軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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統括侍女さまに教えていただいたこと、その事実は私にとってやはり気の重たいものでした。

ですが、知らないよりは良かったと……そう、思います。

統括侍女さまは、私に言いました。

アルダールに対して語らないのは、自分から行動することを望むもの。

私にお話しくださったのは、知って対処すべきもの。

対応が異なる理由は、それぞれに求められるものが違うからで……それは、ごくごく自然なことなのだと。

(アルダールに話すかどうかは、私次第……か)

侍女と騎士、男と女、妻と夫、対等だけれどそれぞれ得手不得手があって、やり方も色々ある中で……知っておくべきこと、知らなくてもいいことも同じようにお互い違っていいのでしょう。

二人一緒にどうにかしなきゃならない時もあれば、どちらかが片付けてしまってもいいものだってあるわけで……ただ、それを全部勝手に判断しては相手に失礼だし、難しい話です。

私は自分の執務室に戻ってからも、そのことで頭を悩ませていました。

個人の話、だけれどもそれだけに留まらない話。

それは王女宮筆頭という立場でプリメラさまのことを考えれば、今後の憂いを断つためにバウム伯爵さまが動いてくださって……そのために、不名誉な 謗(そし) りを免れない状況でもあるということ。

未来の義父にそのようなことをさせてよかったのか、そう私が思うのですからプリメラさまはもっと責任を感じてしまうことでしょう。

じゃあ黙っているのが一番なのか?

いつか事実がわかってショックを受けた際に、フォローできるように下準備をしておくとか?

それとも、今のうちからそれとなく話しておくべきなのか?

選択肢は色々ありますし、どれも正解のような、どれも不正解のような……。

(あああ、どうしたらいいのか……!!)

知らなかったなら、悩まない。とても単純なことですが、知ったこと自体は後悔していません。

ただどうしたらいいのか、それについて悩むばかりです。

(いや、まだ時間はある)

慌てて決断するのは得策じゃない。

私は昔から焦ると碌でもない失敗をするんだから、せめて表面上繕っていられるうちはきちんと考えて後悔しない判断を下さなければ。

私個人のミスで済む問題ならともかく、私の判断次第では誰かが傷つく可能性だってあるでしょう。

焦ってプリメラさまとアルダール、ディーン・デインさまや……他にも、私たちを気遣ってくださった方々に迷惑をかけるのはよろしくありませんからね!

(順番に考えよう、まずはそれからだわ)

まずは……私の婚約について。

これについては横槍は入らなくなったと考えていいのでしょう、いやあまさか私なんかに縁談を申し込もうという人が他にもいたなんて思いもしませんでしたよね。

でも言われてみれば確かに私に関しては利用価値の高い地位に就いているということもあるのですから、結婚に利があるといえるんでした。

美人の基準よりも家を富ませる、そういう意味では正しく政略結婚の駒として優秀だと思いますしね!!

……自分で考えてなんとも悲しい話だなあ!

まあ、それはともかく。

両家顔合わせの前にアルダールは指輪の注文をしに行きたいって言ってくれていたし、王城からどうせ行くのだから私たちは一緒に行動するとして……。

(問題はその時に話すかどうか、を考えておくべきね)

アルダールは話を聞いてくれるけど、別にこの話……バウム伯爵さまの進退について彼にできることはないし、父子間で何かやりとりするのかってのは……うん、想像できないっていうか。

家族としてお互い思いやっているというのは理解していても、溝が埋まったってわけではなさそうだし……。

もう少し考えることにしよう。

(で、顔合わせは問題ないとして……次は、例の授与式に関してよねえ)

プリメラさまが列席なさるのだからその準備は勿論のこと、まさかの私が陛下のお近くにいくのだからその下準備とリハーサルがあると思っていいでしょう。

事前に統括侍女さまからある程度の心得などは教えていただけると思いますが、まさかの大役に心臓がもつかしら。

(そういやプリメラさまはこのこと、ご存じなのかしら)

