軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ベイツさまに話を伺った二日後、統括侍女さまに呼ばれました。

ああ、きっと あの話(・・・) に違いないと私も色々な覚悟を決められたのはありがたかったかもしれません。

だって知らないまま統括侍女さまからお話を伺ったら、頭が真っ白になった挙げ句に質問したいこととか思い浮かばないまま退室……なんてことになりそうじゃないですか。

それはできるだけ避けたい。いや、避けるべき。

なんせ、侍女としてその場に参加せよってのがまずわからんのですよ!

(令嬢としても勿論、侍女が参加するなんて異例中の異例では……?)

あるとしたら、表彰される側である可能性ってやつになるんだけど……私の記憶が確かならば、この表彰式で侍女が表彰されたことは過去に遡って一度もないと思われるのです。基本的に侍女だって役に立ってますし、必要な職業。むしろ大事。

でも、騎士たちや文官たちをメインに表彰するには意味がある。

彼らは命がけだからだ。

カッコイイ、素敵、魅力的、そう思わせるだけの功績を表に出さなければ なり手(・・・) が限られてしまうのが現実だ。

お給料はいいし、貴族階級としては栄誉ある職業だけど……平和な世の中だと言ってもモンスターは出るのだ。

そういう意味で騎士たちにはやはり命がけになるし、文官も補給関連で前線に行くこともあるし、医師も文官の指揮系統に入るらしくその関係で表彰はそちらに分類される。

それに比べれば侍女は大切な縁の下の力持ちではあるものの、命の危険はないし安全な職業ですからね!

……というのは表向き。まあ、それが中心です。

ですが、一部の侍女には 間諜(スパイ) の役目もあるとかないとか噂で聞いたことがありますし、それだと……ねえ? 表彰するわけにはいかないじゃないですか。

それに、 何もなくとも(・・・・・・) 侍女は人気職ですからね……。

言い方は悪いですが、侍女職に就けば出会いも多いってのは事実ですからね。

騎士や文官、果ては貴族のお偉方。

みんながみんなそうではありませんが、それ狙いの人たちも含めて人気職ですから……。

(かつてのスカーレットがそうだったようにね。いや、あの子の場合は最初から王太子殿下に見初めてもらったり素晴らしい人材だとチヤホヤされたかっただけで、そんなこと考えてなさそうだったけど)

まあ、それはともかく。

騎士たちのような花形は危険の上に成り立ち、文官が武官人気に負けて数が減っては困る、そうした理由が働いているとよくわかるんですよね。

だからこそ、侍女は表彰されてこなかった。

じゃあ、それなら、私を どうする(・・・・) って話になるわけですよ。

(前例を作れば今までのものが変わってしまう可能性がある、それは統括侍女さまならよくおわかりのはず……)

ましてや、私だぞ!?

地味オブ地味で生きてきた私が、今、なんで!?

いや、褒めていただけるなら大変ありがたいですしそれが臨時ボーナスに繋がるよってんなら大歓迎ではありますが、それでも目立ちたいわけじゃあないんですよ!!

(でも、プリメラさまの誉れになるなら……)

それはそれでいいかも? なんてちょっと思っちゃいますけどね。

なんにせよ、一体どんな話をされるのか。

私は緊張しながら統括侍女さまの執務室をノックしました。

許可を得て入室したところで、統括侍女さまは書類作業をしておいででした。

少しだけ間を置いて、顔を上げた統括侍女さまは私に向けて一つ頷きます。

「待たせましたね」

「いえ」

「お座りなさい。少し、長い話になります」

「……はい」

長い話ってことはイコール厄介なこととも受け取れるんですよね。

っていうかまず間違いなく今回の件は表彰式に関することなので、厄介なのですが。

「此度、王女宮筆頭には表彰式に使われる勲章を運ぶ役割を担ってもらうこととなりました」

「はい、かしこま……え、はい? 今、勲章を運ぶ役割と……?」

思わず返事をしつつも疑問が大きく出てしまいましたよ!

でも仕方がないと思うんですよ。

だって勲章を運ぶ役目ってあれでしょ? 国王陛下が授与する際にお傍で待機するすごく重要な役割ですよ!?

