軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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さて、王城に帰ってきました!

なんだか普通に両家揃っての家族旅行をしただけという雰囲気でしたが……まあ、お義母さまが大変楽しまれたようで、何よりです。

よくよく考えるとお義母さまは後妻という点と、お父さまがあまり社交界がお好きでないということでそれほど知人もいなかったんですよね。

勿論領地内のご婦人方とは面識がありますけど、社交界のご婦人方とは違いますからね……そういう意味ではアリッサさまと仲良くなれたのはとても良いことだったのでしょう。

(普通に社交していたら、アリッサさまなら身分差なんて問わず親しくしてくれていたでしょうね)

いや、妖怪爺の洗脳が解けていない状況だったらどうだったろう?

まずあの前パーバス伯爵の娘というだけで避けられていたかもしれない。

(……まあ、深く考えない方がいいか!)

とりあえず戻ってすぐに両家賛成の元、婚約に向けて書類を提出した……というような話は一応プリメラさまにさせていただきました。

将来的には姉妹だねと無邪気に喜ばれるプリメラさまの尊いことったらないよね。

戻った私が急いで片付けないといけないような仕事もなくて、本当に後輩たちが優秀で助かります。

若干、もう教えることもないのだと思うと少しだけ寂しい気もしますが……。

(あの子たちも引き抜きとかに合うのかしら)

王城の侍女ってのはお給料も良いだけでなくやはり〝王城で〟働いているっていう実績が強いですよね。

そういう意味で高位の貴族たちから自分の家で働いてはくれないかと引き抜きがあったりもするんですよ。

かくいう私も引き抜きの打診をいただいたことがあります。

当時はまだ私もその他大勢の一人でしたから。

私が特別優秀だから気に入ったってわけではなくて、庶民的な魔法を広めたとかなんとか、そういうところで目立ったから興味本位で声をかけてきたとかそんな感じでしたね。

まあ、一介の侍女とはいえ私は当時『王女殿下のお気に入り』として有名でもありましたので、統括侍女さまから断っても問題は起きないとお墨付きをもらって安心したものです。

お断りの手紙を書いたのも、今思えば懐かしい話ですね。

ちなみに断るのにもそれなりに難しいんで、上司に相談するのがベストです。

大抵の高位貴族は断られたところで『仕方ない』と笑って許してくださいますが、時折……本当に時折ね? 断られたことに腹を立てて嫌がらせをしてくる人もいるって話です。

特に下位貴族出身だったり、裕福とはいえ平民出身な子がそういう目に遭いやすいらしく……私としてはメイナが心配です。

だってあの子、優秀な上に可愛いでしょう!?

どこの貴族家だって働いてもらいたいと思うじゃないですか!!

(まあ、今のところは平気だろうけど)

なんせ、王女宮は少数精鋭でいけという陛下の指示がありますからね。

そこから人を引き抜くだなんて行為は声をかけるだけでも悪目立ちすることでしょう。

……もしや、人が少ないのってそのためなのか?

「ユリアさん?」

「えっ、ああ……セバスチャンさん」

「難しい顔をしてどうなさったんです? 特に不在の間の報告書で問題はないと思いましたが」

「いえ、報告書の内容は問題ありません」

「では何か心配ごとでも?」

「大したことではありませんよ」

本当にどうでもいい話ですからね!!

だって、人数はもう増やせないって先に言われちゃってますもの……ふふ。

それよりも問題なのは表彰式の方ですよね。

帰ってきて早々連絡をいただいて、リハーサルに参加するように言われましたけど!

「……ちょっとばかり、胃が痛いだけです……」

「ああ、なるほど」

セバスチャンさんはいつだって察しがいいよね! うん。

さすがに少しだけ哀れなものを見る眼差しなのがとても微妙な気持ちになるので止めていただきたい。

どうせなら代わってくれよ! 無理だけど!!

「……まあ、栄誉なことですから」

「そうですね、私がこの国始まって初めての表彰式に参加する侍女でなければそう素直に思えたと思いますよ!」

慰めでしょうが、今の私には厳しいものがあるのです。

この表彰式、表立って公開されるものではないとはいえ、国王陛下が御自ら勲章を授与する大切な式典です。

それゆえに、失敗は許されない。

ただ勲章をお傍に持って行くだけの役割だとしても。

「プリメラさまは大層お喜びでしたが」

「それは……そうなんですけど……」

王族にとっては公務の一つである式典ですからね、プリメラさまも公務をなさるようになった今年から参加です。

私や他の侍女も、執事であるセバスチャンさんも同席することは許されていないため、本来は外での待機予定でしたが……そのことを少し不安に思っておられたのでしょう、プリメラさまは私が一緒に参加するのだと知ってとても喜ばれたのです。

こっそりと『ユリアが一緒なら心強いわ!』と仰って……いえ、それだけでなく『ユリアが認められているってことも、とっても嬉しいの!』と本当に心の底からお喜びくださったんですよ!

(あの笑顔を思い浮かべれば乗り切れるかもしれない)

あくまで〝かもしれない〟ですけど!!

なんせ、アルダールにも『あんまり一人で抱え込まないように』って心配されちゃいましたからね……彼だって表彰される側の人間なので、きっと緊張しているでしょうに。

こういう場面になると私はいっつもモブだモブだと思っていますが、やはり表舞台が似合わないモブなんですよ、心底そう思いますね。

縁の下の力持ち、それでいいじゃないですか……。

遠目に授与式を見たいとかそういう気持ちがなかったわけじゃないですが、間近すぎるのはノーセンキューだったんですよ。

褒美とかボーナス上乗せ一択でお願いします状態だったんです。

「まあユリアさんで前例ができることですし、今後は変わっていくかもしれませんなあ!」

「朗らかにプレッシャーかけないでくださいます!?」

心配してくれているのも本当なんでしょうが、面白がってもいますよねこの人!

全くもう、昔からこういうところお茶目なんですから……。

「大丈夫ですぞ」

「……まったく、いつもそれでごまかされませんからね」

「ユリアさんが本当にダメだというならこの老骨、逃げ出すための力添えは惜しみませんよ?」

ふっと真顔になったセバスチャンさんに私はびっくりして目を瞬かせました。

そんな私の表情を見て、いつものように柔和な笑みを浮かべたセバスチャンはクスクス笑っています。

「まあ、何ができるわけではありませんがな!」

「セバスチャンさんったら……驚いたじゃありませんか!!」

いえ、きっと……今のは本当のことなのでしょう。

何もできないなんて謙遜していますがセバスチャンさんのことですから本当になんとかしてくれそうである意味恐ろしいじゃありませんか。

「……リハーサルの際は王族の方の参加はなしと聞いています。その間はセバスチャンさんに王女宮のことをお任せしますので、よろしくお願いいたします」

「承知いたしました」

「このところ私の都合でご迷惑をおかけしています。でも、頼りにしてますから」

「大船に乗ったつもりでお任せください。なんなら、ユリアさんの結婚式での給仕など任せてくださってもよいですぞ」

「それはちょっと」

いや、完璧にこなしてくれるとは思うけどね!?

さすがに王城の人間を使うってのは気が引けすぎてしまいますよ、孫のように思ってくれているんだとしても!

まったくこのお茶目さんめ。

私は胃の痛みも忘れて笑ったのでした。