陛下からお茶に誘われたのだと笑顔で行ったまま、まだ戻らないプリメラさま。

思えば不思議なものです。

私はこれまで【ゲーム】のようにならないようにとそればかりを願っていましたが、もはやあの物語はどこへ行ったのかと思ってしまうほど変わったものです。

まあ、これは現実世界なんだからあの物語のようにならなくて当然なんですけどね。

冷静に考えたら男爵令嬢が王子に見初められて王太子妃になるエンディングとか、騎士見習いとはいえ本来国王陛下に捧げる剣を恋した女の子に捧げるとか……。

乙女の夢や希望、それから欲望ががっつり組み込まれた内容だったと思いますが、当事者目線になるとなかなかにこの世界において常識外れなことだらけですものね……。

(ミュリエッタさんも)

思ったようにならない人生に、今彼女は何を思うのでしょう。

転生者同士、仲良くなって腹を割った話し合いができていたらまた何か違うことになっていたのでしょうか。

もし、私が彼女の立場だったら……【ゲーム】と同じようにやれていたのでしょうか。

(考えるだけ無駄無駄。そんなことより考えなきゃいけないことが……)

ついつい現実逃避してしまいました!

結局の所なるようにしかならないし、それの中で最善を尽くすだけ。

そう思いながら雑念を振り払うように頭を軽く振ったところで、ノックの音に私は顔を上げました。

「どうぞ」

「し、失礼しますユリアさま! ご報告があって参りました!」

「あらメイナ。……それにスカーレットもどうしたの?」

「メイナの件とは別に、少々お耳に入れておきたいことがありますの」

二人の少女が真面目な顔をして私の元にやってくるとは。

一体何事でしょうか。

「……お入りなさい」

メイナはティーセットの載ったワゴンを押して、スカーレットは手紙の束を持って入ってきた二人は、それぞれ難しい顔をしています。

私がソファに座るように促せば、顔を見合わせた二人がちょこんと座りました。

「まず、プリメラさまはもうしばらくお戻りにならないそうですわ。急なお話ですがお二人で観劇に向かわれるとのことですの。その後は夕餉を共になさるそうですわ」

「セバスチャンさんの他に、王女騎士団の方がついていかれたので我々は宮で待機するようにと先ほど連絡が来ました!」

「そう……セバスチャンさんがついているなら問題ないでしょう。それで、どうしたのかしら?」

なるほど、戻りが遅いと思ったらそういうことですか。

陛下がプリメラさまをお茶に誘われることは以前からあったことですが、今回はセバスチャンさんを連れてこいっていう指名があったんでおかしいなあとは思ったんですよ!

統括侍女さまに私を呼び出させて自分は娘と遊びに出かけたかったんですね、陛下。

思わず遠い目をしてしまいそうになりましたが、とりあえず二人の前なので堪えましたとも。大人ですから!

「あの、気にするなって前にユリアさまからも言われてはいますけど……」

「どうしても、わたくしたち、気になりますわ。ええ、気になるというか……気に障るというか」

「うん?」

なんか不穏な言い方だぞう、スカーレット。

メイナもなんだか不満そうな顔をしているし。

私が気にするなって、何を言いましたっけ?

あれか、アルダールと私が恋人になった際にご令嬢方から不満があがって嫌味が増えたときとか、そういうのを気にするなって言ったあれか?

どれだ! どれだ!?

私が内心でメイナたちの言葉が何を指すのか考えていると、続きを促しているように思えたのか二人は前のめりの体勢になって矢継ぎ早に口を開きました。

「あの! ミュリエッタって小娘ですわ!!」

「別に悪いことはしていないしものを知らないだけだし上の人たちが対応しているって以前聞きましたけど、やっぱりどうにかなりませんか!!」

「ふ、二人とも?」

急にヒートアップした二人に思わず目を丸くしましたが、ここで思いも寄らない名前が出てきて私はさらに言葉をなくしてしまいました。

え、だってミュリエッタさんについては、私の手を離れたって考えるのが筋じゃないですか、ここまでの流れだと。

まあそもそも私が手綱を握っていたわけじゃないので、その苦情は本来ニコラスさん宛のはずなんですが……。

どうしてうちの可愛い後輩たちがこんなに憤っているのかしら!?