私の驚きようを予想していたのか、統括侍女さまは私のこの動揺っぷりを叱責するでもなく、静かに頷かれました。

「そうです。本来なら陛下直属の書記官から一人選ばれるものですが、今回に限り王女宮筆頭、貴女が担当することとなりました。これは決定事項であり、覆ることはありません。わかりましたね?」

「しょ、承知いたしました!」

「よろしい」

統括侍女さまは私の返事にどこか、安心したような表情をお見せになりました。

いや、今の言われようじゃあどんなに私が『いやだ!』と思ったところでどうしようもないのだってわかりますし、駄々なんてこねませんよ。

とはいえ、私が困惑するのと同じように、きっと統括侍女さまだって今回の件は異例中の異例で困惑することが多いのではないでしょうか。

だってやっぱり、どこかお疲れのようですし。

「驚くのも無理はないと思いますが、今回限りのこと。王女宮筆頭ならば陛下を前にしても問題ないでしょう。緊張するなとは言いませんが、肩の力を抜いて臨みなさい」

「はい、ありがとうございます。……あの、理由を、伺ってもよろしいでしょうか」

それとも今回も詳しく聞くなってパターンでしょうか。

統括侍女さまがそう仰るなら私だって呑み込んでみせますけど、どうせだったらお聞かせ願いたいかなあなんてちょっぴりこうね、思ったりなんかしたわけですよ。

「いいでしょう、当然のことです」

おおっと、期待なんかしてなかったんだけどあっさりと教えてもらえる……だと!?

思わず前のめりになりそうなのをなんとか律して私は統括侍女さまのお言葉を待ちました。

「まず、今回の表彰式では騎士から五名、文官から二名表彰されます。彼らの詳細については一名を除いて貴女には関係ありませんので省きますが、正当なる評価の上での話です。そこまではいいですね?」

「はい」

「そして貴女についてですが、各方面より貴女の功績を何かしらの形で評価すべきであるという声があがっている事実があります」

「……え?」

「知っての通り王家、あるいは高貴な方々が個人の裁量で、非公式な形として報いてくださったことはありますが国から公式な形で侍女が表彰されたことは建国から今日までありません」

そうです。かつて王妃に仕えた侍女がその人柄を見込まれて国王陛下の側室にあがったとか、出自は低い身分でも普段から良き働きをする人物であるとして高位貴族の養女に推薦したとか……そういう話はたくさんあります。

形を変えて忠義に対し報奨を与えてくださっている、という認識で合っていると思いますし私にとってはプリメラさまのお傍でその笑顔を守らせていただけるのが最大のご褒美っていうか違うそうじゃない。

「つ、まり、私を表彰するにあたり表立っては表彰される側という立場はとれないけれどその場には立ち会わせよう……ということで合っておりますでしょうか」

「概ねその解釈で問題ありません。おそらく、陛下は直接お前にお言葉をかけるおつもりなのでしょうが……その辺りは宰相閣下ならびに大将軍閣下が諫言してくださっているけれど、どうなることやら……」

いやいや、どうなることやらじゃありませんけど!?

国王陛下が直接表彰式の場で侍女に労りの言葉をかけるとか、もうそれどんな注目を浴びるのかと思うと想像するだけで胃が痛いんですけど!?

「表彰式の中でのことは他言無用の話と昔から暗黙の了解となっていますが、人の口に戸は立てられぬと言います。緩和させるためにもわたくしも陛下のお傍に控えます」

「……それは、とても、心強いです……」

「しかしメリットもあります。勿論、陛下にお認めいただくという栄誉は何にも勝るとは思いますが……」

それを遙かに超える重圧の方が私には耐えられません!

なんて言えるわけもなく、私はただ赤べこの如く無言で頷くしかありませんでした。

統括侍女さまはそんな私をどこか哀れむような目で見つつ、言葉を続けました。

「貴女を取り巻く婚約の横槍、それらもおそらく今回の表彰式が終われば全てが消えていくことでしょう。それどころか、バウム卿との婚約について多くの者が賛同の意を示すものと思います」

「……え?」

目立ちたくない私のことを統括侍女さまはよくわかってらっしゃる!

そんな風に思っていた私には、何を言われたのか追いつかず思わず口から零れたのは間抜けな声だけでした。