軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……みっともないところを見せてしまったね、ごめん」

「いいえ。私もお父さまに言われて思うところがあったから……」

あの後、バウム伯爵さまとお父さまは何か通じ合うものがあったのでしょう。

色々と勝手すぎたともう一度詫びられて、アルダールにも謝って、それで一旦お開きとなりました。

ある意味、お義母さまたちがいない時で良かったかもしれません。

というかディーン・デインさまがいなかったからこそバウム伯爵さまもあの話題を出してきたのでしょうけれど。

「そういえば、表彰式の件……」

「ああ、そのことですけど」

バウム伯爵さまが言ってしまったのだし、アルダールには伝えていいのでしょう。

詳しくは私もわからないけれど、勲章を運ぶ役目を言いつかったのだということだけ簡潔に伝えておきました。

これまでの功績云々、その辺は言わなくてもまあ、きっと察しているに違いありません。

そしてそれが私にとって、正直、重荷だってこともね!

(しかしまあ、これで……ある意味、隠し事はなくなった状態と思っていいのかな)

細かにはそれぞれあるでしょうが、お互いに関してっていうのはなくなった気がします!

ただまあ、おそらくですがディーン・デインさまは跡目を継ぐ時期が早まったこと、バウム伯爵さまが多くの責任を取る形で退かれる話はまだかなと思います。

その辺りはきっとご夫妻で話し合いが続くのでしょう。

ある程度のことが決まってからアリッサさまには話をして、結果怒られたんでしょうね!

「……アルダール、もしバウム伯爵さまと同じようなことをしたら私、きっとすごく怒ると思いますからそのつもりで」

「今のうちから恐ろしいことを言うね。……いやでも親父殿を反面教師に良い夫となれるよう気をつける」

「そうしてください。私も良い妻になれるよう、努力します」

「十分だと思うけどね」

「まだ結婚してないのにそんなこと言って……後悔するかもしれないわよ?」

くすくす笑いながら私たちはホテル内にある庭に来ていました。

顔合わせ自体がすんなり終わってしまいましたしね。

食事の時にでもまた今後について話をしたりしようか程度の雰囲気ですから。

顔合わせ自体は確かにすること自体はないですからね……精々、結婚式をいつにするのか当主同士の話し合いに時間がかかるくらい?

ほら、招待客のリストとか親族関係とか、仕事上の付き合いとか……その辺りの調整ですとかね。

家同士の繋がりとなれば、その辺りがかなり重要視されるんですよ。

勿論、結婚する当人の幸せを願っているのには違いないのですが、そういった細やかな付き合いが新しい夫婦にも役立つことがあるっていうね?

まあその辺、私とアルダールはあまり関係ないんですけど!!

なんせ、当主になるわけじゃありませんし。

騎士爵と侍女の結婚ですからね。ひらたく言うと。

「……でも、これで婚約成立なのねえ」

賛成どころか応援されていたし、周囲の人たちも一部のやっかみを除けばようやくかくらいの雰囲気でしたからね、別に今更実感がどうのってこともないんですけど。

それでもなんだか、こう、前に進むのって嬉しいものですよね。

思わずにやにやする顔を我慢しつつアルダールを見ると、彼もまたどこかむずがゆいものを感じているのか少しだけ頬を赤くしていました。

「うん、まあ。そうだね」

「ここからがまだ長いけれどね!」

「そうだなあ」

そうですよ、婚約成立がゴールじゃないですからね!

両家の当主が賛同してくれて書類が認可されて、上司や同僚に報告して、お披露目会を開いて、結婚式をやって……。

その間に新居も探さなきゃいけないんですよね!

王都の城下町で私たちの通勤に便利な家なんて、人気物件過ぎてすぐに見つかる気がしません!

(……そういや王城内にそういうのを斡旋する部署があったな……?)

