわ!」

「今日のメニューはなんだったかしら?」

「あっ、確か今日はスペシャルメニューのある日ですよ!」

「わたくしお勧めのサラダがあるんですの。是非ユリアさまに召し上がっていただきたいわ!!」

「ふふ、楽しみね」

よーし、今日の晩ご飯は先輩、奢っちゃうぞー!!