今まであまりにも縁が無い場所だと思っていたから気にも留めていませんでしたが、やはり社内恋愛じゃないですけど、王城内でカップルになる率ってそこそこあるんですよね。

それに伴いどうしても辞めてほしくない部署だってありますし、そうなればいくつか物件を紹介できるよう伝手を……ってなるものだそうで。

聞いたときには『ふーん』ってなもんでしたが、今にして思えば素晴らしいことじゃないですか!!

勿論、王弟殿下やビアンカさまを頼れば懇意にしている商人経由で見つけるのも可能かとは思いますが……商業ギルドのトップとか、きっとお付き合いあるでしょうし。

私だってやろうと思えばリジル商会とかジェンダ商会とか、彼らに紹介してもらえることでしょう。

でもそういう時に頼むのってなんとなく気が引けるっていうか。

ジェンダ商会については会頭が快く請け負ってくださるでしょうが、確か土地物件系は扱ってないって以前仰っていたので誰かに聞くため奔走させることになっちゃうでしょう?

リジル商会については私の個人的な感情でアレですが、頼るといつか大きな見返りを求められそうで怖いから却下です。

タルボット商会?

頼るわけないじゃないですか、やだー。

私だってきちんと考えてますよ! その辺は!!

そんなことを考えていると、アルダールが大きなため息を吐き出しました。

「アルダール?」

「実は……新居についてなんだけど、親父殿たちが町屋敷を私たちに譲ろうとかなんか言い出しているんだよね」

「は?」

「前に行ったものとはまた別に、バウム家が所有しているものがあってね。確かに立地は通勤にとても便利だし、以前ユリアを連れていったところよりは手狭だけど……断ったよ。事後報告でごめん」

「いいえ。断ってくれてありがとう」

さすがバウム伯爵家、町屋敷を複数持っているってリッチぃ。

なんてことを感心している場合ではありませんでした。

うん、大貴族は城下に居を構えるだけでなく、町屋敷もいくつか保有していて好きなときに好きな場所で寛ぐ……とか、夫婦で別の家を利用して楽しむ……なんてことがあるとは聞いていますし情報は知っていますが、それを譲るとか言い出すとは思いませんでしたね!

(いや、ある意味財産分与なんだから正当なのかしら……?)

アルダールがバウム家の跡継ぎ関連から離脱したところで、バウム伯爵さまの息子であることには違いありませんから。

いずれの時にはそれ相応の財産分与が行われるとは思います。

本来はこれ、跡取り以外の実子に対する自立資金みたいなものらしいんですけどね。

大きな貴族位だと持っている爵位の一つを与えるとか……女性陣は持参金って形で使われると聞きます。

それぞれのお宅で懐事情が違いますから、一概には言えませんけどね!

「うーん、でも多少は真面目に考えないといけないのは確かよね。私たちが暮らすに当たって、必要なものを置くスペースとか……アルダールは武具や礼服をしまっておく場所も必要でしょう?」

「そうだなあ、予備の剣も今は城内の部屋にあるけど、実際にはいつ呼び出されてもいいように自宅に置くのは当然として……来客のことも考えたらそれなりに部屋数は必要かな」

「そうねえ」

「夫婦の部屋は一つでいいとして」

「そっ! ……うねえ……」

思わず変な声が出てしまいましたが、しょうがない。

いやもうサラッと言われたけど、そそそそうですよね、夫婦になるんですからね!

同じ部屋で当たり前です!

でも言葉にされると実感が伴って恥ずかしさが天元突破しそうなんですけどなんだこれ!!

「……照れてる?」

「照れてません」

「へえ。じゃあこっちを向いて」

「……照れてません」

「こっちを向いてくれないとキスもできない」

「ここ、外ですからね!?」

思わず勢いよくそうアルダールに言ったところで、抱きしめられました。

もう何度かこうやって抱きしめられることはありましたし、まあキスもしてますし、婚約者ですし!

おかしなことではない、はず、なんですが……!!

「……本当にユリアが私の心を受け入れてくれて、良かった」

怒るべきかと思った私の耳に届いたのは、アルダールのそんなしみじみした声だったから。

私はどうすることもできなくて、なんとなく体から力を抜くしかできないのでした。